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第11章 プロジェクト
第15話 嘘を重ねて泥沼に
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エルフの中央都市から町へ戻ってコーポラルさんを探した。
俺のせいで人類とエルフの仲が悪くなりそうだったので、危機回避できないか相談に来たんだ。
「コーポラル? あー、あのサボりで有名な伍長か。またどっかそこらでサボってんじゃないの?」
「あー、あのサボり隊の隊長さんね。知らねーな」
「さぁてね。あんなのと関わって懲罰くらいたくねーしな。誰も知らないんじゃないか?」
「あのいつもいなくなる人ね。またどっかに隠れてるんじゃないの? 昨日も砦に来なかったみたいだしな」
領主城に行っても分からないというので巡回兵に聞いて回ったんだが、誰もがこんな調子で評判がすこぶる悪い。
裏での仕事が忙しいからちょくちょく消えるんだろうけど、報われない仕事をしてんだね。コーポラルさんは非常に有能だし色々とお世話にもなってるし、裏では実績も相当なものだと思う。
だけど、表に出せないから『サボリ魔』というのが周知されてるんだろうな。気の毒に。
でも、見つけないと仕方がない。ここは困った時の衛星頼みしかないか。
『Sir, yes, sir』
衛星にコーポラルさんのところまで先導を頼み、ノワールに乗って付いて行く。いつものパターンだからノワールも慣れたもんだ。俺の指示に迷う事無く従ってくれる。
あれ? 町から出たよ。町の中にはいなかったんだな。すると、ダンジョンにでも行ってるのか。
予想通り、街道を南へ向かう。途中で左に曲がるとアッシュのダンジョンだ。その先に自宅二号がある。
あれ? あれあれ? 何で街道から右に曲がっちゃうの? そっちには岩宿ホテルしかないよ?
先導役の衛星はさっさと岩宿ホテルに入って行く。
ホントにここにいるの? コーポラルさんは今めちゃくちゃ忙しいんだよ?
ノワールから降り、岩宿ホテルに入って行くとボーイ達に出迎えられた。ここも、ボーイが増えている。
少し見ないとドンドン悪魔の仲間が増えてないか? でも、ここも繁盛してるって聞いてるし、悪魔以外に人員補充できないから仕方がないのか。
いや、そもそも悪魔がホテルを営業してるってのはどうなんだ?
俺は顔パスなんで「ちょっと確認したいだけだから」と言って、衛星について奥に入って行く。
「コーポラルさん!」
「これはこれはイージ卿、どうされましたか?」
コーポラルさん、大浴場に入ってたよ。あんた目が回るぐらい忙しいんじゃなかったのか?
「相談事があったので探してたんですが、忙しいんでは無かったんですか?」
「ええ、私の仕事は粗方終わりました。あとは部下がやってくれる手筈になっています」
だからと言って風呂に入っててもいいの? 部下さん達はまだ働いてるんだろ?
「そうですか。じゃあ僕はフロントで食事でもしながら待ってますので、ゆっくり浸かってから上がって来て下さい」
「わかりました。私ももう上がるつもりでしたので、そうお待たせしないと思います」
風呂から出ると、フロント受付の前に幾つか設置している四人掛けテーブルの一つに座った。
すると、ボーイがすかさず飲み物を持って来てくれて、別のボーイがおつまみ程度の干し肉を持って来てくれた。日本で言うところのジャーキーみたいなやつだ。
レッテ山のこっち側でも食事情はあまり変わらないみたいで、砂糖も含めて調味料が少ないのだ。塩はそう高価では無いから、製塩技術はこちら側の方が優れているのかもしれない。
こっちでも、またスラムの人達を囲って居住区作りをして味噌や醤油を作ってもらおうかな。あとマヨネーズもね。
そう待たずにコーポラルさんが大浴場から上がって来た。少し急かしてしまったようで申し訳ない気がするが、こっちも大変なんだ。風呂ぐらいは大目に見てもらおう。
「お待たせしました」
ちょっと機嫌が悪くなるんじゃないかとも心配したけど、見る限り満足気な表情をしているので大丈夫かな?
