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第04章 20枚の地図~フィッツバーグ活動編
第03話 キッカ達の買い取り品
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長くなり過ぎたので、一旦切りました。
―――――――――――――――――――――――――
キッカ達とは馬車で町へ向かった。
町では別行動になっても、どうせ帰りも一緒だろうと思ってたから。
あとで、ちょっと後悔する事になるんだけどね、この時はそんな風には思ってなかった。
厩舎係の子供にお願いして馬を一頭出してもらって馬車につけた。
馬車ね、この【星の家】周辺や町までの作った道はいいんだけど、街道や町の中では道が悪いから尻が痛くなるんだよな。今度、衛星に言って馬車を改良してもらおう。
因みに馬は、今回の護衛仕事でもらった三頭の内の一頭だ。
もう馬も十七頭になった。経費は掛からないからいくらいてもいいんだけど、そろそろ商売を考えてもいいんじゃないかな?
そのためには商人ギルドか。もう行っても大丈夫かな。
まずは四人で冒険者ギルドに入った。
俺は受付のアイファの列へ並んで、キッカは買取窓口へ。ケンはキッカについて行ったみたいだけど、ヤスは依頼ボードの所で依頼書を見ている。
ヤスに選ばせて大丈夫なのか? 最終決定はキッカかケンがするんだろうから放っておいてもいいか。
「今日は煌星冒険団なのね」
俺の番になると受付の犬耳アイファが気軽に話しかけてきた。
「アイファ、久し振りだね。そうなんだよ、今朝急に決めたんだ。今は買い取りに行ってるよ」
もう俺も常連冒険者だよね。常連って言い方もおかしいとは思うけど、新人って言いたくないから常連って言う事にしよう。
「それで領主様から連絡はあった?」
「その件ね、あったわよ。はいこれ」
そう言ってアイファが出したのは封書だった。
昨日の今日なのにもう届いたんだ。俺が帰ってから届いたのかな?
「開けてもいい?」
「開けなきゃ分からないじゃない」
そりゃそうですけど……俺の周りはこんなのばっかだな。
封書を開けてみると、招待状と書いてあり、日付けは一週間後だった。
「あれ? これって俺の名前しか書いてないけど、一緒に行ったメンバーも一緒でいいのかな?」
「そんなのダメに決まってるじゃない。招待されてない者が行っても門前払いよ」
「だって、一緒に護衛依頼をしたのに」
「そんなの向こうの都合じゃない。その感じだと次の仕事の話はイージだけの指名なのかもしれないわね」
んー、次にやりたい事はもう決まってるから都合が合えばだね。
次はどうやら王都方面みたいなんだよね。王都に寄るかどうかは決めてないけど、この辺りで一番大きな町なんだったら一度は行ってみたいね。
昨夜、寝落ちするまで地図を見てたらいくつか同じ地形が重なってる地図があったんだ。
その地形が、池なんだ。ただ、特徴があって五つの池が集まってるんだ。
たぶん同じ池が描いてある地図が五枚。その五枚の地図の一部が重なるような地図が数枚あったと思う。
五つの池が集まってる場所と言えば、冒険者ギルド販売の大まかな地図にも載ってるからすぐに分かった。
このフィッツバーグ領から王都に向かって山を越えた辺りに池が集まってるから、その周辺に五枚プラス何枚かの地図が示す場所があると見ている。
次はその池周辺に行って探索だな。
要件も終わったので、いつもの如くケーキを渡して列から出ようとすると、アイファから待ったが掛かった。
「イージ! 私を見て他に何も言う事は無い?」
えーと……挨拶はしたよな? ケーキも渡したし、他には無いと思うんだけど。
アイファがやけに胸を張ってるよな。
⁉ あっ! ペンダントだ! 俺があげた星型のペンダントトップのペンダントをしてくれてるよ。
でも、今気が付いたなんて普通に言ったら絶対に怒られるよな。
「そ、そのペンダントをしてくれてたんだね、凄く似合ってて違和感が無かったから今気が付いたよ。よく似合ってるよ、付けてくれてありがとう」
これぐらい言っときゃ怒られないだろ。
「バッ、な、何言ってんのよ、なんでイージがお礼を言うのよ! お礼を言うのは私なんだからね、こんな良い物を送っといてお礼を言うなんてバッカじゃない」
やっぱり怒られるんだね。
でも、言い方はアレだけど、内容は『お礼は言わなくてもいいのよ、お礼を言うのは私なのよ。良い物をありがとう』って事でいいかな?
