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第二章 準備

里美の母親

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 ■ 里美の母親
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 暫く経ってからの事だった。
 「ところで里美、本来ならここに来るどころか、面会さえ出来ないはずのあなたがどうしてここに来れたの?」
 
 「大丈夫なの?、この後、酷い事されない?」
 お母さん、彼女は酷い事されます、ちょっとニュアンスは違ってきますけど、鳴かせます。
 
 「お母さん、私この人の、あっ、夏目和人さんって言うんだけど、この人の専属従者になったの、だから連れてきてもらったのよ。」
 鉱山送りの待機囚人が従者?、特殊専属従者かしらそれでもおかしいは彼はあのブタとはちがう?。
 
 「もしかして、あなた特殊専属従者になったの?」
 (まあ、犯罪者として鉱山に送られる事を考えると夢の様な待遇だけど...)
 
 「うん、そう。」
 「そうなんだ、でも、鉱山に行く事を考えるとずっといいわね。」
 
 「里美のお母様は、なんか随分、お詳しそうですね。」
 「遅れました私、里美の母親で今野朱里と申します、法務省の審議官を務めさせて頂いております、この度は娘の窮地を救って頂きまして有難うございました。深くお礼申し上げます。」
 
 「あら、お偉いさんじゃないですか?、それでなぜ、里美は鉱山送りになったのですか?、調書は読ませてもらってますので概要は知っていますが...」
 
 「実は里美の件に対しては故意ではなく無作為で起きた事故であり減刑ではなく刑の免除申請を被害者の側から出して頂く様に手はずが出来ておりました。
 被害者側は内容証明付きで発送した旨、控えを貰っていましたので安心していたのですが。。
 届いてはおらず、管理局でとまって司法部には届いていませんでした。」
 
 「この国では男性の絡む犯罪は管理局の司法部が全て決定権を持ちます、いったん決定が出たら、再審や上告など抗告は出来ない決まりです。
 損害賠償請求に係る処置としてと身代位弁済は当事者間でしか終結出来ないはずです。どうしてあなたが娘を従者にする事が出来たんですか?、」
 
 「実は今日、ある人物の面会に行きました。それで里美の話を聞いて会って見たくなって面会を申し込んだんです。話して見て気に入ったので鉱山送りはもったいないと思って従者にしました。
 
 方法は簡単です、里美が暴力を僕にふるったんです、彼女はまだ、罪を償っていない内に犯罪を重ねたのでご存知と思いますが、重犯に加算罪が加わって死刑の判決を受けました。
 
 そう、僕は被害者ですから、堂々と専属従者に出来た訳です。」
 
 「そ、そんな、無茶苦茶な?、そもそも、娘には親子でも面会できないのに他人が面会できるわけがないです。」
 不可能よ、面会禁止の処置がされているのにたとえ大臣でも面会は不可能のはず。。。
 
 「あぁ、それはですね、厚労省や人口対策庁にコネのあるA3Ωのランクだからですよ。」
 「あぁ、そうなの、あなたが噂のA3Ωのランクなのね、随分頭の切れる変わり者の高校生って話は聞いていたわ。」
 
 「もう一ついいかしら。。。
 娘があなたに暴行を振るえるはずがないのに、まあ、それはでっち上げっとして、今日起きた犯罪を、今日判決が下って、さらに身代位弁済も今日決定して、今日、釈放っていくら何でもありえないんだけど。。。」
 
 「だとしたら里美は幽霊か、あなたが幻覚を見ている事になりますね。」
 「幻覚と言われた方がまだ、信用できそうだわ。こたえは秘密かしら...それでも娘が助かったのなら文句はないわ。」
 
 「これも簡単な事です。総理の決定が有りましたから即日決済が出来ました。
 里美が早くあなたに会いたいって言いましたから通常2週間から1か月かかるところをこねくり回して即日です、まあ、おかげで総理のお願いも聞く事になりましたけどね、」
 
 「ごめんなさい、あなたには相当、無理させたわね、私でよければ何でもするわ、だから娘にはあまり酷いことしないで下さい。」
 
 「里美のお母さん、そこは”あまり”ではなく"酷い事をしないで"の間違いじゃないですか?」
 
 「いいの、多少は...この子は少し痛い目に遭った方が良いのよ。」
 (大丈夫、この男は女性をいたぶったりはしないわ?、多少のいじわるぐらい、噂だともっと甘いかもしれない、娘をこの男に託せるのは幸運だったかもしれない。)
 
 「お母さんから拷問のお許しがでましたよ、里美さん、どうしますか?」
 里美の母親は里美の困った顔をして笑っている、まあ、俺が無茶なことしないって事は当然、澪しているんだと思うけど...
 
 「おかあさん、馬鹿なこと言わないでよ、それでなくても不安なんだから...」
 「はい、はい」
 
 「もともと、あなたは木次絵美さんを引き取りに行ったんじゃないの?」
 「正解です、良く割りましたね。」
 
 「そりゃ、一応この国も法曹界に身を置いている人間ですからその辺の情報位は入ってきます、それが何でうちの娘になったんでしょう。そんなりと飛び付くような娘ではなかったはず。」
 
 「確かに絵美さんの娘を引き受けに行ったんですが、会って見て、正直な話、駄目だと思いました、無論、拷問並みの調教でもすれば可能かもしれませんが、そんな犬みたいなのは俺には必要ありませんから...それに調教ごっこは楽しいかもしれませんが、マジな調教なんてごめんです。」
 
 「里美ですね、はい、拗ねてましてね、現実の鉱山を知りもしないくせに一丁前に覚悟を決めたなんて、思わず笑いそうになりました。
 で、アプローチを変えたんです。あなたの情報を話しました、一瞬で飛び付いてきました。
 元々会う前から、里美の性格は読んでましたからね、事前に家庭環境なども調査してから面会に望んだ訳です。」
 
 「えぇーーっ、私、あなたの手のひらの上でただ、転がされてただけ?」
 話を聞いて落ち込む里美...
 
 「里美、そう落ち込むのは止めなさい、それよりも選んでもらった事を感謝しなさい。そもそも、その日のうちにあなたの事を短時間で調べるなんて芸当が出来る人間なんてそういないわ。私はこれでも法務省の審議官よ住所は非公開だし、ここの病院も隠匿されてるのよ。一般では調べる事が不可能なの...」
 
 「ところで自宅は売却したんですよね、仕事は復帰するとして住む所は?」
 確か自宅を売却した後、自殺したんだよな。だったら住む所はないんじゃないか?
 
 「退院したら探します。」
 (なに?、何なの?、娘だけじゃなくその親まで面倒見るつもり?、ばかが付くぐらいのお人よし?って訳じゃないわね。この子は色んな事、きちんと考えている。)
 
 「じゃ、俺のマンションに住みますか?、とは言っても元管理局の事務次官所有だったマンションですけど、財産没収で俺が貰いましたから。。。」
 
 「娘だけでなく私まで甘える訳には……」
 「じゃ、甘えるんじゃなく監禁されてるとでも思っておけば。。。出て行ったら娘は拷問にあうとか?」
 
 「ふっ、ほんとに変わった子ね、噂通りだわ、じゃ、新しい住居が決まるまでお世話になろうかしら」
 「あぁ、気楽に使ってくれ……」
 
 「里美、お前は今日はどうする?」
 「えっ、どうするて言われても?」
 
 「はぁ、今日は泊まってママのおっぱいでもしゃぶるかって事だよ。」
 「いいの?、私奴隷だよ」
 「専属従者でしょ、奴隷なんて人聞きの悪い事言っちゃダメ!!、別に泊まって構わないさ、俺の命令があれば外泊も可能だし...、但し、今度はおれがオッパイしゃぶる番だけどな。」
 
 「あのう、ここは完全看護で付き添いは不可のはずです。」
 「それは俺が話をして帰るからOK、無問題!、それにおまえを受け入れる部屋の準備も必要だしな。ちょうどいいさ!」
 
 「ほんとにいいの?、私逃げちゃうかもしれないわよ。」
 「逃げたいと思うなら逃げればいいさ、逃げたほうが幸せになれるって判断したらそれはそれで正解だと思う。好きにすればいいよ。
 取り敢えず、明日迄のめし代と必要経費を置いていくから。。」
 
 「じゃ、一旦俺は帰るわ、今日は早めに帰らないと護衛が来る日なんでね。」
 「うん、ありがとう」
 
 俺はナースセンターによって付き添いの件を承諾してもらってから帰った。
 
 ▼ 閑話 母親と里美
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 「里美、まさか逃げるつもりはないでしょうね。」
 「まさか、ないわよ。
 私、お母さんの事を聞いていてもたってもいられなくて私は何をされても良いから、奴隷でもなんでもなるから、お母さんに一目だけでも良いから会わせてって頼んだの...

