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第05章 20枚の地図~王都編
第02話 尋問
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運びこんだ二人は小屋の中のリビング兼食堂に寝かせてる。
衛星にグルグル巻きにしてもらってるし、朝まで寝るようにしておいてと頼んでる。
寒くて風邪を引かれても困るので敷き布団と掛け布団は用意してもらった。
これで朝までは安心だし、クラマとマイアも自分の部屋に入った。
いつもだったらここでごねるのに、今日は素直に自室に入った。
予想だと、この二人を個室に入れて、「リビングで添い寝じゃ!」とか言ってくるかと思ったけど、言われなかった。
ホント、最近拍子抜けする事が多いよ。
個室は狭いからね、シングルベッドと一人歩ける通路がある程度だし、明かりはあるけど窓も無い。小さな小屋だから、三部屋取ると一部屋がこれぐらいになってしまうんだ。トイレは勿論完備、風呂もシャワーだけの小さなものだけど付いている。
その分リビングを広めに取ってるんだけど、グルグル巻きの二人を寝かせると少ししか余ってない。くっつけておくのも嫌だったので離しているから余計に場所を取ってる。外で放置しておくわけにも行かないから仕方が無いんだけど、今日だけだと思うから我慢するか。部屋に入ってしまえば関係ないしね。
周辺地図を見ながら寝落ちして、朝起きてもリビングで寝かせてる二人に変化は無かった。
先に朝食を食べようと外で衛星に用意してもらうと、クラマもマイアも起きてきたので一緒に朝食を食べる事にした。
「二人共、あいつらの正体って知ってるの?」
「なんじゃ、まだ【鑑定】をしておらんのか。そういう所は抜けておるんじゃのぅ」
「エイジの鑑定は相手に気づかれないと思いますので、どんどん【鑑定】を使って癖付ける方がいいですよ」
クラマは呆れ顔だったが、マイアは丁寧にアドバイスしてくれた。
【鑑定】か! 確かに持ってたよ、忘れてた。魔物に対してだけ使うものだと思ってた。人にも武器や物にも使えたよね。
「【鑑定】はあとでしてみるけど、知ってるんなら教えてよ」
「仕方がないのぅ、男の方は魔族じゃ。女の方は……わからん、ただの弱い人間じゃ」
やっぱり魔族なんだ。元剣豪のパシャックだったら剣も折れてたし目的達成なんだけど、そこまで上手くは行かないか。
女性の方はクラマには分からなかったみたいだね。
「女性の方はマイアが勇者の封印とか言ってなかった?」
「はい、勇者の卵ではあるようですが、まだ開花してないようですね。開花してれば魔族に魅了される事もなかったでしょうから」
へぇ~、勇者の卵なんだ、なんか格好いい。将来は勇者となって世界を救うって希望に満ちた感じ、いいよねぇ。
俺には無縁だけど、応援はしたくなるよね。
「勇者って事は召喚されたのかな」
「そうだと思います。どの国かは分かりませんが、勇者召喚されたのでしょうね」
じゃあ、同じ日本人かな。目は閉じてるから分からないけど、髪は黒いし顔立ちも日本人っぽいもんね。そしてなぜか子供から俺と同じ年ぐらいの少女に成長してるし、さすが異世界って感じだな。
勇者かぁ、だったら勇者のパーティもあるのかな? 俺がパーティに入るって……無理があるな。
世界を救うって気も無いし、魔王なんか絶対怖いだろうし、会いたくない。
クラマとマイアのおかげでレベルは上がったけど、武器や魔法の熟練度はまだまだだし、戦った事すらない。恐怖耐性もほとんど上がってないもんな。
でも、勇者のサポートはできるんじゃない? 同じ日本人だったら応援したいもんね。
「このあとどうしたらいいと思う?」
「魔族は殺すべきじゃな。彼奴らは害にしかならぬ」
「確かにそれは同意です。卵娘はどこかの町にでも送ればいいんじゃないでしょうか」
卵娘って、勇者の卵の娘さんだよ。でも言いえて妙だな、語呂もいいしアリかも。
「どこかの町って王都でもいいのかな。前に領主様の所で捕まえた魔族は王都に送られたって聞いたんだけど」
「なんじゃと!? 魔族を捕まえた? 誰が捕まえたのじゃ!」
なんでそんなに興奮してるのか知らないけど、ここは正直に言った方がいいのかな?
