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第一章 始まり

事故の隠滅

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 ■ 事故の隠滅
───────────────────────────────
 
 母親が帰って暫くすると来客が来た。
 もっと自分の情報をチェックしたかったけど、どうやら拒否できなさそうというより面倒臭い事になりそうなので受け入れることにした。
 ま、医師が事前に確認を取るだけましだと思うしかないだろう。
 
 「こんにちは、私は人口管理局、本部長の石倉有希子と申します。今回は夏目様に少しばかりお話をお聞きしたいと思いまして来ました。
 
 よろしいでしょうか?、質問が有ればもちろんお答え出来る限り誠意をもって回答します。」
 
 良くも悪くも拒否は出来ないんだろうと思い。
 苦笑いしながら答える
 
 「えぇ、まあ、そう長くない時間なら...」
 
 そう答えながら鑑定してみた。
 
 レベル:7
 氏名:石倉有希子
 年齢:36歳
 職業:人口管理局調査部、部長
     今回、夏目和人の事件で甲種旭日権限を特別調査官を拝命中
 性格:温厚、正義感が強い、不正は許さない、生真面目過ぎて昇進が遅れ気味
 趣味:料理、旅行(多忙で行けていない)
 身長:159cm
 体重:50kg
 状態:良好ー 多少の睡眠不足
 B  :92.5cm (F)
 w  :64cm
 H  :85.2cm
 受精案内:XYXー89 
 経験数:0人
 性欲指数:78Fr
 性癖:かなりMよりのN
 
 ☆さらに詳細情報を見る場合はタップしてください。
 
 ふーん、流石に偽名を使ったりはしないか...
 36歳で0人とは拗らせてるのかな?...あぁ、この世界では珍しくないのか知れないな、いや、Fカップとはお宝ですな。
 下から持ち上げてゆさゆさしたいです。
 
 ん、受精案内?、XYXって何よ、確か性別を決める染色体情報だったはず、XYで男、XXで女じゃXYXってなに?
 とにかく後で考えよう。
 
 「先に担当医に話を聞いて来たのですが、本当に治ってるんですね、正直な所この医師は何言ってるんだろう?、頭おかしいのではと思ってました。
 ほんと、見るまで信じられませんでしたわ。
 不思議な事ですが、私は医者でも研究者でもないので不思議でも何でも良くなってよかったです。」
 
 この人、本当にうれしそうだ、涙を溜めながら喜んでくれている、嘘でもないのは真贋が稼働してるので間違いはない。
 うーん、いい人っぽいな
 
 「はは、起きてたらこの状態だったので聞かれてもなんとも答えようはないですね、それより一緒だった京介班の皆は無事なんでしょうか?」
 
 「.....」
 
 「もしもし、みんなの様子を知りたいのですが.....」
 何か嫌な予感がした...死亡者がでてるのか?
 
 「申し訳ございません」
 彼女はいきなり床に頭をこすりつけて土下座をした。
 
 「ちょ、ちょっと...とりあえずやめて下さい。それでは話も出来ませんし、第一あなたには何の関係もないでしょう。」
 何なんだこの人、いきなり土下座かよ。
 
 「とりあえず、顔を上げて下さい。」
 
 「.....」
 
 仕方ないので抱き起すように肩を持って引き上げてソファーに座らせるが、横におりて床に正座した...
 
 「.....な、夏目様以外、京介班の全員、5名の死亡が確認されました。」
 「すいません、すいません、ごめんなさい、ごめんなさい、ほんとうにごめんなさい」
 
 「そ、そんなぁ...あぁ...京介さん...」
 一瞬、ぐらっと意識を失いそうな感覚を受けたがすぐに復帰した。
 復帰してみるとあぁ、そうかぁ残念だったなと言うぐらいの感覚になってしまった、俺って薄情な奴だったのかぁ...
 
 記憶を共有しているとはいえ、実際には触れ合った事は無いので俺にとっては悪いけど他人後に感じてしまう。
 
 「ふぅ、仕方ありませんね。あなたを責めてもなにも変わりませんし、次の質問です、配属されてから未成年は鉱山に入れない聞きましたがどうして鉱山に配属されたのでしょうか?」
 
 これはずっと気になっている事だった...本来配属されない場所への配属、何か意味があるのか?
 
