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第一章 始まり
復権、そして退院へ
しおりを挟む■ 復権 そして退院へ
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献精が終わって病室に帰ると有希子が来ていた。
「お疲れ様、大変だったわね、初めての献精はどうでした。」
有希子は心配しているのか聞くのを躊躇いがちに聞いてきた。
「うん、まあ、何だ、一言で言えば驚かれたよ。」
俺はついさっきの事ながら思いおこすと思わず苦笑いをしてしまった。
「お、驚かれたって...どんな意味?、もしかして...サイズ的な物」
有希子は俺のサイズは知っている為、その事だろうと思ったみたいだが、それもはずれではないんだけど
「うん、それもあったかな...まあ、量も、多かったかし、搾精室でやっちゃったしね。」
ちょっとバツが悪い、有希子とは特定交際者となるのに先に他の人とやっちゃったからなぁでも、どうせその事実は伝わるだろうし...ちなみに順番の事は内緒にしてくれと言われている。そうしないとずるいと言う事になって取り留めのない事になってしまうらしい。
「まあ、じゃ、献精は出来なかったの?、それはちょっと問題よ。」
えっ、問題はそこですか?
「いや、献精はちゃんとやったよ、献精の搾精はした後でね、ほら、1回ぐらいじゃ収まりがつかなかったから、丁度サポートも頼んだからさ...対勢いでね。うん、有希子には悪いって思ってる。」
「いや、いや、ちゃんと献精出来たのならよかったわ、その日に出来ないで後日となるとペナルティが付く訳じゃないけど、ランクの審査には影響があるから...ま、それでも回数を規定よりこなせれば消えるんですけどね。
でも、搾精室でやっちゃったんだぁ、ふぅ、前代未聞だね、それ自体は良いのよ、全然気にしてないから、なるべく沢山の人としてあげてね。...でも、全く嫉妬しない訳じゃないかなぁ、うふっ♡」
なんかちょっと背中に冷たいものが流れた様な気がした。
「今日、献精が出来たのなら数日中には復権の通知が行くと思うわ。これで学校も行けるようになるわよ。」
「復権って?」
「復権ね、通常男性は中学卒業時に精検で無しってなると通常の戸籍から外されて甲種戸籍から乙種戸籍へと移されるの、想像の通りよ、一般には労働戸籍と呼ばれてるわ。
それと丙種戸籍と言うのも存在するわよ、主に犯罪者ねそれに訳アリの人も入ってたりするわね、初犯だと5年間罰金刑以上の犯罪を起こさないと自動的に復権するわ、2,3度やる人はもう、復権できない。
通常だと、自宅に通知が郵送されてきたら自分で手続きをしないといけないけど和人の場合は特殊だから通知が来る前に復権してるわ、後、銀行かどこかでIDを通せば書き換えが出来るはずよ。」
「うん、わかった、早いうち位残高の紹介でもして見る。」
非生殖者ってだけでここまで差別を受けるのか?、ほんと腐ってやがる、いずれ有希子にも俺の目的を知らせるべきだろうが今はまだ、早いな。...
「それとこれ持って来たけど、本当にいいの?」
有希子は差し出しにくそうにそっと特定交際者の申請書を出した。
「おっ、もちろん」
これに戸惑いはない、有希子はこれから色んな事で疲れる俺を癒してくれる存在になる、こちらこそ頭を下げる価値がある
「これって、名前と拇印でいいか?、印鑑は持ってなくて。」
「もちろん、構わないわよ。」
俺はさっさと署名捺印を済ませた。
有希子は申請書を見ながらボーっとしている。
「有希子、どうしたんだ?」
「うん、私がこれを出す日が来るとは思わなかったからなんか、灌漑深くて...」
「申請書眺めてたってどうしようもないだろ、さっさと出してカードと指輪を貰って来いよ。」
「うん、今日出せば明日には下りると思うから出しに行くね、そのまま仕事だから明日、スマフォの方に連絡を入れるわ。」
「あぁ、待って。仕事頑張ってな!!」
この世界では特定交際者がいる女性はシルバーのリングを小指に嵌めるかチェーンを通してネックレスにして身に着けるらしい、最初の指輪はNo1の刻印が入ったものを国が無料で提供してくれる、それ以降は自分で購入して渡す必要があるらしい。
婚約すると薬指に場所が変わる。
何の法的根拠はないがなぜかNo1はステータスらしい.....
有希子を見送って暫くすると女医の京香がやって来た。所謂、回診と言う奴らしい。
「ご主人様、献精では随分張っちゃけたそうね、話題になっていたわ、2回分も出したんだって、オークションにかけられて凄い値段で入札されてるそうよ。A3Ωだからいくらになるかしら。。。」
京香はご主人様呼びする、本心からそう言ってる訳ではなく冗談半分で言ってるだけだ、どうやらこのS気質は調教が必要かな?、それも女王様に育てるのも面白いかもしれない。そっちの気質は十分にありそうだ。
「あぁ、1回分はオークションに回すって話は聞いてるよ、2割は取られるらしいけど...」
セックスの謝礼が300万~って聞いたから...まあ、精子だけならいくらA3Ωだったとしても300万は超えないかちょっと超える具合かな?