「領主様の屋敷にいた二人の魔族を俺が捕まえて今みたいにグルグル巻きにしたんだよ。誰にも縄は解けなかったみたいだから、そのまま王都に送られたって聞いたけど」
「ぐぬぬぬ~、二人もか。こうしてはおれぬ、少し運動をしてくるのじゃ」
「ダメだよ。今から尋問をするんだから手伝ってよ」
大薙刀を手にし立ち上がろうとするクラマを止めた。
自分だけいい思いをしおって。と言われたけど、いい思いをしたとは思ってないからね。
話の流れからすると、魔族を討ちに行こうとしたんだろうな。この近くにまだ魔族がいるとも思えないんだけど。
「ドワーフのゼパイルさんが魔族のパシャックの持ってる剣を折りたいって言ってたんだよ。傑作のミスリル製の剣だったんだけど魔剣になってしまったから処分したいって。もし、あの魔族がパシャックなら都合がいいんだよね」
「ほぅ、拷問とな」
違ぇーし! マイアも立ち上がって行くんじゃない!
「ちょっと待って! まずは普通に尋問からだよー!」
ウキウキ気分で先を進む二人を追って小屋に入った。
「此奴らはいつまで寝ておるのじゃ?」
魔人を足で突きながらクラマが尋ねてくる。
別に足蹴にする必要は無いと思うんだよな。
《衛星、この男……魔族だけ起こしてくれる?》
『Sir, yes, sir』
男の魔族が目を覚ます。
目は開いたがつま先から口まで全身ぐるぐる巻きだから、このままでは話もできない。
衛星に口の部分だけ縄を解いてもらって尋問を始めた。
そうそう、【鑑定】をしろって言われてたね。先にみてみるか。
――パシャック・レギオン(魔族):LV66 ♂ 3655歳
HP:1087 MP:886 ATC:1210 DFC:1005 SPD:1334
スキル:【変身】【結界】【魔眼】
武技:【剣】Max
魔法:【火】Max【闇】Max
称号:剣豪
おお! パシャックだ! だったらあの剣を折ったからゼパイルさんに知らせてやらないと。
剣豪の称号も持ってるからこいつで間違いないよ。
でも…よく見ると俺の方がステータス高くない? 衛星が倒してくれたけど、俺には全然何をされたか分からなかったんだけど。
やっぱり熟練度がMaxとか、称号が関係してるのかな。
年齢も凄いね。これは魔族で間違いないけど、どうやって紛れ込んだのか聞かないとゼパイルさんに説明できないな。
まずはその辺りから聞いてみよう。あと女性の事も聞かないとね。
「パシャックさんでいいですね? あなたは魔族のようですが、あの剣はドワーフのゼパイルさんが打ったもので間違いありませんか?」
「ここは? うん? 動けん。……そうか、私は負けたのだな。では、なぜ生きている、お前は誰だ」
「僕の名前はエ……」
おっと! ダメダメ。名前を言っちゃダメだ。女性だって魅了されてたぐらいだから、名前を言ったらダメだ。俺も魅了されちゃうかもしれない。
「名前は言えない。さっき自分でも言ってたけど、あなたは負けたんだ。だからこちらの質問に答えてほしい」
「やはり見た目と違って用心深いのですね。でもまだ負けたと決まったわけではありませんよ」
衛星に倒される前も言ってたけど、俺って弱くて抜けてるように見えるのか? そう言われるのも結構慣れて来たけど、久々に聞くと結構ダメージあるな。
パシャックの言葉にダメージを受けてると、パシャックの目の色が変わった。
パシャックは青い目をしてたけど、青目の部分がいきなり赤に変わった。
ついでに睨んでくるから目力も凄くて怖いんですけど。
「あ、あのー…質問に答えてもらえませんか?」
「な、なに⁉ 私の魔眼が効かぬだと! お前は一体何者なんだ!」
魔眼だったんだ。俺の周りにはいつも通り衛星がいるから防いでくれたんだろうね。
ガスッ!
「我が主が同じ質問を三度もしたのじゃ! 早く答えぬか!」
顔面に蹴りを入れたクラマが吠える。
「クラマ…まだ……」
「こういう輩は力で分からせた方が早いのじゃ!」
でも、もう拷問って早すぎない?
「それには同意します。暴力が嫌なのでしたら、私が質問に答えられるようにしてあげましょう」
マイアが出会った時のような淡い光を全身から放ち出す。
最近は正体を隠すために光を抑えてくれてたようだけど、元々はこうだからね。
俺は好きだな、このマイアの淡い光ってマイアの美しさを更に引き立てるから、神々しいっていうか、いつまで見てても見飽きない美しさなんだよね。
「その光は、せ、精霊⁉ なぜこんな所に精霊が? お前は何者なんだ!」
ドガッ!
「まったく答えになっておらん! マイア殿、もう時間の無駄じゃ。どうせ排除するのじゃ、やってくだされ」
「そうですね、時間の無駄でしたわね。分かりました」
マイアがいい香りを放つとパシャックの目が虚ろになった。色も青に戻っている。
俺の意見など関係なく、事態はどんどん進んで行く。
クラマとマイアに促され、パシャックを質問攻めにした。
俺の問いにパシャックは無駄口を挟む事なく答えてくれた。
パシャックは人間に化け冒険者となった。人間に化けたパシャックには身分を証明するものが無い。冒険者登録は手っ取り早く人間社会に紛れ込む手段としては最善の方法だったからだ。
その後、剣技を極め、剣豪の称号を手に入れたパシャックは国からの勧誘で騎士となった。
その目的は勇者召喚で使われる生贄にあった。
勇者召喚ではたくさんの魂を集めるためにたくさんの生贄が奉げられる。
パシャックはその生贄を利用して魔王復活を企んでいた。
だが、勇者召喚がパシャックが思っていたより早く行われて、生贄に集められていた奴隷の大半を使われてしまった。
残った生贄用の奴隷はパシャックが殺す事により魂を確保したのだが、まだ足りない。
それで、もう人間の城には用が無くなったパシャックは魔族に戻り、不足分の為に人間達を狩っていたが、その任もパシャックのノルマを達成できたので、この周辺でファーナリア連峰越えをする強者を狙って待ち構えていたそうだ。もう何人もパシャックの凶刃に倒れた者がいたと答えた。
有罪確定だな。情状酌量の余地無しとは正にこの事だ!
あと、女性の事も聞いてみた。
封印したのはパシャックだったので、成長した元の姿に戻ってる女性を見て言葉が出なかったみたいだけど、たぶん驚いてたんだろう。
今はマイアの影響下にあるから大して驚いてるようには見えなかったが、本当だったら相当驚いていたかもしれない。
話の流れで大体わかってたけど、その国で召喚された勇者がこの女性だった。
ようやく最近知ったんだけど、フィッツバーグ領があるこの国の名前はジュラキュール王国、今向かってる王都はジュレという名前で、ハイグラッドの町を挟んで戦争をしていた国はミュージャメン王国。このミュージャメン王国でこの女性が召喚されたようだ。
位置的な方角から言っても、俺がこの世界で初めて気が付いた死体の山とかベンさんと出会った森の中の集落はハイグラッドの町からも近かったように思えるので、その勇者召喚に俺が関わってるかもしれない。
時系列が合わない気がするので、この女性が召喚されたのは俺よりもっと前のような気はするけど、まったく無関係って事でも無い気がする。
ベンさんは戦地から離れるように北方のフィッツバーグ方面に向かってくれたけど、本当はハイラッドの町から近かったのかもしれない。
という事は俺も召喚で呼ばれたのかも。召喚されたのが死体の山の中から出て来る? 有り得ないな、召喚に巻き込まれたって方がしっくりくる。
魔族の処分はクラマとマイアに任せて、この女性も尋問してみるか。
もちろん拘束は解かないよ。だって封印が解けたからといって味方かどうかも分かんないしさ。
少し話してから安全だと分かってから拘束を解こうと思ってる。
その事を伝えると、クラマがひょいと魔族を抱えて小屋から出て行った。
危険度は魔族の方が高いし、マイアにも付いて行ってもらうように頼んだ。
