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第08章 魔王
第04話 隠し部屋
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遅くなってすみません。
office2013が突然認証しろって言ってきて、パッチを当てたり復元したりと大変でした。
なんなんだ! office2013!
投稿が遅れたのはそのせいであって、面白い他作品があって読みふけっていたとか、飲み会が続いてしまったとかでは、け、決して無いはず? です!
……どうもすみませんでした!
―――――――――――――――――――――――――――――
ルークス卿が呼んだというラーセンさんが来るまで時間があったので召喚の間を調べていた。
召喚にはあまり興味が無かったので、どんな施設でどんな魔法陣が描かれているかを少し見ただけ。俺の興味はこの広間の壁。この壁の向こうが今回の一枚目の地図が示した場所なのだ。
どうやって行けばいいのか。今は兵士も集まりだしているし、召喚命のルークス卿が召喚の間の壁を壊すのを黙って見ているはずがない。
だから、壁の向こうに空間が無いか、よくテレビで見る、コンコンと壁を叩いて音が違わないかを確認していた。ユーもルークスさんの傍では居心地が悪いのか、俺の作業を手伝ってくれている。
「何も分からないわね」
「うーん、そうだね。後できる事は、壁をぶち壊すか、何か起動となるものを探すかだね」
「起動になるもの?」
「うん、ボタンだったり、レバーだったり。一度、樹のダンジョンがあった時は、枝がレバーで起動スイッチになっていたんだよ」
「ふーん、そんなのもあるんだ」
「そうなんだ。だから、ここもベタに、こんな風に壁の一部を押したらクルンと回ったり……」
クルン パタン
「え? エイジ?」
クルン パタン
「え?」
「え?」
「「え―――――」」
「ここ? ここに何かあったの?」
俺が一度壁の向こうに消え、すぐに戻って来たからお互いに驚いたが、ユーも日本人だから忍者屋敷は知っていた。同じように”どんでん返し”を起動させようと壁をペタペタやっているが、一向に起動する気配が無い。
「エイジ! どこなのよー!」
「いや、どこって言われても、その辺としか……」
試しに俺もやってみたが、二度と起動しなかった。
「なんでエイジだけなのよ! 私もやってみたーい!」
そんな事言われても……
「あっ! なにそれ!」
「え?」
ユーが俺の胸元を指差した。
あ、ネックレスだ。いつの間に……
「たぶん、中に入った時に付けられたんだろうな。それで、入手達成したので、もう開かないって事かな」
「なにそれー! 私も入ってみたかったのにー!」
「い、いや、中は真っ暗だったし、それに一瞬だったから俺にも中がどうなってたかなんて分からなかったよ」
「中が見たいんじゃないの。扉を潜りたかったの!」
確かに見た目は面白そうだから気持ちは分かるんだけど。でも、開かないんだからしょうがないじゃん。
「ゴメン、無理かも」
「え~~~~」
ダダを捏ねるユーを見て、可愛いと思ってしまうのは仕方が無いとして、できないものは出来ない。今度、衛星に頼んで家の横にでも忍者屋敷を建ててもらおうかな。
そんな事を考えていると、呼び出しが掛かった。
ルークス卿が呼んだラーセンさんが来たようだ。
呼ばれるままに、俺とユーは二人の下に歩み寄った。
