私の愛した召喚獣

Azanasi

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第四章 内政

脱走した転移者4

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【脱走した転移者4】

□■□ 転移者 Side □■□
 昼食が終わってティータイム中だった。
 
 「なあ、明日は僕と愛子さんが第一陣で帰る訳だけど、もちろん皆のご両親には話すけど、費用は国と学校に請求してみようと思う。どう思う?」
 悠人は日本国民である、国民であれば国は保護する義務は有るはずだと考えていた。
 
 「俺は悠人に任せるよ。」
 田中信二がそう言うと他の3人も首を縦に振って同意していた。.
 
 「そうよねぇ、国に義務は有るだろうし学校の責任だって有るはず・・・」
 実際問題として国に保護義務はあるだろうが、犯罪の罰金を払う義務はないと考えるのが普通だが本人達はそうせざる終えなかったという状況下では仕方のないことなので国に請求を考えているのだった。
 
 「何処に送って貰えるのか?、何処でも良いのか?、その辺は分からないから領主と相談するとして家の近く出ない場合は警察だな・・・」
 恐らく話題になっているだろう、話題になってない方がおかしいからどっちみち警察に行くことになるだろうし・・
 
 「でもさぁ、日本と異世界を行き来出来るなんてチート過ぎるよな~」
 信二はかなりうらやましそうに言っている。.
 
 「確かにそれが出来れば結構、稼げるんじゃないか?」
 「だよねぇ~・・・」
 
 「あのねぇ、これで私達5人は帰る見込みが付いた訳なんだけど・・・他の人達はどうするの?、このままだと戦争になるんでしょ。」
 リナは他の同級生を心配していた・・・仲の良い友達も何人か残っているし・・・
 
 「・・・うーーん・・・」
 悠人は頭をかきむしりながら必死に考えている。
 
 「領主に頼めば良いんじゃね?、金さえ払えばやってくれそうな気がするぞ!」
 (あの領主って結構がめつそうだから金さえ払えば何でもやるんじゃないかな?、大体、高校生から金取るかよ、普通。.)
 
 「僕は無理だと思う。領主って金に困ってる訳ないじゃん、今の扱いから考えても判ると思う。それに領主がクラスメイトを救出なんて言ったら、イルメニア王国がイスパニア王国に宣戦布告無しで戦争をふっかけることになる。一領主の判断で出来る範囲を超えてると思うよ。」
 (あの領主が戦争を起こすとは思えないし、こっちの視点で考えるとそこまでするメリットもないし、かと言って放っては置けないし取り敢えず相談だけでもして見るべきだよなぁ~)
 
 ジェシカが昼食の後片づけに来た・・・
 「すいません、僕たち外に出てみることは出来ませんか?」
 
 「私では判断出来ませんので此方を片付けてから聞いて参りますね。」
 「宜しくお願いします。」
 悠人はリナと窓から外を眺めては居たが、明日帰れるとなると余計に外を見てみたくなった。
 
 □■□ アメリアの執務室 □■□
 
 アメリアは決裁の書類の山と格闘していた・・・
 「うーん、本当にもう、なんで私がルーカスの領地の決裁までしなきゃ行けないのよ」
 「あーーーっ、自分は好き勝手飛び回って・・・もう、むかつく・・・・」
 
 ジェシカが執務室をノックしている
 「ジェシカ?、入って良いわよ」
 なにげに怒気がまざっていて・・・ジェシカはビビったのだがそこは馴れたメイド、平静を装う。
 
 「失礼します、あのルーカス様が保護されたご一行が外を見てみたいと言われてますが・・・」
 「無理ね・・・却下!!」
 即決だった・・・
 
 「領地ならいざ知らず、ここは王都なのよ、黒目黒髪の人間が5人もうろついていたら人目に付くわ・・・トラブルになりそうだから却下ね。」
 「はい、そのように申し伝えます。」
 
 ジェシカは悠人達の処に戻ってきて屋敷を出られない旨を告げた・・・
 「分かりました。」
 「お手間をおかけして申し訳ありませんでした。」
 
 「いいえ、此方こそ、お役に立てなくて・・・申し訳ありません。では、失礼します。」
 ジェシカはそう言うと部屋を出て行った。
 
 「ちぇっ、折角、異世界に来たのに見たのは山と森ばかり、街も見たかったな、イスパニア王国では逃げるのに必死で街なんて見れなかったし・・」
 信二は帰れる見込みが付くと、段々と元の性格が出てきた・・・
 
 「監禁されててる訳じゃないし、窓からこっそり出ようか?、2階だけど下の屋根に下りれば何とか出れそうだぜ!!」
 
 「信二、やめろ!!」
 「お前だけでなく皆に迷惑が掛かる。どうして持って言うのなら信二一人になってからしてくれ・・」
 
 「分かった、分かったってばそう向きにならなくても良いだろう」
 悠人だけでなく女子3人からも睨まれては信二も肩をすくめて引き下がるしかなかった。
 (はぁーーこう監禁みたいな生活が何日か続くかと思うと頭が痛くなるわな)
 
