私の愛した召喚獣

Azanasi

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第五章 救出に向けて

【現状と外貨獲得&会合】

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【現状と外貨獲得&会合】


 悠人 Side
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 「やっぱりこっちの世界は落ち着くよなぁ~」
 異世界へ戻ってきて悠人のいつわらざらない本音がこぼれ出ていた。
 マスコミの取材攻勢によりまともな日常生活が送れなくなった悠人は父親と相談し当面の間異世界で過ごすことにした。
 まあ、マスコミから逃げるだけならわざわざ異世界へ来なくても人口密度の少ない地方都市に一時疎開するという方法も会ったのだがそれをしなかったのはリナの存在が大きかった。リナが母親の所で働いていると言うだけでも避難場所として悠人にとっては最有力候補だった。
 
 「ほら、いつまでもくつろいでないでさっさと手伝う!!コックピット周りはあなたの担当でしょ、さぁちゃっちゃっと進めないと後ろがつかえてるんだから、ほら手を動かす!!」
 「はい、がんばります。」
 愛菜にせっつかれて悠人はコックピットのパネルの下に潜り込んで作業を始めた。
 
 悠人は異世界に出戻ってきてからは研究開発部門の責任者である愛菜のもとに身を寄せていた。自分にとって一番興味がある内容だったからというのが大きいが、リナと同じ職場ではどうしてもリナ以下の働きしか出来ないというのもまた事実だった・・・
 現在は愛菜のもとで米国から購入したヘリをケロシンから魔石を使った魔力で動く魔導タービンで動く魔導ヘリへと改修作業に追われていた。
 
 その頃、日本では・・・
 
 久志 Side
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 久志は都内に有る雑居ビルの一室に来ていた。
 部屋に入るとCIAエージェントのアリエルが来ていた。
 
 「ようこそおいで頂きありがとうございます。篠崎さん
 ご足労頂いたのは我が国の調査団の件でございます、メンバーの選出も終わりいつでも出発できますので日程を調整したいと思いますが?」
 
 「わかりました。では明後日では如何ですか?、時間的には午後1時に横田の方にルーカスを迎えに行かせましょう。
 それでいいですか?」
 
 「はい、結構です、宜しくおねがいします。」
 「一つだけ確認ですが、人員は9名で武装は小火器にAPC(兵員輸送車)1台で間違いないですね。」
 「はい、間違いないです。」
 
 「事前にお話したと思いますが、APCのような大型車両は返却できませんが構いませんか?、それでも持ち込みますか?」
 
 「えぇ、構いませんわ、たとえ回収できなくとも隊員の安全確保を考えると絶対と言ってもいいぐらい必要なものです、それに軍部の方針ですから・・・」
 「わかりました。では、認めましょう。」
 
 (ふぅ、なんとか車両を押し込められて良かったわ、上層部からの圧力が凄かったからなんとかとは思ってはいたけど・・・以外にあっさりと受け入れられてよかったわ。まあ、返却されないのが惜しい気もするけど私のサイフが痛むわけじゃないし気にするのはやめておこうっと)
 
 車両一台ぐらいの魔力なんてルーカスにとって気にするほどではないのだが、そこには役に立つものは置いていって貰おうって考えが根底にはあった。まあ、一言で言えセコいのだけどこの際これは言うまい。
 
 事前に何回も打ち合わせをしてきただけあって最後の打ち合わせはほぼ確認だけですみ特に問題になるようなことはなかった。
 
 「最後にこれは注意というよりお願いですが・・・」
 俺がそう言うとアメリアは思わず息を飲んだ・・・
 (えっ、なに、なによ、この場でお願いなんて。。。どういうことなの?
 今までの経過から考えるに土壇場での報酬アップなんて言い出さないわよねぇ。。。
 んん...恐らくそれはないわね。
 まさか私の体が目的なの?、そりゃ魅力的なのは認めるけど、だからってホイホイ抱かれるような女じゃないわ...でも上司達に言わせればそのくらいドンマイって言われそうで怖いわ。。)
 
 「目的以外の行動をしない事ですね、意味はおわかりでしょ。」
 「はい、それは十分わかってます、今回は純粋に調査が目的ですから。」
 (無闇やたらに嗅ぎ回ったりするなって言うことなのね、やれば保証はしないって事かしら・・)
 
 「では、調査の件はこれで良いとして、一つお尋ねしたいことが有るんですが、これはどういうことでしょう?」
 
 彼女はそう言ってノートPCをこちらに向けてきた。
 こちらに向けられたノートPCにはうちの米国支部が掲載したHPが表示されていた。
 そこには『異世界ハンティング参加者募集!!』の申込みのページが有った。
 これは米国支部が企画した物で早い話が異世界で魔物をハンティングさせようって企画だった。
 米国では普通の獲物に飽きたハンターは多い、その中でも富裕層向けに試験的にやってみようって事で企画したもので、通常は冒険者にこちらが料金を払って討伐してもらっているが、逆にこちらがお金をもらってついでに討伐してもらえれば外貨を獲得できて討伐も可能になると言うわけでうちとしては2度美味しい。
 ま、当初はゴブリンなどの低ランクの魔物を対象にしている。うまく行けば魔物の対象枠は広げて行きたいと思っていた。
 ちなみに費用は2泊3日で$60万ドルである。
 倒した魔物の素材はこちらで引き取ることも出来るし持ち帰ることも可能だ・・・とは言っても米国政府が素材の持ち込を認めるかどうかは分かっていないl。
 
 初回ということもあり10名の枠で1週間の告知の後に募集を開始したところわずか数分で完売となった。
 ハンティングにかかる武器弾薬は自前で用意してもらう様になっているため実質かかる費用としては滞在費用ぐらいなものなのでかなり利益率は高い。
 
 「あぁ、それですか?、それは米国支局のエレンが企画したものでとりあえずは試験的に企画したものですよ。まあ、うまくいくようなら継続するかもしれませんね。」
 
 「一般人を異世界に連れて行くってことですか?
 このサイト内の事は事実と捉えて良いんですか?」
 
 「えぇ、事前に調べてみたようですが、米国法には触れないと思いますが?」
 アリエルはかなり驚いたようで顔を引きつせている。
 (調査員を異世界に派遣するのにこれだけ手間暇を掛けたのに一般人はお金を払えば簡単に呼ぶってどうなのよ?、資源調査とハンティングを同レベルで比較することは出来ないのはわかるけどなんとなく納得できないわ、帰ってきちんと報告しなきゃ...)
 
 「法に触れるかどうかは私では判断出来ませんね。それに法には触れなくても企画を募集しているのは立派な米国内の企業ですから許認可等が必要になる場合があります。とりあえずこの件は持ち帰って上司と相談するとして、追加分の弾薬等は例の受け渡し専用倉庫に入れてありますので何時でも搬出出来るようのしてあります。」
 
 「わかりました、都合を見て搬出するつもりですが追加分のポーションはその時にお渡しします。それと今後は支払いは金だけでなくドルでの支払いも可能ですから念頭には於いておいて下さい。」
 
 「最上級のポーションに付いては需要が高くもう少し供給を増やして頂けると嬉しいのですが、なんとかなりませんか?」
 「ポーションの作成は原材料の確保が難しく、まあ、そんなに簡単にできるならそもそも幻の秘薬なんて言われないのですが・・・できるだけ頑張ってみましょう。」
 「宜しくおねがいします。」
 「では、これで・・又何かあれば連絡下さい。」
 
 アリエルとの話し合いを終えたルーカスは次の会合の現場へと向かうのだった。
 (はぁ、忙しいよなぁ・・・ルーカスと久志、二人と言っても事実上は同一人物なのだから身がもたないよ。ソフィーが秘書としてやりくりしてくれてるけどもう、限界に近いなぁ・・・)
 そんな事を考えながら久志は次の現場の自衛隊駐屯地へと向かうのだった。
 
 
 自衛隊駐屯地
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 駐屯地内のいつもの会合場所に入るとすでに統括責任者の山崎氏を始め警察の菅原氏、自衛隊側の橋本、工藤氏らも先に来ていたのか席に付いていた。
 
 「こんにちは皆さん早いですね。」
 「あぁ、まあみんな暇なんだよ。篠崎くんは忙しそうだなぁ」
 統括責任者でも有る公安の山崎氏は皮肉とも取られかねないような言葉でルーカスを迎えた。
 