「いえ、寛いでたところをすみません。急ぎの用だったもので」
「いえいえ、イージ卿の相談ならいつでも、どんな時でも結構ですよ。最大の楽しみである入浴中でもですね」
やっぱりいつもより棘がある、機嫌がいいとは思えないな。でも、こっちも大至急案件なんだ。多少の事には目を瞑ってもらおう。
「それで、急ぎの用というのは何でしょうか。イージ卿から急ぎの用と言われると少し怖いのですが」
「ええ、少しミスをしてしまって、人類とエルフの仲を険悪にしてしまったようなんです。それで何か良案がないかと相談のために探してたんです」
「それはまたスケールの大きな話ですが、今回はエルフ側もイージ卿のお陰で友好関係を作れたと思ってたのですが、一体何があったんですか?」
「それがですね……」
ここまで話してようやく衛星の事を話せ無い事に思い当たった。
五つの砦に追い寄せた大量の魔物を俺一人で討伐したなど、どうやって説明したらいいんだろう。
衛星の事は話せない。これは必須条件だ。また呪い扱いされてしまうからな。
だったらどう言えばいいのか。まずは衛星抜きで話してみようか。
「エルフ側は非常にいい仕事をしてくれたようなんです。これはさっき確認して来たので信じてください」
「いい仕事というのは魔物を追い立ててくれたというのですか? 魔物は一体も現れなかったと報告を受けていますが」
やはりコーポラルさんは事情通だな。ちゃんと知ってたよ。
「はい、思いの外、頑張ってくれたようで、それについては事実なんです」
「ふ~む。では、何故魔物が一体も現れなかったんでしょう」
「それが…ですね」
ここで衛星のせいだと言うわけには行かない。なんて言おう。
「その……退治した魔物は僕が持ってるんです。あとでお見せしますが相当な数の魔物の死骸を持ってます」
「という事は、昨日はエルフ側から魔物の追い込みはキチンと行なわれたと、そうおっしゃりたいのですね?」
「そうなんです。エルフは約束を守ってくれていました」
「確かにエルフを嘘つき呼ばわりするなど、砦には険悪なムードが流れているとも聞いています。元々エルフとは友好的な関係だとは言えませんでしたからね。それが昨日の件で一層悪くなったとも聞いています。イージ卿の言葉が本当なのでしたら、険悪ムードも少しは薄れるのですが……しかし、その魔物はどうやって倒したのでしょうか」
やっぱりそうなるよね。エルフは約束通り仕事をした。砦兵も約束通り砦で準備をしていた。これは俺も中央砦にいたから知っている。
でも、エルフに追い立てられた魔物は現れなかった。でも、エルフは魔物を追い立てたと言う。だったら、その魔物はどこへ行ったとなる。
その魔物は俺が持ってるとなると、今度はどうやってその大量の魔物を人知れず倒したのかという事になる。そもそも隠れて倒す意味も無い。
「あ! そう言う事でしたか。それならそうと事前に相談くだされば良かったですのに」
突然コーポラルさんが納得したように肯いた。何を思いついたのか分からないけど、この顔を見る限りいい流れになりそうだと思ったので乗ってみた。
「は、はい…」
「つまりはこういう事ですね? どうやったかは知りませんが、あまりにも大量に魔物が押し寄せて来たために、イージ卿が危険だと判断し、魔物をエルフと協力して掃討してくださったと」
「ええ、まぁ…」
「そんなに大量だったのですか?」
「はい、先日の砦襲撃の時と同等…いえ、それ以上でしたね」
これは嘘じゃない。タマちゃんに確認済みだ。
「そんなに……それではエルフ側にも被害が出たのではないのですか?」
そう来たか! エルフは誰も手伝ってくれてないから被害はゼロなんだよな。だって俺の嘘なんだから。
「いえ、エルフに被害は出てませんでした」
「それでは、魔物の数もそんなにはいなかったのでは……なるほど! ベイビーズですね!」
「はぁ、まぁ…」
「エルフとベイビーズとイージ卿とその従者達で討伐頂いたと。イージ卿はずっと中央砦にいらっしゃったのですよね? では、ベイビーズと従者方の活躍が大きかったのですね」
一人納得して、どんどん話を進めて行くコーポラルさん。
これは上手く行きそうか?