 「はい、そちらは調査済みです。まず、最初に夏目様の配属先を決めたのは管理局の課長です。この時点ではサンモール伊吹の場内整備部駐車課になっておりました、私自身もそれで承認して上にあげております。
 
 管理機局の事務次官が独自の判断で鉱山に書き換えて局長の承認を得て配属通知書が発行されました。
 局長はめくら判で意図をもって書き換えたのは木次事務次官です。」
 
 「あのう、俺はその事務次官さんとやらは面識もなければ知りもしないんですけど、どうしてそうなったのですか?」
 
 「...はい、夏目様の母上様が憎かったそうです。
 彼女自身、娘が一人いるのですが、どうしても男の子が欲しかったらしく何度か人工授精を試みるも失敗してもう、年齢的に人工授精も受けられなくなって子供を得る望みを失っているのに、母上様には夏目様という男の子がいらっしゃってとても仲がいい家族が憎かったらしいです。」
 
 ※この国では人工授精を受けられるのは未産婦の場合は26歳まで経産婦の場合は30迄に限定されている。
 貴重な精液をなるべく無駄にしないようにする為の処置だった。
 
 「はぁ、そんな事ですか?、でもどうしてうちの母親なんでしょうか?」
 
 「いえ、お母様限定と言う訳ではなかったようです、現在も調査中ですが、過去にも同じことをやっている事が判明しています。
 お母様の場合、良く職場でお子様の話をされていたみたいで犯行に及んだと推測されます。」
 
 「で、やった人は注意位で済んじゃうんでしょうね」
 本来なら何もなしって所だろう、今回は俺の事があったから何らかの刑罰は形なりとするんじゃないかと思うが...さて、どう出る。
 
 「はい、きちんと処罰されます。」
 
 「どんな処罰ですか?、減給1/8 2カ月とかですか?」
 これくらいだったらごねまくってやる
 
 「まだ、処分の発表はされていないので発表までは内緒なんですが、事務次官よ
 り上の政務官、副大臣、大臣は減給1/2 6カ月、総理大臣は1/2 10カ月、上司に当たる局長は懲戒免職に決定しました。
 
 実行犯である事務次官は陛下裁定なりまして国賊と判断されましたので国家反逆罪となり私財没収の上、死刑が確定、家族に置いては犯罪労働者として早島レアメタル鉱山にて無期労働が科せられるよていです、現在、余罪を調査中ですので調査が完了次第、刑が執行されます。
 
 調査完了までは、在任期間全ての調査を行いますので半年から約1年近くかかる見通しです。それまで事務次官及び家族は刑の執行まで拘置所にて拘留されます。」
 
 うわぁーーーっ、まさかの死刑だよ...刑罰重すぎじゃね?...とても日本とは思えないわ...あっ、ここは大日本神国だったよ。
 こういうことがあると別の世界なんだと思う。
 でも、そのせいで何人かは死んでるだろうか死刑もやむなしと考えても家族はあんまりじゃないか?
 確か娘がいるって言ってたよね。多分まだ若いだろうに、一生鉱山とか...
 
 「確か先ほど、娘さんがいるって言いませんでしたか?、もしかして鉱山へ?」
 
 「はい、調査データはそうありますね、女性の鉱山労働は死ぬよりつらいといわれています、昼は昼で重労働が課せられて夜は夜で男性たちに虐められて...
 まあ、犯されて子供でも出来れば逃げ出されるので幸せなのですが、それは叶いませんから...」
 
 「うわーーっ、悲惨だ.....」
 
 「夏目様は情け深いのですね、でも、国賊の家族はともに責任を取るのがこの国の定めなのです。情けは掛ける必要はございませんよ。」
 
 なんか、間違っている気がする。俺の感覚から言えば狂ってるとしか言いようがない、私財没収だけでなく鉱山とか...
 
