39 / 86
第39話「達樹覚醒!疾風怒濤の真なる力!」
しおりを挟む未萌奈の窮地に駆け付けたのは少女とのぶつかり合いを終えた輝世達樹であった。
未萌奈の体中の傷を見てその非人道的な暴力を受けた事が伺え静かに怒りが湧き上がってくる。
「後は俺に任せて隠れててくれ」
「バカ……あいつは昨日とは比べ物にならないくらい強く……」
「強くなったのはあいつだけじゃねぇよ」
達樹の一撃をくらい蹴り飛ばされていた謙也が二人の隙を見て襲いかかる。
「良いところだったのに邪魔すんじゃねぇよ雑魚がぁ!!」
謙也は再び達樹へ猛スピードで狂人のように殴りかかる。
だが達樹はそれを更に上回る疾風が如くスピードで謙也から距離を取り、物陰に未萌奈を寝かしつける。
(早い……!?目で追いきれなかった……!?)
達樹の瞬足に未萌奈も把握しきれておらず驚きを隠せない。
「あんた……この一晩で何したの……」
「受け入れただけだ。弱い自分と相棒の意志をな」
凛として達樹は標的を見据えて想力を拳に込めて構える。
その目に一切の恐怖は映っていない。思考するのは勝利のイマジネーションのみ。
「何したかはしらねぇが、ただ速くなっただけじゃ俺には勝てねぇぞ!」
「速くなっただけじゃねぇって事を……見せてやるよ」
「っ!?」
そう言い残した刹那。謙也の視界から達樹が消える。
一瞬にして謙也の正面まで移動し腹部へ向けて力強く右拳を放つ。謙也は咄嗟に両腕でガードする。
「だから効かねぇよ!んなもん!!」
そう言い放った次の瞬間違和感を覚える。
腕に打撃の衝撃の他に別の感触。達樹の拳の周りに渦巻く烈風の存在を視認。鎌鼬にあったかのように腕に斬り込みが入って行く。
シュゥゥゥゥ
(風……っ!?)
このままでは腕を斬り落とされかねないと踏んだ謙也は必死に距離をとる。
「流石にそのまま受け止めてたらやばいってのは理解ったみてぇだな」
「てめぇ……」
「本番はこっからだ。今からてめぇに俺の真の力を完全初お披露目してやる」
――――――――――
15分前 偶像空間内
「うおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」
「はああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
ドゴォォォ!!!
達樹と少女。両者の渾身の力を込めた拳が激突し合う。拮抗し合う両者。少女だけでなく達樹もまた彼女を戦士と受け入れ、本気でぶつかり合うべき相手として死力を尽くして立ち向かっていた。
その様は表情、拳、迫力全てから十分すぎる程少女に伝わっていた。
(ありがとうございます達樹さん。もうきっと大丈夫)
ドガァァァァァ!!!
「がぁっ!!」
「きゃあ!!」
その余りの威力に両者共に吹き飛ばされる。
「いっつ……まだだ!まだやれるぜ!!」
「いえ!もう大丈夫です!」
「えっ?大丈夫って……俺まだまだ動けるぜ」
「もー!目的を見失ってませんか?私を倒すのが目的じゃなくて!私の事を受け入れる為に戦ってたんですよね!?」
先程までのクールにかつ豪快に戦っていた少女とは思えないほど普段通りの砕けた口調へ変わる。
彼女にこれ以上戦う意思はないと汲み取れ達樹も自然と肩の力が抜ける。
「あっそっか」
「達樹さんのおバカさん!」
そう口振りでは怒っているものの少女は心なしか嬉しそうだった。
「でも俺、君の事受け入れてるのかあんま実感ないんだけど」
「……さっきハッキリとわかりました。達樹さんは本気で私と戦ってくれた。一人の戦士として認めてくれたんだってわかりました。だから私達は以前とは比べ物にならないくらい強い絆で結ばれパワーアップ出来たはずです!」
彼女の目から確固たる確信が伝わってくる。彼女もまたこの戦いを経て達樹へより信頼を寄せていた。
こうしてる間にも謙也は人を襲い続けている。未萌奈にも危険が迫っている事を思慮し迅速に向かう必要がある。
だがその前に一つだけ。今ならきっと聞こえるはずだとこれまでずっと聞きそびれていた事を達樹は問いかける。
「今までずっと歯痒かったしもどかしかった。どう呼んでいいかわからなかったから。
でも今なら聞こえると思うんだ……だから改めて教えてくれ。君の名前を」
「はい!私もずっと達樹さんに名前で呼んで欲しかったですから」
少女はこほんと咳払いし明るく微笑みながら言葉にする。
「私の名前は」
――――――――――
ゴォォォォォ!!!
達樹の全身に膨大な想力が発現し周囲に疾風が吹き荒れる。想力により生み出された竜巻は達樹を飲み込む。
ビュゴオオォォォ!!
やがて疾風は止み、次第に達樹の姿が露わになって行く。
「なんだ……それは……」
今まで不完全だった達樹の幻身。自らのアイドル因子を信頼し合い共鳴し合う事でその姿は本来のあるべき姿となる。
髪の両サイドに緑と桜色のカラーリングが入り、想力が宿る両拳、両脚には疾風が付与されている。
『わぁ~~!!やりましたね達樹さんっ!バッチリ成功してますっ!』
「あぁ。輝世達樹及び春風大我。俺達二人で今からてめぇをぶっ倒す!!」
―――― to be continued ――――
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる