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第一章 始まり

覚醒2

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 ■ 覚醒2
 
 ▼ 完治
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 暫くすると先ほど走っていった看護師と医者が戻ってきた。
 医者は女医さんで30代前半と言ったところ、白衣の上から分かる情報ではあまり大きい方ではない。なにが?、そこは察して欲しい。
 
 看護師はうん、俺的には十分に実ってると言いたい。里美が小ぶりだったので大きいのにあこがれはあるがそこに貴賤はない、小さくとも大きくともそこには偉大なロマンが広がっているのは間違いのない事実だからである。
 
 「夏目さん、起き上がったりしちゃダメでしょ。痛い所は有りませんか?」
 怒ってるって感じはしない...むしろ心配しているって感じで何だかもういいやってなってしまう。
 
 「いえ、大丈夫ですよ。痛い所は有りませんし、特に怪我してる様子はないみたいですから...」
 
 「そ、そんなはずは...えっ、足動きますか?...ありえない...
 ちょっと腕を見せて下さい。...」
 そう言ってぐるぐる巻きにされている左手の包帯を外しにかかる。それはもう、何かに取り憑かれたように一心不乱に...
 
 「えぇぇーーーっ、そ、そんなばかな.....傷跡さえないわ.....どうい事かしら
 ちょっと頭の方も見させて...
 な、ない....確かに7針縫ったのに縫合の跡さえないわ、どうして、ねぇどうしてなの遥香さん、どうしてなのよ」
 
 「ド、ドクターに聞かれて私に判るはずがないでしょ。知りませんよ。」
 「そ、そうよね、ちょとパニックになってましたわ、夏目さんこれはどういう事でしょうか?」
 
 「どういう事って言われても目を覚ましたらこうなってたとしか言いようがないです。事故の記憶はありますけど、そこからさっき目が覚めるまでの記憶は一切ないです。」
 
 「大けがを負ってたからそれは分かるんだけど、頭には7針縫う裂傷、左上腕部の骨折、脊椎骨折で自分で起き上がる事は不可能なはずなのになんでどこも悪くないみたいにしているの?」
 
 俺の怪我が治っているのが信じられないらしくて医者はどうやらパニくってるみたいだ。
 色々と質問に答えて、あっちこっち動かしてみて何とか現状を理解したみたいだ。
 
 「先生、とりあえずカテーテルは外してください、駄目なら自分で抜きますよ。」
 「うふっ、あら、詳しいじゃない...でも、素人じゃ簡単には抜けない様に出来てるのよ、おいたするならまだ、入れておこうかしら...」
 
 どうやらパニックからは回復したみたいでドクターはS気味の性癖なんだろうな、治療の時点で目が覚めてなくてよかったよ。
 
 「留置用のバールーンの水を抜けばすぐに外れるでしょ。、マジで抜いちゃいますよ。」
 
 「はぁ、ほんと詳しいのね、医大生でもないのに有生殖者ともなると違うのかしら
 ま、いいわ、遥ちゃん抜いてあげて...それと内臓にダメージが残ってないか検査するからそれが済むまでは取り敢えず食事はお預けね。
 予約を急いでみるわ、有生殖者だから割り込めると思うけど...
 じゃ、遥ちゃん後は頼んだわ。」
 
 「はい、ドクター」
 
 カテーテルを外すとき彼女は顔を真っ赤にして前傾姿勢でそっと握りながら外していた...俯いた時に見えた谷間にヨセミテバレーを見たのだった。
 ん?、看護師だろう、男のを見たぐらいで赤くなるか?、見慣れてるだろうに...
 
 その辺の疑問を聞いて見る事にした。
 
 内容を聞いたら反吐が出るほどムカつく事になるとはこの時は知らなかった。
 
 まず、俺がこの豪勢な部屋にいる理由は俺に生殖機能があるらしいと言う事が分かったかららしい、ちなみにランクはA+++ このランクは世界に俺一1人なので超貴重な存在らしい。何でもMOTとか言う精子稼働率が突き抜けて高いとか...
 
