私の愛した召喚獣

Azanasi

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第四章 内政

【混沌1】

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【混沌】

 悠人の父親は記者会見の席で報道陣に囲まれていた。
 生徒としてはたった一人の生還者の所為もあって自宅に報道陣が集まったので父親は記者会見を開く事を条件に自宅への取材を取りやめて貰うように話を付けたのだった。

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 記者会見会場

 「息子さんが無事に生還されたそうでおめでとう御座います。」
 「悠人君が帰って来られるまでの経緯をお聞かせ下さい。」

 「バスで走行中にまず、辺りが真っ白になるほどの光を感じたそうです、その後、光から一瞬遅れて雷鳴の様な音が響いたので悠人は雷が落ちたと思ったそうですが、次の瞬間気がついたら、全然、知らない部屋に総勢122名がいたそうです。」

 「王女が生徒達を召喚した理由と今後の予定に着いて説明の後、すぐに魔力か何かの試験が始まり、それで資質無し判断された12名は別室に移され酷い扱いを受けたそうです。」
 「王女に話に疑問を持った悠人はすぐにその場からの逃亡を決めてそれに賛同した他4名と一緒に逃亡をしたそうです。」

 「3ヶ月掛けて隣国へ逃げた悠人達はすぐに密入国として捕らえられ、牢に入れられて事情聴取を受けたそうです。事情を理解した領主は略式裁判の後、罰金刑となったそうです。」
 「その時点で支払い能力のあった、バスガイドの方とうちの悠人が領主に送って貰って帰ってきたと言う訳です。」

 「生徒を召喚したというのが本当だと仮定してその理由は何だったのですが?」
 「生徒を隣国への侵略戦争に従軍させる為です。」

 「何故、わざわざ別の世界から呼び寄せる必要があるのですか?」
 「これは領主からの話で確定ではありませんが、異世界からやって来る人達は殆どが能力が高いという事があげられるそうです。もうひとつの理由として戦争で自国民が死ぬのは王への批判が集まるのでそれを回避したい思いもあるそうです。」

 「密入国で捕まり罰金刑となったそうですが、具体的には幾らですか?」
 「日本円に換算すると50万円です。」

 「では、支払われたのですね。」
 「いいえ、息子は払っていません、領主は息子が支払い能力があるのを確認すると、それは取っておけと言われたそうです。」

 「それに意味があるのでしょうか?」
 「向こうの世界では15歳で成人と見なされるそうです、当然息子も成人と見なされ罰金刑にされましたが、支払い能力、つまりは本当に支払う気があるのかを確認したかったのだと推測されます。」

 「逮捕された所の領主が送ってくれたと言う事ですが、そんなに簡単に行ったり来たり出来るのでしょうか?、どう考えても不可能に思えますが・・」
 「はい、私も実際に見るまでは信じられませんでした。」

 「実際に見たんですね。」
 「魔法自体は使える方は向こうの国にはそれなりにいるそうです。全員が使えるという訳ではありません、使える方の殆どは貴族だそうです。中でも転移の魔法は失われた魔法と呼ばれているそうで、実際に使えるのが確認されているのは彼一人だそうです。」

 「実際に転移するところも見ましたし、近距離ではありますが、私も体験しました。また、何もないところから水球を発生させたのも見ました。これは領主が警察に逮捕されたとき警察でも実演したそうですが・・・警察はマジックと決めてかかったそうですけどね。」

 「何故、貴族は魔法を使えるのですか?」
 「これも受け売りなので確証はありませんが、魔法の素質は遺伝の要素が強いそうです、当然、結婚相手には貴族同士、魔法の強い者同士の結婚が推奨されていますし、希に平民から能力のある者が生まれると貴族と結婚させられたり、貴族として叙爵されたりするので結果、貴族ばかりが魔法を使えるという図式が出来上がってるそうです。」

 「この記者会見の前に息子達が撮った動画を動画投稿サイトにアップしておりますので参考にされて下さい。召喚によって拉致された国の王女や国の様子、魔物と魔物を魔法で退治するのが上がっています。」

 「ここに領主からあずかった魔石と呼ばれる物があります。、魔石は魔物の体内で生成され魔力を含んだ物質だそうです、向こうの世界では照明や暖房などのエネルギーとして活用されているのも息子が確認しております。さて、この魔石ですが、普通の魔石ではなく領主の転移の魔法を付加させて有る魔石だそうで転移石という名称で呼ばれるそうですが、、使うと転移出来るそうです。
希望者があればその方に試して貰おうと思いますが、いなければ私の方で実演しますが、どうですか?、希望者はいらっしゃいますか?