前向きにとらえておこう……ホント俺の周りってこんなのばっかりだ。俺の扱いってこんなのじゃないと思ってたんだけどな。イジられキャラの要素は持ってたとは自覚してるけど、ちょっと酷くなってきてない? どこかで一発ガツンと……無理だね、そんな勇気は無いよ。
アイファとの話も終わり、依頼ボードにいるヤスの所に行った。
キッカとケンは買い取りだから、俺が行っても買い取り受付の馬耳ポーリンにはいい顔されないから辞めておいた。
なんか偶に目が合うと睨まれるんだよ。初めに沢山の素材を出したのをまだ根に持ってるのかなぁ。あんなの初めの二日だけだったのにね。
「ヤス、何かいい依頼を見つけた?」
「あ、イージさん。これがいいと思うんすけど」
そう言ってヤスが指差す依頼を見ると、レッテ山周辺の調査依頼だった。
確かにちょうどいいんじゃない? でも、誰が……思い当たるのは領主様だけだね。俺のために調査依頼を掛けてくれてるとか……考え過ぎか。
「内容的にはいいんじゃないか? でも、ランクが足りないみたいだね。これってBランク依頼になってるよ」
「あっホントっすね。じゃあ、無理っすか。おいら一人でも全然できそうなんすけどね」
冒険者ランクはキッカがE、ケンとヤスがF。俺がDで今回の護衛依頼で最低でもCにはなると思うんだけど、Bランク依頼を受けるには足りないか。
他の依頼も確認していたら、ようやく買取が終わったキッカとケンが戻ってきた。
「お疲れさん、結構時間が掛かったんだね」
「うん、まだあるんだけど、先にマスターの所へ行けって言われたの」
マスターの呼び出しって……俺の時みたいだな。
でも、マスターからの呼び出しって先生に呼び出しされるみたいで、悪い事をしてないのに何か怖いよね。
「じゃあ、ヤスも行かないと、かな?」
「何言ってるの? イージも一緒に決まってるじゃない」
「え?」
「イージは『煌星冒険団』のリーダーでしょ。こういう時はリーダーが一緒に行くって決まってるの。リーダーだけでもいいぐらいよ」
はい? いつ俺がリーダーになったの? しかも一人で行けみたいな事も言われてるけど、それって面倒事を押し付けられてるようにしか思えないんだけど。
「リーダーはキッカじゃないの?」
「何言ってるの! 初めからイージに決まってるじゃない」
横ではケンとヤスもウンウンと頷いている。が、その目は笑ってるね。
お前達、確信犯だな。全員でグルになって俺をリーダーに仕立て上げやがったな。
だから、何でこんな面倒事を押し付けられるキャラになっちゃってるんだよ。おかしくないか? こうなった元凶はクラマあたりにありそうな気がする。
これ以上言ってもリーダーの変更も無さそうだし、渋々一緒にマスターの部屋に行く事になった。
「すみません、お邪魔します」
マスタールームに入ると挨拶をした。
秘書のランレイさんも見えたので会釈しておく。
「おっ、またお前か。今度は何をやったんだ?」
何をやったんだって、人聞きの悪い。何も不利益になる事はやってないはずだよ。ちょっと問題になった事はあったけど、それだって判断に困るってだけで悪い事はやってないはずだ。
「い、いや、俺は何も。キッカ達が買い取りに行ったらマスターの所へ行けと言われたみたいで、俺はその付き添いです」
「そうか、リーダーだから当然だな。誰に言われたんだ?」
おい! 普通にリーダーになってるじゃないか! なんでだよ!
