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「ここは異世界だよ」編
六話めぇ~ 「オープンフェーーーイス!」
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「それは申し訳なかったねぇ…」
おばあちゃんは申し訳なさそうに謝罪する。
リーパが新しいヒツジを連れてきたと勘違いして俺の耳にイヤータグ(家畜の耳につける認識票)をつけた。
しかも麻酔とかないし、いきなりホッチキスみたいなものでバチンとやられたのでマジ痛い。
相当痛い。泣きそうなほど痛い。
画鋲踏んだだけで痛いだろう?
それが大きなホッチキスだったらどうなるよ?
いきなり金属ぶっ刺されたら誰でも叫ぶよな。
だが俺は謝罪を要求なんてしないぜ。
男は黙って受け入れるもんだ。
だからこう言わねば…
「おばあさん、仕方ないよ。誰だって間違えることはあるよ」
「それは俺の台詞だ!!」
なぜかぷるんが弁護する。
俺が言うならばいい。
だが、ぷるんが言う権利はまったくないはずだ。
完全に漁夫の利だな、恐ろしいやつ。
「俺は知った。人間の残酷さを!」
そうだ! 耳とはいえ痛いぞ!
お前たちだっていきなり耳にぶっ刺したら痛いに決まっている! そうだろう!
もっと動物のことを考えろ! 悪しき人間よ!
俺は動物の気持ちを知ったヒツジとして訴えねばならない!
人間よ、悔い改めよ!
「素敵なイヤリングができてよかったね」
「悪しき人間めぇぇええええええ!!」
まだこの世界に来て二時間くらいだが、もう半分くらい人間が嫌いになった自分がいるな。
人間なんて嫌いだ。
人間は愚かだ。
人間なんて…! 人間なんて…!
「ヒツジさん、ごめんね」
リーパがなでなでしてくれる。
またちょっと人が好きになった。
幼女好き。
「あとで去勢しようね」
「悪しき人間めぇぇええええええ!!」
牧場育ちの幼女怖い。去勢をためらわない強さがある。
リーパならきっと変質者が現れても「はい、去勢しましょうね」とか言って逆にやっちまうんだろうな。
おばあちゃんが言うには、ヒツジの去勢はゴムリングなるものを使うらしい。
…駄目だ。もうこれ以上は男の俺には語れない。
しばらくトラウマになりそうだ。人間って怖いわ~。
とりあえず俺が特別なヒツジだということは理解できたらしい。
まあ、しゃべっているしね。
「この世界のヒツジはしゃべるらしいよ」
「嘘ぉおおおおお!?」
スタンダードかよ!
動物とお話できたらいいとか言うけれど、実際にできたらとんでもないことになるぞ。
そうだよ! 俺が今実践しているじゃないか。
動物がなんて言っているか教えてやる!!
「人間めぇええええ! 玉の恨みを思い知れ!!」
「あはは、うるせーヒツジ」
うるせぇ!!!?
ムキーーーーー! 許すまじ!
なっ、こうなるんだ。
「シゲキさんは、普通と違いますね」
ようやく名前を覚えてくれたリーパがそんなことを言う。
俺? そう? まあ、そりゃね。
できる男ってのはやっぱりわかっちゃうよな。
なんつーの、発するオーラってやつ?
「顔が黒いです」
そこかよ!!!! 色!? 色なの!!!
色の違いで個性を表現しようなんて浅はかだぞ!
赤だったら三倍なのか! 青ければいいのか! ああ!?
「顔が黒いと悪いんでしょ?」
言い方!! 聞き方!!!
ぷるんめ、最初から悪いのが前提みたいな聞き方じゃないか。
「顔色が悪いです」を意図的に「顔が悪いですね」と言うのに近い悪意を感じる。
こいつ、悪意の塊だな。
「うーん、見たことないです」
どうやらここにいるヒツジたちは全部が白い顔に白い羊毛のやつららしい。
要するに「もやしっこ」だな。所詮大量生産品さ。
俺みたいにキレがあるやつとは違うんだろう。
「いくらで売れるの?」
「わからないです。町に行って聞いてみないと」
怖い。町に行くのが怖い。
絶対売られる。
「ねえ、この世界のこと教えてよ」
だから「この世界」とか言うなよ!
