私の愛した召喚獣

Azanasi

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第四章 内政

【会談2】

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【会談2】

 失礼しまーす。
 あの戻ってきて貰いました。
 あれ・・・
 室内は荒れていた・・・
 テーブルは斜めに向いているし、椅子は倒れ・・・警官は正座していた。
 
 「あら、どうやら取り込んでいるようなので今日の所はお引き取りしましょう。」
 「いや、済まない、すぐに片付けるから待ってくれ・・・」
 「茜ちゃん?」
 
 「お願いします。待って下さい。」
 
 「じゃ、俺たちは外で待ってましょう。」
 そう言っておれと相馬さんは廊下に出た。
 
 「どうしたんですかぁ?」
 「色々とあってな、それよりどうして・・・良く戻って来てくれたな。」
 「そりゃ、もう、車の前に立ちふさがって泣いてすがりましたから・・・」
 
 「よし、良くやったぞ、これで最悪の事態は防げた・・・」
 (こいつ、もしかすると意外と出来る奴なのかも知れない・・・)
 公安は壮絶に勘違いしていた。
 
 ♪゚*☆*゚♪*☆*゚♪゚*☆*♪゚*☆*゚♪*☆*゚♪゚*☆*゚♪
 数分後・・・
 
 「重ね重ね申し訳なかった、戻ってきてくれ助かります。」
 「さっきのは聞かなかったことにしましょう、但し、そこの彼には外れて貰いたい。」
 
 「なにぃ!!」
 「バクッ」
 菅原警視正の強烈なエルボーが警部のレバーにヒットした・・
 警部はそのまま、糸の切れた操り人形のように倒れた。
 
 「オーイ」
 「此奴を運んでくれ・・・それとこれを嵌めておいてくれ・・」
 そう言って入ってきた自衛官の一人に手錠を渡した。
 
 「すいません、お騒がせしました、今後は二度とこう言う事が無いようにしますのでどうか、ご了承下さい。」
 
 「はい、わかりました。使えない部下を持つと苦労しますね。」
 「はい、でも、私の部下ではないのが救いです。」
 菅原警視正は苦笑いしている
 
 「うちの国にもやはり似たような貴族はいますけどね、それはどの世界も一緒って事ですね。ま、うちの場合、権力を持っているのでもっと始末に負えないですけど」
 「恐れ入ります。」
 
 「鉄の件は2,3日中にご用意出来るそうです。どうやって連絡をしましょうか?」
 「そうですねぇ・・・」
 「茜ちゃん、ちょっとこっち来て・・・」
 
 「はい・・」
 対面側に座っていた茜がこっちに来た。..
 ちょっとしゃがんでくれる。
 
 「・・・はい・・・」
 茜の額に指先を当てると茜は”ビクッ”としたが避けようとはせずにじっとしている。
 茜に念話の魔法を付加する・・・魔法の略奪、コピーは半年ぐらい前に取得していた・・
 
 「いいよ。俺のことを考えて、口に出さずに話してみてくれる。」
 [テス、テス、テス、本日は晴天なり]
 [おい、おい、もう少しましな言葉はないの?、例えば私を好きにしてとか?]
 
 「キャーッ、何言うんですかぁ・・・もう変態・・・」
 「あれ、頭の中に聞こえましたよ。」
 
 「うん、うん、理解して頂いた様で・・・念話と言います。これだったら僕がどこにいても聞こえるので用があるときは呼んで下さい。」
 
 「これで連絡手段は付きましたね。」
 
 他の物があっけに取られている。..
 
 「あの、これって私も魔法使いって事ですか?」
 「うん、そうだね、但し念話しか出来ないけど・・・」
 
 「きゃーーっ、凄い私・・・でも、ルーカスさんしか話し相手はいないんですよね。」
 「まぁ、うちのメンバーは全員使えるけど・・・認識出来ない相手とは話せないからね・・・」
 「そうだ、一度、うちの領においで・・女性も一杯いるから親しくなれば話し相手には困らないと思うよ。通話料はただだし・・・出たくないときは頭の中でパスと言えば着信拒否も可能だロングパスって言えば解除するまでは自動で拒否になるけどね。」
 
 「あっ、相馬さん、奥さんも使えますよ、何だったら相馬さんもやりますか?、そうすると今でも話せますが・・」
 「お願いして良いんですか?」
 
 「もちろんです、」
 同じようにして念話を悠人の父親にも付加した。
 
 「奥さんの事を思いだして・・・呼び出して下さい。口に出す必要はありません。」
 「・・・・・・・・・・・ーーー・・・・・ーーーー」
 お、面白い・・・話してるんだろうけど、表情が色々変わって面白い、俺も念話の時はこんな顔してるのかと思うとおかしくなった。..
 
 「済みません、家内のこと宜しくお願いします、もう暫く帰らないそうです。悠人も暫く向こうにいるそうです。」
 相馬さんの顔は少し淋しそう・・・
 
 「あ、あのう、どういう事なんですか?、悠人君は家にいないんですか?」
 公安の山崎さんが聞いてきた・・・
 
 「あぁ、ご存じと思いますがお母さんがうちの領地に来られてますので、悠人君もまた行きたいって事だったんで今朝、来る前に送ってきたんですよ。」
 
 「はぁ、そんなに簡単に行ったり来たり出来るものなんですね。」
 「まあ、魔力は相当食いますけどね。」
 
 「相当ってどれくらいなんですか?」
 茜が食いついてきた・・・
 
 「うーん、わかりやすく言うと一般の人の魔力が50ぐらいで魔法が使える人だと300~500ぐらい、宮廷魔法士クラスになると3000~5000って所なんですが・・・転移に使う方は同一の世界内で距離によって変わりますが数万って所ですね。異世界への転移となると100万単位の魔力が必要になりますね」
 
 「すいません・・・ちょっと良いですか?」
 話が本題から脱線してきたので公安の山崎さんが修正してきた・・
 「まず、相馬悠人君が向こうにいるとの事ですが、また、帰還費用がいるって事ですか?」
 
 「あっ、それは別枠で考えて下さい、つまり、悠人のことはもう、考えなくて結構です。」
 「好きで行ったり来たりしてる分には国に責任はないでしょう。」
 
 「それを聞いて安心しました。」
 「相馬さんの奥さんは自主的ではありますが、子供達の安否確認の意味で行って貰ってますので国で費用は持ちます。」
 
 「あっ、それも別枠で結構です。」
 「そうですか?、では残り3人の件は先程の通りで良いですか?」
 「はい、連絡を貰えれば翌日には連れてきましょう。場所はこの場所で良いですか?」
 「はい、結構です。」
 
 「では、我が国の事情を説明しておきましょう。」
 「生徒達が捕らわれているイスパニア王国とは敵対関係にあります、イスパニア王国は資源も殆ど無く土地も豊かではない為に国力はありません、それでも先々代までは何とか細々とやってたんですが、先王の時代からはっきり言えば見にそぐわない生活をされるようになり圧政が続いてる訳なんですが、当然国民の不満も高まる訳でそれ他国、特に隣国であるうちに向けています。
 
 これまでも何度も小競り合いはありましたが、全て追い返しているのが実情です。これを打開しようと勇者召喚を行ったと思われます。」
 
 「先程の警部さんがうちに救助してこいと言われましたが、言うなればロシアに北朝鮮の国民がさらわれているから日本に助けろと行っているような物です。」
 「おわかり頂けますか・」
 「はぁ・・そうですね」
 
 つまり、私が敵対しているイスパニア王国に救助に向かえばイルメニア王国がイスパニア王国に対して侵略戦争を起こしたことになり他国との関係も悪化しますので私が救助に向かうのは難しいのです。
 