その時、ユーを見て一瞬だが驚く表情を見せたラーセンさんを俺は見逃さなかった。
「お待たせしました、彼がラーセンです」
ルークス卿が紹介してくれた後、お互いに自己紹介を済ませた。
ユーは結構、友好的に話してた。ルークス卿に対する態度とは明らかに違っているのだ。
この人はユーに優しくしてくれてたんだろうか。
しかし、この時も俺は注意深くラーセンさんを見ていたのだが、目が一瞬だけど、赤くなったように見えた。ほんの一瞬だったし、光の反射によっては見えなくも無いのかもしれないのだが、俺には馴染みのある色だったので見間違いでは無いだろう。
魔族の魔眼の色だ。
でも、魔族が目を赤くする時って、いつも衛星がカウンターで気絶させるんだけど、今回はその素振りが無い。
なぜだろうと考えていたが、俺に向けられたものじゃないからだろうと結論付けた。
だったら、誰に向けたのか。ユーしかないだろう。
ユーは異常耐性を持ってるから、魔眼も通じないと思う。だったらなぜ魔眼を発動させたのか。恐らく【鑑定】だな。魔眼は鑑定もできるって聞いてるからな。
なぜ、ここにいるかは知らないが、こいつは【鑑定】するまでもなく魔族確定だな。一応、【鑑定】はしておくけど。
―――ラーセン・レギオン(魔族):LV51 ♂ 1867歳
HP:903 MP:1205 ATC:934 DFC:822 SPD:908
スキル:【魔眼】【話術】【友好】【遠話】
武技:【杖】Max
魔法:【水】Max【風】Max【闇】Max
称号:潜入者
……レギオン族は人間の城が好きなのか? ガレンダといいタレランといい。倒した二人はそうでも無かったようだけど、パシャックも城仕えしてた事もあるんだったな。やっぱり魔王の動向を勘違いしてる口なんだろうな。
目的は達成したので、もうここにいる必要は無い。さっさと終わらせるためにも俺の方から口火を切った。
「ラーセンさん。あなた、ユーが…勇者が攫われた時に関与してますよね?」
「はい? どういう意味でしょうか」
「言ったまんまですが。ねぇ、レギオン族さん」
「な、なぜそれを…」
「これでも色々と知り合いも多く、経験もそれなりにして来たんでね」
焦りの色を見せだしたラーセンさんに対して更に追い討ちをかけた。
「このままここから去るのでしたら何もバラしませんよ。パシャックともう一人は名前を忘れましたがイケイケな感じの人は倒しましたし、ガレンダとタレランは友達になりました。ここまで言えばもう分かるでしょ?」
そこまで話すとユーも気付いたのか【鑑定】で確かめたようだ。
「【友好】と【話術】……これで私も騙されてたのね……」
さっきまでの友好的な表情から一変。ユーはラーセンさんに怒りの表情を見せた。
「ラーセンさん、あなたが私を売ったのね。なぜなのか、理由ぐらいは教えてくれるんでしょうね」
「ほぉ、其奴じゃったか。妾も話を聞きたいのぅ」
「ちょうどいい時に帰って来たみたいですね。上ではそれらしい人を見つけられませんでしたから」
クラマとマイアが戻って来た。タイミングがいいと言うのか悪いと言うべきか。悪いんだろうな、ラーセンさんの未来に合掌。
「何も手掛かりが無いから城を吹き飛ばしてしまいそうだったのじゃ」
「ええ、もう誰も痛みを感じないでしょうから、私も同じ事を考えていました」
え? え? え? 二人共、上で何して来たの? ここの上ってミュージャメン王国の王城か、それに近い所だよね? 召喚の間があるって事はそういう事だろ? 二人はそこで何して来たの!
「エイジ、よいの?」
「エイジ? 任せてくださいますよね?」
「私も参加しようかな」
俺が疑問を問う間もなく、話が進んで行く。
三人でラーセンさんに何する気? 聞きたくないけど、聞かないと大変な事になりそうだ。
「任せるって何を?」
「わかっておるじゃろ。エイジも人が悪いのぅ」
「ええ、この方はユーを泣かせた張本人。そちらの方も同罪のようですので、一緒に任せていただけましょうか?」
「私はもちろん当事者だから絶対参加だね」
何か分かんないから聞いてんだけど、こうやって三人の意見が一致する時って、俺が賛成したくなくなるのは何でなんだろ。
ほどほどにね、と言い残して、俺は階段を上がって上層を見に行った。
どんな所かも気になるが、クラマとマイアが何をしたのか非常に不安だったからだ。
予想通り、一階は城の中だった。すぐに入り口から出て全体像を確認すると、五階建ては優にあるほど高く聳えていて、両サイドは端まで見渡せない。当たり前かもしれないが、大商人バーンズさんの屋敷より遥かにデカイ。
城を探索すると人にも出会った。一部、壁や天井にめり込んでいる人も見かけたが、こっちはクラマがやったんだろう。生きているようだし、手加減はしてくれているみたいだ。めり込んで無い人達は、ボーっと突っ立ってるだけだった。俺が声を掛けても全然反応がないから、マイアの催眠術かなにかなんだろう。
さっき、痛みを感じなくなってるとマイアが言ってたよな。確かにこれなら何をされても分からないだろうな。
あれだけの勢いでクラマとマイアが乗り込んだにしては、被害は最小限で収まってる気がする。
どの辺りまで、こんな状況なのか確認しても無駄だろうな。一応、死人は出してないようだし、逃げてしまえば追いかけても来ないだろう。
一応、無事? な事は確認できたので、地下の召喚の間に戻って来た。
クラマもマイアもユーもいるね。
ルークス卿もラーセンさんも土下座はさせられてるようだけど、無事みたいだ。今は、ルークス卿となにやら話し込んでるみたいだけど、話して解決するならその方がいいって。
うんうん、無事でなにより。もしかしたら殺しちゃうんじゃないかと心配してたんだ。それならそれで、仕方ないかとも思ってたけど、生きてたのなら何よりだよ。
「エイジ様。今後、私も奴隷の末席に加えて頂く事になりました。どうぞ、よろしくお願いします」
「エ…イ…ジ…様。私も同じく加えて頂けますでしょうか。今日中に、いえ、すぐにでも必ず御名を言えるように致しますので、どうか、どうかお願い致します」
二人して何言ってんの? そんな話じゃなかったよね? ユーの過去の事でユーが落ち込んで、そのユーのためにクラマとマイアが怒ってたんだよね? それがなんで俺の奴隷とか言ってんの?
「此奴はまだエイジの名も言えぬので奴隷にも認められぬのじゃ」
「はい、そこは譲れませんから」
「ラーセンはすぐに言えたのにね」
そんなルールなんて無いし、マイアだって初めは言えてなかったじゃん!
ユーはもうラーセンさんを呼び捨てですか。それにラーセンさんは魔族だから俺の名前をなぜか言えるんだよ。
その基準だとルークス卿が不利じゃん。…そうじゃなくって、なんで俺の奴隷になるって決めてんの!
「いや、もう間に合って……」
「そうじゃ、此奴から情報も貰っておるのじゃ。魔族領ではよい素材が取れるそうじゃぞ?」
「ええ、ルート的には道程の中ほどで行けばちょうどいいでしょうね」
「魔王か~、どれだけ強いのか見てみたいよね」
おい! やっぱり俺に決定権は無いのかよ! 主張する気は無いけど、立場的には俺が一番偉い設定だろ? いつもいつもおかしいだろ!
それにユー。魔王なんて見に行かないからね。
……なんかフラグっぽいけど、絶対に行かないからね。
その後、懇願するルークス卿とラーセンさんに負け、奴隷として認める羽目になってしまった。
でも、ルークス卿には、名前を言えない事を理由に、この城に残ってもらう事にした。「奴隷になれるように精進します」とか言ってたけど、奴隷になるための精進ってなんなの。
ラーセンさんは同行する事になった。他の魔族達と合流させるにしても戻らないといけないから面倒だし、素材の場所を知ってるのはラーセンさんだから、案内をさせるために連れて行くとクラマ達に決められてしまった。
おーい、リーダーは誰なんだよー。
ラーセンさんの事も、さん付けはするなと言われ、ユーと同じく呼び捨てにしている。他の魔族もそうだし、そこに異論は無い。そこに至るまでの経緯については異論だらけだが。
ここからだと、来た地下道を行くよりこのまま次の地点に向かった方が早いので、堂々と門から出て出発した。
本当は、少しミュージャメン王国の王都を観光もしたかったんだけど、移動のための足の確保があると言うので、王都から出て行くクラマを急いで追いかけて行った。
確かに、魔族とタンデムは俺も嫌だしな。この国の王都観光はまた今度だな。
office2013が突然認証しろって言ってきて、パッチを当てたり復元したりと大変でした。
なんなんだ! office2013!