 「さて、早速だが今日の議題である生徒たちの救出作戦について詰めていきたいと思う、まず陸自さんの方から説明してもらおう。」
 山崎はそう言って視線を陸自の橋本氏の方に向け、それを受けて橋本氏が席を立って話し始めた。
 
 「まずご提供頂いた資料を元にあらゆる方面から作戦を立ててみたのですが、隊員9名で100名からなる生徒を救出するのは限りなく不可能に近いと思われます。
 まず、理由として100名からなる生徒を9人で守りながらまとめるのは難しいこと、同様に生徒を守りながら魔法を有すると敵と戦うのは難しいと思われます。
 生徒が少数であれば守りながら撤退戦も可能でしょうが、人数が多いので撤退する前に敵の追手に追いつかれてしまえば9人で100名からの生徒を救出するのは難しいでしょう。
 大幅に人数を増やすかそちら側の協力を願いたと考えているのですが・・・」
 
 橋本3佐は落ち着きながらもどこか悔しそうな雰囲気で左手に資料を持ち、右手でテーブルを強く掴んだまま現状の報告を行っていた。
 
 自衛隊側の話を聞くとどうやら最低でも隊員を50名以上送りたいらしい...それに装備も小火器だけではなく輸送用の車両や戦闘ヘリまで持ち込みたいらしい。。。
 とても認められるものではない、そんなもの認めてしまったらもはや自衛隊と異世界の一国との戦争になってしまう。隣接するうちの領としてはどんな影響が出るかわかったもんじゃない、下手すればうちとの戦争に発展しかねない、いや、生徒がうちに逃げ込む以上、うちと戦争になる可能性が大きい・・・
 うちとしては全面戦争に持ち込むつもりはない・・・負けることはまずないが相手の国も倒れてしまっても困る。後の統治なんて出来ない、内乱は起こるだろうし難民の流入も考えるとゾッとする、おまけに難民に工作員などが紛れる可能性は高い。
 それを考えると流石に認める訳にはいかないからこちら側からの支援をするしかないだろう...
 俺が加わるとしてやるなら最終の演習の時期が良いだろうから後、3ヶ月ほどかぁ・・・んー、まあ、なんとかなるだろう。
 護衛自体はそう多くないだろうからちゃっちゃっと倒してゲートを開いてうちの領に連れてくればいいだろう、うん、それで行こう。
 
 「わかりました。仕方ないのでルーカスも参加させることにしましょう。
 そうなると時期は恐らく3ヶ月先の演習時に実行することになるでしょう。それまでに準備を整えておいて下さい。
 それとルーカス、いえ、ハミルトン辺境伯の方の費用も上と話して相談して下さい。来週また来ますのでそれまでに決定しておいて下さい。具体的な作戦はその時に詰めましょう。一つ言っておけばルーカスの方でゲートを使う事になると思います。。」
 
 「おおっ、ついに加わって頂けますか、それではその旨、上に上げて費用の方も上と相談しておきます。しかし辺境伯の参加を勝手に決めて問題はありませんかな?」
 
 「その点も含めて一任されておりますので問題はありません。」
 
 『オッシ!、宜しくおねがいします。』
 橋本3佐は拳を握り胸のところまで上げてポーズを取った。俺が加わる事になったのでホッとしたのだろう。
 まあ、こうなったら仕方ない、なるべく身バレしないようにやるしかないだろう。
 
 日を付けたタバコを灰皿に置き一息付いていた。
 退室していく篠崎を見送りながら橋本三佐は呟く・・・
 篠崎くんは日本支部の窓口って事だったがどこまで権限があるのだろうか?、仮にも向こうの世界の領主、いうなれば自分の勤務先のトップの動向を決める権限が果たしてあるのだろうか?、通常ならここで一旦、持ち帰り伺いを立てるっていうのが普通だろう・・・
 
 橋本3佐は多少納得がいかないところもあったがまあ、良い方にいくぶんは問題ないだろうと考えてはいたが、やっぱり駄目でした、参加できませんなんてことにならないか多少の不安を残しつつの会合だった。
 
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