『覇王アンシュラオンの異世界スレイブサーガ』 (旧名:欠番覇王の異世界スレイブサーガ)

園島義船(ぷるっと企画)

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「翠清山死闘演義」編

298話 「お風呂遊戯 その3『これはお泊りイベントなのです!』」

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「アル先生、お疲れ様。出演料の煮干しだよ」

「ギョギョギョッ!」


 とりあえずアル先生には再び人形に戻ってもらうが、その途端に瞬きすらしなくなり、完全に静止するのが怖い。

※もともと目が細いので、開いているのか瞑っているのかよくわからないが


「はぁはぁ、びっくりしましたわ。いったいなんですの…」

「うちはいろいろ飼っているからね。どう? 欲しいならあげるけど」

「こんな奇妙な生き物はお断りですわよ。ふぅ、まだ来たばかりですのに妙に疲れましたわね」

「あっ、そこに座ると…」

「ここがなんですの?」

「あ」

「あ?」

「ぶ」

「ぶ?」

「な」

「な―――」


 ポカーンとベルロアナが呆けている間に、足元にやってきたゴンタががぶり。


「いたーーーい! な、なんですのー!? 何かが足にー!?」

「ガジガジガジッ」

「いたたた! けっこう本気でかじってますわよ!? 今度は何ですのー!?」


 ずっと巣穴の中だと気が滅入ると思い、定期的にゴンタたちは家の中に出して人に慣らしているのだ。

 その椅子はアイラがよく座っている場所なので、勘違いして噛んだのだろう。


「いやー、危ないって言おうとしたんだけどさ。間に合わなかったね」

「すごいゆっくりに聴こえましたわー!?」

「ここだけ空間が歪んでいるのかな? たまにあるんだよね。あはははは」

「どんな家ですのー!?」

「ほら、ゴンタ。いきなりお客さんの足を噛むなんて、よくやったぞ! もっと噛むんだ!」

「ガウガウウウウッ!」

「そこは止めるところですわー!? あたたたっ! 歯がすごいギザギザしてますわー!」

「ちっ、HPが多いから削りきれないな。ゴンタ、もうやめておこうな」

「クゥーン」

「またチャンスはあるさ。それまでに噛む技術も磨いておこう」


 ベルロアナが強くなったせいで、ゴンタ程度では噛み切れないらしい。仕方ないので抱っこして引き離す。

 彼女を心配したわけではなく、下手に蹴られて怪我でもさせられたら、飼い主のサナがかわいそうだからだ。


「それ、なんです、なんですか?」


 なんだか怪しげなモコモコにクイナたちが興味を示す。


「人喰い熊の子供だよ。うちのペットだね」

「こわっ! そんなのが普通にいるのかよ! 早く帰ろうぜ!」

「怖くないよ。弱い人間を狙って食べるくらいだから」

「それが怖いんだろう!?」


 なぜだろう。

 アカリの発言が普通に聞こえる。


「で、わざわざ何の用なの? お金はもらったし、もう帰ってもいいよ」

「そ、それはその…昼間のファテロナの無礼のお詫びに参ったのですわ。ほらファテロナ、お詫びしなさい」

「お嬢様は、それを理由にアンシュラオン様にお会いに来たのです」

「ふぁ、ファテロナ! 何を言うの! そんなことはありませんわ! 絶対にありえませんわ!」


 顔を真っ赤にして否定するが、横でファテロナがニタニタ笑っているので事実なのだろう。

 その茶番にアンシュラオンは頭が痛くなる。


(なんだこの変な好意は。最初のアプローチを間違えて、こじらせた感があるな。もうこいつのことは金だと思おう。うん、そうしよう。そうしないと心がもたない)


「まあ、百万くらいもらったから、べつにいいけどね。するなら早くしてね」

「ファテロナ、は、早くなさい! ほら!」

「このたびはアンシュラオン様の雌犬を勝手に調教してしまいまして、誠に申し訳ございません。そのお詫びとしてお嬢様をご提供いたします」

「え? わたくしを?」

「口だけの謝罪など何の意味もございません。穴には穴で対抗するのみ。しかもより価値のある穴であれば、これ幸い! もちろん初物ですので、ぜひご堪能ください」

「よくわからないのだけれど…どういうことかしら?」

「簡単に言えば、これは『お友達の家にお泊り』なのでございます!」

「お、お泊りぃいいい!? あ、あの伝説の…! 本当に実在したの!?」

「はい。一緒にパジャマで寝転がって漫画を読んだり、コイバナをしたり、枕投げをしたり、抱き合って寝たりするアレのことです」

「な、なんとぉおおおお! す、すごいですわ! はぁはぁ! わたくしにも、ついにそのチャンスが!」

「ですからお嬢様には、ここでぜひ一泊していただきたいのです。いえ、できれば二泊でも三泊でも滞在していただき、穴という穴をご提供してほしいのです」

「…ごくり。わ、わかりましたわ! その大任、このベルロアナ・ディングラスが責任をもって引き受けますわ!」

「さすがお嬢様でございます! ということですので、へい大将! お嬢様にデンジャラスな汁を注いでくれメンス!」

「不束者ですが、よろしくお願いいたします!!」


 二人が頭を下げる光景は悪夢でしかない。

 そのせいで今回ばかりは本当にくらくらして倒れそうだ。


「いやいや、オレのテリトリーで変なことをしないでもらえる? 自由に振る舞いすぎでしょ。というか、罠だよね?」

「この通り、超絶美少女でございます」

「見た目はね」

「こうなったらもう見た目だけで勝負するしかありません! 一晩だけの誘惑! 一晩だけの快楽でかまいません! どぴゅっと一発で仕留めてやってくださいませ! オウイェー! カモカモカモンッ!」