投稿が遅れたのはそのせいであって、面白い他作品があって読みふけっていたとか、飲み会が続いてしまったとかでは、け、決して無いはず? です!
……どうもすみませんでした!
―――――――――――――――――――――――――――――
ルークス卿が呼んだというラーセンさんが来るまで時間があったので召喚の間を調べていた。
召喚にはあまり興味が無かったので、どんな施設でどんな魔法陣が描かれているかを少し見ただけ。俺の興味はこの広間の壁。この壁の向こうが今回の一枚目の地図が示した場所なのだ。
どうやって行けばいいのか。今は兵士も集まりだしているし、召喚命のルークス卿が召喚の間の壁を壊すのを黙って見ているはずがない。
だから、壁の向こうに空間が無いか、よくテレビで見る、コンコンと壁を叩いて音が違わないかを確認していた。ユーもルークスさんの傍では居心地が悪いのか、俺の作業を手伝ってくれている。
「何も分からないわね」
「うーん、そうだね。後できる事は、壁をぶち壊すか、何か起動となるものを探すかだね」
「起動になるもの?」
「うん、ボタンだったり、レバーだったり。一度、樹のダンジョンがあった時は、枝がレバーで起動スイッチになっていたんだよ」
「ふーん、そんなのもあるんだ」
「そうなんだ。だから、ここもベタに、こんな風に壁の一部を押したらクルンと回ったり……」
クルン パタン
「え? エイジ?」
クルン パタン
「え?」
「え?」
「「え―――――」」
「ここ? ここに何かあったの?」
俺が一度壁の向こうに消え、すぐに戻って来たからお互いに驚いたが、ユーも日本人だから忍者屋敷は知っていた。同じように”どんでん返し”を起動させようと壁をペタペタやっているが、一向に起動する気配が無い。
「エイジ! どこなのよー!」
「いや、どこって言われても、その辺としか……」
試しに俺もやってみたが、二度と起動しなかった。
「なんでエイジだけなのよ! 私もやってみたーい!」
そんな事言われても……
「あっ! なにそれ!」
「え?」
ユーが俺の胸元を指差した。
あ、ネックレスだ。いつの間に……
「たぶん、中に入った時に付けられたんだろうな。それで、入手達成したので、もう開かないって事かな」
「なにそれー! 私も入ってみたかったのにー!」
「い、いや、中は真っ暗だったし、それに一瞬だったから俺にも中がどうなってたかなんて分からなかったよ」
「中が見たいんじゃないの。扉を潜りたかったの!」
確かに見た目は面白そうだから気持ちは分かるんだけど。でも、開かないんだからしょうがないじゃん。
「ゴメン、無理かも」
「え~~~~」
ダダを捏ねるユーを見て、可愛いと思ってしまうのは仕方が無いとして、できないものは出来ない。今度、衛星に頼んで家の横にでも忍者屋敷を建ててもらおうかな。
そんな事を考えていると、呼び出しが掛かった。
ルークス卿が呼んだラーセンさんが来たようだ。
呼ばれるままに、俺とユーは二人の下に歩み寄った。
その時、ユーを見て一瞬だが驚く表情を見せたラーセンさんを俺は見逃さなかった。
「お待たせしました、彼がラーセンです」
ルークス卿が紹介してくれた後、お互いに自己紹介を済ませた。
ユーは結構、友好的に話してた。ルークス卿に対する態度とは明らかに違っているのだ。