キッカを見ると目をサッと逸らされた。
こいつが犯人か! いつそんな登録したんだよ。
キッカは俺と目を合わさないようにマスターに説明した。
「オークとオーガの素材が50体分ずつあるって言ったら、出してみろって言われたんです。それで倉庫の方に行って出してみたら驚かれたんだけど、査定はしてもらったんです。その後、精算してもらったら思ったより少なくて、それで次は上位種を持ってるから出そうと思って言ってみたらマスターの所へ行けって言われたんです」
「ごじゅ……お前達のランクってFだったか? いや、エイージの仲間だったな。それなら収納バッグも相当の物を持ってるか……」
「私はEランクです。だから私自身はCランク依頼のオーガは対象外ですけど、Dランクのオーク討伐はできるんです。今日はイージも一緒ですし、Cランクのオーガも大丈夫なはずなんですけど」
色々と思考を巡らせているマスターに自分はEランクだと主張するキッカ。
マスターはそれどころじゃ無いみたいだけどね。
50……いや100か…更にまだあるのか……エイージじゃなくてイージ…ふむふむ……などブツブツ呟いて整理しているマスター。
最後のは別にって気もしたけど。
「よし。イージにはどのランクの素材でも買い取り可能にしてるんだ。それを『煌星冒険団』に適応すればいい。ランクに関しては今回の買いとり品で決めたいが、あと何を持ってるんだ?」
「ありがとうございます。オークキングにオークファイター、オーガロード、レッドオーガ、ブルーオーガ、グリーンオーガ、今言った魔物は十体ずつはあります。さっきも解体が下手だから安くなったと言われましたけど、こっちもそんなに上手く解体はできていません」
キッカの言葉に驚くマスター。
キッカを見たあと、俺を見てケンとヤスに目を向ける。
ずっと口が開いてるよ。
でも、それぐらいの魔物だったらマスターも見た事も討伐した事もあるはずだ。
倒したのがキッカ達だから驚いているんだろうな。俺も驚いてるもん。
俺の場合は、キッカ達って冒険者みたいだぁって方だけどね。
「それを全部売りたいと」
「はい、そろそろ装備を新調したいと思いまして、それでお金が必要なんです」
「わかった、うちで全部買い取ろう。それでは私も一緒に下で見せてもらうとしようか。いや待て。その前に…ランレイ!」
「はい、これですね?」
そう言って秘書のランレイさんが水晶玉を持ってきた。記入用紙も用意していた。
「さすが用意がいいな。これで鑑定をしてみてくれ」
差し出されたのは鑑定用の水晶玉。かつて俺が壊したものと同じものだ。俺じゃなく衛星が壊したんだけどね。
俺は【鑑定】スキルで確認はしてるけど、本人達には言ってないからね。
キッカ達はワクワクしながら推奨玉に手を置いていた。
今の自分達のレベルを知らないから、知りたくてしょうがなかったみたいだ。
それならそうと言ってくれれば教えてあげたのに。あ、俺が【鑑定】スキルを持ってるって知らないか。
鑑定の結果、キッカLV103、ケンLV101、ヤスLV88。
ステータス平均もキッカとケンは1000を少し上回っていた。ヤスは少し落ちるが、それでもステータス平均で900弱。ゴブリンに勝てないと自慢してたヤスはもういない。今ならゴブリンの集落でも一人で討伐できるだろう。
「ほぉ、これなら納得だな。全員Bランクでいいだろう、下で手続きをするように。ランレイ、頼むぞ」
わぁ! っと歓喜の声を上げる三人。
ランレイさんは一礼すると部屋から出て行った。受付に連絡に行ったんだろう。
一瞬で抜かれてしまった俺はガッカリだ。いや、仲間が嬉しい事は俺にとっても嬉しい事だ。ここは素直に祝福してあげよう。
「よかったねキッカ。ケンもヤスもおめでとう」
「ありがとうイージ。これもイージのお陰だよ」
「本当にありがとうございます! イージさん、これからもよろしくお願いします」
