灰色の冒険者

水室二人

文字の大きさ
上 下
37 / 102
第3章 1週間

改名と改良と命名

しおりを挟む
 意識を失ったメリアムを、取りあえず治療器の中に放り込む。出番がるまで、この中で保管する事にします。

「扱い、酷くないかにゃ?」

「この子、かなり極悪非道な経歴ありますよ。現時点で、殺害数三桁の悪人です」

「この子が?」

「えぇ、同情できる部分もありますが、できない部分もかなりあります」

「刈谷さんがそう決めたなら、それに従うにゃ」

 十色は、私の行動に従うといってくれます。三姉妹も、同じようです。

「ここで、一つお願いがあります」

 この際です、私は今まで思っていた事を相談する事にしました。

「改名?」

「はい。私は、正直今までの名前は好きではありません。もちろん、親からもらった名前は大切です。でも、今の私には、かなり重い名前になっています」

「そこまで、気にする事なのですか?」

 にぃたちには、あまりぴんと来ない話のようです。

「貴方たちも、改名しますか?」

 ごろあわせと言うか、数字そのままの名前を付けたのは、我ながら酷いとも思っています。

「私は、このままでいいです。主任から最初にもらったものだから」

「私も」

「ん」

 はにかみながら、そう言う三姉妹を見ると、少し心が痛みます。

「私は、十色と言う名前は好きだから、このままでいいにゃ。刈谷さんは、色々と考えすぎにゃ」

「正義なんて名前だと、色々と考えてしまうものですよ、きっと」

 正義の意味とか、歴史とか、色々とひねくれた子供時代だったと思います。それを経て、今の私がいるのは事実ですが、そろそろ、この世界で生きていく覚悟と、今までの常識を捨てましょう。

