私の愛した召喚獣

Azanasi

文字の大きさ
上 下
105 / 116
第五章 救出に向けて

【自衛隊異世界へ行く2】

しおりを挟む
【自衛隊異世界へ行く2】

 自衛隊の隊員を連れてファンテーヌ領郊外のアルバハ平原へと移転してきた。アルバは高原は領の北東に位置に有り、森に囲まれた中に5km×10km位の広さを誇る、その一角に隊員用の宿舎を事前に建設して置いた。
 
 「着きましたよ。皆様にはここで暫くの間、訓練に励んで貰います。」
 
 「うぉーっ、ここが異世界かぁ・・」
 皆それぞれに感想を言いながら驚いているようだがさほど不安は感じていないようだ。
 
 「はぁ、本当に来たんですねぇ、ぱっと見た感じは異世界と言うよりはどこかの演習場って言われた方がしっくりきそうな気がします。」
 転移して来た隊員は辺りを見回しているが特に日本の景色と変わらないのを見てそう戸惑いはない様である。
 
 照りつける太陽、日本とは違って湿度が少ないせいもあって比較的過ごしやすい、ただ、日本と大きく異なる点はこのアルバハ平原は森に囲まれているせいもあって魔物が頻繁に出没すると言うのが大きな違いだ。
 
 「眺めるのは後で飽きるほど眺められますので取り敢えず宿舎に移動して下さい。」
 隊員達の宿舎は石造りの3階建て、あまり不便を感じさせない様に電気も通っている、当然水洗トイレに風呂も完備してある個室にある訳ではなく大浴場形式なので、女性隊員は時間を区切るなどして対処して貰うしかない。
 なるべくストレスを溜めない様に娯楽室やアスレチックルームなども用意して有る、娯楽室はDVDを適当に揃えて置いた。
 
 宿舎内の訓練場に移動してきた。
 ここには最大で50名ほどの宿泊出来るスペースがある、訓練の間はここで寝泊まりして貰うことになる。ちなみに部屋は一人部屋と二人部屋、四人部屋の3種類がある。今回は隊長と女性隊員に一人部屋を使って貰い他の隊員は二人部屋を使って貰う事にした。
 
 「皆さんのお世話をする者達をご紹介します。」
 「左からメイドのコレット、セシル、イレーヌだ、ここにはいないが食事を作ってくれる料理長がガスパールだ、食事の時に会えるだろう。」
 
 「皆様のお世話をさせて頂きます、メイド長のコレットです。宜しくお願いします。」
 「メイドのセシルです。猫族の獣人ですが宜しくおねがします。」
 「メイドのイレーヌです。人族です、宜しくお願いします。」
 
 「皆さんを部屋に案内してやってくれ、後、今日は装備品の確認やらあると思うで訓練は明日から開始します。明日は0800にここに集合して置いて下さい。」
 
 「それと今日は宿舎から1歩も出ないで下さい、今日はまだ、護衛はいませんので外に出れば命の危険があります。では解散します。」
 
 隊員達はメイド長のコレットに案内されて宿舎へと入っていく...
 やはり獣人のセシルが気になるのか何度もチラ見する隊員が少なくない。
 
 ♪゚*☆*゚♪*☆*゚♪゚*☆*♪゚*☆*゚♪*☆*゚♪゚*☆*゚♪
 その日の夜、王都の屋敷
 
 「奈津、自衛隊隊員を9名連れてきた。明日から指導の方を頼むぞ!!」
 
 「わかってるわよ、でも、フルタイムでは無理だから後は副団長のレナートに任せるわよ、良いわね」
 奈津は領地内の防衛全般をまとめている為、それなりに仕事が多い、特に最近はイスパニア王国が国境沿いでの動きが不審な為、集まってきた情報を元に調査、分析の指示を出したりで多忙を極めている。
 
 「あぁ、構わないが出来るだけ相手をしてやってくれ。」
 「それからソフィー、奈津についてやってくれないか?、奈津の都合に合わせて転移で移動させてやって欲しいんだ・・・」
 ソフィーは異世界間の転移は出来ないが自国内ぐらいの距離なら一日に数回は転移出来る能力がある、領内の近距離なら回数はかなりこなすことが可能だ。
 
 「はい、ルーカス様、お手伝いさせて頂きます。」
 ソフィーは久しぶりに外での仕事を言いつけられて機嫌が良さそうだ。普段は屋敷内で文官的な仕事が多い為、あまり外に出る機会が無いので気分転換にも為るだろう、今の所、俺以外で転移が出来るのはソフィーしかいない。
 
