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「海賊たちの凱歌 後編」

173話 「旅館の温泉に入ろう!(混浴)」

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 観光を続けていると日が暮れてきた。

 オレンジに染まる海がキラキラと輝いて美しい。


「サナ、あれが夕焼けの海だよ。綺麗だね」

「…こくり」

「こんなのずっと見ていられるよな」


 火怨山の自然はまさに大自然といった様相で荘厳だったが、こちらは人が住む静かな海辺の夕焼けといった感じで、また趣が違う。

 海沿いに暮らしていた地球時代を思い出して、懐かしい気持ちに浸る。


「そろそろ帰ろうか。えーと、ホテルはどこかな?」

「カットゥさんに印をつけてもらいました。こっちですね」


 ロリ子に案内されてホテルに向かう。

 観光区の南にはずらっとホテル街が並び、海を眺めながら過ごすことができるように設計されていた。

 ハビナ・ザマ、ハピナ・ラッソ、ハピ・ヤックと、実際は海沿いではないのに南国風のホテルが続いていたが、本場のハピ・クジュネはどうかといえば―――


(スザクの趣味なのか? 完全に日本旅館だな)


 用意してもらったホテルは、なぜか和風の旅館であった。

 当然今までの南国様式のホテルもあるが、どうやらここ十数年はこういった和風テイストのものが流行ってきているらしい。

 その中でこの『薬奉やくほう旅館』は老舗の部類に入り、昔から和式を貫いている歴史ある旅館のようだ。

 さっそく中に入ると、カットゥも一緒についてきた。


「あれ? カットゥさんもここに泊まるの?」

「はい。下の階の一室を用意していただきましたので、御用があればいつでもお申し付けください」

「そうなんだ。じゃあ、あの護衛の三人も引き続き一緒かな?」

「夜は交代しますが、その通りであります」

「まあ、今日はもう寝るだけだから、君もゆっくりするといいよ」

「ありがとうございます! ですが、本日中に報告書をまとめねばなりませんので…」

「そっか。大変だね」


(その報告書には『ターゲットは踊り子の尻を叩いていた』、みたいなことも書くのかな? それだとただの変態だよ。事実だけど)


 そんなことを考えながらカットゥと別れて、二階の部屋に向かう。

 ふすまを開けると、中にロリコンがいた。


「よぉ、お帰り。観光は楽しめたか?」

「まあね。いろいろと見て回ったよ。アロロさんは?」

「女性の部屋は隣なんだが、温泉に行っているみたいだぞ。気に入ったのか何度も往復してるな」

「ああ、そっか。温泉があるんだっけ」

「ここは海底火山があるらしいから、けっこう温泉も有名なんだ。それに、ここの宿は薬湯もあるらしいな。湯治客も多いとか聞いたぞ」


 海の近くで過ごしていると、どうしても日焼けするので、お肌の手入れはハピ・クジュネで暮らすのならば必須とのことだ。

 温泉と聞いたら元日本人としては入るしかない。


「サナの髪の毛も少しべたついているな。さすが海沿い。潮風がすごかったもんな。よし、ご飯前にお風呂に入ろうか」

「…こくり」

「いいな。ひと風呂いくか!」

「うっ、ロリコン、汗臭ぇ!」

「暑いんだからしょうがない。俺だって好きで汗を掻いているわけじゃねえよ」

「そういえばグラス・ギースより暑いね」

「もう真夏だしな。というか、思いきり夏服を着てるじゃないか」

「そうだけど、武人だとこれくらいの暑さはそこまで気にならないんだよね。あまり汗も掻かないし、汚れてもすぐに洗い流しちゃうしなぁ。…そっか、もう夏なのか」


 あまり季節の話をしていなかったが、アンシュラオンが火怨山を出たのが三月初頭なので、今はもう八月の【夏真っ盛り】である。

 グラス・ギース周辺は『大災厄』の影響で滅多に雨が降らない。一年を通じて全体的に乾燥しており、寒暖の差があまりないのが特徴だ。

 そのため一年中、春物か秋物の服で間に合ってしまい、季節をあまり意識しないのが実情である。

 一方のハピ・クジュネは、夏になると三十度を超える猛暑日が増える。海辺なので雨も多く、湿気もあるので夏は汗が止まらないだろう。

 だからこそ自然と温泉文化が広まったと思われる。


(そりゃ何千キロも離れたら気候も変わるよな。これも旅の醍醐味か。だが、温泉は楽しみだな)