だって、この女性、【鑑定】したらレベル12だったから。スキルは色々と持ってるようだけど、名前は空欄だった。
衛星にグルグル巻きにしてもらってるし、朝まで寝るようにしておいてと頼んでる。
寒くて風邪を引かれても困るので敷き布団と掛け布団は用意してもらった。
これで朝までは安心だし、クラマとマイアも自分の部屋に入った。
いつもだったらここでごねるのに、今日は素直に自室に入った。
予想だと、この二人を個室に入れて、「リビングで添い寝じゃ!」とか言ってくるかと思ったけど、言われなかった。
ホント、最近拍子抜けする事が多いよ。
個室は狭いからね、シングルベッドと一人歩ける通路がある程度だし、明かりはあるけど窓も無い。小さな小屋だから、三部屋取ると一部屋がこれぐらいになってしまうんだ。トイレは勿論完備、風呂もシャワーだけの小さなものだけど付いている。
その分リビングを広めに取ってるんだけど、グルグル巻きの二人を寝かせると少ししか余ってない。くっつけておくのも嫌だったので離しているから余計に場所を取ってる。外で放置しておくわけにも行かないから仕方が無いんだけど、今日だけだと思うから我慢するか。部屋に入ってしまえば関係ないしね。
周辺地図を見ながら寝落ちして、朝起きてもリビングで寝かせてる二人に変化は無かった。
先に朝食を食べようと外で衛星に用意してもらうと、クラマもマイアも起きてきたので一緒に朝食を食べる事にした。
「二人共、あいつらの正体って知ってるの?」
「なんじゃ、まだ【鑑定】をしておらんのか。そういう所は抜けておるんじゃのぅ」
「エイジの鑑定は相手に気づかれないと思いますので、どんどん【鑑定】を使って癖付ける方がいいですよ」
クラマは呆れ顔だったが、マイアは丁寧にアドバイスしてくれた。
【鑑定】か! 確かに持ってたよ、忘れてた。魔物に対してだけ使うものだと思ってた。人にも武器や物にも使えたよね。
「【鑑定】はあとでしてみるけど、知ってるんなら教えてよ」
「仕方がないのぅ、男の方は魔族じゃ。女の方は……わからん、ただの弱い人間じゃ」
やっぱり魔族なんだ。元剣豪のパシャックだったら剣も折れてたし目的達成なんだけど、そこまで上手くは行かないか。
女性の方はクラマには分からなかったみたいだね。
「女性の方はマイアが勇者の封印とか言ってなかった?」
「はい、勇者の卵ではあるようですが、まだ開花してないようですね。開花してれば魔族に魅了される事もなかったでしょうから」
へぇ~、勇者の卵なんだ、なんか格好いい。将来は勇者となって世界を救うって希望に満ちた感じ、いいよねぇ。
俺には無縁だけど、応援はしたくなるよね。
「勇者って事は召喚されたのかな」
「そうだと思います。どの国かは分かりませんが、勇者召喚されたのでしょうね」
じゃあ、同じ日本人かな。目は閉じてるから分からないけど、髪は黒いし顔立ちも日本人っぽいもんね。そしてなぜか子供から俺と同じ年ぐらいの少女に成長してるし、さすが異世界って感じだな。
勇者かぁ、だったら勇者のパーティもあるのかな? 俺がパーティに入るって……無理があるな。
世界を救うって気も無いし、魔王なんか絶対怖いだろうし、会いたくない。
クラマとマイアのおかげでレベルは上がったけど、武器や魔法の熟練度はまだまだだし、戦った事すらない。恐怖耐性もほとんど上がってないもんな。
でも、勇者のサポートはできるんじゃない? 同じ日本人だったら応援したいもんね。
「このあとどうしたらいいと思う?」
「魔族は殺すべきじゃな。彼奴らは害にしかならぬ」
「確かにそれは同意です。卵娘はどこかの町にでも送ればいいんじゃないでしょうか」
卵娘って、勇者の卵の娘さんだよ。でも言いえて妙だな、語呂もいいしアリかも。
「どこかの町って王都でもいいのかな。前に領主様の所で捕まえた魔族は王都に送られたって聞いたんだけど」
「なんじゃと!? 魔族を捕まえた? 誰が捕まえたのじゃ!」
なんでそんなに興奮してるのか知らないけど、ここは正直に言った方がいいのかな?
「領主様の屋敷にいた二人の魔族を俺が捕まえて今みたいにグルグル巻きにしたんだよ。誰にも縄は解けなかったみたいだから、そのまま王都に送られたって聞いたけど」
「ぐぬぬぬ~、二人もか。こうしてはおれぬ、少し運動をしてくるのじゃ」
「ダメだよ。今から尋問をするんだから手伝ってよ」
大薙刀を手にし立ち上がろうとするクラマを止めた。
自分だけいい思いをしおって。と言われたけど、いい思いをしたとは思ってないからね。
話の流れからすると、魔族を討ちに行こうとしたんだろうな。この近くにまだ魔族がいるとも思えないんだけど。
「ドワーフのゼパイルさんが魔族のパシャックの持ってる剣を折りたいって言ってたんだよ。傑作のミスリル製の剣だったんだけど魔剣になってしまったから処分したいって。もし、あの魔族がパシャックなら都合がいいんだよね」
「ほぅ、拷問とな」
違ぇーし! マイアも立ち上がって行くんじゃない!
「ちょっと待って! まずは普通に尋問からだよー!」
ウキウキ気分で先を進む二人を追って小屋に入った。
「此奴らはいつまで寝ておるのじゃ?」
魔人を足で突きながらクラマが尋ねてくる。
別に足蹴にする必要は無いと思うんだよな。
《衛星、この男……魔族だけ起こしてくれる?》
『Sir, yes, sir』
男の魔族が目を覚ます。
目は開いたがつま先から口まで全身ぐるぐる巻きだから、このままでは話もできない。
衛星に口の部分だけ縄を解いてもらって尋問を始めた。
そうそう、【鑑定】をしろって言われてたね。先にみてみるか。
――パシャック・レギオン(魔族):LV66 ♂ 3655歳
HP:1087 MP:886 ATC:1210 DFC:1005 SPD:1334
スキル:【変身】【結界】【魔眼】
武技:【剣】Max
魔法:【火】Max【闇】Max
称号:剣豪
おお! パシャックだ! だったらあの剣を折ったからゼパイルさんに知らせてやらないと。
剣豪の称号も持ってるからこいつで間違いないよ。
でも…よく見ると俺の方がステータス高くない? 衛星が倒してくれたけど、俺には全然何をされたか分からなかったんだけど。
やっぱり熟練度がMaxとか、称号が関係してるのかな。
年齢も凄いね。これは魔族で間違いないけど、どうやって紛れ込んだのか聞かないとゼパイルさんに説明できないな。
まずはその辺りから聞いてみよう。あと女性の事も聞かないとね。
「パシャックさんでいいですね? あなたは魔族のようですが、あの剣はドワーフのゼパイルさんが打ったもので間違いありませんか?」
「ここは? うん? 動けん。……そうか、私は負けたのだな。では、なぜ生きている、お前は誰だ」
「僕の名前はエ……」
おっと! ダメダメ。名前を言っちゃダメだ。女性だって魅了されてたぐらいだから、名前を言ったらダメだ。俺も魅了されちゃうかもしれない。
「名前は言えない。さっき自分でも言ってたけど、あなたは負けたんだ。だからこちらの質問に答えてほしい」
「やはり見た目と違って用心深いのですね。でもまだ負けたと決まったわけではありませんよ」
衛星に倒される前も言ってたけど、俺って弱くて抜けてるように見えるのか? そう言われるのも結構慣れて来たけど、久々に聞くと結構ダメージあるな。
パシャックの言葉にダメージを受けてると、パシャックの目の色が変わった。
パシャックは青い目をしてたけど、青目の部分がいきなり赤に変わった。
ついでに睨んでくるから目力も凄くて怖いんですけど。
「あ、あのー…質問に答えてもらえませんか?」
「な、なに⁉ 私の魔眼が効かぬだと! お前は一体何者なんだ!」
魔眼だったんだ。俺の周りにはいつも通り衛星がいるから防いでくれたんだろうね。
ガスッ!
「我が主が同じ質問を三度もしたのじゃ! 早く答えぬか!」
顔面に蹴りを入れたクラマが吠える。
「クラマ…まだ……」
「こういう輩は力で分からせた方が早いのじゃ!」
でも、もう拷問って早すぎない?