リーパにとっては地元なんだからさ!
「ぷるんさんの世界のことも教えてくださいね」
リーパ受け入れるの早すぎ!!
なあ、信じちゃっていいの!? もっと疑おうぜ!
「ぷるんさんは命の恩人ですし」
ちがーーーーーう!!
俺だよ! 俺が助けたんだよ!!!!
こいつ何もしてねーよ!!
「シゲキさんもラム肉ありがとうございました」
その記憶しかないの!?
ねえ、そこしかないの!?
しかも「本当は言う必要ないけど、シゲキさんにも何か言っておかないと悪いかも。うん、これが社交辞令だよね」という微妙な心遣いがさらに痛い!
その後、この世界のことをさりげなく聞いてみた。
お金はある。一般的なG(ゴールド)通貨らしい。
物流もあって町もある。国家もある。納税義務もある。
このあたりはまったく今までの世界と同じだ。
「魔法使いたいよねー」
そう。前回もちょっと出たが魔法もあるようだ。
いくつかの体系に分かれているらしいが、手からビームとかもあるらしい。
ただ、使うにはやっぱりいくつか条件が必要だってこと。
そのあたりはリーパにはわからないらしい。
そして、さっき俺が食われたクマーのようなモンスターもいる。
ああいう獣だけではなく、牧場物語で出てくるいろいろなモンスターがいるそうだ。
「うわっ、わくわくするね!」
「お前な、あっちだってライオンとかいたけど、戦いたいなんて思わないぜ」
そんなことするのはバキくらいだぞ。あいつら本当に戦うからな。
わざわざ命のやりとりをして得るものは何もない。
それぞれに暮らしているのだからそっとしておけばいいのだ。
動物愛護は大切だぞ。身にしみている。
「それは動物だからでしょ? モンスターはいいんだよ。そのためにいるんだし」
なかなか深いな。
たしかにゲームの中のモンスターはどうしているんだろうな。
某悪魔系ゲームのように交渉して仲間にしたり話し合いをすればいいと思うのだが…駄目なのだろうか。
俺はネコマタ欲しいけどな。
「お礼をしたいです。何か欲しいものありますか?」
「武器欲しい」
リーパの問いにぷるんが即答する。
武器!? 武器欲しいの!?
怖い。この人怖い。
正直お礼で武器を要求する人間を初めて見た。
そりゃRPGならもらうこともあるけどさ。
あくまでもらいはするけど要求はしないよな。
思えばお礼に「こんなものしかありませんが…」とか言って斧くれるのもおかしいけどな。
斧だよ、斧。持って歩くんだぜ? 捕まるって。
「武器は何があるの?」
「サイならありますけど」
なぜサイが!?
サイってあれだろ? 某亀忍者が使っている武器だろ!?
長い棒針の左右に同じような短い棒針が一対ついているというアレだ。
よく時代劇で見る十手(じって)に近い形だが、より戦闘向けな危険な武器だ。
前に沖縄で売っていたのを見たことがある。
欲しかったが飛行機乗らないといけないから冷静になれたが、たしかにちょっと欲しい武器ではあるな。
日常では使わないけど。
「でも、サイはお父さんの形見なんです」
「それでいいや、ちょうだい」
形見ーーーー! それ、形見だから!!!!
さりげなくリーパだって「できれば違うのにして」サイン出してるから!
「わかりました。これです」
え? それだったの!?
クワと一緒に無造作に置いてあったよ! 形見大切にしようぜ!
リーパがサイをぷるんに渡す。
たしかにサイだ。黒色のサイだ。黒サイだ。
まあ、サイが親の形見っていうのもなんだよな。
親が槍投げ選手で、形見で槍もらっても一般人にはまったく興味ないし、使う人間に渡したほうが価値はあるよな。合理的な考えだが。
「なんか汚いね」
合理的すぎる!!!?
この場面でこそ「黒いね」って言おうぜ!!
黒=汚いのイメージはやめろ!