 そして、皆で浴場に赴くのだが、ここで重要なことに気づく。


「ここって【混浴】もあるんだね」


 男湯、女湯のほかに『混浴』の文字がある。

 なぜ混浴が存在するかについては諸説あるものの、単純に家族や身内だけで入りたいと願う者も多いだろう。身内大好きな自分としても実にありがたいものだ。

 ただ、海外ではあまり見られないものらしく、これも日本から転生した誰かがもたらした文化なのかもしれない。

 それを見て、なぜかロリコンがにやつく。


「混浴かぁ。まあ、しょうがないよなぁ。こればかりは不可抗力だもんなぁ」

「ロリコンのくせに、いやらしい顔をしやがって。何が目的だ?」

「逆に訊くが、お前も年上女性以外の裸も嫌いじゃないだろう?」

「それはそうだ。女性はそれ自体が素晴らしいからな。年下だって良いものは良いに決まっている」

「そういうことだ。わかったかね?」

「わかったわかった。みんなで混浴に入ろうな。それでいいんだろう?」

「うんうん、しょうがないしょうがない。これはしょうがないんだ」

「あっ、あっちに可愛い幼女がいる」

「え? どこだ?」

「このロリコンがぁああ! どんっ!」

「ぐあっ!」


 ロリコンを押し出し、男湯に吹っ飛ばす。

 それからポケット倉庫から板を取り出して男湯を塞いだ。


「おい、裏切ったな! ちくしょう! 出せ! 出せ!!」

「この壁は心が清くないと通れないようになっているんだ。諦めろ。そもそもお前みたいなロリコンに、サナの裸を見せるわけがないだろうが!」

「こっちだって、ロリ子の裸をお前に見せるわけにはいかないぞ!」

「オレは妻以外に欲情しないから問題ないんだ。俗物と一緒にするな! 悪霊退散!!」

「ぎゃああああああ!」


 遠隔操作した命気で吹っ飛ばして醜い悪霊を完全に封じ込める。


「だが、まだ安心はできんな。内部の掃除をせねば。みんな、ちょっと待っててね!」


 アンシュラオンが混浴の暖簾のれんをくぐって中に入ると、予想通りに男しかいなかった。


「今からここは貸切だ! 男は出て行け!」

「なんだよ、混浴じゃないか!」

「そうだそうだ! 男が入ってもいいんだぞ! 男性差別反対!」

「知るか! 男は消えろ!」

「ぎゃぁあああああああ!」


 柵の上で隣と繋がっているため、男たちを男湯のほうに放り投げて排除完了。

 これだけでは心配なので、覗かれないようにモグマウスも配置。股間を狙うように命令しておいたので、覗いた男は即座に全国ニューハーフ協会に加入確定となるだろう。


「オレの嫁たちを男が入っていた湯に入れさせるわけにはいかん! 全部入れ替えてやる!」


 と、温泉とはなんだったのかといわんばかりに、脱衣所を含んだ浴室すべてを一度命気で浄化してしまう。

 しっかりと温泉の効果も浄化されたが、放っておけばまたお湯は増えていくので大丈夫だろう。

 それから入り口に戻ると、ようやく手招き。


「もう大丈夫だよ。中は綺麗にしておいたから」

「わーい、アンシュラオン様と温泉ですねー! 楽しみです!」

「温泉って初めて入るわ。どんなのかしら」

「失礼いたします。サナ様、どうぞこちらへ」


 サナを連れた妻三人が入っていくが、一応ロリ子には確認しておくことにした。


「ロリ子ちゃんは大丈夫? 混浴だとオレに見られちゃうけど。嫌だったら女湯に入ってもいいんだよ?」

「大丈夫ですよ。むしろ一緒にいたほうが安全ですからね。アンシュラオンさんって、年下の人には興味がないんですよね? 昼間の踊り子さんとかもそうでしたけど」

「興味がないわけじゃないんだけども…あれはあいつに問題があったんだと思うよ。変なやつだったしね。まあ、こう言うのもあれだけど、女性に困ってないから絶対に大丈夫だよ」

