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第一章 始まり

崩壊する友人関係と旅立ち

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 ■ 崩壊する友人関係と旅立ち
 
 ▼ 学校
───────────────────────────────
 通知書が来た翌日、和人なぎとは学校へと通学していた。
 
 先日とは違ってかなり落ち込んだ様子の信也が座っている和人へ声を掛ける。
 「...おはよう...」
 「...なぁ、和人、どうだった?。」
 
 「...あぁっ、通知書のことなら予定通りの結果だな、研修センターに来いって書いてあったよ」
 信也の方を見ながら力なく苦笑する和人だったが、始めから何の期待もしていないので特に落ち込んでもいなかった、その様子を見て信也は不思議に思ったのか...
 
 「あぁっ、俺も駄目だったよ...そうか、和人もかぁ...
 ...でも、その割には元気そうだな。」
 信也はもしかすると行けるかもしれないと思っていただけに落胆は大きくて昨夜は殆んど眠る事が出来ないぐらいだった。
 
 「あぁ、まあ、気にしていないって言うか最初からこうなると思っていたしね、特に驚く事でもないよ。」
 
 「...和人は強いなぁ...俺なんて正直なところ駄目ってわかってはいても通知を見た時には体の力が抜けちゃってさぁ...
 ...はぁ、こうなったのならせめていっしょの所で働きたいよな。」
 
 「だよねぇ~.....ほんと一緒だと良いなぁ~」
 研修所、労働の現場に行けば集団生活になるからいい人だと良いけど、うざい奴だったりすると最悪だよなぁ、やっぱりそんな時に信也がいてくれたらと思うと随分と気が楽になるのになぁ...
 はぁ、上手く行けばいいなぁ...
 
 信也と話し合ってる所へ健吾がやっていた。えらく機嫌が良いみたいだ。
 
 「よぉ、労働者諸君、気落ちすることなくお国の為に頑張ってくれたまえ。」
 「.........」
 「あれ、返事がない所を見ると、やっぱり労働組かぁ...ま、奴隷に落ちてもしっかりと働けば生涯、くうには困らないからよかったな。」
 
 健吾はにやにやと下卑た顔を隠す様子を見せず、直前まで友達だったともに向かって明らかに蔑むような事を平気で言い放つ。
 
 「おまっ...」
 「信也!!...止めろ!!」
 
 思わず立ち上がって健吾になぐりかかろうとする信也の腕を引っ張って何とか止める。
 
 「ふん、殴る事も出来ないか...ハ・ハ・ハ・ハァ...どうやら自分の立場を和人は理解しているようだな...」
  信也は歯が折れるのではないかと思うぐらいギリギリと歯を噛みしめている。
 なんとか抑えなきゃ。
 
 
 この国に限らず生殖機能がある男性に対しての暴力については厳しい処罰が下される。
 生殖男性が関わる事件は全て人口管理局司法部の管轄で非公開で行われる。
 
 検察や裁判所は一切タッチしない。
 刑罰は罰金刑から死刑迄あり再審は一切認められない。
 
 刑罰に対する規定は明確になく基本的には前例を参考にされるが一番重要視されるのは被害者の状態だったりする。
 
 痴漢行為でも被害者の受けたショックの度合いにより罰金5万程度から強制労働10年という前例も出ている。
 
 
 「信也、落ち着け...挑発に乗るな...」
 健吾は分かったうえで挑発しているんだろうけど、今まで仲良くやって来たのにこうまで、変わるものなんだろうか?、自分はランクの判定を受けたらそうなっていただろうか...
 
 イヤ、僕は成っていない...
 きっと健吾は元々そうだったんだろう、今まで抑えてきたものがランクの指定を受けた事で一気に緩んだんだろうな...
 
