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第02章 目指せレベル10
第12話 クラマ
しおりを挟む「イージ! 探したよ」
バ、バカ! 名前を言っちゃダメじゃないか!
キッカが俺の名前を呼んでしまって、九尾狐に俺の名前がバレてしまった。
『ほ~、其方はイージと言うのじゃな。ではイージ、其方、妾の主人になれ』
「主人~? 嫌だよ、なんで魔物と結婚しなくちゃいけないのさ。それに俺の名前はイージじゃないから。エイジだし」
「ほ~、エイジと言うのか。良い名じゃな。エイジ、主人というのは結婚ではないぞ。妾の主になれという意味じゃ」
「同じじゃん! なんで俺が魔物と結婚なんかしないといけないんだよ! 絶対イヤだからね」
「だから結婚では無いと言うに。妾の主つまりご主人様になれと言うておるのじゃ」
「だから嫌だって言ってるじゃん!」
「なぜ断るのじゃ。妾のご主人様になれるのじゃぞ?」
「絶対にイーヤーだ!」
なに言ってんだ、こいつは。ホントしつこい奴だよ。
「キッカ、行こうか。ん? キッカ?」
「……」
「キッカ?」
「……はっ!」
「どうしたのキッカ」
「ままままま魔物⁉ あわわわわ」
キッカは九尾狐に驚いて固まっていたようだ。
確かに狐とはいえデカいし、驚くよね。ステータス四桁だし。
「あー、こいつ? 大丈夫だよ。この杭からこっちには入って来れないから」
「ででででも、この魔物って……」
「うん、昨日までここの主だったみたい。俺も昨日こいつに殺されかけたんだけどね。でも、この杭からは入って来れないから安心だよ」
そうじゃなきゃ俺がこんなに余裕でいられるわけ無いだろ。
「こ、殺されかけたって…イ、イージは平気なの?」
「うん、こっちに入って来れないのが分かってるからね。キッカも安心していいよ。でも、子供達にはこの杭から絶対に出ないようにキッカからも言っておいてね」
コクコクと頷くキッカ。
「さ、戻ろう」
「う、うん」
『こーるぅあー! 妾を無視するでない!』
まだ諦めて無いの? いい加減放っておいてほしいんだけど。
「もう帰りなよ。俺にはお前の罠は通用しないから」
『罠など、何も張っておらぬわ! 其方が妾の主になると言うまでは諦めぬぞ。このまま其方の近くで見張っておるからの』
えー、それも困るなぁ。
「じゃあ、認めればどうなるの?」
『もっと傍で離れぬ』
同じじゃん! いや、もっと悪くなってるじゃん!
「なんでこんな事になってんの? 別に俺じゃなくても」
『何を言うのじゃ! 妾の大事なものを奪っておって知らぬ振りか。エイジはそんな薄情な男なのじゃな?」
なにそれ。なんか俺が悪者っぽい言い方しないでくれよ。
あー、キッカ? その目は何? なんでジト目になってんの? 俺は何も奪ってないから!
「キッカ? 何か勘違いしてない?」
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「い、いや、俺は何も奪ってないから」
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煙を立ち上げ九尾狐が和服女性に変身した。
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『この額のタンコブを見よ。まだ痛みが引かぬわ。しかし其方に奪われたもののお陰で、もっと胸が痛むのじゃ』
確かにおでこは昨日のままタンコブがあるね。他に奪ったものって何も覚えが無いんだけど。
おーい、キッカ! 更に目が薄目になってるぞ! 絶対勘違いしてるよね?
「キッカ…さん? 何か凄ーく勘違いしてらっしゃいませんか?」
「いいえ。こんな綺麗な女性なら魔物でもいいんだなぁと思ってね」
「いやいやいやいや、それが誤解だって言ってんの! 俺は何も奪ってませんし、こいつには触れてもいませんから!」
「だって、この人がイージの事を主人だって……奪われたって……」
「そうじゃ、エイジに奪われたのじゃ」
「俺が何を奪ったって言うの! 俺には覚えが無いんだから」
「プライドじゃ」
「プライド?」
「そうじゃ、プライドじゃ。妾はこの辺りの主となって三百年、誰にも負けたことなど無いのじゃ。その妾を簡単にあしらって、且つ情けを掛けたエイジに妾のプライドはズタズタにされたのじゃ。これはもうエイジに、責任を取ってもらわねば妾はもう生きては行けぬ。後生じゃ、妾の主になってくれぬか」
「だーかーらー、魔物と結婚なんてしないって……」
「イージ? この人、イージに結婚を迫ってる訳じゃないと思うわよ」
「え?」
「さっきから、そう申しておるではないか」
「え? でも主って…」
「これって主従関係の事を言ってるんじゃないの?」
「それじゃそれじゃ、しゅしゅしゅ関係じゃ」
言えてねーし。
主従関係って、俺が主でこいつが召使いとか奴隷とかって事?
「お前が俺の奴隷になるの?」
「奴隷ではない! 従者じゃ」
「それってどう違うの?」
「全然違うのじゃ! 従者は主を敬うのじゃ。時には諌めもするし、時には褒美ももらう。ぐふふふ。奴隷にはそういうものは無い、自由も無い、ただ命令に従い生きておるだけじゃ」
途中、寒気がしたけど気のせいだった?
「それって危険は無いの? 俺だけじゃなく周りの皆の事もあるしさ」
「大丈夫だと思うわよ。私もそんなに詳しいわけじゃないけど、従者契約をすると主人の影響を凄く受けるらしいから、イージは優しそうだし、その従者なら優しくなるんじゃない?」
でも、契約って事は何か制約や約束事があるのかな。
「九尾狐、契約ってどんな事をするの?」
「妾の場合は名付けじゃ。主となるものに名を付けてもらうと契約完了じゃ」
「名前を付けるだけ?」
「……そうじゃ」
え? なに今の間は。こいつ何か隠してない?
「それだけじゃないんじゃない? お前、何か隠してるだろ」
「…なぜバレたのじゃ」
「バレバレだって。はい、隠してる事は何?」
「…妾から、ささやかな願いを言うのじゃ。それを聞き入れてもらう事で契約完了じゃ」
「今度こそ本当だろうね」
「本当じゃ」
今度は大丈夫そうだな。
「それで? ささやかな願いって何?」
「そ、それは名付けてもらった後じゃ」
「今言わないんなら契約は無しだよ」
「わ、わかったのじゃ。…そ、添い寝じゃ」
「ダメー!!」
「「え?」」
なんでキッカがダメ出しするの?
「キッカ?」
「……」
キッカは真っ赤になって俯いてしまった。
キッカの事はよくわからないけど、添い寝は俺もダメだと思う。
「断る……あ、いや、ちょっと待って。条件付きならいいか」
「「条件?」」
声がダブったけど、キッカも興味深々だね。
「うん、俺の許可が無い限り、狐の状態で寝る事」
九尾狐はガッカリ、キッカはニッコリ。
あの尻尾は魅力だったんだよ。あのふわふわの狐の尻尾が九本もあるんだよ。ふわふわ尻尾に埋もれて寝ると気持ち良さそうだと思わない? 気持ちいいだろうなぁ~
今度はキッカがジト目? コロコロ変わるね、忙しそうだね。
「仕方がないのぅ、それでいいのじゃ。名付けてたもれ」
「うん、じゃあ名前はクラマね」
ベタだけど、狐の名前なんて、あとゴンぐらいしか知らないよ。
「クラマとな。良い名じゃ。エイジ、感謝じゃ」
「うん素敵、いい名前だと思う」
「あのー、従者になったら”ご主人様”とか”エイジ様”って言うんじゃないの?」
「なぜ、そんな呼び方をせねばならぬのじゃ」
「いや、普通そうなるかなーって。それに敬うって言ってたし」
「エイジはエイジじゃ。妾の主人はエイジ、それでよいではないか」おっほっほっほ
ま、いいか。それに俺の事を普通にエイジって言ってくれてるのもクラマだけだしね。
このままクラマがエイジって言い方を広めてくれたら皆がエイジって言えるようになるかもしれないよな。クラマとは、従者というより友達みたいな感じだね、魔物だけど。
魔物だけど、クラマだけ特別に結界? の中に入る事ができるように衛星に頼んだ。
クラマはどうやっても入って来れなかった杭の内側にすんなり入れた事で、残念そうな不思議そうな顔で杭を見つめていた。
それから家に戻って院長先生を通してクラマを子供達に紹介してもらった。
院長先生が家の名前も考えてくれた。
【星の家】だって。
俺の苗字と夜になると満点の星空が見える事から名付けてくれた。
クラマはこの地に詳しいだろうから、明日子供達の案内係を頼んで、行っては行けない所を教えてもらう事になった。
俺は厨房の改造だ。
厨房と食堂に床下収納を作って、半分は冷蔵、半分は冷凍の機能を付けて肉を保存する事にした。
出来上がって肉も入れ終えると、院長先生とミニーさんに見てもらって使い方を覚えてもらった。
使い方と言っても出すだけなんだけど、冷凍と冷蔵は違うし、この世界には冷蔵庫も冷凍庫も無いみたいだから喜ぶより不思議がってたね。
後は慣れていってもらうしかない。
院長先生からは提案もされた。
野菜を作りたいそうだ。
畑ね、どこまでが俺の土地かイマイチ分からないから、明日冒険者ギルドに行ってキチンと確認してからだね。
夕食の時、院長先生がこの【星の家】のルールを発表した。
掃除は夕食前に全員でする。
風呂は毎日入る。
洗濯係
馬の世話係
食事をした後は全員で片付ける。
……
などなど。
今までもルールはあったけど、こういうルールを使えなくなるぐらい貧乏になっていた事を思い出して涙ぐみながら、それでも嬉しそうに話す院長先生に、嬉しそうな笑顔で返す子供達。
服も新しいものを着ているし、お腹も満タンだ。
後は徐々にでいいから自給自足できるようになればいいよね。
それまでは、俺も何年でも協力する覚悟はあるから。
でも、俺も一生いるわけじゃないから、先に町で【星の家】の人達が、普通に買い物ができる環境を作らないとね。
そのためには領主の事を少し探らないといけないな。
土地の事もあるし、明日はフィッツバーグで一日行動だな。
――――――――――――――――――――――――――――――――
追加修正しました。
一文足しました。
魔物だけど、クラマだけ特別に結界? の中に入る事ができるように衛星に頼んだ。
クラマはどうやっても入って来れなかった杭の内側にすんなり入れた事で、残念そうな不思議そうな顔で杭を見つめていた。
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