 「俺にやらせてくれ・・・」
 5名ほどの男達が手を挙げた・・・
 「では不正の無い様に5人でじゃんけんして決めて下さい、これは1名用ですので・・・」

 5人が、じゃんけんで決めている。
 どうやら決まったようだ・・・・

 「では、説明しますね、この意思を足下に投げつけるとあらかじめ設定した地点へと瞬間的に移動します、今回は使用者の右側3mへと設定してあります。ではどうぞ!!」

 TVクルーのリポーターが試す事になった。
 念のためにリポーターの右側は10m先まで誰もいない。
 
 「この石を足もとに投げれば良いんですね。」
 
 「はい、普通で良いです、あまり強く投げる必要はありません。」
 
 リポーターは目を閉じて暫く考えている様子だ・・・・
 深呼吸しているのが見ている方でも分かる
 
 リポーターが足下に石を投げつけた・・・
 その瞬間、リポーターは光に包まれた・・・・
 
 光が消えたときにはリポーターは右側3mの所に移動していた・・・
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 
 「「「「「おーーーっ、すげぇーーーっ、」」」」」
 
 皆、驚いて歓声を上げている・中には口を開けたまま茫然自失の記者もいる。
 何人かの記者は記者会見の会場から飛び出していった。
 会場内は携帯が使えない為、恐らくいち早く届ける為だろう。..
 
 「これがマジックだという方はどういう方法で実現したのか種を考えてみて下さい。」
 ちょっと意地悪な顔をして悠人の父親は報道陣に話した。
 
 実際に転移した記者は足下を踏んでみたりして床を確認している・・・他の記者も似たような事をやっている。.
 
 「今のが魔法がマジックかは後で専門家に検証して貰うとして、仮にですが本当だとしてその領主の所にはあと3人の生徒が残っている訳ですよね、その領主はどこにいるのですか?、残りの生徒達はいつ帰ってくるのですか?」
 
 「領主はこの国に対して深く失望して自分の領地へと帰りました。」
 「未定です。もしかすると帰って来れないかも知れません。」
 
 「それはどういう事ですか?、自分の子供が帰ってきたので後は知らないと言うのですか?」
 記者の質問は意地が悪い、悠人の父親が他人には無関心であるかのように聞いてきた。
 
 「その辺の事情は警察に聞いて貰った方が早いと思います。領主の一方的な言い分は聞いておりますが、警察と領主間の問題ですので領主の言い分だけ話すのは不適切だと思っています。」
 
 「では、事実ではなく参考として領主側の言い分としてお聴きしたいのですが?」
 「分かりました。事実はどうかは確認しておりませんのであくまでの領主の言い分としてならお話ししましょう。」
 「領主は2名を連れてきた訳ですが、息子からその事を聞くとすぐに誘拐の容疑で任意同行を求められたそうです、彼の言い分は一切聞かず、何度も何度も繰り返し同じ質問をするばかりで、流石に呆れた領主は帰らせて貰うと言うと、密入国の現行犯で逮捕、手錠を嵌められた上に暴行されたので、その場で手錠を外し、悠人の入院先まで転移して来ました。」
 
 「警察での取り扱いに領主は非情に憤慨しておりました、日本という国がそう言う対応をするのなら、こっちもそれなりの対応はすると、残りの3人は元いた国へ強制送還すると言っておりましたのでそこを何とか止めて欲しいと頼み込みましたが・・・言質を取る事は出来ませんでした。」
 
 「強制送還されるとなるとどうなると思われますか?」
 「戦時逃亡罪が適用され、他の皆への見せしめも兼ねて恐らく公開処刑ではないかと・・・・」
 
 「先も言ったように強制送還を止めるという言質も取れなかったので攻めて、強制送還する前に一度来て欲しいと頼みましたが返事はなかったので、せめてその間だけでもうちの家内を残りの生徒のケアと確認の為の同行させて貰うように頼み込みました。」
 
