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第一章 始まり
労働災害
しおりを挟む■ 労働災害
▼ 事故の後処理
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地上に上がった後、保安局員の女性から簡単な事情聴取をうけた。
早くシャワーを浴びて寝たい所なんだろうけど、興奮しているのか眠気は無かった。
事情聴取自体は人二人が死んだとは思えないぐらいあっさりとしていた。
僕たちの話を聞き返すわけでもなく、疑う訳でもなく、あっさりと聞いてメモも取らずに終わった。
シャワーを浴びてベッドへ入ったけどなかなか寝付けなかった。
下の幸一さんの寝息を聞きながらボーっとしていたらいつの間にか寝ていた。
目が覚めると午後3時を過ぎていた。
リーダーと幸一さんも起きていたみたいで3人で食堂へと向かう。
「すまない...」
食堂でリーダーが頭を下げた。
「......」
僕と幸一さんは訳が分からず見つめ合っていた。
「明日は休みになる様に上に頼んでみたが駄目だった、明日の朝は通常通りだ。。本当に済まない。」
「リーダー、頭下げる必要はありませんよ、リーダーが悪い訳ではないですし、仕方ないって思うしかないじゃないですか?、ごねてもきっと何も変わりませんよ。」
僕ははじめからそんな感じがしていた。
受けから見たら労働者が二人減っただけ、補充すれば問題なしってしか思っていないんだろうから。。
幸一さんは不服そうな顔をしているがリーダーに文句を言っても仕方ないと分かっているから何も言わないでいる。
「本当に済まない、事故があったうえに超過勤務迄したんだ、規定では休みが取れるはずなんだが・・・すまない、俺の不徳の致すところだ。。。。」
リーダーは本当に申し訳なさそうに何度も頭を下げている。
リーダーって大変だなぁって思う。リーダーの上乗せってたったの1000円らしい。。。
ほんと、やってられないよね。
それ考えたら責めるなんて出来ないよ。
「リーダー、もういいですってば、ご飯冷めちゃいますから食べましょうよ。」
食事を始める事にした。。。
食事を始めてるとリーダーは僕に向かってぽつりぽつりと話し出した。
「和人はまだ、16になったばかりだろう、なんか達観してるよな。。。」
「ちがいますよ、ただ諦めてるんです。」
「.....」
その言葉にリーダーはショックを受けたのか黙りこくった。。。。
食堂には僕たち3人だけ、静かな食堂内にはただ食事の音だけが響いている。
閑話 和人の母、沙羅 Side
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時系列は一つ月ほど前に遡る
「ナギ君、もう、配属されているはずよね~、配属されたらこっちに通知が来るように頼んでおいたんだけどどうして来てないよ。」
※和人の母は人口管理局で調査課の室長を務めている為その辺のコネは有った。
「もう、綾ったら忘れたのかしら...」
そんな事を思いながら自分で端末を操作して配属先を調べてみた。
『肥後中東部コバルト鉱山、掘進課 京介班』
「えぇーーーーっ!」
沙羅はディスクへと崩れ落ちた。。。
そんなぁ....
あたしのナギ君が死んじゃう...
沙羅は意識を失っていた...
30分後、復帰するとすぐさま電話を掛けた。
「綾、どうなっての?、何でうちのナギ君がよりによって鉱山の掘進なのよ、未成年がどうして鉱山労働になる訳?、通知も配属前にどうしてしてくれなかったの?」
「ちょっ、ちょっ、待ってよ、鉱山てどういう事?、本当に掘進なの?」
「今端末で調べたわ、おかしいわねぇ、九州のコバルト鉱山の掘進になってたわ、どういう事なの?」
※未成年者の鉱山労働は禁止されていた。成人は18歳
「今調べてみたけど、確かに鉱山に送られてるわね。私も知らなかったのよ。配属先には私はかかわってないし。。。
それに事前通知は手続して置いたけど、後で不要に変更されていてメールは送信されてないみたい。」
※基本、局員の子供でも配置先は配慮されないとちゃんとした規定があるのだが、実際はお互いの事があるので局員の子供の場合は、危険な所には送られないのが不文律になっていた。
「綾、誰が変更したかわかるかしら?、それと配属先は誰が承認したの?」
「沙羅さんちょっと待って下さい、伝も使って調べてみますから...」
「分かったわ、大至急お願いね、それとこっちでも配属先を変更できないか当たってみるわ」
「わかった、調べるから待ってて。。」
※綾は人口管理局の上位組織に当たる人口対策庁に勤めている
一体だれがうちのナギ君を鉱山送りにしたの?
おかしい…絶対におかしい。。。
局の職員の子供でなくてもいきなり鉱山送りは有り得ない少しきつめの肉体労働を2年程経験してから態度や適性を見て鉱山に送られるのが普通、
絶対、誰かの作為が入ってるのは間違いないわ。
ナギ君が怪我でもしたら送った相手は殺してやるんだから...
覚悟していなさい。
▼ 災害は続けて起こる
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事故の翌日の朝、京介班は入坑前の最終待機所で補充人員を待っていた。
暫くすると3人が小走りでやって来た。
「初めまして、採石課から来ました隆一です。」
「同じく採石課から来ました信二です。
「俺は選石課から来ました未来です、よろしくお願いします。」
「3名、着任を認める。昨日の事故でもわかる通り掘進は危険な現場だが研修を行う余裕も時間もない言われた事は徹底して守る様に自分勝手な判断は死につながると思え...
幸一、3人の面倒を見てやってくれ...」
「ハイ!」
「では、行くぞ!!」
また、暗い穴倉へと行くことになった。
「リーダー...採石課ってどんなことをするんですか?」
「そうだな、俺たち掘進課がコバルトの地層まで掘るだろう、そこからコバルトを含んだ石を取り出して地上に送るのが採石課の仕事だ...ちなみに選石課は掘られた石からコバルトを含んでいる石とその他を選別するのが仕事だ」
「あぁ、なるほどですね。」
へぇ、じゃ、選石課の仕事って危険はないんだ...じゃ、選石課から掘進とは貧乏くじじゃんか...
そんな事を考えていたら現着した。
現場について昨日ここで2人死んだんだと思うととてもいたたまれない気分になるがそう言った感傷に浸る暇もなく作業を開始しなければならない。
僕らは黙々と作業を始める。
▼ 事故から約2か月後...
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一体何が起きたんだ...
物凄い爆発音とともに飛ばされたまでは覚えているけど、どうなっている。
誰の声も聞こえない...
漆黒の空間で無音の世界が広がっている。
あぁ...額から流れているのは多分出血しているんだろう、口の中も鉄の味がする。
胸が圧迫されていて呼吸が苦しい...声を出す事も無理なようだ。体を自己診断してみるがどうやら動かせるのは右腕だけの様だ...左腕は岩にはさまれて動かそうとすると凄い痛みがやってくる。
暫く経つと何もしなくても痛いところ分からないぐらい体中が痛みだした...痛くてたまらない...
ふっと気が付くと下半身の感覚がない...
如何やら脊髄をやられたか...こりゃ助かっても一生車いすだな。。。
あぁっ、どうやらそれも無理そうだ...
寒い...母さん、寒いよ...
のどが渇いたなぁ...最後にコーラを飲みたかったよ。
過去の楽しい思い出が走馬灯のように蘇えって来る。
あぁ...死ぬ前に走馬灯のように見るって言うのは本当だったんだ。。フフッ
母さん、ごめんね。バイバイ
応援ありがとうございます!
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