 「エレンは退役を確認出来たら一旦、軍に戻って手続きを行ってくれ、確認は日本支局の方で行うのでエレンが特に何かする必要はないよ、まあ、早くても数日はかかるだろう、それが終わったら支局の物件探しや設立の準備などで忙しくなると思うからゆっくりしてくれ、もし暇と言うか気が向いたら奈津の方を手伝っても良いぞ!!」
 
 「はい、そうですね、行ってみようかなぁ..。自衛隊って言うのも興味があるし」
 エレンは軍に所属しているだけあって自衛隊に興味があるらしい、エレンの認識では自衛隊は日本軍との認識がある。
 
 ♪゚*☆*゚♪*☆*゚♪゚*☆*♪゚*☆*゚♪*☆*゚♪゚*☆*゚♪
 翌日の早朝、領都北東部、アルバハ平原
 
 「アテンション!!」
 早朝のアルバハ平原に奈津の号令が響いた。
 
 奈津が来た時、自衛隊の隊員達は宿舎の入り口の所でたむろして談笑していたが奈津が号令を掛けると即座に並んで敬礼をする辺りは流石に陸自の中でも精鋭の者達なんだろうとうかがわせる。
 
 「諸君、私が訓練教官を勤めるファンテーヌ辺境郡の総司令官。『奈津』だ、隣にいるのが副教官のレナート副団長だ、彼は近衛騎士団の副団長をしている。」
 「たった今から訓練終了まで貴様らは私の指揮下に入る、何、簡単な言われたことをやれば良い、犬でも出来ることだ、答えは『Yes ma'am』でいい。それ以外の事は一切認めない。」
 
 「訓練を開始する前にひとつだけ注意しておく。」
 「諸君らはイルメニア王国軍、軍法及びファンテーヌ領軍法が適用される、なお、諸君らが現在立っている場所は戦闘区域に指定されてるよって戦時法が適用されるので命令違反は即時処刑の場合があるので覚悟しておく様に。」
 
 「ちょっと待って下さい。我々は日本の自衛隊です、行き成り貴国の法を適用されると言われても困ります。」
 隊員の皆は声を上げないもののお互いに顔を合わせてかなり動揺しているのがわかる。隊長の香川1佐が代表として意見をしている。
 
 「諸君らはここに来る前に署名してきたはずだ、契約書にもその旨はきちんと明記されていたはずだ。また、諸君らの上層部にも書面だけでなく口頭でもしっかり伝えてある。時間が無いので戦時として訓練すると、脱落、訓練中の事故、命令違反などで死亡も十分にあると。」
 
 「.....」
 香川:(行くも地獄、戻るも地獄って、敵前逃亡は銃殺”ってありなのか?、誓約書の類いは一応、読んでから署名捺印したけど、命令違反は処刑なんてないだろ、確かにこっちの軍法が適用されるって事は理解してたけどこっちの軍法までは知らなかったし。)
 
 「まあ、まあ、皆さん深刻な顔をしない・・・まあ、奈津も外国人って事で多少は考慮するさ、そう心配しなさんな。」
 自衛隊の隊員がしけた顔をしているので多少のフォローはして置かないとと思ったがフォローに為ってない気がするのだった。
 
 「ルーカス、まだ、話の途中なんだから邪魔しないで...
 
 「えぇ、諸君らは精鋭らしいので基本基礎体力向上はせずに確認だけさせてもらう、その上で最低基準以上に達していれば身体強化を覚えて貰う。
 その後、魔物との実戦訓練を暫く行った後、盗賊相手に討伐経験して貰う。
 最後に実際の救出を想定した救出訓練を行う。」
 
 「取り敢えず、最初に各人の技量を見たいので一人ずつ格闘の模擬戦を行う」
 奈津はそう言って刃渡りが30cmは有ろうかというナイフを隊員の前に投げる。
 「むろん、手加減は無用だ、殺すつもりで掛かってきなさい。」
 
 「ちょっと待って下さい、それは本物ではないのですか?、危険すぎます、誤って怪我させる恐れがあります」
 香川1佐が刃引きをしていないナイフを使うことに反対して抗議してきた。
 
 「誤って?、何をいう、私は殺す気で来いと言ったはずだ、私に怪我を負わせる事が出来るレベルなら私の指導など必要ない。」
 
 「しかし...危険すぎます。」
 (自分らは陸自でも選りすぐりの精鋭だ、怪我をさせて関係を悪化させるような事態にでもなれば今後の救出作戦に大きな影響を及ぼすだろう、それだけは避けないといけない。)
 
 「当たり前だ、そのくらいの覚悟もないなら今すぐ帰れ」
 「・・・・・」
 
 「ちょっと待て!!、奈津の尻に触れた奴は100万、胸に触れた奴は300万、俺の方から出すぞ!!」
 俺は殺伐とした雰囲気を何とか和ませたいなぁ~って思って提案をしたが、よく考えたら別に和ませる様な場面ではないような・・・俺って空気を読めない人...なのか?
 