 当然、どんなに早くても1週間程度は覚悟していた。その間にお母さんは悪くならないかを心配していたよ。まさかその日のうちに会いに来れるなんて思っても見なかった。」
 
 「そうね、その点はお母さんでもびっくり、彼は確か有生殖者になってからまだ、一月もたってないでしょ、それなのに、もうすでにかなりの権力を手中に抑えてる。普通のその辺の高校生には出来る事ではないわ。彼にはたとえ酷い事されても一生付いていきなさい。」
 
 「お母さん、さっきから酷い事って何度も聞くけど、私が酷い事をされた方が良いの?」
 「ふふっ、心配...安心なさい、本当の意味での酷い事は彼はしないわよ。彼のするのは愛情のある酷い事だと思うわ、されたとしても……」
 
 「もう、何か不安だなぁ~でも、鉱山行きを考えると幸せよね。」
 「えぇ、鉱山に行けば女性は、女性のある部分を徹底的に破壊されるって聞くわ。。。それで死ねない……。辛いわよ。」
 
 「おかあさん、彼、さっき実際に経験した事もないくせにって、自分はあるみたいに言ってたけど、彼はA3Ωだったら労働なんてした事がないんじゃない、その癖にいかにも経験ありますって態度はちょっと酷い」
 
 「彼は経験してるわ、元無生殖者として判断されて犯罪者以外が行く鉱山では一番死亡率が高い鉱山に送られたの。そこで3カ月働いたわ、それも一番死亡率が高い掘進という一番深い所で働く辛い仕事よ、3カ月のうちに事故は2回、2回目には彼以外の班員は税員死亡したわ、彼自身も一時は心肺停止の状態だったけど奇跡的に復帰したの……文字通り彼は死線を潜り抜けてきたの、彼が鉱山に送られたのは極秘だけど管理局の局員の陰謀だと言われてるわ。
 恐らく引き取り行くつもりだった娘の親が犯人のはずよ。
 
 まあ、娘を引き取らなかったからあなたが従者に成れたのだから彼女には感謝する事ね」
 
 「そうだったんだぁ……彼も苦労したんだ...」
 「でも、何で無生殖者がA3Ωに?」
 
 「それはね、事故の後の再検査で分かったって事になってるけど、母さんが思うには最初から罠が張られていたと思うの...つまり犯人にとって事故で生き残るのは想定外だったんじゃない。」
 
 「なるほどねぇ、彼も運によって助かったんだ。」
 「里美、運を引き寄せるのも本人のちからよ、彼に気に入られるようにしなさい。」
 「うん、頑張る」
 
 ▼ 残高
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 里美に金を渡してきたから財布がすっかり寂しくなった。電子マネーはあるとはいえ、IDの照会をするついでに多少現金を降ろそう。照会して驚いた

 \1,886,502,025円

 何じゃこりゃ……ミスか?ミスなのか?、とりあえず有希子に聞いて見よう。
 間違いなかった、どうやら事務次官の財産のうち、不正や汚職の証拠のある分については国に回収されて残ったのが俺への慰謝料として振り込まれてるそうだ……

 不動産に関しては現時点では売却せず、名義だけ変更されて3年間の非課税措置が取られている事も分かった。

 ま、その間に処分するなり、税金払って使うなりしろって事なんだろうな。
 はぁ、疲れた、うちに帰ろう。
 
 
 ▼ 留置所
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 留置所で木次絵美は不審に思っていた。
 里美がいつまでたっても帰ってこないのだ、看守に聞いてももう、彼女は戻りませんとしか言わない、もしかしたら一足先に鉱山に送られたかな...フフフッ、下賤な娘だったからさっさと鉱山に送られたのね。

 あぁ、早く母さんが迎えに来てくれないかなぁ...
 彼女が里美の事を知るのは彼女自身が鉱山に移送される直前に聞く事になる。
 彼女はその時、泣きわめき散らかしたらしい。
 
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