アイドル・インシデント〜偶像慈変〜

朱鷺羽処理

文字の大きさ
上 下
62 / 86

第62話「シンプルな殴り合い・宗治vs力虎」

しおりを挟む

 烈矢に何も考えずに俺の攻撃に対処し続けろと言われたら達樹。
 露骨に何も考えるなと言われるとつい反射的に何かしら考えてしまう。

(何も考えるななんて言われてもこのまま思考停止で受け止め続けるのも無理があんぞ……!)

 どんな意図があるのか。その言葉の真意を無意識に思考する。
 考えない方が賢明なのだとしても勝手に脳が動き読み取ろうとしてしまう。そして遂に烈矢の奇行の意味を読み解く。

 (かなり進んでねぇか?……まさか攻撃による衝撃を利用して移動してんのか?)

 達樹がその思考に行き着いた途端。木陰からおばちゃんアンドロイドが出現。瞬く間に達樹と烈矢の足元へ飛び付く。

「莉乃たそかわ!……ぐっ!!?」
 
 力強く握られそのまま投げ飛ばされ両者大幅に進んできた道のりを後退させられる。
 烈矢は極限までに集中し移動という思考を除去しきっていた。即ち感知されたのは達樹の思考であると推測する。

「感づいちまったか……まぁいい。この際だから説明するがあのおばはん達は移動の為に使われた想力に反応して襲ってくる。移動しようと思考したらアウトってこった」

「それで戦ってる時には無反応だったのか」

「進もうと思わずに無意識下で進む事がこのマラソンの攻略法だ。これを念頭に置いてもう一度同じ事をする。お前も気づいちまった以上は気を紛らす方法を見つけろ。すぐさま移動の思考が頭に過ぎって捕まっちまうぞ」

 烈矢の推しへの愛を叫び続けるといった無理やり自然と浮かんでくる思考を捩じ伏せるような強烈な何かが無いと気を紛らす事など出来はしない。
 達樹は必死に思考する。脳内を一色で染め上げれるような凄まじい願望を。

 ぎゅるるるる

 静寂の中鳴り響いたのは腹の音。鮮烈な激闘の末疲弊した達樹は空腹を今この瞬間全身で身に染みて感じ取った。

「美味いもんがたらふく食べてぇ!」

 宿泊施設に着けば選り取りみどりの食欲をそそる豪華な料理の数々が並んでいるに違いない。そう思うと達樹の脳内は一気に空腹を満たしたいという願望で染め上げられる。

「一先ず行けそうだな。だが理屈を理解した上でも頭一色染め上げるのは今の俺たちには無理だ。ミスは前提の元ゴールするまでやり続けるぞ」

「おう!!」

 達樹と烈矢はそれぞれ推しへの愛と食べたい料理名を叫び続けながら互いの想力をぶつけ合い再び走り出す。

 ――――――――――
 同日 想武島 マラソンコース 80km地点 22時15分

「気に食わないな」

「へ?なにが?」

「何か隠し玉があるんだろう?早く出しなよ。泥試合をだらだら続ける気はないんだ」

 10分前から戦闘に入った十一番隊の新鋭抗者。八雲宗治と一番隊奏者歴1年半の奏者。三宅力虎はこの10分間近接戦での両拳、両脚に想力を帯びせた物理攻撃しか使用していない。
 隊長を除くと奏者で最も強いとされている三宅力虎の全てを出し尽くさせた上で踏破したいと考える宗治は力虎を挑発する。

「別に出し惜しみしてるもんは特にねぇよ。形成を逆転出来るような一発逆転の切札的なもんは俺にはない」

「へぇ……じゃあシンプルに腕っぷしが強い方が勝ち残るわけだ」

 宗治の釵による打撃が再び力虎へ向けられる。
 力虎の内に宿るアイドル常盤愛菜ときわまなは温厚で天然なところもあるほんわかとした女の子。
 彼女は元の世界では大剣使いであり且つ彼女のスイーツ作りという趣味から力虎はケーキを思い浮かる。
 そこからスポンジをイメージし己の想力と掛け合わせた異能。緩衝菓綿インパクト・クッションを編み出した。
 緩衝菓綿の効果を載せた想力を各肘と膝に闘気を纏った炎として宿らせ宗治の強打を受け止める。