 現在、召喚された生徒達は軍事訓練中です。恐らく8ヶ月から1年後にはうちに攻め入ってくると予想しています。
 
 残念ですが、攻めてこられればうちは反撃するしか有りません。恐らく全滅でしょう。
 
 「そんなぁ・・・何とかなりませんかぁ」
 「・・・・・」
 
 「軍事力の差はどれくらいあるのですか?」
 「私の辺境軍と国の国軍を併せれば、日本とアメリカと考えて貰えれば良いでしょう」
 
 「誰がやったかわからないように傭兵を傭うとかしてイスパニアを倒すって言うのは無理なんですか?、もちろん費用は此方持ちで・・・」
 
 「倒すだけなら簡単です。、生徒が訓練か何かで王城を離れているときに私一人で行って、王都ごと瓦礫にしてしまえば済みますから」
 「でしたら・・・」
 
 「しかしそうなると、盗賊の巣窟になったり内乱が起きたりして結果周辺国を巻き込んでの大戦に発展するおそれがあります、それがうちがイスパニアを追い返すだけで滅ばさない理由です。」
 
 「極端なことを言えば、国民も含めて皆殺しで良ければ私一人でも十分可能なんです。」
 「うちとしては有能な統治者が現れてくれるの待つしかないんです。」
 
 「では、我々が行って救助するというのは?」
 陸自の橋本3佐が名乗りをあげた・・
 
 「少数なら私が黙っていれば済むでしょうけど、大規模な軍を率いれるのは国が認めないでしょう」
 「何とか認めて貰えないでしょうか?、正式に政府間で調印するとか・・・」
 
 「無理ですね、幾ら国王とはいえ、他国の軍を引きいれるとなると他の貴族の意見も聞かない訳には行きません。」
 
 「しかし我々はあくまでも救助が目的で貴国を侵略する目的はありませんよ」
 「アハ、それは多分うちの貴族も思ってないと思いますよ、本心は・・・建前として侵略と叫ぶしょうけど・・」
 
 「陸自さんは少数での奪還作戦は可能か検討してみて貰えますか?」
 「わかりました。」
 公安の山崎さんの言葉に陸自の橋本3佐が答えている。
 
 「特戦でも送り込むつもりですか?」
 陸自の橋本3佐がギョッっとしておどろいている・・
 
 「そう驚かなくても・・・一般にも公開されている情報ですし・・」
 「随分、自衛隊にもお詳しいようですな。」
 
 「いやいや、全然、ですよ。」
 「いや、興味のない方は特戦なんて言葉は知らないと思いますよ。」
 
 「まあ、しょっちゅう来てますからね・・・、あっ、密入国でまた、逮捕しますか?」
 「もう、勘弁して下さい。それに仮に逮捕してもいつでも転移で逃げれるじゃないですか・・・オマケにこっちは追いかけることは出来ない。どうしようもないじゃないですか」
 菅原警視正が苦笑いしている。
 
 「陸自の方は救出目的の場合は一桁の人数なら受け入れても良いですが、支援は限られます。それでも良ければ件としてみて下さい。GOサインが出れば渡せる限りの情報は渡します。」
 
 「宜しくお願いします。では、私の方は上層部と検討して見ます。」
 陸自の二人は出て行った。
 
 「では、今日の所はお開きですかね・・」
 席を立とうと腰を上げたときだった。
 
 「もう暫く、付き合って貰って良いですか?」
 「はぁ、何でしょうか?」
 「魔石についてですが、記者会見の席で使われた魔石とは結構ある物なんですか?」
 「そうですね、魔石自体は魔物の体内で作成されますので魔物を倒せば体内から取り出せばありますね、」

 「うちの世界では魔物を倒して魔石や素材、魔物の牙や毛皮、鱗などですが、それを売って暮らしている人も結構いますね。」
 「どれくらいの価値がある物なんですか?」
 「大きさなど、物に拠りますね、数千円~数億円までです。記者会見でも言ったように魔石は魔法の触媒や燃料として使われていますね。結構使い道は広くて万能ですよ。」
 
 例えばこれだと千円ぐらいですね。
 そう言ってアイテムボックスから小豆大の魔石を取り出した。此方だと数万円になります。ゴルフボールより一回り小さい魔石を取り出して見せた。
 
 「えっ、どこから取り出したんですか?」
 「まあ、魔法なんですが、仮想空間とでもいいますか、その空間に収納しています。」
 「ほんとに、何でもありなんですねぇ・・・」
 茜がおどろいている・・・
 
 「あっ、茜ちゃん、今日うちに来てみない、一度見ておいた方が良いでしょう。」
 「えっ、良いんですかぁ・・・」
 
 「もちろん」
 「菅原さん、今日、茜ちゃんをお借りして良いですか?、明日にはお返ししますので・・・」
 
 「えぇ・・構いません、お好きにどうぞ!、煮るなり焼くなり好きにして良いですよ。」
 「そんなぁ・・・酷いですぅ~」
 
 「心配しなくて良いぞ、万が一何かあればきちんと労災扱いにしてやる、お国の為に死んでこい」
 「殺しませんよ・・・」
 
 「いや、冗談ですが、ほんと彼女は好きにして貰って構いませんからこれを売って頂けませんか?」
 「あっ、それぐらいなら差し上げますよ。」
 
 「良いんですか?」
 「えぇ、お借りする代金としては釣り合わないかも知れませんのでこれも付けましょう」
 俺はそう言って小瓶をひとつ取り出した・・・
 
 「これ、何ですか?」
 「これはエリクシールと言う薬です。死んでさえいなければ怪我や病気に効きます。即効性がありますのですぐに治りますよ。四肢の欠損でも修復可能ですし、小児腎不全なら半分も飲ませれば十分でしょう。」
 
 「ま、まさかうちの娘のことを・・・」
 「さぁ・・それを国に治めるも私用に使うも魔石を含めて自由です、私はあげた物には記録に残さないですし、人にも喋りませんから・・」
 
 「あなたの世界ではこう言う薬が簡単に手に入るのですか?」
 「まさか、国王ですら持っている人は少ないでしょう。殆ど流通していません。この前、オークションに出たときには開始値が日本円で3億円でしたから・・・結局、商人が4億5千万で買っていきましたけどね。」
 
 「そんな貴重な物をどうして・・・わたしにはそんな大金払えませんよ」
 「あげると言ったのです、代金はいりません、小さな女の子が苦しむのは見たく有りませんし、だからといって誰も彼も助けたりはしません、これもひとつのえにしです、それだけの事です。」
 「私はまだ、それなりに持ってますし、何より薬を使わなくても治せますしね。」
 
 「では、鉄の用意が出来たら連絡して下さい。」
 「有り難う御座いました。」
 深々と頭を下げている。
 
 「それは結果が出てから聞きましょう。」
 「では、今日の所は失礼します。」
 「さぁ、茜ちゃん行こうか、さて、許可も貰ったし煮ようか焼こうかどっちが良い」
 「もう、どっちも嫌です。」
 「あっ、相馬さんも来ませんか?、明後日まで休みなんでしょう。奥さんも悠人君もいますしどうですか?」
 「私までお世話になって良いんですか?」
 
 「全然、構いませんよ、部屋は余ってますし・・・あっ、部屋は奥さんと一緒で良いですよね。」
 「はい、構いません。」
 
 「ここに車を置かせて貰って構いませんか?」
 「えぇ。どうぞ、どうぞ!」
 
 「では、このまま転移します。」
 「相馬さん私に触れて下さい、ほら、茜ちゃんも」
 茜ちゃんの手をひっぱり此方にたぐり寄せる。.
 
 「き、きえた・・・」
 菅原警視正は俺たちの消えた後で呆然と立ち尽くしていた・・・
 
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