「やっぱり罠じゃん。全然詫びになってないし、むしろ罪を重ねに来たよね」

「種をもらえるのならば私でもかまいません。この身体をお詫びとして捧げます!」

「それは…うん……うーん、やっぱりやめとくよ。さすがにマキさんに悪いし」


 即決できないのが男の哀しい性である。


「ご主人様、お客様でしょうか?」


 騒ぎを聞きつけてホロロが下りてきた。

 メイドとして主人を放っておくわけにはいかなかったようだ。


「これはディングラス様、ようこそいらっしゃいました。今、お茶をご用意いたします」


 そして、ベルロアナたちを見てお辞儀するが―――


「って、あの人も裸なんだけど!? いったい上で何が起こってんだよ!? はっ、まさか! い、いやらしい! いやらしいよ! なんて破廉恥な!」

「アカリ、何を驚いているの?」

「だって、裸だよね!? 驚くよ!」

「ファテロナもよく裸でいるわよ」

「そこで慣れちゃ駄目よ!?」


 言われてみれば、普段からファテロナも下着姿や裸でいることが多い。ベルロアナが慣れるのも当然だろうか。


「ところで、そのご様子ですと入浴中だったのでしょうか?」


 ファテロナが、じっとホロロの様子を見る。

 火照って身体が赤みを帯びていることから、そう推測したのだ。


「え? 入浴中?」

「アカリ、何を考えていたのですか?」

「それは…だ、だって…裸だし、赤くなっていたし、汗も搔いていたから…普通はそう思うでしょ?」

「いえ、まったく。常識的に考えれば、入浴だと即座に誰でもまるっとわかりますが?」

「あんた、わかってて遊んでるだろう!?」


 今までの言動を見ていると、この中ではアカリが一番の常識人のようだが、変態の中にいるとそのほうが浮いてしまうらしい。

 実に災難なことである。


「三階に風呂があるんだ。今、みんなで入っていたところさ」

「よろしい、ならば戦争です!」

「ファテロナ!? どうして服を脱ぐの!?」

「ここは敵地です。となれば、もう勝負するしかありません。ディングラス家の威信がかかっているのです。お嬢様も早く服を脱いでください」

「わ、わたくしも!? で、でも、殿方いらっしゃる前で、そんなことは…」

「ええい! メンドクセー! 全部脱ぐのです!」

「あひーー! 何をするのー! み、見ないで! わたくしはその、こんなことをするつもりでは…!」

「あっ、おかまいなく。何も感じないんで」

「えええええええ!?」


(やはり何も感じない。これはこれですごいよな。というかこいつ、胸がそんなに大きくないな。小さいってわけでもないけど…どのみち完全に守備範囲外だ)


 ベルロアナは間違いなく美少女で、十五歳になったこともあり、身体付きも少女らしく丸みがあって全体的に柔らかそうではあるが、それだけだ。

 もともとロリコンではないので、興味がさほど湧かないのは当然だろう。


「あなたたちも脱ぎなさい」

「クイナも、クイナもなのですか!?」

「当然です。お嬢様のお供をするのが、我々スレイブの役目なのですよ」

「ううう、そんなの恥ずかしい、恥ずかしいのです!」

「わたしは入らなくてもいいよな? な?」

「何のために連れてきたと思っているのですか。脱ぐのが礼儀ですよ」

「わわ、やめろってー!」

「他人の家のお風呂ってドキドキしますね。ちょっと楽しみです! アカリさんも脱ぎましょう!」

「うわ!? ユノ! 脱がすなって!」


 当然、白スレイブ三人娘も参加させられる。

 クイナとアカリはかなり恥ずかしがっているようなので、ここで情報を開示してみた。


「そんなに恥ずかしがることはないよ。だって、オレは君たちのことは何でも知っているんだからね」

「どういう、どういうことなのですか?」

「オレはね、君たちの身体のことは、君たち以上に知っているんだよ。げへへ、ねぇ。スリーサイズはもちろん、臓器の色や骨の硬さまで全部知っているんだからさ。うへへ、ああ、君たちの身体の中はすべすべで可愛かったなぁ。ふひひ」

「ゾワワワッ!? なんです、なんなのですー!? 何か怖いですー!?」

「クイナちゃんはまだ見てないけど、アカリちゃんとユノちゃんのことなら何でも手に取るようにわかるよぉー、はぁはぁ。わからないことがあったら訊いてね。おふっおふっ、おふおふふ」

「きしょっ!? この人なんなの!? どっかから情報漏洩してるのか!? ディングラス家の個人情報保護はどうなってんだ!?」

「ぶほほ、君の大腸なんてすごい綺麗だったよ。また見せてね」

「ひーー! やめてくれー!」

「ユノちゃんも毛穴の数まで知ってるからねぇ。ぐひゅひゅひゅ」

「ど、どこかでお会いしましたっけ?」

「オレはベルロアナの友達だからね。何でもわかるのさ。それが上流階級同士ってもんだよ」

「なるほど! さすがお嬢様のお友達です!」


 というのは完全な嘘だが、ユノとアカリに関しては領主城で診察したこともあって、身体の隅々まで、まさに細胞の一つ一つまで見ている。

 それと比べたら裸程度、どうということもないだろう。

 が、なぜかキモオタ風に言ったので少女たちは恐怖を覚えたようである。

 男でもこんなことを言われたら怖いが、イタ嬢のスレイブなのだから遠慮はいらない! うおお!


「では、お嬢様。さっそく参りましょう!」

「は、恥ずかしいですが、これもお泊りのメインイベント! 避けて通るわけにはまいりませんわ!」


 こうしてなぜか、ベルロアナたちも風呂場に参戦することになった。

 これは荒れる予感がする。


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