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第12章 二つ目の地域制覇へ
第09話 地図は後回し
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食堂のオープン二日目。
門の前の広場は、更なる大混雑を見せていた。
もう、自分達だけでは手が回らず、兵士も来て人員整理をしてくれていた。
本来なら店側が怒られそうな状況だけど、そんな事態には至らず、兵士達は皆、協力的だった。
中には俺も顔を知ってる兵士もいて、相手もニコやかな笑顔で挨拶してくれたりした。
砦兵は相変わらず砦から離れられない規則というか縛られてるというか、で離れられないけど、俺にも兵士の顔見知りは何人かいる。
先日、地下入口前で立番してくれてた兵士とか、門で挨拶する兵士とか。言葉を交わした経験は少ないけど、無いわけではない。
そんな兵士達の協力もあり、大した揉め事もなく店は順調に営業を続けられた。
何故、兵士まで協力体制を整えてくれてるのか。それは、サティさんとアセスさんがホットケーキをメニューに入れてしまったからだ。
テイクアウトまでは準備ができなかったようだけど、―――主に入れ物が―――食堂のメニューには入れてしまったのだ。
その動きは商業ギルドにはすぐに伝わっているし、商業ギルドと領主様はツーツーだから兵士も協力してくれてるんだろうと思う。
領主様といっても若ボンは何もしないだろうから、コーポラルさんが動いてくれたんだろう。
コーポラルさんは、こんな大勢いる賑やかな場には出て来ないから、裏で兵士達の手配などをしてくれてるんだろう。
逆に、若ボンは喜んで出て来そうだけど、まだ見てないところをみるとコーポラルさんが押さえつけてくれてるのかもしれない。
あの人は王家とも繋がりがあるという話しだし……王家の密偵だったか。今は王都で駆けずり回ってるのかもな。
後で知ったが、この時コーポラルさんは、家族とエルフのテリトリーにある温泉を満喫してたようだ。
俺もまだ行った事が無いのに。というか、何処にあるかも知らないのに。
そりゃ、見ないはずだよね。
この時はそうとも知らずに感謝してたよ。いや、裏で手配してくれたのは間違いないんで感謝の気持ちに嘘はないんだけど、俺が忙しく働いてる時に遊ばれてるとね。嫌味の一つでも言いたくなるもんなんだよ。
だいたい、五百人も収容できる大食堂を作るのもどうかしてると思ったけど、それでもフル回転になってしまってる現状を考えると、【星菓子】程度のお店だったら到底回しきれなかったね。そういう意味ではカミラさんのファインプレーだったわけだ。
そのカミラさんは、今日も開店からホールでずっと監視を続けている。
いつ休んでるんだろうか。その立ち姿を見るだけで、相当疲れてるのが分かるから、何とかしてあげたいんだけどね。何かしてあげられないものか。
「エイジ様、今日の分です」
今日もエルフがマヨネーズを持って来てくれた。
昨日、紹介してくれた十人の内の一人だ。名前は覚えてない。
トンチンカンの三人組がこちらに常駐してくれるので、十人でローテーションを組んで配達してくれるそうだ。
その護衛にはエランさん達警備隊がやってくれるそうだけど、エランさんの順番が多く組まれてるのだとか。
今日も護衛として後ろで控えてるんだけどね。エランさんの協力体制は過剰すぎやしないか、それによってちょっとした事で人族と揉めやしないか心配になるよ。
過剰といえばノワールの喧嘩仲間になりそうな白狼だけど、配達には必ず彼が来てくれるそうだ。
今のところ三往復目だけど、今後も彼が担当するのだとか。来ればノワールと喧嘩になるんだから出て来なければいいのにと思うんだけど、折角手伝ってくれてるのに来るなとも言えずに放置中だ。
で、俺は何処にいるのかというと、倉庫の方で待機中だ。
待機と言っても、ボーっとしてるわけではない。
今のように対応もするし、料理指導もしている。
現在、倉庫には何も無い状態―――十台のオーブンと調理台はある―――だから、この広い空間を利用して料理教室を開いてる。
そのために、更に十台のオーブンと三十台の魔道コンロを設置して、それに見合う数の調理台も設置してある。
もう、町全体の料理人がここに集ってるんじゃないかと思ってしまうよ。
「イージ卿。四日後には別の町から、十日後には王都からも料理人が派遣されて来る予定です」
まだ来るのかよ! それは覚えた人が先生になって教えてあげてね! 俺はもう飽きた!