「!?っ」

 宗治は打ち込んだ攻撃に対して思いもよらぬ反発を受け吹き飛ばされる。地面に着く直前態勢を立て直し再び構える。

「流石にただ殴る蹴るしてるだけではねぇよ」

 緩衝菓綿の能力はスポンジの弾力を活かし敵の必殺技、大技を受け止めそのままカウンターとして反射という物。
 中距離、遠距離は鍛え上げた身体能力を利用して即座に距離を詰め自分の最も戦いやすい間合いを即座に作り出す。
 緩衝菓綿の本領は大技頼みの敵に対してより強く発揮される。勝負を急ぎ大技で畳み掛けようとする相手に対してはまず負ける事はない。
 故に力虎を打ち負かすには大技に頼らない地道にダメージを重ねていく堅実さが必要となる。
 だが宗治の戦闘スタイルは大技頼みでも遠距離タイプでもなくただひたすらに釵による打撃で圧倒する戦法。奇しくも両者の戦い方は非常に似通っていた。

「戦いは……こうでなくちゃあね」

 不敵な笑みを浮かべながら宗治は呟く。これまでの蓄積ダメージと今受けた反射によりかなりのダメージを負うも一向に片膝すら付ける素振りを見せない。

 (こうしてる間にもしれっとちらほら抜かされてんだよな……駆は来る気配ないし俺もさっさと進まねぇとやべぇか)

 力虎の拳に凄まじいまでの想力が込められる。その闘志はまさに鬼神の如く宗治へ向けられる。
 だがこの気迫にも一切動じる事なく宗治ら真っ直ぐ堂々と力虎へ見据えて立つ。

「だらだら続けるの嫌いっつってたよな。次の一撃で終いにしようぜ」

「君に言われなくてもそうするつもりだったさ」

 両者想力を漲らせ夜風が頬を遮ったと同時に瞬時に加速して距離を詰める。

ドガァァッ!!
 
 互いの一撃が交差し合い、内一方の強烈な一撃が腹部へ突き刺さる。
 
 ――――――――――
同日 想武島 ゴール地点 22時30分

 時刻も終盤に差し掛かり遂に妨害乱闘ありきの地獄のマラソンを踏破する者も現始める。
 一着でゴールしたのは一番隊セレナ・リデュアンヌと力虎達を出し抜きセレナとほぼ同着となった七番隊所属の力虎とほぼ同期の奏者歴1年越えの眼鏡の似合う知的な風貌の男長谷川友哉。柴崎彩人の実の妹である茶髪お団子ロングを他靡かせる柴崎彩乃の3人。
 続けて少し遅れて二着で四番隊三竹未萌奈、灰羽久澄の2名が走り切る。

 未萌奈と久澄は中間地点にて後続を待ち伏せしており出来るだけ多くの参加者が未萌奈の術中範囲内に収まったタイミングで未萌奈はぷち闇夜失闇あんやしつえんを施す。
 無数に鴉の群れが奏者達へ飛びかかり鴉と目線があった者はその術中にハマってしまう。
 大勢の奏者、抗者達の視界を奪う事に成功し集中力は削がれおばちゃんアンドロイドには捕縛され走りでそうにも視界が定まらない故に進めないといった錯乱状態に落とし込み大幅にライバルを蹴落とすことに成功していた。

「作戦成功ですね久澄さん。これで私達のふかふかベッドは確約されましたよ」

「そ、そうだね」
 (かなり印象悪くなっちゃった気がするけど……)

 数多の妨害、苦行に打ちのめされそうになりながらも徐々にゴールへ辿り着く者が現れていき残りは30分を切る。
 残された隊は一番隊、二番隊、三番隊、五番隊、八番隊、十一番隊。
 第一プログラムはいよいよ終盤に差し掛かる。

 ―――――――― to be continued ――――――――


 緩衝菓綿。例えるならセルフインパクトダイヤルという事ですね。(ワンピース参照)
 無闇に大技を打ち込んだらインパクト!されちゃうって事です。
 力虎的には細々した事は嫌いだしだるいのでわかりやすく真っ向から殴り合おうぜ!(強制)みたいなノリで使っています。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...