「それには同意します。暴力が嫌なのでしたら、私が質問に答えられるようにしてあげましょう」
マイアが出会った時のような淡い光を全身から放ち出す。
最近は正体を隠すために光を抑えてくれてたようだけど、元々はこうだからね。
俺は好きだな、このマイアの淡い光ってマイアの美しさを更に引き立てるから、神々しいっていうか、いつまで見てても見飽きない美しさなんだよね。
「その光は、せ、精霊⁉ なぜこんな所に精霊が? お前は何者なんだ!」
ドガッ!
「まったく答えになっておらん! マイア殿、もう時間の無駄じゃ。どうせ排除するのじゃ、やってくだされ」
「そうですね、時間の無駄でしたわね。分かりました」
マイアがいい香りを放つとパシャックの目が虚ろになった。色も青に戻っている。
俺の意見など関係なく、事態はどんどん進んで行く。
クラマとマイアに促され、パシャックを質問攻めにした。
俺の問いにパシャックは無駄口を挟む事なく答えてくれた。
パシャックは人間に化け冒険者となった。人間に化けたパシャックには身分を証明するものが無い。冒険者登録は手っ取り早く人間社会に紛れ込む手段としては最善の方法だったからだ。
その後、剣技を極め、剣豪の称号を手に入れたパシャックは国からの勧誘で騎士となった。
その目的は勇者召喚で使われる生贄にあった。
勇者召喚ではたくさんの魂を集めるためにたくさんの生贄が奉げられる。
パシャックはその生贄を利用して魔王復活を企んでいた。
だが、勇者召喚がパシャックが思っていたより早く行われて、生贄に集められていた奴隷の大半を使われてしまった。
残った生贄用の奴隷はパシャックが殺す事により魂を確保したのだが、まだ足りない。
それで、もう人間の城には用が無くなったパシャックは魔族に戻り、不足分の為に人間達を狩っていたが、その任もパシャックのノルマを達成できたので、この周辺でファーナリア連峰越えをする強者を狙って待ち構えていたそうだ。もう何人もパシャックの凶刃に倒れた者がいたと答えた。
有罪確定だな。情状酌量の余地無しとは正にこの事だ!
あと、女性の事も聞いてみた。
封印したのはパシャックだったので、成長した元の姿に戻ってる女性を見て言葉が出なかったみたいだけど、たぶん驚いてたんだろう。
今はマイアの影響下にあるから大して驚いてるようには見えなかったが、本当だったら相当驚いていたかもしれない。
話の流れで大体わかってたけど、その国で召喚された勇者がこの女性だった。
ようやく最近知ったんだけど、フィッツバーグ領があるこの国の名前はジュラキュール王国、今向かってる王都はジュレという名前で、ハイグラッドの町を挟んで戦争をしていた国はミュージャメン王国。このミュージャメン王国でこの女性が召喚されたようだ。
位置的な方角から言っても、俺がこの世界で初めて気が付いた死体の山とかベンさんと出会った森の中の集落はハイグラッドの町からも近かったように思えるので、その勇者召喚に俺が関わってるかもしれない。
時系列が合わない気がするので、この女性が召喚されたのは俺よりもっと前のような気はするけど、まったく無関係って事でも無い気がする。
ベンさんは戦地から離れるように北方のフィッツバーグ方面に向かってくれたけど、本当はハイラッドの町から近かったのかもしれない。
という事は俺も召喚で呼ばれたのかも。召喚されたのが死体の山の中から出て来る? 有り得ないな、召喚に巻き込まれたって方がしっくりくる。
魔族の処分はクラマとマイアに任せて、この女性も尋問してみるか。
もちろん拘束は解かないよ。だって封印が解けたからといって味方かどうかも分かんないしさ。
少し話してから安全だと分かってから拘束を解こうと思ってる。
その事を伝えると、クラマがひょいと魔族を抱えて小屋から出て行った。
危険度は魔族の方が高いし、マイアにも付いて行ってもらうように頼んだ。
だって、この女性、【鑑定】したらレベル12だったから。スキルは色々と持ってるようだけど、名前は空欄だった。
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