 心肺停止で運ばれた時に処置で蘇生した時にどうやら勃起していたらしいので念のために検査したら生殖機能ありと出たのでこの病院に転院させられたと言う事だった。
 あれ、わざわざ転院するのかと思ったがこの時点では聞き流していた。
 
 彼女が赤くなった理由は男性の導尿の処置をするのが初めてだったかららしい、不思議に思うとこの病院は女性と生殖機能ありの男性しか見ていないって事だった。
 生殖機能のない男性はもっと設備のない病院で治療を受けるしこんな豪勢な部屋なんてないそうだ。。。
 通常は8人部屋に10人、12人は当たり前に詰め込まれているらしい...
 
 和人の言う通りだった、この世界は腐っている。とはいえ今の俺一人がどうこうあがいても何も変わらないだろう、俺自身が力を持つことも大事だが力を持つ奴を味方に付けるのが大事だな、それには俺のランクは恐らく役に立つだろう。
 
 一つ疑問が出て来た、俺は鉱山労働者のはずだ...その辺の所属はどうなっているのだろう?、退院して鉱山に戻る事はないとは思うが確認をして起きたい。
 
 「元気してる?
 検査割り込めたからすぐにやるよ、」
 
 「はい...何の検査ですか?」
 どんな検査をするのだろう、正直な所、病院は俺の嫌いな所ベスト10に入っている。
 「色々よ、内臓や骨折箇所も見たいし、20~30分で終わるとおもうわ。」
 「はぁ~」
 
 『は~い。移動しますよ~!』
 抱えられようとしたので自分で降りてストレッチャーに移ったら非常に驚かれた。
 
 検査するところは何だがMRIみたいだなとおもい思わず口に出してしまった。
 「MRI」
 
 「へぇ~古い機種を知っているのね、うん、MRIの進化系でSMRIVっていうの、ま、より高性能になったって覚えておけば十分なんじゃない。」
 
 俺は寝転がってるだけでぐるぐると動いているのはあまり気持ちのいいものではないな...
 
 「先生ー所で今日は何日ですか?」
 日付を聞いたら何か変に思われるかな?
 
 「あぁ~夏目君は昏睡が続いてたからねぇ...7月8日、2052年の7月8日だよ、どうびっくりしたでしょう。5日間も昏睡状態だったから、どう?、驚いたでしょう」
 
 「はい、驚きました。」
 まじか?、マジだよな...俺の最後の記憶では2020年の7月1日だったはず...月日は良いとして30年程未来に来たんだよなぁ~
 じゃ、未来はこうなると?
 たった30年でこうも様変わりするのは絶対変だ...
 
 ここは地球の日本だろうけど、恐らく俺の知っている日本ではなく別の世界の日本と考えなければ辻褄は合わないな、退院したらその辺の歴史も調べてみないと...
 
 この時は国名が日本ではなく大日本神国とは知らなかった。
 大日本神国は立憲君主制と言う意味では日本と同じだが日本の神皇は象徴だが神国では現人神であり、大きな権限を持つ事が違っていた。
 
 
 検査はよく精査してみないと診断は出せないけど、今見た所だと何の問題もないよ、これが健康そのものなんだ、不思議な事に.....
 
 検査室で少し歩かされた後、歩いて病室に帰る許可を貰えた。
 検査が終わって部屋に戻ってみると母親が来ていた。
 
 「な、ナギ君...うわーーーん」
 母は俺を見るなり盛大に泣き出した......
 
 俺はどうしたものかとオロオロとした...母なのだ...彼の記憶を受け継いでいるので母と認識はしているが生前の記憶もあるため微妙に違和感もあったりする。
 
 「精良国母様、お気をしっかり夏目様は大丈夫ですよ。落ち着かれて下さい。」
 看護師は母を抱き上げるように補佐しながらソファーに座らせた。
 
 「母さん、大丈夫?、僕は大丈夫だから心配は要らないよ。」
 とにかく何か声を掛けなくてはと掛けたがちょっと他人行儀だったろうか、この辺のニュアンスまでは残念ながら受け継いでいないので手探りでやっていくしかない。
 
 「ナギ君、大丈夫なの?、どこも痛くないの?、重症って聞いてたけど、今、歩いて戻って来たよね。本当に大丈夫なの?」
 母はすり寄って僕の所まで来るとあっちこっちをさすりながら『痛くない、痛くない』と何度も聞いてきた。
 