いやいや、そうも言ってられないね。砦で沢山の兵士が亡くなったお詫びもあるんだ。出来る限りの協力をするとも誓ったしね。
でも、そろそろ始動したいんだよね。
衛星の地図探しを。
昨日、十人のエルフがやって来た時に渡された収納バッグに、マヨネーズと共に入ってたんだ。
『先日、色々な手でエルフを滅ぼす計画書があなたから送られて来たけど、その中に混ざってた地図が解明できません。どういう意味のものか教えて頂ければ幸いです―――精霊女王 花子』
って手紙があって、地図が添えられてたんだけど、花子さんって手紙だと標準語なんだね。今度から筆談にしてもらおうかな。
内容としては、全く身に覚えの無い話なんだけど、計画書を送った犯人は衛星だって分かってるから言い訳のしようもないんだよね。
一応、エルフを滅ぼす気は無いと意思表明はしたし、マンドラゴラとアルラウネを提供した事で和解はできたと思ってるんだけど、地図…ねぇ。
これって、どう見ても、また衛星のパーツを探せ! 的なやつだと思うんだよ。
今、それどころじゃないのにー
地図が十枚ね。この件が落ち着いたら考えてみるよ。
一人は嫌だから同行メンバーも募りたいしね。でも、よく考えてみると、最近一人が多くない? いや、ノワールは入るんだけどさ、人間というか人というか、人の仲間がね。
そんな事言ってられないか。ともかく、今は開店したばかりの食堂と倉庫を軌道に乗せないとね。
で、今も料理教室をやってたとこなんだけど、既に昼からは俺のする事が極端に減って来ている。
カミラさんの指示で厨房スタッフとこっちの生徒―――と言っても初日の選抜から外れた料理人だけど―――が、入れ替わって教えあってるんだ。
ホールスタッフも商業ギルドから次々に送られて来てるから、初日のように休憩が取れない事態も起きてない。
今後、このまま繁盛が続くのか、それとも客足が遠のいて行くのか、はたまたもっと大繁盛するのかはまだ分からないけど、料理人のレベルが上がるのだけは間違いない。
この町は下水道のモデルタウンでもあるから、今後は増える方が確率は高いかもな。
カミラさーん! 倒れない程度に頑張るんだよー!
それから十日間、やる事は毎日同じだった。
食堂を覗いて倉庫で料理教室をやって、エルフが来た時に応対をする。
料理教室でも俺が口出しするには一日に一~二回。最近ではカミラさんも休憩を取る余裕も出て来た。
サティさんとアセスさんとカミラさんで、よくホットケーキの試食をしているのを見かけるようになった。
そろそろいいかな?
そう思って、思い切って試食中のカミラさん達に相談した。
「あの……カミラさん?」
「はい、イージ卿。最近はパン職人も腕を上げてきましたね。ホットケーキだけではなく、パンの方も固パンからふっくらパンに変わって来ました。こんな美味しいパンを食べられるのもイージ卿のおかげです」
「はい、ホットケーキも日増しに美味しくなってるような気がします」
「料理人の方もメニューが増えて、忙しそうですが毎日笑顔で作ってますよ」
「そうそう、もうここで骨を埋めるんだ! って声も多く聞きますしね」
「教える側も増えてきたので、もっと料理人を呼べますね」
「ヘルファンの町への移民も増える一方ですよ」
「ベイビーズもまた増えたみたいですね」
「砦も順調だと聞いてますよ。砦からの肉の供給も増えて来たので、もう少し単価を安くしましょうか?」
「エルフから送られて来る調味料も種類が豊富になって来ましたね」
「これで試作品も増えますし、エルフに渡せる料理ももっと増えますね」
「隣の建屋も買収して立て替える予定が進んでますよ」
「でも、それは無理でしょうね。こちらの客が流れて、相乗効果で売り上げが上がってるようですし、いっそ二階を建て増ししましょう」
「それなら三階はいるんじゃないでしょうか」
「それはいいわね。厨房を全部こっちの倉庫に移して、食堂は客席だけにしましょうか」
「レジスターの追加もお願いしたいですね」
「あれは素晴らしいわね、計算の出来ない子でも会計係に回せるもの」
「何とかあれを解析し、作成して一気に大儲けを」
女三人寄ると姦しいと言うが、俺が口を挟む隙間が無い。
しかし、この三人はずっとここに常駐してるはずなのに、どっから情報を仕入れてるんだ?