「しかし、それだとベイビーズが一体として進化してないのが不思議ですね。相当な数の魔物だったのですよね?」
むぐっ、そう来たか。
「い、いえ、あのー、そう、ベイビーズはもう一息で進化すると思いますよ。それに、蜘蛛の魔物の場合、進化時に脱皮しますから進化するのに時間差があるのかもしれません」
「すると、今日、明日にも進化をするのでしょうか」
しまった! 言わなくていい事を付け加えてしまった。変にモックンの進化を見ちゃってるから付け加えてしまったよ。あー! 俺ってバカ?
「そ、そ、そうですね。今晩か明日の晩あたりに進化するものもいるかもしれませんね」
「そうでしたか! それは是非一度拝見したいものですね」
「い、いえ、それが、彼らは進化する過程を見せませんので、森の奥で進化を済ませるんじゃないかなぁって」
「おお! それでは進化したベイビーズが一斉に森から現れるのですね! それはさぞ壮観でしょうね。何かイベントを考えた方がいいかもしれませんね。今回の件で険悪になったムードを一層出来るかもしれません」
おぅふ……またやっちまったぜ。ベイビーズは全く戦闘には参加してないのにどうやって進化させんの。
森から一斉に化石蜘蛛が現れるって、どんなトリックを使えばいいんだよ。しかも、その後も化石蜘蛛を砦に常駐させるんだよね? 無理……詰んだよ、俺。
「多くの進化したベイビーズを見れば、もうモックン殿を町に出しても驚くものは少ないでしょう。そうだ! エルフにもイベントに参加してもらいましょう! このイベントで険悪ムードも一層ですね。いやぁ、さすがはイージ卿! 一石二鳥どころか三鳥、いえ四鳥でしょうか。これはまた忙しくなりますねぇ」
確かに食糧問題は花子さんの作った畑に加え、今回の魔物肉で改善するだろう。
そして、ベイビーズの進化で砦の防衛力強化に、その進化の姿を見せるイベントでエルフとの仲を改善。更にモックンへの恐怖感を軽減する、と。
正に一石四鳥ぐらいあるね。
そうするためにはベイビーズの進化が最低条件なんだね。タマちゃ~ん、どうしよう。
エルフにも口裏を合わせてもらわないといけないんだな。そっちはお願いするしかないんだけど、花子さんに相談すれば何とかなるかもしれないか。問題はベイビーズの進化だよなぁ。
俺のせいで人類とエルフの仲が悪くなりそうだったので、危機回避できないか相談に来たんだ。
「コーポラル? あー、あのサボりで有名な伍長か。またどっかそこらでサボってんじゃないの?」
「あー、あのサボり隊の隊長さんね。知らねーな」
「さぁてね。あんなのと関わって懲罰くらいたくねーしな。誰も知らないんじゃないか?」
「あのいつもいなくなる人ね。またどっかに隠れてるんじゃないの? 昨日も砦に来なかったみたいだしな」
領主城に行っても分からないというので巡回兵に聞いて回ったんだが、誰もがこんな調子で評判がすこぶる悪い。
裏での仕事が忙しいからちょくちょく消えるんだろうけど、報われない仕事をしてんだね。コーポラルさんは非常に有能だし色々とお世話にもなってるし、裏では実績も相当なものだと思う。
だけど、表に出せないから『サボリ魔』というのが周知されてるんだろうな。気の毒に。
でも、見つけないと仕方がない。ここは困った時の衛星頼みしかないか。
『Sir, yes, sir』
衛星にコーポラルさんのところまで先導を頼み、ノワールに乗って付いて行く。いつものパターンだからノワールも慣れたもんだ。俺の指示に迷う事無く従ってくれる。
あれ? 町から出たよ。町の中にはいなかったんだな。すると、ダンジョンにでも行ってるのか。
予想通り、街道を南へ向かう。途中で左に曲がるとアッシュのダンジョンだ。その先に自宅二号がある。
あれ? あれあれ? 何で街道から右に曲がっちゃうの? そっちには岩宿ホテルしかないよ?
先導役の衛星はさっさと岩宿ホテルに入って行く。
ホントにここにいるの? コーポラルさんは今めちゃくちゃ忙しいんだよ?
ノワールから降り、岩宿ホテルに入って行くとボーイ達に出迎えられた。ここも、ボーイが増えている。
少し見ないとドンドン悪魔の仲間が増えてないか? でも、ここも繁盛してるって聞いてるし、悪魔以外に人員補充できないから仕方がないのか。
いや、そもそも悪魔がホテルを営業してるってのはどうなんだ?