「それでも結構残るよ、私の年収を遥かに超えるぐらいは...」
「ね、年収って、医者だからそれなりに貰ってるんじゃないの?」
「そうねぇ、年間で2000万位かしら。。。オークションは私が聞いた時で3000万超えてたわよ。」
「ひぇ~...まるで知らない世界だ....」
「あら、これでも安い方だと思うわよ、だってあなたの染色体の事はまだ、内緒でオークションにかけられてるんだから...これが公開されていれば他の国が0を二つぐらい付けてもおかしくないわ。
ふふっ、それを私は只で貰ったからラッキーだわ。
ねぇ、もし私が妊娠して無事に出産したら認知してくれるの?」
「庶子認知でよければするよ。」
「あら、意外だわ、しないのかと思ってた。私的にはしてくれなくても生活の面での心配はないけど、やっぱり子供の事を考えたらして欲しいわね。
もちろん、庶子認知で十分だわ、っていうか、認知、それも庶子認知って知ってるんだ。」
「うん、まあ、父親が俺って認める事でしょう。相続権はない代わりに親権もないって事じゃなかったかな?」
「おおむね、そうね、1人の男性が複数の女性と関係を持つようになって子供が沢山って事で遺産分割となると家の跡取りが立ち行かなくなるって事で認知のありかたが変わったのよ。」
「まあ、それは分かるよ、それより回診はしなくていいの?」
「はい、これ。」
京香は俺に首に掛けていた聴診器を渡すと中に着ていたブラウスのボタンをはずし始めた。
「はぁ?」
「なに、呆けてるのよ、心音を聞く事は診察の基本よ。ほら、何呆けてるの?」
「こら、こら、立場が逆じゃね?」
京香は何を思ったのか?、ブラウスをはだけて聴診器の先を自分の胸にあてがっている。
「たまにはいいのよ、私が見るばっかりじゃなくたまには見て欲しいわ。」
「はい、はい♪」
京香の指示に従って心音を聞いた。幼少の頃、お医者さんごっこは経験したが本物の聴診器で心音を聞くのは初めての経験だった。...
おおぉっ、とは思ったもののそれで興奮するほどコアなマニアではない。
寧ろ、真っ白でレースの多いブラに目が奪われた。剥ぎ取りたくなったけどさすがにやめると京香は『チッ』と舌打ちしていた。
回診が終わると、とは言っても俺が女医の心音を聞いただけだが...
明日は退院、ここで寝るのも今日で終わりかと思うと感慨もある。。。いや、なかった。
幾ら看護士がいるって言っても病室に引っ張り込む訳にもいかなかった。
この時点では病院、役場、保健所、及び宿泊施設を提供できる施設は交精室をある事を知らなかった。知っていれば恐らく、いや、間違いなく引っ張り込んだだろう。
ベッドでのんびりとしていると母さんがやって来た。
母さんは相変わらずのハイテンションで、退院してからの事なんかを色々と話し合った、だけど何か言いたそうな雰囲気をひしひしと感じる。
無論予想は簡単に付くけど、話すのは少し落ち着いてからの方が良いだろうと思って自分から切り出すのは止めておいた。
話も一息ついた頃。
取り敢えず明日は退院なので不要なものは先に持って帰るらしい。
「こんなものかしら?」
「あぁ、大丈夫でしょ、いざとなったら明日でも全然問題ないし、そもそも元から荷物はほとんどないから...暇つぶしの為に買った本ぐらいだし。」
「...ねぇ、ナギ君...」
「なに?」
「.....」
「なに、なに、どうしたの母さん?」
母さんはとても言いにくそうな顔をしていた。
「...じゃ、聞くけど、管理局の石倉さんを特定交際者にするってホントなの?」
まあ、知ってるよねぇ、同じ管理局だもん、話は直ぐに伝わってもおかしくはないし...
「うん、本当だよ、もう、申請書も書いたし今頃はすでに提出していると思う。」
「えっ、どうして?、どうしてなの?、石倉さんは直属ではないけど母さんの上司で母さんより年上だよ。どうしてそんなおばさんを選ぶの?、まさか、何か脅されてる?」
もしかして何かしられて脅されたりしてないわよね、それだったら絶対許さないから...
「母さん、よく聞いて欲しいんだけど、おれは有希子をおばさんとは思ってないし、それに俺の方から頼んだんだよ、最初は断られたけど、やっと説得したんだ。」
母さんとしては自分より年上なんてどうしても納得いかないのだろう、まあ、俺だってそのままの年齢なら選んではないだろうな多分、でも、俺は多少は体に引っ張られているとはいえ精神年齢は36だし...
「どうして?、二回りも違うじゃない。あんまりよ。」
「母さん、正確には二回りは違わないよ。」
「おんなじよ。ナギ君が年上を好きなのは理解するとしても上過ぎない」
「その辺は俺の好みなんでどうしようもないかな、俺にとっての一番のストライクゾーンは30代なんだ」
「.....若い子じゃダメなの?」
「若い子が嫌いって訳じゃないんだ、母さんなら分かってると思うけど、俺は今から沢山の女性と性的な関係を持つと思う。外でいろんな人の気を使って関係を持って事は精神的に疲れると思うんだ、だから母さんみたいな癒しが欲しいんだ。」
「それなら母さんがいるじゃない...」
「そうだね、でも、母さんは母さんでしょう。母さんが俺の母親でなければ母さんを選んでいたと思う。」
はぁ、今は何を言っても無駄ね、仕方ないわ認めざる終えないか、認めないって言ってもどうなる物でもないし、ナギ君は小さい子が好きなんじゃないかって思ってたら反対だったなんて...
「分かったわ、そもそも認めるも認めないもないでしょうしね、18歳まで後、4人は作らないといけないけど、まさか、全部30代で埋めるとは言わないわよね。」
「うん、30代は多分有希子だけのつもり、後は同年代で選ぶつもりだよ。」
「そう、それを聞いて少しは安心したわ」
母さんは帰っていった、明日、迎えに来ると言い残して。。。
明日はいよいよ入院生活がおわる..正直ここ迄怒涛の日々だったように思う、俺には落ち着いた所でまったりと過ごせる機会は来るのだろうか?
そして僕は退院した。
応援ありがとうございます!
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