「あざーっす! もうクラマさんにしごかれなくてもいいんすよね!」
俺は何にもしてないよ。三人共、頑張ってたもんな。
「あっ! そうだ! 僕も鑑定してもらえますか?」
「ん? お前もか。なんでだ?」
そんな邪険にしなくてもいいじゃないか? 入ってきた時から俺に対しては当たりがキツいんだけど。
「いや、僕もレベル1だと思われたままなんで、もう一度測ってほしいかなぁって」
「壊さないか?」
「え? ……あっ! 壊すかも」
また衛星が邪魔するかもしれない。
「じゃあ、ダメだ。鑑定用の水晶玉は金貨五十枚もするんだ。前回は代品があったから不問としたが、もう代品は無いんだ。それと先に言っておくが、金額だけの話じゃ無いからな。この鑑定用の水晶玉は冒険者ギルド本部から取り寄せているんだ。冒険者ギルドに注文しても中々手に入らないものでな、数にも限りがあるって事なんだ」
そんな貴重なものを壊してたのか。だったら無理は言えないか。
お詫びとお礼の意味で、弁償も兼ねて衛星に作ってもらえないものかな。
《衛星、そこの水晶玉と同じ物を二個…いや、三個作れない?》
『Sir, yes, sir』
おお! さすが衛星。
ゴトン ゴトン ゴトン
マスターと俺達の間にあるテーブルの上に三個の水晶玉が現れた。
途端に部屋の空気が固まった。
ランクアップを喜ぶ三人も、衛星が出した水晶玉に釘付けだ。見た瞬間にフリーズしちゃったよ。
マスターも目を見開いて驚いている。
マスターのその驚いた顔も見飽きてきたね。
今、衛星が出した三個のうち、二個を持って一つをキッカに渡し、もう一つをマスターに渡した。
残った一個は収納しておく。
「キッカ、さっきと同じようにレベルを測ってみて。マスターもその渡した水晶玉で試してみてください」
二人は、まだ信じられないという顔ではあったが、言われたとおりレベルを鑑定してくれた。
「同じだわ、さっき測ったレベルと全く同じ。スキルもね」
「私もだ。これはどういう事なんだ?」
どういう事……ここまで見せればマスターも今なら信じてくれるんじゃないかな。
「衛星のお陰です。前も言ったけど信じてくれませんでしたよね? これで信じてもらえましたか?」
「エイセイ……」
信じかけているマスターだったのに、またヤスの馬鹿な一言で台無しになった。
「それってイージさんの呪いっすよね」
呪いじゃねーし!
「あー! クラマが言ってたね」
それはクラマが間違ってるんだ!
「あっしも聞きました。それで魔物に出会わないんだとか」
だから加護だっての! この話をしてた時にお前達もいたよね? なんで又聞きみたいになってんの?
言い訳をしようにも、三人で捲くし立ててくるから俺が口を挟む隙が無い。
「エイセイ…呪い…か。お前も大変なんだな」
呪いじゃないから! 慰められちまったよ。
マスターの試した方で俺のレベルを確認した。
LV152と確認できた所で、例によって衛星が水晶玉を破壊した。
スキルを見られるのを嫌がってるんだろう、またスキルが出る前に破壊したから。
でも、ステータスまでは確認できたので、マスターには俺がレベル1では無くなった事は伝わっただろう。
キッカの試した水晶玉をマスターに渡して前回壊した水晶玉の代わりに使ってくださいと謝罪した。
「うむ、では遠慮なく頂くぞ」
口ではそう言ってくれたが、目がそうは言ってない。
呪いのアイテムだと思われてるのかも、俺を哀れむような目をしてるもん。
でも、今試して問題無かったよね? それならいいじゃないか。それに呪いじゃないからね。
「呪いじゃないですから」
そんな俺の言葉は誰も信じてくれなかった。
マスター曰く「呪いを自分で認める奴はいないからな」だそうだ。「心配するな、この事は誰にも言わないから」って言われても慰めになってないから。
LV1疑惑の次は呪い疑惑か。
なんでこんな風になるんだろうね?