俺は顔パスなんで「ちょっと確認したいだけだから」と言って、衛星について奥に入って行く。
「コーポラルさん!」
「これはこれはイージ卿、どうされましたか?」
コーポラルさん、大浴場に入ってたよ。あんた目が回るぐらい忙しいんじゃなかったのか?
「相談事があったので探してたんですが、忙しいんでは無かったんですか?」
「ええ、私の仕事は粗方終わりました。あとは部下がやってくれる手筈になっています」
だからと言って風呂に入っててもいいの? 部下さん達はまだ働いてるんだろ?
「そうですか。じゃあ僕はフロントで食事でもしながら待ってますので、ゆっくり浸かってから上がって来て下さい」
「わかりました。私ももう上がるつもりでしたので、そうお待たせしないと思います」
風呂から出ると、フロント受付の前に幾つか設置している四人掛けテーブルの一つに座った。
すると、ボーイがすかさず飲み物を持って来てくれて、別のボーイがおつまみ程度の干し肉を持って来てくれた。日本で言うところのジャーキーみたいなやつだ。
レッテ山のこっち側でも食事情はあまり変わらないみたいで、砂糖も含めて調味料が少ないのだ。塩はそう高価では無いから、製塩技術はこちら側の方が優れているのかもしれない。
こっちでも、またスラムの人達を囲って居住区作りをして味噌や醤油を作ってもらおうかな。あとマヨネーズもね。
そう待たずにコーポラルさんが大浴場から上がって来た。少し急かしてしまったようで申し訳ない気がするが、こっちも大変なんだ。風呂ぐらいは大目に見てもらおう。
「お待たせしました」
ちょっと機嫌が悪くなるんじゃないかとも心配したけど、見る限り満足気な表情をしているので大丈夫かな?
「いえ、寛いでたところをすみません。急ぎの用だったもので」
「いえいえ、イージ卿の相談ならいつでも、どんな時でも結構ですよ。最大の楽しみである入浴中でもですね」
やっぱりいつもより棘がある、機嫌がいいとは思えないな。でも、こっちも大至急案件なんだ。多少の事には目を瞑ってもらおう。
「それで、急ぎの用というのは何でしょうか。イージ卿から急ぎの用と言われると少し怖いのですが」
「ええ、少しミスをしてしまって、人類とエルフの仲を険悪にしてしまったようなんです。それで何か良案がないかと相談のために探してたんです」
「それはまたスケールの大きな話ですが、今回はエルフ側もイージ卿のお陰で友好関係を作れたと思ってたのですが、一体何があったんですか?」
「それがですね……」
ここまで話してようやく衛星の事を話せ無い事に思い当たった。
五つの砦に追い寄せた大量の魔物を俺一人で討伐したなど、どうやって説明したらいいんだろう。
衛星の事は話せない。これは必須条件だ。また呪い扱いされてしまうからな。
だったらどう言えばいいのか。まずは衛星抜きで話してみようか。
「エルフ側は非常にいい仕事をしてくれたようなんです。これはさっき確認して来たので信じてください」
「いい仕事というのは魔物を追い立ててくれたというのですか? 魔物は一体も現れなかったと報告を受けていますが」
やはりコーポラルさんは事情通だな。ちゃんと知ってたよ。
「はい、思いの外、頑張ってくれたようで、それについては事実なんです」
「ふ~む。では、何故魔物が一体も現れなかったんでしょう」
「それが…ですね」
ここで衛星のせいだと言うわけには行かない。なんて言おう。
「その……退治した魔物は僕が持ってるんです。あとでお見せしますが相当な数の魔物の死骸を持ってます」
「という事は、昨日はエルフ側から魔物の追い込みはキチンと行なわれたと、そうおっしゃりたいのですね?」
「そうなんです。エルフは約束を守ってくれていました」
「確かにエルフを嘘つき呼ばわりするなど、砦には険悪なムードが流れているとも聞いています。元々エルフとは友好的な関係だとは言えませんでしたからね。それが昨日の件で一層悪くなったとも聞いています。イージ卿の言葉が本当なのでしたら、険悪ムードも少しは薄れるのですが……しかし、その魔物はどうやって倒したのでしょうか」