「じゃあ、シゲキ君は小屋で寝てね」
「ええええ!?」
夜、泊めてもらうことになり、いざ寝室に行こうとしたらぷるんに止められた。
「だって、ヒツジでしょ?」
ヒツジでも中身は人間だぞ。
あんな家畜どもと一緒に寝るなんてプライドが許さない。
「でも、しょうがないよ。リーパちゃんたちだって寝室に入れるの嫌そうだし」
嫌そうとか言うなよぉおおお!!!
傷つくだろうぅううう!
そりゃ俺だって自分のベッドにヒツジとか入ったら、もうシーツにはさよならするけどさ。
人間だぜ? 俺は人間だぞ?
「じゃあ、また明日ね」
という抗議もむなしく、閉め出された。
仕方なく家畜小屋に歩いていくと、ここで飼われているヒツジが出てきた。
「どうした、暗い顔してるな」
年長者のヒツジが声をかけてきた。
「お前たちにはわからんさ」
「兄弟、話してみろよ。言えばわかることもある」
「わかるわけない。玉のないお前たちに何がわかる!!」
そうだ。こいつらは去勢された「おねえ」なんだ。
そんなやつらにわかるものか。この俺の気持ちが!!
「そうかもしれんな。もう我々には忘れてしまった何かをお前さんは持っているのかもしれん」
「そうさ。俺の熱いリビドーは消えていない! 俺だってこんな場所に来たくなかった。ましてやヒツジになんかなりたくなかったさ!」
「わかった、わかった。兄弟、とりあえず入りな。寒いだろう?」
このまま外で寝てもいいが、また熊とか出たら嫌だし仕方なく従う。
ヒツジになればヒツジに従えだ。
「…わかったよ。だが俺は群れないぜ。俺の心は人間だからな」
「おーけー、兄弟。俺の名はジョナサン。お前は?」
「荒ぶる牙、シゲキだ」
「シゲキ、お前は今夜兄弟愛を知るだろう。本当の愛をな」
けっ、家畜どもが言いやがる。俺は絶対群れないからな。
絶対に群れないからな!!!
翌日。
「あっ、シゲキ君、おはよう。どうだった?」
「俺は生まれて初めて心を開いた気がする。ヒツジでよかった。オープンフェイス!」
「あっ、そう」
心の扉オーーーープンーーーーフェイーーーース!
おばあちゃんは申し訳なさそうに謝罪する。
リーパが新しいヒツジを連れてきたと勘違いして俺の耳にイヤータグ(家畜の耳につける認識票)をつけた。
しかも麻酔とかないし、いきなりホッチキスみたいなものでバチンとやられたのでマジ痛い。
相当痛い。泣きそうなほど痛い。
画鋲踏んだだけで痛いだろう?
それが大きなホッチキスだったらどうなるよ?
いきなり金属ぶっ刺されたら誰でも叫ぶよな。
だが俺は謝罪を要求なんてしないぜ。
男は黙って受け入れるもんだ。
だからこう言わねば…
「おばあさん、仕方ないよ。誰だって間違えることはあるよ」
「それは俺の台詞だ!!」
なぜかぷるんが弁護する。
俺が言うならばいい。
だが、ぷるんが言う権利はまったくないはずだ。
完全に漁夫の利だな、恐ろしいやつ。
「俺は知った。人間の残酷さを!」
そうだ! 耳とはいえ痛いぞ!
お前たちだっていきなり耳にぶっ刺したら痛いに決まっている! そうだろう!
もっと動物のことを考えろ! 悪しき人間よ!
俺は動物の気持ちを知ったヒツジとして訴えねばならない!
人間よ、悔い改めよ!
「素敵なイヤリングができてよかったね」
「悪しき人間めぇぇええええええ!!」
まだこの世界に来て二時間くらいだが、もう半分くらい人間が嫌いになった自分がいるな。
人間なんて嫌いだ。
人間は愚かだ。
人間なんて…! 人間なんて…!