 「残りの3名の名前は分かりますか?」
 「分かっていますが、プライバシーの問題がありますので、司法関係か公的機関からの正式な問い合わせで無い限りお答えは出来ません。」
 
 「では奥様は今、異世界ですか?」
 「はい、そうです。」
 「何時お帰りになりますか?」
 「不明です。」
 
 「そんな何時帰れるかも分からないところへ良く奥様をやりましたね。」
 「妻は残された生徒の事をかなり心配していまして妻の強い希望が有りました。、妻は元看護師として働いておりましたので・・・自分が適任と言って、行くと言い張りましたので・・・仕方なく認めた次第です。」
 
 「申し訳ありませんが、予定の時間を大幅に過ぎましたのでこれで終了とさせて頂きます。なお、ご質問は先程、お渡したアドレスにてお問い合わせ下さい、回答はそこに載っているURLの掲示板にて回答させて頂きます。個別への回答は致しません。」
 「では、これで終わらせて頂きます。」
 
 記者会見が報道されると生徒の保護者や支援者などが所轄の警察署に押しかけて一時は警察機能が停止するほどの事態となった。が、所轄側が記者会見を開く事を条件に一時的に解散する事になった。
 
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 所轄署での記者会見
 
 「失踪者2名保護、容疑者1名確保と発表がありましたが・・その容疑者の様子はどうですか?」
 「失踪者は当署で保護し1名は帰宅、1名は念のため入院して経過観察中です。、容疑者については現在、逃亡中です。」
 
 「つまり、逃げたと言う事ですか?」
 「はい、そうです。」
 
 「ある情報によると転移したとありますが・・・」
 「確認しておりません。」
 
 では、保護者の記者会見はご覧になりましたか?」
 「はい、見ました。」
 
 「任意同行し、密入国の疑いで逮捕とありますが、事実ですか?」
 「いいえ、失踪者を連れてきたのであくまでも参考人として事情聴取していただけです、その際に密入国と判明したので逮捕に至りました。」
 
 「どうして密入国と断定出来たのですか?、どこかの大使館に確認したのですか?」
 「パスポートを所持しておりませんでした。」
 
 「では、外国人と決めつけた理由は?、話によると流ちょうな日本語を話していたと聞きますが」
 「まさか、髪の色や容姿で決めつけた訳では無いですよね、あくまでのその時点では密入国の疑いではなかったのですか?」
 「・・・・・・」
 
 「連れ戻してくれた恩人を犯人扱いした上に誤認逮捕したのでは有りませんか?」
 「・・・・・」
 「聞くところによると彼の屋敷にはまだ、3人の生徒が残っているそうです。警察の横暴によってその帰還が怪しくなった責任は・・・また、残り115人の失踪者達への手がかりを失った責任はどう取るのですか?」
 
 「一時的とはいえ確保した参考人はあくまでも参考人であって失踪者との関連性は証明された訳ではありませんのでお答えのしようがありません。」
 
 警察としては悠人の父親の記者会見は寝耳に水であった。
 デモに圧倒され、記者会見は決まった物のまだ、何も決まっている状態ではなかった。
 
 記者会見所に他の署員が何か紙切れを持って来た。.
 「えっ、当然ですが、この場にて一旦、記者会見は中止とさせて頂きます、本日午後6時より記者会見を開きますのでそれまで回答は控えさせて頂きます。」
 そう言うと、署長ら関係者は引き上げていった。
 
 後には記者達の罵声が飛び交っていた。..
 