「そうですよね。わかってました! ただ、旦那はあとでとっちめておきますね」


 ロリ子は若干自分の体形にコンプレックスを抱いている節があるので、一瞬でも他の女性の裸を期待した旦那には手厳しい制裁が加えられるだろう。

 ロリコンが自分の存在意義を見失った段階で、彼の敗北は決定していたのだ。残念!


「ほら、サナ。服を脱ごうね」

「…こくり」


 アンシュラオンはサナの服を脱がせると、自分も何の躊躇もなく服を脱いだ。

 当然、邪な心は無縁の菩薩の心境だ。こういうときは奉仕するだけのマシーンとなる。

 女性たちも特に気にせず服を脱いでいくのだが、そこで彼女たちの肌が焼けていないことに気づいた。


(オレは日焼けしないし、サナは最初から浅黒いから気にしなかったけど、普通の人間はけっこう日焼けするんだよな。まあ、当たり前ではあるんだが…)


 都市で出会った人々の六割くらいは、日焼けで肌が黒かった。夏だと半袖半ズボンといったラフな格好であることも要因だろう。

 普通に違う地域を旅しても、いくらフードで覆ったとしても目元や口元は日焼けするものである。ロリ子も出会った時は、多少目元が日焼けしていた記憶がある。

 それが今は綺麗な肌のままだ。


「ホロロさんは日焼けは大丈夫?」

「はい。大丈夫です。そういえば、すっかり日焼けしなくなりましたね。どうしてなのでしょう?」

「命気風呂に入っているからかな? ホロロさんは肌も綺麗だね。なでなで」

「うふふ、ありがとうございます」


 ハピナ・ラッソから旅をしているホロロも見てみたが、ほぼ真っ白だ。

 日々の命気風呂によって肌の細胞が常に潤っているせいかもしれない。マキは武人なので肉体を活性化させれば問題ないが、小百合も同じく日焼けはしていない。

 どうでもいい話ではあるのだが、こうしたことも昼間に注目を浴びた要因かもしれない。


「よし! 温泉に入るぞおおおおお!」


 服を脱げば、ようやく風呂である。

 風呂場は露天式の大きな円形で、海を眺めながら入れるようになっていた。

 すでに日は落ちて海は薄闇に包まれつつあり、静かで穏やかな雰囲気が露天風呂にぴったりだ。


「サナ、身体を洗おうな。お湯に入る前に身体を洗うのがマナーなんだよ」

「…こくり」

「ふんふーん♪ 傷んだお肌を癒そうねぇー」


 ご機嫌でサナの身体を丁寧に洗い、昼間の疲れと傷みをチェック。

 武人になったせいか肉体は急激に強くなっており、日光程度では皮が剥けたりはしないが、それでも多少は傷むものである。

 命気をたっぷり手に溢れさせて身体に塗りながら、軽くマッサージを交えて洗い流していく。

 それが終わると、黒く美しい髪を揉み込むように洗っていく。これで潮風で汚れた髪の毛も綺麗さっぱりだ。


「ああ、サナは本当に可愛いなぁ」

「アンシュラオン君はサナちゃんが大好きなのね。洗い方が全然違うわ。愛情深いというか…すごく優しいもの」

「世界で一番大切な存在だからね。この子のためならばオレは何だってするよ」

「うふふ、いいなぁ。少し妬けちゃうかも」

「マキさんも大切な嫁の一人だよ」

「本当~? なんだか差がある気がするなぁ~」

「本当だって。でも、前にも言ったけど、今はこの子の将来のほうが大事だからね。優先順位ははっきり決めないと何事も中途半端になっちゃうから…そこはごめんね」

「いいのよ。妹さんを大切にしてあげてね」

「サナが終わったから次はマキさんたちだよ! さぁさぁ、並んで!」

「それじゃ、お言葉に甘えちゃおうかしら」

「マキさんの身体は本当にいいバランスをしているね。ぬりぬり」

「んふふ、くすぐったーい♪」

「こらこら、動いちゃ駄目だよ。ふんふんふん、ぬるぬるぬる」