―――――――――――――――――――――――――
キッカ達とは馬車で町へ向かった。
町では別行動になっても、どうせ帰りも一緒だろうと思ってたから。
あとで、ちょっと後悔する事になるんだけどね、この時はそんな風には思ってなかった。
厩舎係の子供にお願いして馬を一頭出してもらって馬車につけた。
馬車ね、この【星の家】周辺や町までの作った道はいいんだけど、街道や町の中では道が悪いから尻が痛くなるんだよな。今度、衛星に言って馬車を改良してもらおう。
因みに馬は、今回の護衛仕事でもらった三頭の内の一頭だ。
もう馬も十七頭になった。経費は掛からないからいくらいてもいいんだけど、そろそろ商売を考えてもいいんじゃないかな?
そのためには商人ギルドか。もう行っても大丈夫かな。
まずは四人で冒険者ギルドに入った。
俺は受付のアイファの列へ並んで、キッカは買取窓口へ。ケンはキッカについて行ったみたいだけど、ヤスは依頼ボードの所で依頼書を見ている。
ヤスに選ばせて大丈夫なのか? 最終決定はキッカかケンがするんだろうから放っておいてもいいか。
「今日は煌星冒険団なのね」
俺の番になると受付の犬耳アイファが気軽に話しかけてきた。
「アイファ、久し振りだね。そうなんだよ、今朝急に決めたんだ。今は買い取りに行ってるよ」
もう俺も常連冒険者だよね。常連って言い方もおかしいとは思うけど、新人って言いたくないから常連って言う事にしよう。
「それで領主様から連絡はあった?」
「その件ね、あったわよ。はいこれ」
そう言ってアイファが出したのは封書だった。
昨日の今日なのにもう届いたんだ。俺が帰ってから届いたのかな?
「開けてもいい?」
「開けなきゃ分からないじゃない」
そりゃそうですけど……俺の周りはこんなのばっかだな。
封書を開けてみると、招待状と書いてあり、日付けは一週間後だった。
「あれ? これって俺の名前しか書いてないけど、一緒に行ったメンバーも一緒でいいのかな?」
「そんなのダメに決まってるじゃない。招待されてない者が行っても門前払いよ」
「だって、一緒に護衛依頼をしたのに」
「そんなの向こうの都合じゃない。その感じだと次の仕事の話はイージだけの指名なのかもしれないわね」
んー、次にやりたい事はもう決まってるから都合が合えばだね。
次はどうやら王都方面みたいなんだよね。王都に寄るかどうかは決めてないけど、この辺りで一番大きな町なんだったら一度は行ってみたいね。
昨夜、寝落ちするまで地図を見てたらいくつか同じ地形が重なってる地図があったんだ。
その地形が、池なんだ。ただ、特徴があって五つの池が集まってるんだ。
たぶん同じ池が描いてある地図が五枚。その五枚の地図の一部が重なるような地図が数枚あったと思う。
五つの池が集まってる場所と言えば、冒険者ギルド販売の大まかな地図にも載ってるからすぐに分かった。
このフィッツバーグ領から王都に向かって山を越えた辺りに池が集まってるから、その周辺に五枚プラス何枚かの地図が示す場所があると見ている。
次はその池周辺に行って探索だな。
要件も終わったので、いつもの如くケーキを渡して列から出ようとすると、アイファから待ったが掛かった。
「イージ! 私を見て他に何も言う事は無い?」
えーと……挨拶はしたよな? ケーキも渡したし、他には無いと思うんだけど。
アイファがやけに胸を張ってるよな。
⁉ あっ! ペンダントだ! 俺があげた星型のペンダントトップのペンダントをしてくれてるよ。
でも、今気が付いたなんて普通に言ったら絶対に怒られるよな。
「そ、そのペンダントをしてくれてたんだね、凄く似合ってて違和感が無かったから今気が付いたよ。よく似合ってるよ、付けてくれてありがとう」
これぐらい言っときゃ怒られないだろ。
「バッ、な、何言ってんのよ、なんでイージがお礼を言うのよ! お礼を言うのは私なんだからね、こんな良い物を送っといてお礼を言うなんてバッカじゃない」
やっぱり怒られるんだね。
でも、言い方はアレだけど、内容は『お礼は言わなくてもいいのよ、お礼を言うのは私なのよ。良い物をありがとう』って事でいいかな?