 □■□ ルーカスが王城より戻ってきた。 □■□
 
 「よう、外に出たいそうだがここは王都の屋敷なんでな、お前らがうろつくと色々とトラブルになるから、ま、我慢してくれ・・もし、日数が掛かるようなら領地に連れて行っても良いけどな、領地なら外出も可能だ」
 
 「いいえ、此方こそ立場もわきまえずに無理を言って済みませんでした。」
 「それからお昼はご馳走になりました。久しぶりに米が食べられたので感激でした。」
 悠人がお礼を言って頭を下げると、女子3名も頭を下げていた・・・
 
 「本当に美味しかったよねぇ・・
 もしかすると日本のカレーを使ってますか?」
 
 「あぁ、そうだよ、よくわかったねと言うか、分かるよね、普通。」
 
 「あ、あのう、実は相談があるんですが・・・」
 悠人は実に言い難そうにしている・・・
 
 「なんだ?」
 「実はイスパニア王国に残されている仲間の事なんですが・・・助けて貰うって訳には行きませんよね。」
 
 「無理だな」
 即答だった・・・まあ、当然なんだが・・・
 
 「イルメニア王国の辺境伯の俺がイスパニア王国に乗り込んで行って見ろ、ただでさえ、戦争を仕掛けようとしている国に取っては好都合だろう。戦争の大義名分が出来るんだからな。仮に国王に話しても許可は絶対にでない・・・」
 イルメニア王国は戦争を仕掛けられれば当然、反撃するがこっちから戦争をふっかけるなんて事はしない。
 
 「では、帰して貰うように政府レベルで相談出来ないでしょうか?」
 「お前さぁ、折角召喚した捨て駒をわざわざ、戦争を仕掛けようとしている国に渡すと思うか?」
 
 「ですよねぇ・・・無理だろうとは思ったんですが・・・」
 悠人自身も自分で言っていながら説得力はないと思っていた・・・
 
 「ただ、ハイドライド聖教国はイスパニア王国に対して召喚者の引き渡しを要求したそうだ・・・」
 「本当ですか?」
 「あぁ、でも、引き渡しなんてしないと思うよ。絶対に・・・」
 
 「でも、取り敢えず要求はしてくれるんですよね。」
 「あぁ、聖教国はこの世界で唯一勇者召喚が出来る国だからな・・引き渡しはしないと思う。ただ、その時はイスパニアに対して関係諸国は経済封鎖を行うことになるからただでさえ、干上がりかけてる国が完全に干上がるだろうな・・・餓死者も大量に出るだろう。」
 
 「では、引き渡す可能性も有るかも知れないですよね。」
 「甘いな、不満が出れば出るほど王家にとっては好都合だ・・・不満を外的に向ければ戦争への意欲も高まるからな・・・」
 
 「そんなぁ・・・・・」
 悠人と女生徒はがっくりとうなだれている・・・
 
 「戦争が始まったらクラスメイトはどうなるんでしょうか?」
 「それくらい分かってるだろう、最前線に配置されるに決まってるだろう・・・」
 
 「当然、迎え撃つ訳ですよね。」
 「あぁ・・・当然な・・・恐らく殆どが死ぬだろうな・・・」
 
 「うちとイスパニア王国では国土の面積で3倍、経済力で訳10倍の差がある、ま、その差を勇者召喚で埋めようって考えなんだろう。」
 
 「そんなに勝つと分かってればこっちから攻めて助けてくれても良いじゃないですか?」
 信二はどうせ戦争することになるなら同じじゃないかと言いたいのだろう。.
 (そんなに国力があるのなら無実の高校生を助けるのが人道的だろう)
 
 「お前バカか・・・」
 「こっちが戦争を仕掛ければ向こうに大義名分が出来る。..こっちは非難される側だ・・・第一、自国の民でもないので膨大な戦費と犠牲を出すなんて民が許すと思うか?、民有っての貴族であり国なんだ・・・」
 
 「そんなに助けたければ自分で行けば良い・・・武器ぐらいは貸してやるぞ!」
 信二は下を向いたまま、ぶつぶつとなんと言っているか分からないような事を呟いている・・・
 
 「信二、残念だけど仕方ないよ。俺たちに出来ることは限られているから・・・魔法も使えない俺たちが言ってもたどり着くのさえ無理だろう・・・」
 
 「・・・・・・」
 「リナはどうだ?、玉砕覚悟で突入したいか?、」
 
 「うん、攻めて私達が、強力な魔法でも使えたらリスクはあっても助けに行くってプランも有りだと思うのね、でも現状だと私達がどうなっているかを国に帰って伝えることが大事なんじゃないかな?」
 
 「あのう、すいません、もし、もし良かったら魔法を見せて貰えませんか?」
 「私達、直ぐに逃げたので魔法は見たことがないんです。」
 リナは魔法を見てみたいと思って無理でも取り敢えずは言って見るだけ行ってみようと思った。なぜなら魔法については王女が使えると言っていたが疑心暗鬼だった。
 
 「ん。。。ま、それぐらいなら良いだろう。」
 「集まってくれ。.これから領地へ転移する」
 
 「ウォーーーッ、ヤッター!!!」
 男子達ははしゃいで、女子達は目をキラキラさせている
 やっぱり異世界に来たら魔法を見ておかなければなーーー
 
 「じゃ、行くぞ・・・」
 「フォンテーヌ領の屋敷に転移した。」
 
 「えっ、ここは何処ですか?」
 「俺の領地のフォンテーヌ領だ・・・」
 
 「あら、この子達は?、あっ、もしかして保護してきた日本の高校生ね。」
 奈津が俺が転移してきたところへやって来た・・・
 
 「こんにちは・・・宜しくお願いします。」
 「はい、よろしくね・・・って何がよろしくなのかしら?」
 
 「あぁ、此奴らは魔法が見たいそうだ・・・・」
 「なるほど・・・ってここで出せるのはこんなのしかないわよ」
 奈津はそう言いながら片手に火球をだし、もう片方には水球を出した・・・
 
 「本格的に見たいならどっか移動しなきゃ・・・」
 屋敷内で魔法を使えば屋敷が壊れてしまう。どっか広いところへ行かないと・・・
 
 「奈津、廃鉱山の跡地なんかどうだろう?」
 「良いけど、あそこはゴブリンの巣になってるんじゃなかった?」
 
 「駆除も兼ねて丁度良いだろう・・・」
 「そうねぇ・・」
 奈津はちょっとにやりとして悪戯っぽく笑う。
 
 「じゃまた、移動するぞ!、集まってくれ・・・」

 ゚*。*☆*。*゚*。*☆*。*゚*。*☆*。*゚*。*☆*。*゚*。*☆*。*
 □■□ 廃鉱山跡地 □■□
 
 「ここは・・・うぁーーーっ、ば、化け物だーーーー」
 転移してきた処から50mほど離れたところにゴブリンが5匹ほどうろうろしていた。..
 
 「奈津、宜しく・・・」
 「そうねぇ、手数を変えてやってみようかしら・・・」
 「ファイヤーボール」
 手のひらから放たれた火球はゴブリン目掛けて飛んでいき、ゴブリンにあたると爆散してゴブリンの上半身がなくなった・・・・
 
 「ウォーーっすげ・・」
 男子の二人は驚きつつも歓喜声を上げているが女子3人はちょっと気分が悪そうだ・・・・
 
 「アイスアロー」
 氷の矢と言うよりナイフっぽいものがゴブリンに目掛けて5本ほど飛んでいって命中、ゴブリンは穴だらけになって倒れた・・・速度を上げてなかったおかげで爆散はしなかった、奈津なりに女子に配慮したんだろう。
 
 「ウィンドカッター」
 一瞬、風が吹いたかと思うと殆ど透明な風がゴブリンにむかっていく・・・あたるとゴブリンの首がぽとりとおちた・・・
 「うぅっ、うぇ、」
 女子達は吐きそうなのを必死で口を押さえて耐えている・・・
 何かそんな様子は可愛いなって思った俺は変態なのか?、うーん、変態かも知れない。
 
 その時、残っていたゴブリンが仲間を呼びに行ったのか数十匹のゴブリンがぞろぞろと出てきた。
 中には剣を持っているゴブリンも一定割合混ざっているようだ・・・・
 
 「あっ、面倒くさくなっちゃったわね。ね、まとめてやっちゃって良い?」
 奈津は片手をあげると空に多数の魔方陣が展開された。手を下ろすと多数の魔方陣からゴブリンの何倍、嫌何十倍の数のオレンジ色に燃える石がゴブリンの頭上に振り楚々居た・・・
 
 「ズドドドーーーーーン」
 土煙が舞う中でゴホゴホと噎びながらも高校生達は経っていられないのか揺れる大地の上で必死にバランスをとって倒れてしまっている。
 土煙が収まった頃には経っているゴブリンの姿はなかった。
 
 「な、今のは何ですか?、今のも魔法?」
 あまりの凄さに驚きつつも悠人は奈津に訪ねる。
 
 「今のは火炎魔法と土魔法の複合魔法、上級魔法、いや、神級に近いかな?」
 「最初に使ったのは初級魔法だよ・・・魔法が使える人なら誰でもつかえるかな。」
 「・・・・・・」
 悠人:ま、魔法って何でもありなんだなぁ、好きなところに瞬間移動出来たり、僕らの世界で出来たら戦争の形態がきっと変わるよね。出来れば何かひとつぐらい覚えていきたいけど
 信二:スゲーッ、俺も発動したらあんなに出来るのかなぁ・・・
 
 「さて、また、ぞろぞろと出てきても面倒くさいので戻るぞ!!」
 「はい、分かりました。どうも有り難う御座いました。」
 
 悠人がそう言うと残りの面子も「有り難う御座いました。」と言って頭を下げている。
 こう、しっかりと頭を下げているのを見るとつくづく日本人なんだなぁって思ってしまう。
 此方の世界の人間は余程のことが無い限り頭を下げたりはしない、下げてもほんの気持ちって感じだ。
 
 領都の屋敷に戻ってきた。
 「ルーカス、廃鉱山後は冒険者ギルドに討伐依頼を出しておかないと不味いんじゃ無い」
 「そうだな、うちでやっても良いけど、まかせるか?」
 
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