 「あぁ、起きたら治ってたんだ、全然大丈夫だよ。ほら!」
 そう言って腕をぐるぐるまわしたりすると母は目を輝かせてみている。
 あぁ、いい母親なんだぁと思い、和人に嫉妬した...今からは俺の母親になるんだけどね。この秘密は死ぬまで明かすつもりはない。
 
 「精良国母様、本当に重症だったんですよ、病院に運び込まれた時点で心肺停止でしたし、骨折は複数、脊髄にも損傷があってこうやって起きて居られるのは不思議以外の何物でもないんです。」
 
 「ナギ君が大丈夫なら、健康ならそんな事どうだっていいの...」
 「ねぇ、看護師さんナギ君はいつ退院できるの?、今日?、明日?」
 母にとっては俺がどうやって治ったかなんて気にもしていないようだ、無事、それだけで満足なんだろう...
 
 「えっ、私では何とも言えませんが、検査等があると思いますので1週間程度はかかると思いますよ。」
 「そう、じゃ、私、退院までナギ君に付き添う、もう、駄目なんて言わせない。意識もあって大丈夫なんだから付き添って問題ないはずよ。」
 母は絶対の意思を表示しているようだ...なんか相当息子を溺愛しているような気がする。よく和人がまともに育ったと感心する。
 俺なら絶対、おかしくなってると言い切れるな...
 
 
 「すいません、ここは完全看護なので付き添いは幼児以外はお断りしているんです。」
 「あら、あなた随分な態度じゃない?、私は国母よ、人口管理局の人間よ、それでも聞けないって言うの?、ねぇ、院長を呼んできなさい!」
 
 うわぁーーっ、凄いモンペだ...我が母と思うもドン引きした...横車なんてガンガン押しまくる人だったんだな、看護師さん泣きそうじゃないか?
 担当の看護師の遥ちゃんも顔色真っ青だし...ここいらで助け舟をだすか...
 
 「かあさん、大丈夫だよ。ほら、俺はこの通り元気だし、心配なら毎日電話するよ。
 母さん、仕事があるだろう。それに怜奈はまだ、自分じゃ何でもは出来ないでしょ。怜奈が可哀想だよ。
 母さんが付き添ってくれるのは嬉しいけど、怜奈や母さんの仕事先に迷惑を掛けたくないよ。」
 
 「うーん、そう言われると返す言葉がないなぁ~...でも~」
 
 「母さん、俺は3ヶ月だけど仕事をしてきて自分の所為で仲間に迷惑を掛けるのは、本当に本当にどうしようもない時にしかやっちゃいけない事だとおもう。
 
 安易にやっちゃうと俺らの場合は死につながったから...
 だからこそ、本当に困った時は頼れるのは仲間だけなんだと思うよ。」
 
 「ナギ君、ごめんなさい。母さんが悪かったわ、わがまま言っちゃったわね。本当にごめんなさい...看護師さんも暴言を吐いてすいませんでした。」
 あぁ~ナギ君に説教されちゃった。
 
 男の子ってちょっとの間にこんなに成長するんだ...過酷な労働だったみたいだから相当仲間意識が強かったんだろうなぁ、そうじゃないとやっていけないようなところだったのよね。
 
 「なんて子なのかしら...事故に遭って復帰してAランクになった男の子、普通なら女性への妬み、怨みを持って当たり前、わがまま放題通すかと思えばきちんと母親を説得するなんてこんな子って本当にいるの?、本当に16歳かしら...30歳ですと言われて納得しそうだわ。
 なんかキューンてきちゃった。」
 
 「ナギ君、お母さん何か欲しいものがあるなら今度来るとき買ってくるよ。」
 「あぁ、俺、IDカードも何も持ってないんだ..少しの現金とスマフォがあると助かるな。」
 
 「そ、そうね、お金は今日置いておくわ、スマフォは適当なを買っておくから退院してから好きなのに変えると良いわ。」
 
 「いや、いや、母さん、そんな無駄なお金使う必要ないから普通に母さんの好みで買って来てよ。それで十分満足だから、俺はそのほうが嬉しいな。」
 
 「ほ、ほんとにそうなの、わかった、明日しっかり選んでくるね。」
 
 お母様や、なに、息子相手に赤くなってるんですか?、乙女ですか?、違うでしょ母でしょ。ほんとにもう、母さんは何やってんだか。。。
 
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