「あはははは♪」


 マキの身体をサナ同様に丁寧に洗う。

 相変わらず引き締まった身体と胸のバランスが素晴らしい。


「小百合さんは、ほんと女子高生みたいだよね。昼間会ったあの踊り子よりも、肌がきめ細やかなんじゃない?」

「レマール人の特徴ですかね? 保湿能力が高いので、お母さんとかも肌が綺麗ですよ」

「レマール人、最高すぎるね。うむ、いい感触だ。ふんふんふん、ぬるぬるぬる」

「あはっ…そこ気持ちいいです。あぁ、もっとぉー」


 洗ってるだけなのに興奮して抱きついてくる小百合をなだめながら、続いてホロロを洗う。


「本来ならばご主人様を洗って差し上げるべきなのですが…」

「いいのいいの。オレは奉仕も大好きなんだから。これも嫁の特権だよ」

「そういうことならば…んっ……ご主人様…手付きが……あはぁっ」

「ホロロさんの身体って全体が柔らかいんだよね。ふわふわというか、もちもちというか、これぞ熟れた身体なんだよなぁ」


 アイラにはない三十間近の女性だけが持っている独特の柔らかさがホロロにはある。

 かといって太っているわけではないため、このあたりの良さがわかると若い女性では満足できなくなるのだ。


「ロリ子ちゃんはどうする?」

「あはは、さすがに恥ずかしいので…自分で洗います」

「そりゃそうだね。こっちは先に入ってるね」


 他人の嫁には興味がないので、サナと妻たちと一緒に風呂に入る。


「はぁ…いい湯ね。グラス・ギースにいたら味わえなかった経験だわ」


 マキがお湯に浸かり、身体を伸ばす。


「グラス・ギースでは、お風呂を温める習慣はあまりないですもんね」

「そうねぇ、そもそも水自体が貴重だものね。それと違ってこんなに水が溢れているなんて、ハピ・クジュネは本当にすごいわ」

「海水を真水にするための工場もあるみたいですね」


 ハピ・クジュネや衛星都市が水に困っていないのは、海水を真水にしているからだ。

 地球でも淡水化技術と呼ばれ、一般的な蒸留を使った方法からカーボンフィルター等を使った最先端技術まで、さまざまな手法で水を生み出している。

 ハピ・クジュネでは水蒸気から真水を作る方法が一番多いが、この世界はジュエル文化が存在することを忘れてはいけない。

 水分だけを吸収するジュエルや、逆に不純物だけ吸収するジュエル。あるいは大気中から水分を取り出す術式等々、多様な方法で水を生み出すことができる。

 特に南から大量の術具を輸入していることもあり、水が生命線のハピ・クジュネにおいては浄水技術が発展しているようである。


「都市の場所によって随分と違うのね。グラス・ギースも昔は緑が溢れた大地だったらしいけど、海は枯れることがないからいいわよね」

「そうですね…って、マキさん。お風呂にタオルを入れたら駄目なんですよ! レマールの作法に則って没収です!」

「あっ、ちょっと! 脱げちゃうわ!」

「脱がしているんですから当然です! さっきは裸で洗ってもらったじゃないですか。どうして隠すんですか!?」

「だって…恥ずかしいんだもの」

「ホロロさんを見てください。まっぱですよ、まっぱ! 潔いです!」

「お風呂はこれが普通かと思いまして…」

「そうですよ。これが普通なのです。さぁ、脱いでください」

「で、でも、その…ロリ子ちゃんもいるわけで…」

「いまさら何を言っているんですか。えーい!」

「ああああ、駄目よぉおおおお!」

「うはっ! やっぱりこの乳は反則ですよ! ゆるせませーーーん!」

「小百合さーーーんっ!? む、胸を揉まないで…!」


 獣になった小百合に襲われて、結局マキも裸になって風呂に入ることになった。


(妻たちと入る温泉は格別だな。最高だよ)