女の情報網…侮るべ難し……
因みにレジスターだけど、昔風の数字を押してレバーを引くタイプを、衛星が魔改造してこの世界風にアレンジしたものだから電気は使ってない。
ボタンにはメニューの名前が書いてあり、それを注文の数だけ押せばいい簡素化したものだ。その際、金貨1、金貨10、銀貨1、銀貨10、銅貨1、銅貨10、クリアというボタンもあり、それを枚数分押してレバーを引けば釣銭も出て来るという優れもの。解析はできないだろうね。俺は衛星に要望を言っただけだから、仕組みは分からないもの。
しかし、報告のような希望のような三人の話はいつまでも経っても終わらない。
ホント、その情報量はどこで仕入れてるのか。電話なんか無かったよな?
どうやら各方面からの報告書から情報を仕入れてるようだけど、それでもこの町の情報を全て網羅してるほどの情報量だよ。
いつまでも終わらない三人の話に終止符を打つべく、ホールケーキを出した。今日はイチゴ、メロン、みかん、さくらんぼ、葡萄など、フルーツを各種取り入れたフルーツケーキだ。
キャー! っと、出した瞬間からカットするまでは煩いが、食べ始めて三口目ぐらいでようやく静かになった。
「食べたままでいいので聞いてください」
コクコク
食べる手を止めず肯く三人。
さっきもホットケーキを何枚も食ってたはずなんだけどね。どこにそんなに入るのやら。
「そろそろここを、あなた達三人とエルフの三人にお任せしてもいいと思いまして」
それだけで察してくれたのか、三人とも手が止まる。口は止まらなかったが……
「僕の目的のためには、この国を一周しないといけないのですが、この町に少し長居しすぎて予定が進んでいません。もう店の方もある程度展望は見えて来ましたし、あなた達三人がいれば上手くやれるでしょう。エルフの常駐者もフォローしてくれると思いますので、少しこの町を離れようと思います」
モグモグ……!!
「でも、予定ではこの国を離れないはずなので、一ヶ月もすれば戻って来れると思ってるんです」
モグモグ……ほっ
「出発予定は特に決めてないんですが、僕の場合、特に準備は必要ないのでこのままでも出発できるんです」
モグモグ……!!
「とはいえ、あなた達にも大変お世話になりましたので、慰労を兼ねて何かできればと考えてまして」
モグモグ……
「岩宿ホテルザガンで慰労会をしましょうか」
モグモグ……!! キャ―――!!
岩宿ホテルザガンでの慰労会と聞き、大喜びする三人。
ケーキを食べながら俺の前で聞き入っていた三人が突然声を張り上げると、やっぱりこうなるよね。
俺は胸から上がケーキまみれになっちゃったよ。
カミラさん……二回目だよ。
門の前の広場は、更なる大混雑を見せていた。
もう、自分達だけでは手が回らず、兵士も来て人員整理をしてくれていた。
本来なら店側が怒られそうな状況だけど、そんな事態には至らず、兵士達は皆、協力的だった。
中には俺も顔を知ってる兵士もいて、相手もニコやかな笑顔で挨拶してくれたりした。
砦兵は相変わらず砦から離れられない規則というか縛られてるというか、で離れられないけど、俺にも兵士の顔見知りは何人かいる。
先日、地下入口前で立番してくれてた兵士とか、門で挨拶する兵士とか。言葉を交わした経験は少ないけど、無いわけではない。
そんな兵士達の協力もあり、大した揉め事もなく店は順調に営業を続けられた。
何故、兵士まで協力体制を整えてくれてるのか。それは、サティさんとアセスさんがホットケーキをメニューに入れてしまったからだ。
テイクアウトまでは準備ができなかったようだけど、―――主に入れ物が―――食堂のメニューには入れてしまったのだ。
その動きは商業ギルドにはすぐに伝わっているし、商業ギルドと領主様はツーツーだから兵士も協力してくれてるんだろうと思う。
領主様といっても若ボンは何もしないだろうから、コーポラルさんが動いてくれたんだろう。
コーポラルさんは、こんな大勢いる賑やかな場には出て来ないから、裏で兵士達の手配などをしてくれてるんだろう。
逆に、若ボンは喜んで出て来そうだけど、まだ見てないところをみるとコーポラルさんが押さえつけてくれてるのかもしれない。
あの人は王家とも繋がりがあるという話しだし……王家の密偵だったか。今は王都で駆けずり回ってるのかもな。
後で知ったが、この時コーポラルさんは、家族とエルフのテリトリーにある温泉を満喫してたようだ。
俺もまだ行った事が無いのに。というか、何処にあるかも知らないのに。
そりゃ、見ないはずだよね。
この時はそうとも知らずに感謝してたよ。いや、裏で手配してくれたのは間違いないんで感謝の気持ちに嘘はないんだけど、俺が忙しく働いてる時に遊ばれてるとね。嫌味の一つでも言いたくなるもんなんだよ。