「私は、この世界で有数の力を得てしまいました。こんな狂った世界で生きていくために、一つの覚悟を決めたいのです」

「それが、名前かにゃ?」

「これは、おまけです。出来ることなら、取り返しのつかない痛い事をして、過去の古傷を、あえて自分でえぐるのです」

「過去の古傷?」

「刈谷さん、もしかして中二病経験者ですかにゃ?」

「軽度だと思いたいですけどね。ただ、異世界転移なんて、憧れの場所に、チートな力、いろいろなものが解放されそうですよ」

「それは、重度だにゃ」

「ただ、実際命のやり取りをすると、覚悟の違い、色々と知識不足も痛感します」

「それは、私も同じだにゃ。守護獣の経験と知識は、今後大いに役立つにゃ」

「それは、期待します。私は、今後ロードスと名乗ります」

「長いにゃ」

「ロードスですか?」

「冒険者登録も、それで出してありますからね」

「苗字は、どうするにゃ?」

「この際ですから、トウゴウとします」

「東郷十色なら、悪くないにゃ。今から、私も、そう名乗るにゃ」

「勝手に決めないでください」

「お前たちは、にぃ・トウゴウ、さん・トウゴウ、よん・トウゴウだにゃ」

「「「はい」」」

 ちなみに、このトウゴウは、有名なコミックのスナイパーさんの偽名のトウゴウですね。日本軍の提督での良いかもしれません。

「うにゃ、ロードスは長いから、今から、提督と呼ぶことにするにゃ」

「提督は、色々と憧れの呼び名ですが、出来れば、違う呼び方にしてください」

 提督ですと、コレクションっぽいので、避けたほうがいいですね。

「なら、元帥にゃ」

 こうして、私は、ロードス・トウゴウと名乗る事になりました。十色達からは、元帥と呼ばれています。




「さて、次は色々と、ここを改良しますが、その意見を募集します」

 研究室が、研究所へと変わりました。最大の変更点は、今の時点では実行できません。偶然ですが、外の土地を確保できたのが大いに役立ちます。

「改良?」

「はい、猫のままなら、問題なかったのですが、人になるなら、色々と改良します」

「お風呂が欲しいにゃ」

「それは、作りますよ、他には、何かありませんか?」

「食堂が、欲しいにゃ」

「料理は、出来ます?」

「よんは、得意ですよ。ただ、材料が・・・」

「その辺りは、今後改良していきます。他には?」

 その後、色々と改善要求を聞き、今後のプランを立てます。快適な居住空間を目指して、色々とやるべき事が増えてしまいました。

「後一つぐらいは、出来そうですね」

「どうかしました?」

「私は、これから、冒険ギルドに行かなくてはなりません。その前に、貴方たちにお願いしておく事があります」

 十色には、新しいからだの能力を把握してもらう事を、優先してもらいます。何が出来て、何が出来ないのか。

 装備を今後作るうえで、どういうものが欲しいのかも、考えてもらいます。

 三姉妹は、今まで同様、情報収集をお願いしました。他の異世界人との接触も、お願いしておきました。

 今回召喚された、伊藤さん達と、吉良さんたち以外の異世界人。今までは、積極的に関わるつもりはありませんでしたが、方針を変更します。

「後は、これを改良しますか・・・」

 演算機で、今まで作ったものを表示します。その中の一つ、可変式戦闘二輪車、アンディを選択します。

 守護石や、メリアムを解析した結果、色々と出来る事が増えています。

 基本的に、エンジンで動くものではありませんでした。魔力を動力に、タイヤを回転させ、動くと言う本来のバイクとは違う間に合わせの、玩具ともいえうる出来でした。

 今回、エンジンではないですが、魔力を注ぐ事で、動力を生み出す機関を作る事ができました。

 安直ですが、魔導エンジンと命名。バイクと同じような感覚で操作できる物へと変わりました。

 変形機能は、よりスムーズにパワーアーマーへと変化できるようになりました。この状態で、ホバー移動が出来るようになったので、戦闘力が向上しました。

 前輪部分のレーザー砲は、威力の向上が出来ました。後輪部分のミサイルは、小型化に成功したので、弾数が増えました。特殊な、狙撃銃を搭載する事にも成功しています。

 武装を排除した、簡易型を一台作成。始穣香への贈り物にします。これに気づいた十色に文句を言われましたが、今の所あれと敵対するつもりは無いので、必要経費と認めてもらいました。

 今まであったアンディを。変換機に入れて、複製機で製作します。




 CAT-01 アンディ




 この名前で、登録します。私が作るものの、名称として”CAT”(シーエーティー)と言う呼び名を採用しました。

「キャット?」

「シーエーティーです」

「意味は、あるにゃ?」

「custom army tool の頭文字を取って、CAT。強引に言葉を集めて、形にしただけの物ですよ」

「最後は、”weapon”や”arms”のほうが、いいのではにゃいですか?」

「それだと、CATになりませんからね。この辺は、拘りですよ」

「男の人って、変な部分にこだわるにゃ」

「武器に関しては、特に名称を付けませんけどね」

 携帯できる武器として、ショットガンを作成しました。拳銃の場合、訓練をしていない今の私では、命中率は低いでしょう。

 散弾銃なら、命中率の低さをカバーできると思い、作成してみました。子供の頃の、憧れの、レミントンM31ショットガンです。

 これは、モデルガンのデータを元に、魔法で改良した恐ろしいショットガンです。

 ボルトアクションで、スライドすると、弾丸が空間収納されていた場所から補充されます。引鉄を引くと、弾丸が飛び散ります。魔法陣を刻む事で、散弾銃として使えるようになっています。

 弾丸も、通常弾と質量弾があります。質量弾は、小さいけど重さが1Kgにもなる弾が飛び出し、恐ろしい破壊力を生み出します。もっとも、弾丸だけで100Kgになるので、アンディのパワースーツ状態でないと、使用できません。

 後は。接近戦用の武装も作成しました。

 太郎太刀を燃したものを、再現しました。これ、熱田神宮で何度も見たので、倉庫のリストに追加されていました。

 再現して、魔法陣を刻み込み、色々と仕掛けを施してあります。巨大すぎるので、普段は小型化できるようになっています。魔法の力とは、恐ろしいものです。




 とりあえず、今出来る準備はこれくらいでしょう。私は、転移魔法陣を起動して、冒険ギルドへと、出かけます。

 ちなみに、CATにはもう一つ意味があります。




”Copy anime toy”




 記憶にある、玩具を魔法の力で、実現したもの。

 邪道ではありますが、私は、これを使いこの世界で戦う事にします。






-----------------------------
---------------------------------
 小説家になろうでも投稿中。
 3日に1度ぐらいのペースで更新予定です。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

処理中です...