この人はユーに優しくしてくれてたんだろうか。
しかし、この時も俺は注意深くラーセンさんを見ていたのだが、目が一瞬だけど、赤くなったように見えた。ほんの一瞬だったし、光の反射によっては見えなくも無いのかもしれないのだが、俺には馴染みのある色だったので見間違いでは無いだろう。
魔族の魔眼の色だ。
でも、魔族が目を赤くする時って、いつも衛星がカウンターで気絶させるんだけど、今回はその素振りが無い。
なぜだろうと考えていたが、俺に向けられたものじゃないからだろうと結論付けた。
だったら、誰に向けたのか。ユーしかないだろう。
ユーは異常耐性を持ってるから、魔眼も通じないと思う。だったらなぜ魔眼を発動させたのか。恐らく【鑑定】だな。魔眼は鑑定もできるって聞いてるからな。
なぜ、ここにいるかは知らないが、こいつは【鑑定】するまでもなく魔族確定だな。一応、【鑑定】はしておくけど。
―――ラーセン・レギオン(魔族):LV51 ♂ 1867歳
HP:903 MP:1205 ATC:934 DFC:822 SPD:908
スキル:【魔眼】【話術】【友好】【遠話】
武技:【杖】Max
魔法:【水】Max【風】Max【闇】Max
称号:潜入者
……レギオン族は人間の城が好きなのか? ガレンダといいタレランといい。倒した二人はそうでも無かったようだけど、パシャックも城仕えしてた事もあるんだったな。やっぱり魔王の動向を勘違いしてる口なんだろうな。
目的は達成したので、もうここにいる必要は無い。さっさと終わらせるためにも俺の方から口火を切った。
「ラーセンさん。あなた、ユーが…勇者が攫われた時に関与してますよね?」
「はい? どういう意味でしょうか」
「言ったまんまですが。ねぇ、レギオン族さん」
「な、なぜそれを…」
「これでも色々と知り合いも多く、経験もそれなりにして来たんでね」
焦りの色を見せだしたラーセンさんに対して更に追い討ちをかけた。
「このままここから去るのでしたら何もバラしませんよ。パシャックともう一人は名前を忘れましたがイケイケな感じの人は倒しましたし、ガレンダとタレランは友達になりました。ここまで言えばもう分かるでしょ?」
そこまで話すとユーも気付いたのか【鑑定】で確かめたようだ。
「【友好】と【話術】……これで私も騙されてたのね……」
さっきまでの友好的な表情から一変。ユーはラーセンさんに怒りの表情を見せた。
「ラーセンさん、あなたが私を売ったのね。なぜなのか、理由ぐらいは教えてくれるんでしょうね」
「ほぉ、其奴じゃったか。妾も話を聞きたいのぅ」
「ちょうどいい時に帰って来たみたいですね。上ではそれらしい人を見つけられませんでしたから」
クラマとマイアが戻って来た。タイミングがいいと言うのか悪いと言うべきか。悪いんだろうな、ラーセンさんの未来に合掌。
「何も手掛かりが無いから城を吹き飛ばしてしまいそうだったのじゃ」
「ええ、もう誰も痛みを感じないでしょうから、私も同じ事を考えていました」
え? え? え? 二人共、上で何して来たの? ここの上ってミュージャメン王国の王城か、それに近い所だよね? 召喚の間があるって事はそういう事だろ? 二人はそこで何して来たの!