だいたい、五百人も収容できる大食堂を作るのもどうかしてると思ったけど、それでもフル回転になってしまってる現状を考えると、【星菓子】程度のお店だったら到底回しきれなかったね。そういう意味ではカミラさんのファインプレーだったわけだ。
そのカミラさんは、今日も開店からホールでずっと監視を続けている。
いつ休んでるんだろうか。その立ち姿を見るだけで、相当疲れてるのが分かるから、何とかしてあげたいんだけどね。何かしてあげられないものか。
「エイジ様、今日の分です」
今日もエルフがマヨネーズを持って来てくれた。
昨日、紹介してくれた十人の内の一人だ。名前は覚えてない。
トンチンカンの三人組がこちらに常駐してくれるので、十人でローテーションを組んで配達してくれるそうだ。
その護衛にはエランさん達警備隊がやってくれるそうだけど、エランさんの順番が多く組まれてるのだとか。
今日も護衛として後ろで控えてるんだけどね。エランさんの協力体制は過剰すぎやしないか、それによってちょっとした事で人族と揉めやしないか心配になるよ。
過剰といえばノワールの喧嘩仲間になりそうな白狼だけど、配達には必ず彼が来てくれるそうだ。
今のところ三往復目だけど、今後も彼が担当するのだとか。来ればノワールと喧嘩になるんだから出て来なければいいのにと思うんだけど、折角手伝ってくれてるのに来るなとも言えずに放置中だ。
で、俺は何処にいるのかというと、倉庫の方で待機中だ。
待機と言っても、ボーっとしてるわけではない。
今のように対応もするし、料理指導もしている。
現在、倉庫には何も無い状態―――十台のオーブンと調理台はある―――だから、この広い空間を利用して料理教室を開いてる。
そのために、更に十台のオーブンと三十台の魔道コンロを設置して、それに見合う数の調理台も設置してある。
もう、町全体の料理人がここに集ってるんじゃないかと思ってしまうよ。
「イージ卿。四日後には別の町から、十日後には王都からも料理人が派遣されて来る予定です」
まだ来るのかよ! それは覚えた人が先生になって教えてあげてね! 俺はもう飽きた!
いやいや、そうも言ってられないね。砦で沢山の兵士が亡くなったお詫びもあるんだ。出来る限りの協力をするとも誓ったしね。
でも、そろそろ始動したいんだよね。
衛星の地図探しを。
昨日、十人のエルフがやって来た時に渡された収納バッグに、マヨネーズと共に入ってたんだ。
『先日、色々な手でエルフを滅ぼす計画書があなたから送られて来たけど、その中に混ざってた地図が解明できません。どういう意味のものか教えて頂ければ幸いです―――精霊女王 花子』
って手紙があって、地図が添えられてたんだけど、花子さんって手紙だと標準語なんだね。今度から筆談にしてもらおうかな。
内容としては、全く身に覚えの無い話なんだけど、計画書を送った犯人は衛星だって分かってるから言い訳のしようもないんだよね。
一応、エルフを滅ぼす気は無いと意思表明はしたし、マンドラゴラとアルラウネを提供した事で和解はできたと思ってるんだけど、地図…ねぇ。
これって、どう見ても、また衛星のパーツを探せ! 的なやつだと思うんだよ。
今、それどころじゃないのにー
地図が十枚ね。この件が落ち着いたら考えてみるよ。
一人は嫌だから同行メンバーも募りたいしね。でも、よく考えてみると、最近一人が多くない? いや、ノワールは入るんだけどさ、人間というか人というか、人の仲間がね。
そんな事言ってられないか。ともかく、今は開店したばかりの食堂と倉庫を軌道に乗せないとね。
で、今も料理教室をやってたとこなんだけど、既に昼からは俺のする事が極端に減って来ている。
カミラさんの指示で厨房スタッフとこっちの生徒―――と言っても初日の選抜から外れた料理人だけど―――が、入れ替わって教えあってるんだ。
ホールスタッフも商業ギルドから次々に送られて来てるから、初日のように休憩が取れない事態も起きてない。
今後、このまま繁盛が続くのか、それとも客足が遠のいて行くのか、はたまたもっと大繁盛するのかはまだ分からないけど、料理人のレベルが上がるのだけは間違いない。
この町は下水道のモデルタウンでもあるから、今後は増える方が確率は高いかもな。
カミラさーん! 倒れない程度に頑張るんだよー!
それから十日間、やる事は毎日同じだった。
食堂を覗いて倉庫で料理教室をやって、エルフが来た時に応対をする。
料理教室でも俺が口出しするには一日に一~二回。最近ではカミラさんも休憩を取る余裕も出て来た。
サティさんとアセスさんとカミラさんで、よくホットケーキの試食をしているのを見かけるようになった。
そろそろいいかな?
そう思って、思い切って試食中のカミラさん達に相談した。
「あの……カミラさん?」
「はい、イージ卿。最近はパン職人も腕を上げてきましたね。ホットケーキだけではなく、パンの方も固パンからふっくらパンに変わって来ました。こんな美味しいパンを食べられるのもイージ卿のおかげです」
「はい、ホットケーキも日増しに美味しくなってるような気がします」
「料理人の方もメニューが増えて、忙しそうですが毎日笑顔で作ってますよ」
「そうそう、もうここで骨を埋めるんだ! って声も多く聞きますしね」
「教える側も増えてきたので、もっと料理人を呼べますね」
「ヘルファンの町への移民も増える一方ですよ」
「ベイビーズもまた増えたみたいですね」
「砦も順調だと聞いてますよ。砦からの肉の供給も増えて来たので、もう少し単価を安くしましょうか?」
「エルフから送られて来る調味料も種類が豊富になって来ましたね」
「これで試作品も増えますし、エルフに渡せる料理ももっと増えますね」
「隣の建屋も買収して立て替える予定が進んでますよ」
「でも、それは無理でしょうね。こちらの客が流れて、相乗効果で売り上げが上がってるようですし、いっそ二階を建て増ししましょう」
「それなら三階はいるんじゃないでしょうか」
「それはいいわね。厨房を全部こっちの倉庫に移して、食堂は客席だけにしましょうか」
「レジスターの追加もお願いしたいですね」
「あれは素晴らしいわね、計算の出来ない子でも会計係に回せるもの」
「何とかあれを解析し、作成して一気に大儲けを」
女三人寄ると姦しいと言うが、俺が口を挟む隙間が無い。
しかし、この三人はずっとここに常駐してるはずなのに、どっから情報を仕入れてるんだ?
女の情報網…侮るべ難し……
因みにレジスターだけど、昔風の数字を押してレバーを引くタイプを、衛星が魔改造してこの世界風にアレンジしたものだから電気は使ってない。
ボタンにはメニューの名前が書いてあり、それを注文の数だけ押せばいい簡素化したものだ。その際、金貨1、金貨10、銀貨1、銀貨10、銅貨1、銅貨10、クリアというボタンもあり、それを枚数分押してレバーを引けば釣銭も出て来るという優れもの。解析はできないだろうね。俺は衛星に要望を言っただけだから、仕組みは分からないもの。
しかし、報告のような希望のような三人の話はいつまでも経っても終わらない。
ホント、その情報量はどこで仕入れてるのか。電話なんか無かったよな?
どうやら各方面からの報告書から情報を仕入れてるようだけど、それでもこの町の情報を全て網羅してるほどの情報量だよ。
いつまでも終わらない三人の話に終止符を打つべく、ホールケーキを出した。今日はイチゴ、メロン、みかん、さくらんぼ、葡萄など、フルーツを各種取り入れたフルーツケーキだ。
キャー! っと、出した瞬間からカットするまでは煩いが、食べ始めて三口目ぐらいでようやく静かになった。
「食べたままでいいので聞いてください」
コクコク
食べる手を止めず肯く三人。
さっきもホットケーキを何枚も食ってたはずなんだけどね。どこにそんなに入るのやら。
「そろそろここを、あなた達三人とエルフの三人にお任せしてもいいと思いまして」
それだけで察してくれたのか、三人とも手が止まる。口は止まらなかったが……
「僕の目的のためには、この国を一周しないといけないのですが、この町に少し長居しすぎて予定が進んでいません。もう店の方もある程度展望は見えて来ましたし、あなた達三人がいれば上手くやれるでしょう。エルフの常駐者もフォローしてくれると思いますので、少しこの町を離れようと思います」
モグモグ……!!
「でも、予定ではこの国を離れないはずなので、一ヶ月もすれば戻って来れると思ってるんです」
モグモグ……ほっ
「出発予定は特に決めてないんですが、僕の場合、特に準備は必要ないのでこのままでも出発できるんです」
モグモグ……!!
「とはいえ、あなた達にも大変お世話になりましたので、慰労を兼ねて何かできればと考えてまして」
モグモグ……
「岩宿ホテルザガンで慰労会をしましょうか」
モグモグ……!! キャ―――!!
岩宿ホテルザガンでの慰労会と聞き、大喜びする三人。
ケーキを食べながら俺の前で聞き入っていた三人が突然声を張り上げると、やっぱりこうなるよね。
俺は胸から上がケーキまみれになっちゃったよ。
カミラさん……二回目だよ。
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