前向きにとらえておこう……ホント俺の周りってこんなのばっかりだ。俺の扱いってこんなのじゃないと思ってたんだけどな。イジられキャラの要素は持ってたとは自覚してるけど、ちょっと酷くなってきてない? どこかで一発ガツンと……無理だね、そんな勇気は無いよ。
アイファとの話も終わり、依頼ボードにいるヤスの所に行った。
キッカとケンは買い取りだから、俺が行っても買い取り受付の馬耳ポーリンにはいい顔されないから辞めておいた。
なんか偶に目が合うと睨まれるんだよ。初めに沢山の素材を出したのをまだ根に持ってるのかなぁ。あんなの初めの二日だけだったのにね。
「ヤス、何かいい依頼を見つけた?」
「あ、イージさん。これがいいと思うんすけど」
そう言ってヤスが指差す依頼を見ると、レッテ山周辺の調査依頼だった。
確かにちょうどいいんじゃない? でも、誰が……思い当たるのは領主様だけだね。俺のために調査依頼を掛けてくれてるとか……考え過ぎか。
「内容的にはいいんじゃないか? でも、ランクが足りないみたいだね。これってBランク依頼になってるよ」
「あっホントっすね。じゃあ、無理っすか。おいら一人でも全然できそうなんすけどね」
冒険者ランクはキッカがE、ケンとヤスがF。俺がDで今回の護衛依頼で最低でもCにはなると思うんだけど、Bランク依頼を受けるには足りないか。
他の依頼も確認していたら、ようやく買取が終わったキッカとケンが戻ってきた。
「お疲れさん、結構時間が掛かったんだね」
「うん、まだあるんだけど、先にマスターの所へ行けって言われたの」
マスターの呼び出しって……俺の時みたいだな。
でも、マスターからの呼び出しって先生に呼び出しされるみたいで、悪い事をしてないのに何か怖いよね。
「じゃあ、ヤスも行かないと、かな?」
「何言ってるの? イージも一緒に決まってるじゃない」
「え?」
「イージは『煌星冒険団』のリーダーでしょ。こういう時はリーダーが一緒に行くって決まってるの。リーダーだけでもいいぐらいよ」
はい? いつ俺がリーダーになったの? しかも一人で行けみたいな事も言われてるけど、それって面倒事を押し付けられてるようにしか思えないんだけど。
「リーダーはキッカじゃないの?」
「何言ってるの! 初めからイージに決まってるじゃない」
横ではケンとヤスもウンウンと頷いている。が、その目は笑ってるね。
お前達、確信犯だな。全員でグルになって俺をリーダーに仕立て上げやがったな。
だから、何でこんな面倒事を押し付けられるキャラになっちゃってるんだよ。おかしくないか? こうなった元凶はクラマあたりにありそうな気がする。
これ以上言ってもリーダーの変更も無さそうだし、渋々一緒にマスターの部屋に行く事になった。
「すみません、お邪魔します」
マスタールームに入ると挨拶をした。
秘書のランレイさんも見えたので会釈しておく。
「おっ、またお前か。今度は何をやったんだ?」
何をやったんだって、人聞きの悪い。何も不利益になる事はやってないはずだよ。ちょっと問題になった事はあったけど、それだって判断に困るってだけで悪い事はやってないはずだ。
「い、いや、俺は何も。キッカ達が買い取りに行ったらマスターの所へ行けと言われたみたいで、俺はその付き添いです」
「そうか、リーダーだから当然だな。誰に言われたんだ?」
おい! 普通にリーダーになってるじゃないか! なんでだよ!
キッカを見ると目をサッと逸らされた。
こいつが犯人か! いつそんな登録したんだよ。
キッカは俺と目を合わさないようにマスターに説明した。
「オークとオーガの素材が50体分ずつあるって言ったら、出してみろって言われたんです。それで倉庫の方に行って出してみたら驚かれたんだけど、査定はしてもらったんです。その後、精算してもらったら思ったより少なくて、それで次は上位種を持ってるから出そうと思って言ってみたらマスターの所へ行けって言われたんです」
「ごじゅ……お前達のランクってFだったか? いや、エイージの仲間だったな。それなら収納バッグも相当の物を持ってるか……」
「私はEランクです。だから私自身はCランク依頼のオーガは対象外ですけど、Dランクのオーク討伐はできるんです。今日はイージも一緒ですし、Cランクのオーガも大丈夫なはずなんですけど」
色々と思考を巡らせているマスターに自分はEランクだと主張するキッカ。
マスターはそれどころじゃ無いみたいだけどね。
50……いや100か…更にまだあるのか……エイージじゃなくてイージ…ふむふむ……などブツブツ呟いて整理しているマスター。
最後のは別にって気もしたけど。
「よし。イージにはどのランクの素材でも買い取り可能にしてるんだ。それを『煌星冒険団』に適応すればいい。ランクに関しては今回の買いとり品で決めたいが、あと何を持ってるんだ?」
「ありがとうございます。オークキングにオークファイター、オーガロード、レッドオーガ、ブルーオーガ、グリーンオーガ、今言った魔物は十体ずつはあります。さっきも解体が下手だから安くなったと言われましたけど、こっちもそんなに上手く解体はできていません」
キッカの言葉に驚くマスター。
キッカを見たあと、俺を見てケンとヤスに目を向ける。
ずっと口が開いてるよ。
でも、それぐらいの魔物だったらマスターも見た事も討伐した事もあるはずだ。
倒したのがキッカ達だから驚いているんだろうな。俺も驚いてるもん。
俺の場合は、キッカ達って冒険者みたいだぁって方だけどね。
「それを全部売りたいと」
「はい、そろそろ装備を新調したいと思いまして、それでお金が必要なんです」
「わかった、うちで全部買い取ろう。それでは私も一緒に下で見せてもらうとしようか。いや待て。その前に…ランレイ!」
「はい、これですね?」
そう言って秘書のランレイさんが水晶玉を持ってきた。記入用紙も用意していた。
「さすが用意がいいな。これで鑑定をしてみてくれ」
差し出されたのは鑑定用の水晶玉。かつて俺が壊したものと同じものだ。俺じゃなく衛星が壊したんだけどね。
俺は【鑑定】スキルで確認はしてるけど、本人達には言ってないからね。
キッカ達はワクワクしながら推奨玉に手を置いていた。
今の自分達のレベルを知らないから、知りたくてしょうがなかったみたいだ。
それならそうと言ってくれれば教えてあげたのに。あ、俺が【鑑定】スキルを持ってるって知らないか。
鑑定の結果、キッカLV103、ケンLV101、ヤスLV88。
ステータス平均もキッカとケンは1000を少し上回っていた。ヤスは少し落ちるが、それでもステータス平均で900弱。ゴブリンに勝てないと自慢してたヤスはもういない。今ならゴブリンの集落でも一人で討伐できるだろう。
「ほぉ、これなら納得だな。全員Bランクでいいだろう、下で手続きをするように。ランレイ、頼むぞ」
わぁ! っと歓喜の声を上げる三人。
ランレイさんは一礼すると部屋から出て行った。受付に連絡に行ったんだろう。
一瞬で抜かれてしまった俺はガッカリだ。いや、仲間が嬉しい事は俺にとっても嬉しい事だ。ここは素直に祝福してあげよう。
「よかったねキッカ。ケンもヤスもおめでとう」
「ありがとうイージ。これもイージのお陰だよ」
「本当にありがとうございます! イージさん、これからもよろしくお願いします」
「あざーっす! もうクラマさんにしごかれなくてもいいんすよね!」
俺は何にもしてないよ。三人共、頑張ってたもんな。
「あっ! そうだ! 僕も鑑定してもらえますか?」
「ん? お前もか。なんでだ?」
そんな邪険にしなくてもいいじゃないか? 入ってきた時から俺に対しては当たりがキツいんだけど。
「いや、僕もレベル1だと思われたままなんで、もう一度測ってほしいかなぁって」