やっぱりそうなるよね。エルフは約束通り仕事をした。砦兵も約束通り砦で準備をしていた。これは俺も中央砦にいたから知っている。
でも、エルフに追い立てられた魔物は現れなかった。でも、エルフは魔物を追い立てたと言う。だったら、その魔物はどこへ行ったとなる。
その魔物は俺が持ってるとなると、今度はどうやってその大量の魔物を人知れず倒したのかという事になる。そもそも隠れて倒す意味も無い。
「あ! そう言う事でしたか。それならそうと事前に相談くだされば良かったですのに」
突然コーポラルさんが納得したように肯いた。何を思いついたのか分からないけど、この顔を見る限りいい流れになりそうだと思ったので乗ってみた。
「は、はい…」
「つまりはこういう事ですね? どうやったかは知りませんが、あまりにも大量に魔物が押し寄せて来たために、イージ卿が危険だと判断し、魔物をエルフと協力して掃討してくださったと」
「ええ、まぁ…」
「そんなに大量だったのですか?」
「はい、先日の砦襲撃の時と同等…いえ、それ以上でしたね」
これは嘘じゃない。タマちゃんに確認済みだ。
「そんなに……それではエルフ側にも被害が出たのではないのですか?」
そう来たか! エルフは誰も手伝ってくれてないから被害はゼロなんだよな。だって俺の嘘なんだから。
「いえ、エルフに被害は出てませんでした」
「それでは、魔物の数もそんなにはいなかったのでは……なるほど! ベイビーズですね!」
「はぁ、まぁ…」
「エルフとベイビーズとイージ卿とその従者達で討伐頂いたと。イージ卿はずっと中央砦にいらっしゃったのですよね? では、ベイビーズと従者方の活躍が大きかったのですね」
一人納得して、どんどん話を進めて行くコーポラルさん。
これは上手く行きそうか?
「しかし、それだとベイビーズが一体として進化してないのが不思議ですね。相当な数の魔物だったのですよね?」
むぐっ、そう来たか。
「い、いえ、あのー、そう、ベイビーズはもう一息で進化すると思いますよ。それに、蜘蛛の魔物の場合、進化時に脱皮しますから進化するのに時間差があるのかもしれません」
「すると、今日、明日にも進化をするのでしょうか」
しまった! 言わなくていい事を付け加えてしまった。変にモックンの進化を見ちゃってるから付け加えてしまったよ。あー! 俺ってバカ?
「そ、そ、そうですね。今晩か明日の晩あたりに進化するものもいるかもしれませんね」
「そうでしたか! それは是非一度拝見したいものですね」
「い、いえ、それが、彼らは進化する過程を見せませんので、森の奥で進化を済ませるんじゃないかなぁって」
「おお! それでは進化したベイビーズが一斉に森から現れるのですね! それはさぞ壮観でしょうね。何かイベントを考えた方がいいかもしれませんね。今回の件で険悪になったムードを一層出来るかもしれません」
おぅふ……またやっちまったぜ。ベイビーズは全く戦闘には参加してないのにどうやって進化させんの。
森から一斉に化石蜘蛛が現れるって、どんなトリックを使えばいいんだよ。しかも、その後も化石蜘蛛を砦に常駐させるんだよね? 無理……詰んだよ、俺。
「多くの進化したベイビーズを見れば、もうモックン殿を町に出しても驚くものは少ないでしょう。そうだ! エルフにもイベントに参加してもらいましょう! このイベントで険悪ムードも一層ですね。いやぁ、さすがはイージ卿! 一石二鳥どころか三鳥、いえ四鳥でしょうか。これはまた忙しくなりますねぇ」
確かに食糧問題は花子さんの作った畑に加え、今回の魔物肉で改善するだろう。
そして、ベイビーズの進化で砦の防衛力強化に、その進化の姿を見せるイベントでエルフとの仲を改善。更にモックンへの恐怖感を軽減する、と。
正に一石四鳥ぐらいあるね。
そうするためにはベイビーズの進化が最低条件なんだね。タマちゃ~ん、どうしよう。
エルフにも口裏を合わせてもらわないといけないんだな。そっちはお願いするしかないんだけど、花子さんに相談すれば何とかなるかもしれないか。問題はベイビーズの進化だよなぁ。
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