 「ルーカス、しょうもない事掛けにしないで・・・」
 
 「俺のポケットマネーから出すから問題ないだろう。そう言う事だから頑張ってくれ、ちなみに奈津は格闘戦は俺より強いので宜しく!、あっ、即死さえしなければ回復出来るので即死だけはしない様に気を付けてね。」
 
 「まあ、ちょっと邪魔が入ったけど、始めますよ。順番はどうでも良いわ、希望者順に掛かって来て下さい。」
 
 「渡部 慎一、宜しくお願いします。」
 「どこからでもどうぞ!」
 奈津は腕をさしだし、掌を上に向けて指を丸め込むように掛かってこいと挑発している。
 
 「行きます。!」
 渡部はナイフを逆手に持ちかけ声と同時に奈津に駆け寄り頸動脈を狙って切りかかってきた。
 「うぎゃっ!」
 奈津は左手で斬り掛かってきたナイフを持つ手を掴み、右腕を相手の肘に掛けて捻るようにして引き倒しながら倒れてくる体にひざげりをカウンターで入れる。
 もろに膝蹴りのカウンターを食らった隊員は泡を吹いて完全にノックダウンしている。
 
 「はい、つぎ!」
 気絶している隊員に唯一の女性隊員である古澤祐子が駆けつけしゃがみ込んで様態を確認しようとした時...
 
 「ボクッ...うっ...」
 古澤隊員が短いうめき声を上げて倒れ込んだ...
 腹部を押さえ転げ回っている。
 ルーカス:(うわーえげつねぇ~、奈津ちゃん超スパルタじゃん)
 
 「な、何をする!」
 他の隊員達が奈津を非難の目で一斉に見つめる。今にも奈津に飛びかからないばかりの隊員も数名いる。」
 
 「黙れ!!、今は実戦訓練中だ、負傷者の救護をするなら周りの安全確認ぐらいしろ、それも出来ないようなら死ぬだけだ・・・」
 「心配は要らない、手加減はしてある、すぐに目を覚ますだろう、」
 奈津はソフィーの方を向いてソフィーに指示を出した。
 
 「ソフィー、こいつに水を掛けて...」
 
 「ほら、次、さっさとせんかひよっこ共!!」
 相変わらず、奈津は挑発しながら次の対戦者を待っている。
 
 「佐藤 圭三、行きます。」
 名乗るのが終わるか終わらないかのうちにナイフを順手に持って飛びかかってきた。。奈津を相手に突いてくる。奈津は危なっかしい所もなく軽く交わして行く...
 斬り掛かるのに比べて突いて来てるので先の二人の様子を見てかなり頭にきているとみえる。
 右に左にとナイフをパスしながら攻撃してくるが奈津には一向に通用しない、焦ったのか奈津の心臓を狙って突いて来た所を躱されるとそのまま振り下ろして、今度は下から胸部を狙って突き上げてきた。奈津は軽くバックステップで下がるとナイフを次ぎだした腕が丁度、延びきった時点で両手で腕を掴み引っ張るようにしながら下にたたき付け心臓の所に位置する背中を拳で叩く...
 
 「私がナイフを持っていれば、即死だな。」
 
 奈津は次々と隊員を相手にしていった。
 奈津を相手に1分以上持ちこたえたものはいなかった、無論、奈津の体にふれるいぜんの問題だった。
 全員を相手にし終わった時には隊員は死屍累々と横たわっていた。
 
 「よし、30分休憩する。」
 メイドのセシルが水を配ったりおしぼりを渡したりと世話を焼いている。
 
 「そのままで聞いて欲しい、君らのレベルはかなり低い、今手当を受けているセシルにさえ叶わないだろう、自己の能力で肉体強化を取得の予定だったかが、1ヶ月のスケジュールでは無理だとおもう。3ヶ月にスケジュールを延ばすか、伸ばせないなら肉体強化の魔道具を貸与しようとおもう。その辺はそちらの都合もあるだろうから相談して決めてくれ。」
 
 既に回復している隊員達は余程悔しかったのか歯が折れんばかりに噛みしめている。まあ、自分たちは精鋭としての自負もあっただろうから女にあっさりと完璧なまでにたたき伏せられるのは辛いだろう。心折れている者もイルカも知れない。
 
 「休憩終了後、簡単なレクチャーの後、森に入るから武装は小銃のみでいい。接近専用の剣はこちらで貸与する」
 
 
 
しおりを挟む

処理中です...