 「当然、愛子の所にもマスコミは押しかけたが、愛子は自宅にはいる様子はなかった。ルーカスと別れた後、そのまま、新幹線に飛び乗り九州の友人宅に身を寄せていたのだった。」
 
 記者会見の模様が報道されたときに一番注目されたのはやはり転移の実験だった。TV局は有名マジシャンのを呼び、転移をマジックで再現出来るか解説をさせていた。
 「箱なりカーテンなり隠れる物を用意しておかない限り、マジックでは再現不可能ですね。一番簡単な方法は動画を編集すれば誰だって出来ますけどね。.」
 
 「映像に編集がされてない事は現場にいた多数の報道陣が見てましたので編集はあり得ません。」
 「そうですかぁ・・では私もあの転移石ですか?、ひとつ欲しいですねぇ・・・」
 
 「でも、怖い品物でもありますよ、一瞬で指定した場所に転移出来るんですから・・軍事利用したらとんでもない事になりそうですよ。」
 
 「戦場で怪我をしたら基地に転移するみたいな使い方ならまだ、ましですが、逆に人知れず進入も簡単な訳で・・・人だけでなく一部隊が送れるとかであればかなりの脅威と言えますね。」
 
 「また、民間的な有効利用として飛行機の時間短縮とか、SFみたいにワープ航法が可能になる可能性もある訳で新たな惑星の発見とか利用価値はとんでもない物でしょう。」
 
 そう言う意味では警察は失敗してしまったと言う事ですね。
 「そうですねぇ、今後挽回出来るかどうかは現時点では同行した夫人に掛かっていると言っても良いでしょう」
 
 ネットでは息子が帰ってきたにもかかわらず、残りの子供の安否を気遣って異世界へわたった夫人は絶賛されていた。
 悠人の母親が身を挺して生徒達の強制送還を止めてくれるかも知れないと期待の声が上がっていた。また、残り115名に関しても政府はすぐに救出の対策を取るべきだとネット、マスコミから政府への避難の声が上がっていた。.
 
 丁度その日、ある芸能人が薬物の使用で逮捕されたが一日中、失踪者関連の特番で殆ど報道される事もなかった。
 本人にとっては非情にラッキーな事件だとも言えただろう。
 その頃異世界では・・・
 
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 翌朝
 
 朝一にエマの部屋に向かった美琴は従者になりたい旨をエマに告げていた。
 「あなたの気持ちは分かりました。私からルーカス様にお話ししてみましょう。」
 
 「おはよう御座います。」
 「おはよう御座います。」
 「美琴さん、昨日はよく眠れましたか?」
 
 「はい、と言いたいところですが、実は興奮してなかなか寝付けませんでした。..」
 「所で、ルーカス様、美琴さんを従者にしてあげてくれませんか?」
 
 「向こうでの人員もリネーネ様一人よりは日本に詳しい方がもう一人ぐらい居た方が便利だと思いますが・・・」
 
 「エマがそう言うのなら構わないが、従者の事は説明したのか?」
 「はい、説明してあります。」
 
 「じゃ、いいよ、しかしひとつだけ条件がある、仮に魔法が使えるようになったとして日本では使わないと・・・従者になればこっちに来る機会は本人が望めば機会は幾らでもあるのでこっちで使えると思う、それで納得出来るかな?」
 
 「んーーっ、そうですね、向こうで魔法が使えるようになったとなるとまともな日常生活は送れそうにないですしそれで構いません。」
 
 「じゃ、此方に来て下さい。胸に手を当てますが、良いですか?」
 「はい」
  
 美琴の立派な胸に軽く手を当てた。
 
 「創造神フィーネの名の下に置いて汝、相馬美琴をルーカス・ハミルトンの従者として仕える事を命じる」
 
 「はい、ルーカス様にこの身と心の全てを差し出し忠誠を尽くす事を堅く誓います。」
 美琴が答えると美琴の体は輝きをました・・輝きを増していきゆっくりと空中に浮いた。
 
 「へっ、?、なに?、」
 これまで何人かを従者にして来がこんな事は初めてだった。
 
 「ルーカス様これは一体、如何をしたのですか?」
 「い、いや・・・分からん、初めての現象だ・・・」
 
 「エマ、返事の仕方を教えたのはお前か?」
 「はい、でも、私はルーカス様が言われた事に対しては”はい”と答えれば良いとしか言っていません。」
 
 空中に浮いた美琴はさらに輝きを増し水色の球体の中に包まれていった。
 「うーーん、返事は自分で考えたのか?、そう言えばそっち系の人だったなぁ・・・・」
 「取り敢えず、見守ろう・・・・」
 
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