 ここで健吾に怪我でもさせると間違いなく強制労働となる、単なる労働はまだ、ましだ...とりあえず人間的な生活が送れる、しかし強制労働となると別だ。。。人権はない...ほとんどが釈放される前に死ぬのが実情だったのだ。。
 
 「...すまん、もう大丈夫だ...」
 「あぁ、彼奴の事なんか気にするな、元々そうだったんだろうさ。」
 信也もとりあえずは落ち着いたうえでその後に及ぼす影響にも覚えが行ったんだろうとおもう。
 何とか抑えてはいるが彼の怒りは消えていない。
 
 「そうだな...気にしないでおこう」
 「そう言う事...」
 
 その後もさらに健吾は挑発してきたが一切無視する事に決めるとさらに挑発して来たけど一貫して無視していると他のクラスメイトを揶揄いに行った。
 
 信也と二人で話していると他のクラスメイトも加わってきた。
 如何やら話を聞いてみるとどうやらクラスでランクが付いたのは健吾だけらしい、どうやら卒業生全体で見て3人との事なので今年は当たり年だって教員が言ってたそうだ。
 
 まあ、昨年が0だったらしいからそれを思うと気が楽なんだろう。
 
 他のクラスメイトもそれなりに覚悟はしていたみたいで見るからに落ち込んでいるのは2,3人しか見当たらなかった。
 
 別に有生殖者が出なくても教員の所為じゃないんだけど、なぜか有生殖者の数は教員の評価になるらしいからこれはおとなの不思議だ...
 
 それから卒業するまでの間、健吾とは一度も口を聞く事は無かった。
 まあ、僕としては出来れば和解したいのが本音だったが信也にはその気はさらさらなく、わざわざ信也の機嫌を取って迄、仲直りする必要もないと思うようになった。
 
 当初はもう、会う事は無いかもしれないから和解したいと思っていたのが今はもう会う事もないから無理に和解する必要はないと思い直すまで時間は掛らなかったのは不思議と言えば不思議だ。
 
 検査が終わると後の授業と言う授業は無く研修所の説明やどういった労働に付くのかといった説明を聞いてすごした。ちなみに女子は話を聞くも図書館で自習するも自由となっていた。
 
 卒業式を迎えて僕らの大半は社会へと旅立つことになった。
 
 ▼ 出発の朝
───────────────────────────────
 「怜奈これやるよ、無駄使いするなよ。」
 僕は妹にそう言うと、貯金通帳と印鑑、それにキャッシュカードと暗証番号を書いたメモを渡した。
 暗証番号はあらかじめ妹の誕生日に買い替えておいた。
 
 「えっ、なに....ふうん?...えっ、こんなに沢山...
 アニィ、駄目だよ、アニィもいるでしょう。」
 妹は通帳を渡されたものだから驚いて...また、残高をみて2度びっくりしていた。
 妹は結構、お金は使ってしまう方だが僕はあまり欲しいものは無いためかなりの金額が残っていた。
 
 「大丈夫、当座のお金は持ってるし、これから働くからさ...毎月多少の収入は貰えるから俺はそれで十分なんだ。。。」
 
 「う~ん、でも、悪いなぁ~」
 やっぱり悪いと思ってるのかあごに手を当てながら俯いて考え込んでいる。
 
 「怜奈、お兄ちゃんがくれるって言うのだから貰っておきなさい、和人ももし足らないようだったら連絡してくれれば送金するから...」
 
 「うーん、じゃ、遠慮なく貰うね、ありがとうお兄ちゃん...
 あっ、ちょっと待ってて...」
 妹はそう言うと走って自分の部屋のある2階へと駆けあがっていく。
 暫くすると降りてきた。
 
 「お兄ちゃん、これ持って行って...これ私の大事にしているブレスレットなの...
 良かったら私だと思って持っててくれると嬉しいな...」
 なぜか妹は頬を少し赤く染めてブレスレットをもつ右手を差し出してきた。
 
 一瞬どうしたものかと悩んだけど、母さんの目配せもあって貰う事にした。
 
 「ありがとう、大事にするよ。」
 
 「じゃ、母さん行ってくるね。いつ連絡できるかはわからないけど、出来るようになったら連絡するから」
 「気を付けてね、怪我しない様に気を付けてね。」
 
 「うん、行ってきます。」
 俺はそう言うと右腕を上げると振り返り玄関を開けて出て行った。
 
 僕は男性労働者研修所へと向かう。
 
 
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