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残念すぎる私達へー4ー

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初めてコイツに出会った時はまだ、俺もコイツも今みたいに複雑な関係じゃなかったんだよな。

俺は爽やかなイケメンを演じてて、無能でなんの取得もない千穂は死んだ様な眼をしてたんだよな。

あぁ~、こんな面倒な事になるなら助けるんじゃなかった。

一年前の2月12日の夜、俺は職場から家に帰る途中で千穂に出会った。路地の裏で全身から血を流して倒れている伊高千穂に。

「おい、大丈夫か?」

俺が千穂に近寄ろうとすると、寂しそうな声で言った。

「来ないで……」

「でも、すごいケガ……」

人間嫌いの俺でも流石に見過ごせなかった。救急車を呼ぶと、すぐ近くにある病院に搬送された。

「大丈夫ですか?」

「ここは……」

千穂は目を覚ますと震えた声で聞いた。

「ここは病院ですよ、すごい怪我をしていたので救急車を呼んでここに運ばれたんです」

「怪我……」

千穂は信じられないように言った。

「覚えてないんですか?」

「はい……」

「あっ!何か買ってきましょうか?」

「自分でやったんです……」

「この体の傷……全部自分で」

「あの……何言ってるんですか?」

「私、何もできないんです……勉強も運動も苦手で何も悪くないのに毎日いろんな人に怒られて、死にたくなったんです」

「私なんかがいない方がみんな幸せなんかじゃないかって……」

「そりゃ悪い事をしたな……」

「まさか自殺している所だったとは知らずに救急車なんて呼んじゃってよ……」

「良いんです退院したら自殺するんで、それまでここでお世話になります」

「俺が入院費を出してやってるんだ、何勝手死ぬ言ってるんだよ」

桜はそう言うと千穂の首を強く握りしめて言った。

「死にたいなら殺してやるよ」

「俺の手で!」

すると千穂は泣いた。

「なんだよ……生きたいんじゃねぇか」

「いいか、人間ってのはな1つでも長所あれば生きていけるんだよ!」

生きたいのに生きるのが辛い、怖いと言う感情は桜も知っていた。

「オマエがどんなに無能だろうとな、オマエにも必ず何か長所があるんだよ!」

だからなのだろうか、俺は千穂にこんな柄にもない事を言ったのだろうか。

「だからオマエの長所が見つかるまではそんな面しないで笑っていろよ、その方が生きてて楽しいだろ」

「はい」

千穂は笑顔で返事をした。

「うん、その面の方がお前は可愛い」

「って感じの出会いだったよ~」

「そうだっけ ?」

「うん  !」

「マジで ?」

「マジで」

「俺も千穂も、キャラ崩壊半端ねぇ !」

「そこ !?」

「って言うか今日の出番もう終わりなの ?」

「面白くないんだし連載も終わっちまえよ」

「それはダメだよ !」

「次回、看病ってなんですか ?」

「勝手に次回予告しないで桜 !」
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