「ヒツジさん、ごめんね」
リーパがなでなでしてくれる。
またちょっと人が好きになった。
幼女好き。
「あとで去勢しようね」
「悪しき人間めぇぇええええええ!!」
牧場育ちの幼女怖い。去勢をためらわない強さがある。
リーパならきっと変質者が現れても「はい、去勢しましょうね」とか言って逆にやっちまうんだろうな。
おばあちゃんが言うには、ヒツジの去勢はゴムリングなるものを使うらしい。
…駄目だ。もうこれ以上は男の俺には語れない。
しばらくトラウマになりそうだ。人間って怖いわ~。
とりあえず俺が特別なヒツジだということは理解できたらしい。
まあ、しゃべっているしね。
「この世界のヒツジはしゃべるらしいよ」
「嘘ぉおおおおお!?」
スタンダードかよ!
動物とお話できたらいいとか言うけれど、実際にできたらとんでもないことになるぞ。
そうだよ! 俺が今実践しているじゃないか。
動物がなんて言っているか教えてやる!!
「人間めぇええええ! 玉の恨みを思い知れ!!」
「あはは、うるせーヒツジ」
うるせぇ!!!?
ムキーーーーー! 許すまじ!
なっ、こうなるんだ。
「シゲキさんは、普通と違いますね」
ようやく名前を覚えてくれたリーパがそんなことを言う。
俺? そう? まあ、そりゃね。
できる男ってのはやっぱりわかっちゃうよな。
なんつーの、発するオーラってやつ?
「顔が黒いです」
そこかよ!!!! 色!? 色なの!!!
色の違いで個性を表現しようなんて浅はかだぞ!
赤だったら三倍なのか! 青ければいいのか! ああ!?
「顔が黒いと悪いんでしょ?」
言い方!! 聞き方!!!
ぷるんめ、最初から悪いのが前提みたいな聞き方じゃないか。
「顔色が悪いです」を意図的に「顔が悪いですね」と言うのに近い悪意を感じる。
こいつ、悪意の塊だな。
「うーん、見たことないです」
どうやらここにいるヒツジたちは全部が白い顔に白い羊毛のやつららしい。
要するに「もやしっこ」だな。所詮大量生産品さ。
俺みたいにキレがあるやつとは違うんだろう。
「いくらで売れるの?」
「わからないです。町に行って聞いてみないと」
怖い。町に行くのが怖い。
絶対売られる。
「ねえ、この世界のこと教えてよ」
だから「この世界」とか言うなよ!
リーパにとっては地元なんだからさ!
「ぷるんさんの世界のことも教えてくださいね」
リーパ受け入れるの早すぎ!!
なあ、信じちゃっていいの!? もっと疑おうぜ!
「ぷるんさんは命の恩人ですし」
ちがーーーーーう!!
俺だよ! 俺が助けたんだよ!!!!
こいつ何もしてねーよ!!
「シゲキさんもラム肉ありがとうございました」
その記憶しかないの!?
ねえ、そこしかないの!?
しかも「本当は言う必要ないけど、シゲキさんにも何か言っておかないと悪いかも。うん、これが社交辞令だよね」という微妙な心遣いがさらに痛い!
その後、この世界のことをさりげなく聞いてみた。
お金はある。一般的なG(ゴールド)通貨らしい。
物流もあって町もある。国家もある。納税義務もある。
このあたりはまったく今までの世界と同じだ。
「魔法使いたいよねー」
そう。前回もちょっと出たが魔法もあるようだ。
いくつかの体系に分かれているらしいが、手からビームとかもあるらしい。
ただ、使うにはやっぱりいくつか条件が必要だってこと。
そのあたりはリーパにはわからないらしい。
そして、さっき俺が食われたクマーのようなモンスターもいる。
ああいう獣だけではなく、牧場物語で出てくるいろいろなモンスターがいるそうだ。
「うわっ、わくわくするね!」
「お前な、あっちだってライオンとかいたけど、戦いたいなんて思わないぜ」
そんなことするのはバキくらいだぞ。あいつら本当に戦うからな。
わざわざ命のやりとりをして得るものは何もない。
それぞれに暮らしているのだからそっとしておけばいいのだ。
動物愛護は大切だぞ。身にしみている。
「それは動物だからでしょ? モンスターはいいんだよ。そのためにいるんだし」
なかなか深いな。
たしかにゲームの中のモンスターはどうしているんだろうな。
某悪魔系ゲームのように交渉して仲間にしたり話し合いをすればいいと思うのだが…駄目なのだろうか。
俺はネコマタ欲しいけどな。
「お礼をしたいです。何か欲しいものありますか?」
「武器欲しい」
リーパの問いにぷるんが即答する。
武器!? 武器欲しいの!?
怖い。この人怖い。
正直お礼で武器を要求する人間を初めて見た。
そりゃRPGならもらうこともあるけどさ。
あくまでもらいはするけど要求はしないよな。
思えばお礼に「こんなものしかありませんが…」とか言って斧くれるのもおかしいけどな。
斧だよ、斧。持って歩くんだぜ? 捕まるって。
「武器は何があるの?」
「サイならありますけど」
なぜサイが!?
サイってあれだろ? 某亀忍者が使っている武器だろ!?
長い棒針の左右に同じような短い棒針が一対ついているというアレだ。
よく時代劇で見る十手(じって)に近い形だが、より戦闘向けな危険な武器だ。
前に沖縄で売っていたのを見たことがある。
欲しかったが飛行機乗らないといけないから冷静になれたが、たしかにちょっと欲しい武器ではあるな。
日常では使わないけど。
「でも、サイはお父さんの形見なんです」
「それでいいや、ちょうだい」
形見ーーーー! それ、形見だから!!!!
さりげなくリーパだって「できれば違うのにして」サイン出してるから!
「わかりました。これです」
え? それだったの!?
クワと一緒に無造作に置いてあったよ! 形見大切にしようぜ!
リーパがサイをぷるんに渡す。
たしかにサイだ。黒色のサイだ。黒サイだ。
まあ、サイが親の形見っていうのもなんだよな。
親が槍投げ選手で、形見で槍もらっても一般人にはまったく興味ないし、使う人間に渡したほうが価値はあるよな。合理的な考えだが。
「なんか汚いね」
合理的すぎる!!!?
この場面でこそ「黒いね」って言おうぜ!!
黒=汚いのイメージはやめろ!
「じゃあ、シゲキ君は小屋で寝てね」
「ええええ!?」
夜、泊めてもらうことになり、いざ寝室に行こうとしたらぷるんに止められた。
「だって、ヒツジでしょ?」
ヒツジでも中身は人間だぞ。
あんな家畜どもと一緒に寝るなんてプライドが許さない。
「でも、しょうがないよ。リーパちゃんたちだって寝室に入れるの嫌そうだし」
嫌そうとか言うなよぉおおお!!!
傷つくだろうぅううう!
そりゃ俺だって自分のベッドにヒツジとか入ったら、もうシーツにはさよならするけどさ。
人間だぜ? 俺は人間だぞ?
「じゃあ、また明日ね」
という抗議もむなしく、閉め出された。
仕方なく家畜小屋に歩いていくと、ここで飼われているヒツジが出てきた。
「どうした、暗い顔してるな」
年長者のヒツジが声をかけてきた。
「お前たちにはわからんさ」
「兄弟、話してみろよ。言えばわかることもある」
「わかるわけない。玉のないお前たちに何がわかる!!」
そうだ。こいつらは去勢された「おねえ」なんだ。
そんなやつらにわかるものか。この俺の気持ちが!!
「そうかもしれんな。もう我々には忘れてしまった何かをお前さんは持っているのかもしれん」
「そうさ。俺の熱いリビドーは消えていない! 俺だってこんな場所に来たくなかった。ましてやヒツジになんかなりたくなかったさ!」
「わかった、わかった。兄弟、とりあえず入りな。寒いだろう?」
このまま外で寝てもいいが、また熊とか出たら嫌だし仕方なく従う。
ヒツジになればヒツジに従えだ。
「…わかったよ。だが俺は群れないぜ。俺の心は人間だからな」
「おーけー、兄弟。俺の名はジョナサン。お前は?」
「荒ぶる牙、シゲキだ」
「シゲキ、お前は今夜兄弟愛を知るだろう。本当の愛をな」
けっ、家畜どもが言いやがる。俺は絶対群れないからな。
絶対に群れないからな!!!
翌日。
「あっ、シゲキ君、おはよう。どうだった?」
「俺は生まれて初めて心を開いた気がする。ヒツジでよかった。オープンフェイス!」
「あっ、そう」
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