4 / 4
残念すぎる私達へー4ー
しおりを挟む
初めてコイツに出会った時はまだ、俺もコイツも今みたいに複雑な関係じゃなかったんだよな。
俺は爽やかなイケメンを演じてて、無能でなんの取得もない千穂は死んだ様な眼をしてたんだよな。
あぁ~、こんな面倒な事になるなら助けるんじゃなかった。
一年前の2月12日の夜、俺は職場から家に帰る途中で千穂に出会った。路地の裏で全身から血を流して倒れている伊高千穂に。
「おい、大丈夫か?」
俺が千穂に近寄ろうとすると、寂しそうな声で言った。
「来ないで……」
「でも、すごいケガ……」
人間嫌いの俺でも流石に見過ごせなかった。救急車を呼ぶと、すぐ近くにある病院に搬送された。
「大丈夫ですか?」
「ここは……」
千穂は目を覚ますと震えた声で聞いた。
「ここは病院ですよ、すごい怪我をしていたので救急車を呼んでここに運ばれたんです」
「怪我……」
千穂は信じられないように言った。
「覚えてないんですか?」
「はい……」
「あっ!何か買ってきましょうか?」
「自分でやったんです……」
「この体の傷……全部自分で」
「あの……何言ってるんですか?」
「私、何もできないんです……勉強も運動も苦手で何も悪くないのに毎日いろんな人に怒られて、死にたくなったんです」
「私なんかがいない方がみんな幸せなんかじゃないかって……」
「そりゃ悪い事をしたな……」
「まさか自殺している所だったとは知らずに救急車なんて呼んじゃってよ……」
「良いんです退院したら自殺するんで、それまでここでお世話になります」
「俺が入院費を出してやってるんだ、何勝手死ぬ言ってるんだよ」
桜はそう言うと千穂の首を強く握りしめて言った。
「死にたいなら殺してやるよ」
「俺の手で!」
すると千穂は泣いた。
「なんだよ……生きたいんじゃねぇか」
「いいか、人間ってのはな1つでも長所あれば生きていけるんだよ!」
生きたいのに生きるのが辛い、怖いと言う感情は桜も知っていた。
「オマエがどんなに無能だろうとな、オマエにも必ず何か長所があるんだよ!」
だからなのだろうか、俺は千穂にこんな柄にもない事を言ったのだろうか。
「だからオマエの長所が見つかるまではそんな面しないで笑っていろよ、その方が生きてて楽しいだろ」
「はい」
千穂は笑顔で返事をした。
「うん、その面の方がお前は可愛い」
「って感じの出会いだったよ~」
「そうだっけ ?」
「うん !」
「マジで ?」
「マジで」
「俺も千穂も、キャラ崩壊半端ねぇ !」
「そこ !?」
「って言うか今日の出番もう終わりなの ?」
「面白くないんだし連載も終わっちまえよ」
「それはダメだよ !」
「次回、看病ってなんですか ?」
「勝手に次回予告しないで桜 !」
俺は爽やかなイケメンを演じてて、無能でなんの取得もない千穂は死んだ様な眼をしてたんだよな。
あぁ~、こんな面倒な事になるなら助けるんじゃなかった。
一年前の2月12日の夜、俺は職場から家に帰る途中で千穂に出会った。路地の裏で全身から血を流して倒れている伊高千穂に。
「おい、大丈夫か?」
俺が千穂に近寄ろうとすると、寂しそうな声で言った。
「来ないで……」
「でも、すごいケガ……」
人間嫌いの俺でも流石に見過ごせなかった。救急車を呼ぶと、すぐ近くにある病院に搬送された。
「大丈夫ですか?」
「ここは……」
千穂は目を覚ますと震えた声で聞いた。
「ここは病院ですよ、すごい怪我をしていたので救急車を呼んでここに運ばれたんです」
「怪我……」
千穂は信じられないように言った。
「覚えてないんですか?」
「はい……」
「あっ!何か買ってきましょうか?」
「自分でやったんです……」
「この体の傷……全部自分で」
「あの……何言ってるんですか?」
「私、何もできないんです……勉強も運動も苦手で何も悪くないのに毎日いろんな人に怒られて、死にたくなったんです」
「私なんかがいない方がみんな幸せなんかじゃないかって……」
「そりゃ悪い事をしたな……」
「まさか自殺している所だったとは知らずに救急車なんて呼んじゃってよ……」
「良いんです退院したら自殺するんで、それまでここでお世話になります」
「俺が入院費を出してやってるんだ、何勝手死ぬ言ってるんだよ」
桜はそう言うと千穂の首を強く握りしめて言った。
「死にたいなら殺してやるよ」
「俺の手で!」
すると千穂は泣いた。
「なんだよ……生きたいんじゃねぇか」
「いいか、人間ってのはな1つでも長所あれば生きていけるんだよ!」
生きたいのに生きるのが辛い、怖いと言う感情は桜も知っていた。
「オマエがどんなに無能だろうとな、オマエにも必ず何か長所があるんだよ!」
だからなのだろうか、俺は千穂にこんな柄にもない事を言ったのだろうか。
「だからオマエの長所が見つかるまではそんな面しないで笑っていろよ、その方が生きてて楽しいだろ」
「はい」
千穂は笑顔で返事をした。
「うん、その面の方がお前は可愛い」
「って感じの出会いだったよ~」
「そうだっけ ?」
「うん !」
「マジで ?」
「マジで」
「俺も千穂も、キャラ崩壊半端ねぇ !」
「そこ !?」
「って言うか今日の出番もう終わりなの ?」
「面白くないんだし連載も終わっちまえよ」
「それはダメだよ !」
「次回、看病ってなんですか ?」
「勝手に次回予告しないで桜 !」
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
浮気くらいで騒ぐなとおっしゃるなら、そのとおり従ってあげましょう。
Hibah
恋愛
私の夫エルキュールは、王位継承権がある王子ではないものの、その勇敢さと知性で知られた高貴な男性でした。貴族社会では珍しいことに、私たちは婚約の段階で互いに恋に落ち、幸せな結婚生活へと進みました。しかし、ある日を境に、夫は私以外の女性を部屋に連れ込むようになります。そして「男なら誰でもやっている」と、浮気を肯定し、開き直ってしまいます。私は夫のその態度に心から苦しみました。夫を愛していないわけではなく、愛し続けているからこそ、辛いのです。しかし、夫は変わってしまいました。もうどうしようもないので、私も変わることにします。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる