私の愛した召喚獣

Azanasi

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第一章 召喚

【別離】

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【別離】

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スマフォを頼りに嫁との待ち合わせの店へと急ぐ…
 店の名前からすると料亭のようだが・・そう思いながら探し当てるとやはり料亭だった。都心の中にこんな風情のある所があるのかと言った感じで日本庭園が作り込まれている。きっとこの分お値段に反映されているのだろう。
 入り口で名前を告げると部屋へと通される。通された場所にはすでに嫁の美恵子が来ていた。
 
 「よう、お待たせ!、」
 「そういわれるほど待ってないわよ、さっそく食事にしましょうか?」
  お茶を注いでくれている仲居さんに食事の手配を頼んだ。
  美恵子はワンピースに膝下のスカートで如何に会社帰りと言った服装で、若干緊張しているかの様だった。
  
 「一緒に外で飯食うのは久しぶりだな、どうしたんだい?」
 「久しぶりなんだからいいでしょ、話したいこともあったし。」
 「で、話とは何?、大事な話か?」
 
 「うん、大事な話だから食後にでもゆっくりとしましょう。」
 食事中も仕事の話などを聞こうとするが結局、どうでもいいようなありきたりの話になってしまうのでちまちま食べる料亭の料理では間が持たなくてちょっと居心地が悪いがなんとか最後まで食べる。。。
 
 俺としては最初に話をして飯はゆっくり食いたい派なんだが嫁がそう言って話さないのではどうしようも無いので諦めて食べるがあまり味わえない。
 
 どうやら俺から切り出さないと話が進まないらしい。
 「そろそろいいだろう、大事な話ってなんだ?」
 「・・・・・・・・」
 「言いにくい話で言わずに済むことなら無理に言わなくてもいいけど・・・、別に根ほり葉ほり聞きはそうって気はないんだけどな?」
 
 「金か?」
 「違うの、好きな人が出来たの・・・」
 「ごめんなさい、好きな人が出来たの…2年前ちょっと前から取引先で一緒に仕事をしていてそうなっちゃったのごめんなさい。殴ってもいいわ。」
 
 「うん、で美恵子はどうしたいんだ。」
 「野心家で有能な人なんだけど、今度独立するの、彼は私にも一緒に応援してほしいって・・」
 
 「・・・勝手だとわかってる、でも、別れてほしいの・・・」
 「・・・・・・」
 「わかった。いいよ。たぶんそんな話だろうなっては思ってたけど、そのものずばりだと多少、ざっくりは繰るな。ハハハ・・・」
 
 「マンションはどうする?、売るか?、いいわ、私が出ていく、頭金はあなたの実家から出てるんだし私が払った分は、慰謝料って事でいいわ、残りのローンはあなたが払ってね。」
 「あぁ、それで構わない…じゃ、お互いの名義の貯金はお互いのものでいいか?」
 
 「えぇ、それでいいわ」
 「共通の生活資金としていた分はあなたに返すわ、30万ぐらいは入ってると思う」
 そういって、通帳を差し出してきた、もともと俺の名義で俺がカード、嫁が通帳を持って管理してきた。。
 
 「持ってきてるんだろう、出せよ。」
 「うん、ごめん。」
 そういいながら美恵子は離婚届を差し出してきた。
 
 「一つだけ、条件があるごたごたしたくないから今週の土曜日までに引き払って欲しい、必要なものは何でも持っていって構わない。それでよければ、今サインしても構わない。」
 
 「えぇ、構わないわ、引っ越しと言っても身の回りの物しかもって行かないつもりだし、既に気づいてるかもしれないけど、すでに必要なものはすべて運び出してるから大丈夫よ。マンションにあるものはすべて捨ててもらって構わないわ…」
 
 「ここでサインをもらえれば、もう、マンションには入らない。」
 
 気づいてなかった、基本、嫁の部屋には立ち入らないし・・部屋をあせったりすることはないので何がなくなってるのか全く気づけなかった。
 恐らく俺が断固離婚に反対した時の為にすでに引き払った後でこの話を持ってきたんだろう、ま、それだけ意思は固いってことだな。
 
