灰色の冒険者

水室二人

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第6章 憎悪の大陸

猫達の癒し その5

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「デートするにゃ!」

 久しぶりに、メトロ・ギアに戻ると、十色にそう迫られました。

 大陸の調査が終わり、次は果て無き迷宮の調査をする予定ですが、その前のこういう時間があってもいいでしょう。

「そう言えば、この世界の町を歩いたことはあまりありませんでしたね」

「私もです。だから、一緒に歩き回るにゃ」




 十色と二人で、ゆっくりと買い物をすることになりました。

 最初は、銀河帝国の首都に行きまた。

 この街は、中世風の建物で統一されています。

 馬車が街の中を走り、いかにも貴族と言う格好をした人達が乗っています。

 これは、狙って作ったとしか思えません。

「あれ?艦長だっ!」

 そんな事を思いながら街を歩いていると、遠くから子供の声が聞こえてきました。

 この街にいそうな私を知っている子供といえば、虹色小隊の子供たちでしょう。

 あの子達は、銀河帝国を中心に、土木作業を行っています。

「お仕事ですか?」

「はい」

 元気な6個の返事があります。引率者のブルーだけは、離れた場所でこちらを見ています。

 ちなみに、虹色小隊の作業着は、戦隊ヒーローのスーツをベースに、それぞれの色の戦闘強化服となっています。

 子供でも、力などは強化されているので、侮れないです。保護のためにも、フルフェイスで顔は見えません。

「今日は、何をしているのかな?」

「猫屋さんを作ってます」

「ネコさんの、家を作るの!」

 何か、不思議な返事があります。

「もう、計画は始まっていたのかにゃ・・・」

「十色は、何か知っているのですか?」

「アニマルロイドのための、出張所を、各地に建設中にゃ」

「それが、猫屋ですか?」

「猫がメインじゃないにゃよ。この子達からすれば、みんな一緒かもしれにゃいけど」

「この子達だけで、作れるものなのかな?」

「部品だけ、メトロ・ギアで作っておいて、後は組み立てるだけだから、この子達とアニマルロイドだけで、充分出来ます」

「君は、見ているだけ?」

「僕は、監督ですから。大体、ここまで過密なスケジュールを組んでおいて、酷いとは思わないのですか?」

 ブルーは、文句を言いながら、こちらに近づいてきます。

「仕事が多いのは、いいことだと思いませんか?」

「多すぎです。この子達の負担を、もう少し減らせませんか?」

「その為のアニマルロイドです。これが軌道に乗れば、もう少しあの子達は楽になりますよ」

 人で不足を、ロボットで補うのが、アニマルロイド計画です。

「その言い方だと、僕の負担は減らないと思っていいのですか?」

「当たり前です。減ると思っていたのですか?」

「思っていませんよ、最初から。多分、これから違う意味で忙しくなるのでしょう?」

「そのつもりで、貴方も備えていてください」

「了解」

 黒の国で、それなりの教育を受けていたブルーは。意外と先のことを考えています。

 自分の立ち居地をわきまえているので、裏切ることはないと思いたいです。

「そろそろ、次に行きますよ」

「うにゃ」




 アンディに跨り、荒野を進みます。

 この大陸、アトランティスの都市と都市の間には、荒れた野原が多いです。

 世界が狂った影響で、道が寸断され、土地の回復が間に合っていないみたいです。

「やはり、生身でこれを操作するには、ちょっと難しいですね・・・」

 今日はデートと言うことなので、服装は普通の格好です。日本にいた頃を意識して、お互いカジュアルな服装です。

 なので、戦闘強化服で操縦していたアンディの運転は、難しくなっています。

 バイクは運転できるのですが、荒地だと難しいです。

 他のスタッフに、運転をサポートするツールを作ってもらう必要があります。

「乱暴な運転は、わざとじゃにゃいのかにゃ?」

「狙ってやっても、ちょっとボリューム不足ですよ」

「がぶりにゃ!」

 背中にくっついている十色が、じゃれ付いています。

 十色とじゃれあいながら、次は賢者の国へと入り込みます。




「艦長ですか?」

 のんびりと街を歩いていると、路地裏から猫に話しかけられました。

「ガイアですか?」

「モテモテですね」

 のっそりとやって来たガイアは、たくさんの猫を引き連れていました。

「そんなに、いいものではないですよ」

「天馬もいるのですか?」

「はい・・・」

 やって来た伝馬も、たくさんの猫を引き連れています。

 彼らが猫を集めているのには、理由があります。

 異世界人に対する、批判を繰り広げているこの国では、異世界人の保護対象の猫を迫害する動きが出ているのです。

「大事な仕事なのに、何をそんなにつらそうなのかにゃ?」

「この後の、こいつらの事を思うと・・・」

「はぁぁぁあ」

 二人は、お互いに顔を見合わせて、ため息をつきます。

「二人は、とぼとぼと広場に向かって行きます。その後を、大量の猫がついてきます。

「にゃう、にゃーーー」

 何匹かの猫が、こちらに話しかけてきます。

「何を言っているのですか?」

「感謝の言葉だにゃ」

 私には猫後がわかりませんが、十色は理解できます。

「あの言葉が、続くといいにゃ・・・」

 十色も、あの猫達の今後を心配しています。

「もしかして、猫達に迷惑を掛けているのですか?」

 狙われた猫達を、集めるように指示を出したのは私です。彼等の居場所を奪ってしまっていたのでしょうか?

「迷惑なら、感謝の言葉はにゃいにゃ。猫達は、一度は恐怖の洗礼を受けるにゃ」

「恐怖の洗礼?」

「伊藤にゃ。あの猫好きの悪魔、手口が巧妙になっているにゃぁぁぁ・・・」

 色々と、制裁をしたはずですが、彼女はまだ色々とやらかしているみたいです。これは、私の管理ミスですね。

「対策を取る必要はありますか?」

「全部、任せるわけにはいかにゃいにゃ。あれは、私が対応するにゃ」

 猫関係は、十色のほうが適任です。伊藤さんへのお仕置きは、任せる事にしましょう。

 広場に集まる猫を見ていると、やがて姿を消していきます。

「私達も、いくにゃ」

「そうですね」

 広場の中心には、転送の魔法陣が設置してあります。

 賢者の国は、正直長時間いると危険なので、早々に引き上げます。

 今日の目的は、色々な所を巡ることです。

 一度メトロ・ギアに戻り食事をし生ます。

 おばちゃんの作るご飯は、美味しいです。

 二人で、まったりと食事をして、のんびりと過ごします。

 いつもは、大勢でにぎやかに食事をしているので、斬新でした。

「こういうのも、中々良いにゃ」

 食後に、ひざの上に十色を乗せてくつろぎます。彼女は、今完全な猫状態です。

「うりゃ」

「にゃう」

 耳の後ろを撫でたり、尻尾の付け根をいじったり、肉球を堪能します。




「こんな時間が、続くといいにゃ・・・」

「そうですね」




 そのためには、やるべき事が色々とあります。

 全てが終ったとき、このこと一緒にいられるのか、少し不安です。

「もう一箇所いくにゃ!」

 そんな私の不安の気づいたのか。十色がひざの上から降りてしまいます。

「何処に行くのですか?」

「お城にゃ!




 メトロ・ギアの隣に、現在建築中の城があります。

 その名は”にゃごや城”です。アニマルロイドの為の街を作っているのですが、その中心になるのがこのお城です。

 街の名前はにゃごやになりました。江戸時代風の街並みです。江戸は、反対多数で却下。

 投票の結果、組織票の力でにゃごやになりました。

「未来の首都ですか・・・」

「にゃ?」

 流石に、これは知らないみたいですね。不思議そうに、十色はこちらを見ています。猫のままで。

「お城は、ほとんど出来ていますね」

「ここから見る景色は、まだまだにゃ」

「そうですね」

 天守閣の部屋から見下ろす町並みは、まだまだ作りかけです。

「ここなら、見られる心配はにゃいにゃ」

「それで、ここですか・・・」

「そうにゃ、貴方は意心配性すぎるにゃ。いたるところに監視カメラ設置して、空からはアマテラスの監視。そんなに、不安なのかにゃ?」

「不安ですよ。毎日、怖くて仕方ありません・・・」

 十色しかしないので、正直に答えます。

「何がそんなに不安にゃの?」

「一番怖いのは、他の異世界人ですね。ラノベの主人公のように特殊な能力者が多くいると聞いています。それが攻めてきたらと思うと、不安です・・・」

「なら、味方にするにゃ」

「それは、考えています。その準備が出来ていない間は、不安ですよ」

「心配性だにゃ」

「備えは、出来るだけするものです」

「もう、私が敵になったらどうします?」

「その時は、諦めますよ」

「嘘つき・・・」

 敵になったらと聞いた瞬間、十色は人の姿になり、私の首筋に、鋭い爪を突きつけていました。

 私は、そのままそれを受け止めます。

「私の事も、信用していないのですね・・・」

 爪は、私の突き刺さることなく、不可視の壁に防がれています。

「信用は、していますよ。これは、身代わり人形の能力です。十色も同じものに守られていますから」

「あっ!」

「忘れていましたか?何のつもりだったのか、今は聞かないでおきます」

「どうして?」

 十色も、色々と考えているみたいです。本気の攻撃ではないとわかってはいました。

「ここなら、他の誰にも気づかれない。確かに、そうですね。そう言う場所も、必要です」

「にゃ?」

 私が、少し意地悪な言い方をしたので、その意味を理解したみたいです。

「うにゃぁぁ」

 尻尾をゆらゆらとさせながら、耳を伏せる十色は可愛いです。

 猫から人への変身は、一瞬ですが服を忘れています。

「にゃぅぅう」




 その後のことは、秘密です。

 このお城に、大浴場を作っておかなかったのは失敗だと、後で気づきました。

 守る場所も、行き過ぎては息が詰まるものです。

 そのことを認識できた一日でした。



 



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 年末で、色々と忙しくしばらく更新は不定期になります。
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