 その光景をアンシュラオンは楽しそうに眺めていた。

 夫婦の契りを終えても恥ずかしがるマキ。いつでも自分らしい小百合。自己主張せずに静かに調和しているホロロ。そんな愛らしい三人に囲まれながら過ごす温泉が楽しくないわけがない。

 しかも愛するサナもいるのだ。これこそ幸せである。


「…じー」

「え? なに? 命気が飲みたいの?」

「…こくり」

「わかったよ。はい、命気」

「…ちゅーちゅー」


 サナがアンシュラオンの指にしゃぶりついてきた。

 これ自体はいつもの光景なのだが、それをじっと見ていた小百合が一言。


「アンシュラオン様、小百合も飲みたいです!」

「ええええ!? どうしたの急に!?」

「旅の間、ずっと気になっていたんですけど、それってお風呂の水に使っているものですよね?」

「うん、命気だよ。飲み水から洗濯まで何にでも使える便利なものなんだ。サナは普通の水は飲まないからさ。こうやって飲ませたり、あらかじめ容器に入れておいたものを飲ませているんだけど…」

「だったら小百合も飲みますー!」

「そんなにたいしたものじゃないよ?」

「それでもいいんです。アンシュラオン様の指から飲みたいんです! はい、あーん」

「う、うん。まあいいけど…はい、どうぞ」


 小百合も指を咥えて吸い出す。サナはまだしも大人の女性が吸うと、若干違う意味になりそうで怖い。

 が、さらに連鎖は続く。


「では、私もお願いいたします」

「え? ホロロさんも?」

「サナ様と運命を共にするのがメイドの務めなのです。どうか私にもご慈悲を…」

「ちょっとちょっと! アンシュラオン君が困っているじゃないの」


 さすがマキだ。

 良識が―――


「こういうときは第一夫人の私が最初にやるわ。はい、あーん」


 なかった。

 やはり他の女性たちに負けてはいられないと、張り合うように口を開く。


「わかった。わかったから、ちゃんと並んで!」


 指に群がる女性たちを左右に二人ずつ並べてから、手の平を上にして差し出す。

 サナは左手の親指、マキは中指と薬指。小百合は右手の小指と薬指、ホロロは親指を口にほおばる。


「んっんっ。ごくごくごく。あら、美味しい」

「身体に馴染みますね。ちゅっー、ちゅっ。これは美味しいです!」

「こ、これが私の神の味…! さすがでございます。ちゅっちゅっ、ごくごく」

「…ちゅーちゅー」

「なにかしら? 濃度がいつもより濃いような気がするわね。ちゅっ、ちゅー」

「あっ、それは私も感じました。ちゅーっ、ごくん。喉越しは薄い蜂蜜みたいですけど、味自体は濃いんですよね」

「…んんっ…ごくん。この口に広がる味と喉に絡まる感覚が素敵です。んんっ…もっと…ちゅーちゅーーー」

「ロリ子ちゃんは、さすがに飲まないよね?」

「あはは…そ、そうですね。でも、みなさんが飲んでいらっしゃるので気にはなります。それって売れますかね?」

「いやぁ、どうかな。はっきり言えばオレの生体磁気から出来ているから、汗と同じ体液と言っても過言じゃないし…心情的には嫌かな」

「そうですか…残念です。売るときは教えてくださいね」


 売り物にしようとするとは恐るべき女性だ。

 結局ロリ子も味見と称して飲んでいたので、風呂場はかなりカオスなことになっていた。


「なぁ、そっちはどうなってんだよー! おーい! こっちはなんかオッサンばっかりなんだけど!? しかも鼻息が荒いやつがいて怖いんだよ! 頼むから出してくれよおおおおお!」


 その頃、男湯ではアンシュラオンに追い出された客たちが、仲良く風呂に入っていたという。

 時々「ウホッ」とか言うマッチョもいたそうなので、ロリコンはさぞや生きた心地がしなかっただろう。この世の地獄とはこのことだ。

 こうしてハピ・クジュネの一日は、あっという間に過ぎ去っていくのであった。


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