 「ほかにご質問がなければご相談があるのですが?」
 「はい、何でしょう?」
 
 「今回、国の過失によりA3Ωの男性を鉱山に送ったうえに事故に遭わせてしまった訳ですが、これが国内外に分かりますと国が立ち行かなくなり、夏目様は世界有生殖者管理機構に取られてしまいます。
 国としてはそれだけは絶対にさせたくないために今回の鉱山への配属をなかった事にして欲しいのです。」
 
 まあ、そんなところだとは思ったけど、世界有生殖者管理機構って精子を融通し合う機関だったよな、つまり、お前の所じゃ有能な子種を安心して置いておけないからよこせって事なんだろうな。
 わぁーーっ、いよいよ種馬一直線になりそうでごめんだわ...
 
 「亡くなった京介班への保証はどうなりますか?」
 
 「今月末には弔慰金が支払われる手続きが済んでいます。」
 
 「金額的には幾らぐらいですか?」
 「えぇっと、確か600万~1000万の間で変わってくると思います。」
 
 「安いんですね。。安すぎませんか?」
 えらく安いもんだ...生きてても哀れで死んでもスズメの涙とは泣けてくるよ。
 少しぐらい嫌味を言ってもいいよね。
 
 「それには少し理由があります、夏目様の場合は別ですが、亡くなられた5名の方には受け取る遺族がいらっしゃいません。
 彼らに限らず無生殖男性は労働に入る時点で家族の縁を切ってくる方がほとんどなのです、なので生きて通常通り退職すれば恩給で死ぬまで生活できますし、今回の様に事故で無くなった場合は、受け取る遺族がいないのでお墓と永代供養の代金としてお寺に納らえる事になっています。
 
 京介班の皆様に関しても既に葬儀は終わってお墓に入っておられますので弔慰金は生前に希望されていたお寺へ支払われることになります。
 
 まれに受け取る遺族がおられる場合は、遺体と弔慰金は引き渡されます、遺族の所得によっては恩給の家族支給額が受取人が死ぬまで支給されます。」
 
 「そうなんですか...知りませんでした...」
 そう言う事ねぇ、社会のシステムが日本とは根本的に違うから一概に安いととも言えないのか...
 金を倍にしろって言おうかと思ったけど...そんな話なら坊主丸儲けの手伝いをするだけなので馬鹿らしい...
 
 「分かりました、俺個人としては了承する方向で検討したいと思いますが、何分未成年で保護者は母ですからその辺は母の決定に従わないと...」
 
 「はい、それは十分に存じております、それでもご本人の意向を無視してまで進めてよいものではないと判断しましたので直接伺わせて頂きました。」
 
 ふーん、この人こういった交渉には向かないのかもなぁ。。正義感はこういう場合には邪魔だろう。
 結局の話が保護者次第なんだから...母親がOKって言えば俺が何て言おうとも未成年であるかぎり決定は覆らない。
 
 和人との約束を守るにも未成年は足かせでしかないな...
 
 「後程、国母様とお話させて頂きますが、お母様が納得いただければ夏目様にお見舞いという名目で口止め料を非課税でお支払いする用意があります。」
 
 「はぁ、そうですかぁ。。。」
 って、そう言う事は交渉する時に話をするもんでしょう。まあ、金を後出しにするところなんかはいい人なんだろうけど...これ以上出世は出来ないんじゃないかな。。ってなんで俺がこの人の出世を気にしなくちゃいけないんだよ。
 
 「あ、それと局長の懲戒免職はちょっと厳しすぎませんか?、最終的な責任はあるでしょうけど、労働者個人の派遣先を局長がいちいちチェックなんて出来ないでしょう。」
 
 「最終的な責任を取る為に局長がいるんですが...夏目様のご意向は上層部に伝えておきますが、結果はお約束できません。」
 
 「わかりました、それでいいです。」
 
 ふと何気なく窓に目をやると夕焼けが映えていた。
 京介班の皆の事が和人の記憶より蘇えりやるせない気持ちになる。
 こんな時は寝ようと思うがなかなか寝付けない。
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