念導戦記

水室二人

文字の大きさ
3 / 6

念導使い その3

しおりを挟む
「そのまま動かすだけが、限界か・・・」

 目の前に浮かぶ布を見ながら、考えます。

 空中で形を変えられれば、目くらましか何かに使えると思ったのですが、移動させた時から、形を変えるというのは出来ませんでした。

「盾としてなら、背後に展開て使えそうですが、速度がネックですね・・・」

 攻撃を見てから、移動するとなると、速度が無いので間に合わない。少し大きな盾だと、重量がオーバーして動かせないので、木の簡単な盾が限度です。

「これで、どれくらいの攻撃が防げるか、不安しかない」

 飛んできた矢を、ギリギリ防げるかどうかです。勢いを殺す事は出来そうですが、それだけでしょう。

 現在は、校庭の片隅で自主訓練中です。他にも、色々と訓練している人がいます。

「少し、よろしいでしょうか?」

 近くで、走り込みをしていた人に声をかける。

「何?」

「この石を、こちらに向かって投げてもらえますか?」

 小さな石を手渡す。小柄な少年だと思ったら、女性でした。この年代なら、性別を間違えても問題ないでしょう。

「どれくらいの速さで?」

「最初は、軽めでお願いします」

「いいよ」

 少し距離をとります。

「それっ!」

 軽く投げられた石は、それなりの速さで飛んできます。

「これくらいは、防げるのか・・・」

 盾に当たった石は、そこで止められ、落下します。盾に当たった衝撃を感じないと言うのは、利点でしょう。

「もう一度行くよ!」

 その子は、もう一度石を投げます。

「とりゃぁ!」

「ちょっ!」

 いきなりの全力投球。しかも、かなりの速度が出ています。

「あれ?」

 それなのに、盾はびくともしません。私が念じた場所に浮かんでいるだけで、石はそのまま落下します。

「傷ひとつ無い?」

 子供が投げたとは言え、それなりの速度がありました。というか、何かのギフトをこの子は持っています。

「凄いね、防御力を上げるギフトなの?」

 わくわくと、期待を込めた子犬のように、こちらに走り寄ってきます。

「僕は、カーシャ。ギフトは身体能力だよ」

 これは、良く聞くギフトです。怪力は、力が増す。身体能力は、全体的な基礎の力が上昇すると言うギフトです。前衛向きで、色々な場所で重宝されると聞いています。

「私は、スティックです」

「謎ギフトの?」

「はい」

 念導力と言う、聞いた事のないギフトを持っている私は、謎ギフトの持ち主と言われています。

「そのギフトの力?」

 今起きた現象に関して、彼女は考えているみたいです。

「色々と、検証中です」

「じゃぁ、そのまま動かないでね」

 そう言って、彼女は距離をとります。

「とぅ!」

 走りこんでからの、とび蹴り。彼女の足は、盾にあたって動きを止めます。盾は、ピクリともしません。

「てい、とう、やー」

 反動で距離をとり、そこから連続で蹴りました。それでも、盾は動きません。

「凄い寝これ、びくともしない!」

「そ、そうだね・・・」

 盾との距離は、結構近い。全力で、とび蹴りや連続蹴りをされると、こちらは少し怖かった。盾の防御力に、それほど自身は無い。なので、無事な事に安心した。

「念じた時点の形を、維持しているのか・・・」

 可能性として、念じた物を、特殊な何かが包んでいて、その形を維持している気がする。

「これだと、どうなるんだ?」

 盾ではなく、もっと軽くてやわらかい物だったらどうなるのだろう。

「もう一つ、お願いしても良い?」

「いいよ」

 実験用の布を、広げてから念じて動かす。

「これを、叩いてみて」

「はいな」

 風を切る音が聞こえそうな、物凄い勢いで、布が殴られた。

「むぅ、なんか気持ち悪い」

 布は、ピクリともしない。広げた状態で、その場所を維持している。

「こうなったら、こうしてくれる!」

 全力で体当たり。彼女は弾かれて、転んでしまう。

「だ、大丈夫?」

「大丈夫だけど、これ何なの?」

「念動力で、動かしているんだよ」

「凄いね、防御に関しては、完璧じゃない?」

「これ、動かす速度が遅いから、防御向きじゃないんだよ」

「それは、もったいないね・・・」

「途中で形を変えられないから、小さい布を広げて防御と言うのも、無理なんだよね」

「もっと、もったいない」

「だから、色々と実験中なんだ。ここまで、防御に使えるなら、使い方次第で色々と出来るかもしれない」

「そうだね。面白そうだから、僕も協力しても良い?」

「いいけど、君は1組だよね?」

「そうだけど?」

「5組に人間と一緒にて、問題ないかな?」

 1組と2組には、他の組を見下す子が大勢いいる。

「そう言えば、面倒かな・・・」

「気持ちだけ、もらっておくよ」

「えっ!!!!」

 私の言葉に、彼女は驚く。

「えーと、スティック君は、人間だったよね?」

「そうだけど?」

「気をつけてよ、私達精霊族は、気持ちだけもらうって、求婚の言葉だよ・・・」

 彼女は、顔を真っ赤にして、もじもじとしている。

「そ、そうなの?」

「知らない人が多いから、注意しなさいいて、お母様から聞いています。昔、お父様がやらかしたとか聞いています」

「そ、それはすまない」

「私は、精霊族とのハーフなので、見分けつかないかもしれませんが、以後注してください」

「解りました」

 思わず、直立不動なた異性で返事をしてしまいました。

 エルフとか、亜人の中に、精霊族という種族がいます。人に近い容姿ですが、額に宝玉があるのが特徴の、特殊な種族です。良く見ると、髪に隠れるように、彼女の宝玉があります。

「じろじろ、みないで」

 それを確認していたら、にらまれました。

「私の宝玉は、みんなと色が少し違うから、すきじゃない」

 綺麗な、赤い宝玉ですが、血の色みたいと同族に言われてから、隠していると教えてくれました。

 なんだかんだで、色々と話すくらいは仲良くなってしまい、これ以降、訓練をこっそりとする仲間になりました。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...