「壊さないか?」
「え? ……あっ! 壊すかも」
また衛星が邪魔するかもしれない。
「じゃあ、ダメだ。鑑定用の水晶玉は金貨五十枚もするんだ。前回は代品があったから不問としたが、もう代品は無いんだ。それと先に言っておくが、金額だけの話じゃ無いからな。この鑑定用の水晶玉は冒険者ギルド本部から取り寄せているんだ。冒険者ギルドに注文しても中々手に入らないものでな、数にも限りがあるって事なんだ」
そんな貴重なものを壊してたのか。だったら無理は言えないか。
お詫びとお礼の意味で、弁償も兼ねて衛星に作ってもらえないものかな。
《衛星、そこの水晶玉と同じ物を二個…いや、三個作れない?》
『Sir, yes, sir』
おお! さすが衛星。
ゴトン ゴトン ゴトン
マスターと俺達の間にあるテーブルの上に三個の水晶玉が現れた。
途端に部屋の空気が固まった。
ランクアップを喜ぶ三人も、衛星が出した水晶玉に釘付けだ。見た瞬間にフリーズしちゃったよ。
マスターも目を見開いて驚いている。
マスターのその驚いた顔も見飽きてきたね。
今、衛星が出した三個のうち、二個を持って一つをキッカに渡し、もう一つをマスターに渡した。
残った一個は収納しておく。
「キッカ、さっきと同じようにレベルを測ってみて。マスターもその渡した水晶玉で試してみてください」
二人は、まだ信じられないという顔ではあったが、言われたとおりレベルを鑑定してくれた。
「同じだわ、さっき測ったレベルと全く同じ。スキルもね」
「私もだ。これはどういう事なんだ?」
どういう事……ここまで見せればマスターも今なら信じてくれるんじゃないかな。
「衛星のお陰です。前も言ったけど信じてくれませんでしたよね? これで信じてもらえましたか?」
「エイセイ……」
信じかけているマスターだったのに、またヤスの馬鹿な一言で台無しになった。
「それってイージさんの呪いっすよね」
呪いじゃねーし!
「あー! クラマが言ってたね」
それはクラマが間違ってるんだ!
「あっしも聞きました。それで魔物に出会わないんだとか」
だから加護だっての! この話をしてた時にお前達もいたよね? なんで又聞きみたいになってんの?
言い訳をしようにも、三人で捲くし立ててくるから俺が口を挟む隙が無い。
「エイセイ…呪い…か。お前も大変なんだな」
呪いじゃないから! 慰められちまったよ。
マスターの試した方で俺のレベルを確認した。
LV152と確認できた所で、例によって衛星が水晶玉を破壊した。
スキルを見られるのを嫌がってるんだろう、またスキルが出る前に破壊したから。
でも、ステータスまでは確認できたので、マスターには俺がレベル1では無くなった事は伝わっただろう。
キッカの試した水晶玉をマスターに渡して前回壊した水晶玉の代わりに使ってくださいと謝罪した。
「うむ、では遠慮なく頂くぞ」
口ではそう言ってくれたが、目がそうは言ってない。
呪いのアイテムだと思われてるのかも、俺を哀れむような目をしてるもん。
でも、今試して問題無かったよね? それならいいじゃないか。それに呪いじゃないからね。
「呪いじゃないですから」
そんな俺の言葉は誰も信じてくれなかった。
マスター曰く「呪いを自分で認める奴はいないからな」だそうだ。「心配するな、この事は誰にも言わないから」って言われても慰めになってないから。
LV1疑惑の次は呪い疑惑か。
なんでこんな風になるんだろうね?
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友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
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この物語は狩人クライが世界を旅して未知なるなにかに出会う物語。
使い手によって異なる複数の形態を有する『天成器』
必殺の威力をもつ切り札『闘技』
魔法に特定の軌道、特殊な特性を加え改良する『魔法因子』
そして、ステータスに表示される謎のスキル『リーディング』。
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