 「じゃ、だせよ。」
 俺は美恵子が出してきた離婚届に署名捺印をした、印鑑は家にあるのを美恵子が持ってきていた。
 手回しの良い事だと感心した…
 
 「保証人の欄はそっちで適当に誰か頼んでくれ…」
 「わかったわ、明日提出するから…」
 恐らく美恵子の事だすでに頼んでいるのだろう。
 
 「「あぁ、構わない、そうだ、一つ聞かせてくれないか?」」
 
 「なに?」
 「俺のどこがいけなかったんだ?」
 「ううん、あなたはどこも悪くないわ、悪いのはすべて私・・」
 
 「給与は平均以上に稼いでくれて家事も手伝ってくれる、頼めばなんだってしてくれる何も不満はなかったわ。でも、どこか満ち足りなかったの」
 
 「そうねぇ、あなたを犬とすればあの人は狼ってとこかしら…」
 「本当にごめんなさい、すべて私が悪いのはわかってる、相談した奈津にも友達の縁を切られちゃった…約束破ったんだから仕方ないけど…」
 
 (そうなのかぁ、犬かぁ。実はおれフェンリルなのに…狼より強いんだぞ!!、とそんなのを愚痴ってもどうしようも無いのもわかってる)
 
 話し終わると美恵子はマンションのカギを渡してきた。。。
 「パスワードは適当に変えておいてください。」
 「ごめんなさい、そしてありがとうございました。」
 
 「書類を出したらメールをくれ、会社に報告する必要があるから・・」
 これで俺の10年間の夫婦生活は終わりを告げた・・
 
 実際は2年以上前に破綻していたんだけどね。
 
 俺は出ていく嫁をただ見守るしかなかった。
 
 俺はテーブルに置かれた預金通帳、印鑑、カギを手に取ると席を立った。
 美恵子を見送った後、店を出て自宅近くまで来ていたが、そのまま帰るのも少し寂しい気がしたので車を郊外のショッピングモールへと向けた。。
 
 その時、嫁の親友の奈津ちゃんから電話がかかった。
 なんでも俺のマンションに来てるらしい、話があるって・・
 今日は話がある人が多いと思いつつ、電話で話すのもなんだから自宅へと向かう。
 5分ほどで自宅へ着いた。
 
 「ごめん、待たせたね。うちに上がる、それとも外に出る?」
 「ここ、久志君のお家じゃない、家に上がるに決まってるでしょ」
 
 部屋に入ってコーヒー、紅茶・・?
 あっ、勝手知ったる他人の家だもん、私が入れるわ。
 「あれ、カップがいつもの場所にないわ」
 
 「あっ、適当なのでいいよ。」
 「うん、わかった。」
 
 さすが女は目ざといと思った、住んでる俺でさえ気づかなかったことを一発で気づくとは女性、おそるべし…
 
 コーヒーを飲みながらお互いの近況などを話していた…
 彼女は美恵子の高校時代からの親友で大学も同じ、仕事は大手化粧品メーカーの美容部員としてデパートなんかで働いている…
 
 化粧品のサンプルは彼女のつてを頼って融通してもらったものだ・・
 
 「実は美恵子から前々から相談を受けてたんだけど、もう、正直どうしようもなくなったみたい、だから話したほうがいいと思って来たの」
 「あ、その事ならさっき本人から聞いたよ。好きな人が出来たって話でしょ。」
 
 「うん、それでどうなったの?」
 「あぁ、別れて欲しいっていうからいま、サインしてきたとこ」
 
 「こら、久志、おまえ女房に好き勝手に浮気された上に別れてと言われてはい、そうですか?って奴がどこにいるのよ?」
 
 「おい、素面で酔っぱらうなよ。」
 「いいも、悪いもないだろ、彼女の気持ちは既に俺にはなかった、どうあがいても引き戻せないところまで来てたんだ…仕方ないじゃないか」
 
 「だからって言って素直にハンコ押さなくても…」
 「じゃ、どうしろっていうのさ、泣きわめく?、怒る?、そんな事してもどうしようもないよ。」
 
 「これまでだって、関係を修復しようと散々努力したさ、この2年以上の間、あがいても駄目だったんだ…」
 
 「今日初めて美恵子から話を聞いたけど、もう、すでに大事なものはすべて持ち出してあるって・・笑っちゃうよね。おれ、全然、気づかないんだもん、ばかみたい…
 今まで、嫁のタンスや引き出しなんて開けたことがなかったから・・」
 「今日サインしたら、マンションのカギをくれたよ・・・」
 
 「そっかぁ、じゃ仕方ないね。」
 「ヨシ、今日はのもっかぁ、あたしが付き合ってあげる、飲んで明日には忘れちゃえ・・」

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2018/09/05:誤字、脱字、誤用を修正しました。
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