「エイジ、よいの?」
「エイジ? 任せてくださいますよね?」
「私も参加しようかな」
俺が疑問を問う間もなく、話が進んで行く。
三人でラーセンさんに何する気? 聞きたくないけど、聞かないと大変な事になりそうだ。
「任せるって何を?」
「わかっておるじゃろ。エイジも人が悪いのぅ」
「ええ、この方はユーを泣かせた張本人。そちらの方も同罪のようですので、一緒に任せていただけましょうか?」
「私はもちろん当事者だから絶対参加だね」
何か分かんないから聞いてんだけど、こうやって三人の意見が一致する時って、俺が賛成したくなくなるのは何でなんだろ。
ほどほどにね、と言い残して、俺は階段を上がって上層を見に行った。
どんな所かも気になるが、クラマとマイアが何をしたのか非常に不安だったからだ。
予想通り、一階は城の中だった。すぐに入り口から出て全体像を確認すると、五階建ては優にあるほど高く聳えていて、両サイドは端まで見渡せない。当たり前かもしれないが、大商人バーンズさんの屋敷より遥かにデカイ。
城を探索すると人にも出会った。一部、壁や天井にめり込んでいる人も見かけたが、こっちはクラマがやったんだろう。生きているようだし、手加減はしてくれているみたいだ。めり込んで無い人達は、ボーっと突っ立ってるだけだった。俺が声を掛けても全然反応がないから、マイアの催眠術かなにかなんだろう。
さっき、痛みを感じなくなってるとマイアが言ってたよな。確かにこれなら何をされても分からないだろうな。
あれだけの勢いでクラマとマイアが乗り込んだにしては、被害は最小限で収まってる気がする。
どの辺りまで、こんな状況なのか確認しても無駄だろうな。一応、死人は出してないようだし、逃げてしまえば追いかけても来ないだろう。
一応、無事? な事は確認できたので、地下の召喚の間に戻って来た。
クラマもマイアもユーもいるね。
ルークス卿もラーセンさんも土下座はさせられてるようだけど、無事みたいだ。今は、ルークス卿となにやら話し込んでるみたいだけど、話して解決するならその方がいいって。
うんうん、無事でなにより。もしかしたら殺しちゃうんじゃないかと心配してたんだ。それならそれで、仕方ないかとも思ってたけど、生きてたのなら何よりだよ。
「エイジ様。今後、私も奴隷の末席に加えて頂く事になりました。どうぞ、よろしくお願いします」
「エ…イ…ジ…様。私も同じく加えて頂けますでしょうか。今日中に、いえ、すぐにでも必ず御名を言えるように致しますので、どうか、どうかお願い致します」
二人して何言ってんの? そんな話じゃなかったよね? ユーの過去の事でユーが落ち込んで、そのユーのためにクラマとマイアが怒ってたんだよね? それがなんで俺の奴隷とか言ってんの?
「此奴はまだエイジの名も言えぬので奴隷にも認められぬのじゃ」
「はい、そこは譲れませんから」
「ラーセンはすぐに言えたのにね」
そんなルールなんて無いし、マイアだって初めは言えてなかったじゃん!
ユーはもうラーセンさんを呼び捨てですか。それにラーセンさんは魔族だから俺の名前をなぜか言えるんだよ。
その基準だとルークス卿が不利じゃん。…そうじゃなくって、なんで俺の奴隷になるって決めてんの!
「いや、もう間に合って……」
「そうじゃ、此奴から情報も貰っておるのじゃ。魔族領ではよい素材が取れるそうじゃぞ?」
「ええ、ルート的には道程の中ほどで行けばちょうどいいでしょうね」
「魔王か~、どれだけ強いのか見てみたいよね」
おい! やっぱり俺に決定権は無いのかよ! 主張する気は無いけど、立場的には俺が一番偉い設定だろ? いつもいつもおかしいだろ!
それにユー。魔王なんて見に行かないからね。
……なんかフラグっぽいけど、絶対に行かないからね。
その後、懇願するルークス卿とラーセンさんに負け、奴隷として認める羽目になってしまった。
でも、ルークス卿には、名前を言えない事を理由に、この城に残ってもらう事にした。「奴隷になれるように精進します」とか言ってたけど、奴隷になるための精進ってなんなの。
ラーセンさんは同行する事になった。他の魔族達と合流させるにしても戻らないといけないから面倒だし、素材の場所を知ってるのはラーセンさんだから、案内をさせるために連れて行くとクラマ達に決められてしまった。
おーい、リーダーは誰なんだよー。
ラーセンさんの事も、さん付けはするなと言われ、ユーと同じく呼び捨てにしている。他の魔族もそうだし、そこに異論は無い。そこに至るまでの経緯については異論だらけだが。
ここからだと、来た地下道を行くよりこのまま次の地点に向かった方が早いので、堂々と門から出て出発した。
本当は、少しミュージャメン王国の王都を観光もしたかったんだけど、移動のための足の確保があると言うので、王都から出て行くクラマを急いで追いかけて行った。
確かに、魔族とタンデムは俺も嫌だしな。この国の王都観光はまた今度だな。
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