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第11章 プロジェクト

第13話 三族会議②

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「そんな昔の話なんか、よぉ覚えてへんけどな。ちょーっとお仕置きしたっただけやさかい」

 ちょっとで五百年封印か……全然ちょっとじゃないと思うんだけど。
 因みに日本で五百年前っていったら織田信長より前になるんだよな。人類が滅んだわけでもないし、これぐらいの文化も出来上がるか。いあ、むしろ遅いぐらいだな。
 でも、これはあれか? 花子データにあった『手加減おんち』と『ねちねちな性格』のコンボか! あと、体力バカってのもあったよな。それって脳筋って事だろうから、考えるのが苦手なのかもな。

「まっ、今は関係おまへん、その話は置いときまひょ」
 俺としてはマイアが関わってる件だから、しっかり聞いておきたいんだけどな。でも、皆を呼んでるし、そうも行かないか。

「そうですね。でも、あとでゆっくり話が聞きたいですね」
「ほなら、後でうちの部屋でゆっくりお話ししまひょか。ほんでコーポラルはんやったかいな、どのぐらいのもんを考えてはんのや?」
「……」

 あれ? もしかしてコーポラルさん、フリーズしてる?

「コーポラルさん?」
「……は、は、はい、なんでしょうか」
「花子さんがどのぐらいの規模の畑がいるのか聞いてますよ」
「あ…失礼しました。少し面食らってしまいました。規模ですね。それは広ければ広いほどいいです。領内で自給自足をできるようにと考えていますので、北側と西側を全体的に広げたいのです。作る作物にもよりますので、今は出来る限り広くとしか考えていません」

 珍しいね、コーポラルさんがフリーズするほど驚くなんて。モックンと会った時でもここまででは無かったはずだ。
 それほど精霊女王というのは大きな存在なんだな。伝承でしか伝わってない存在なんだから無理もないか。
 俺が同じ立場だったらモックンの方がフリーズすると思うけど、博学なコーポラルさんの場合は逆だったんだね。博学だからこそ、なんだろうけどね。

 広げたいのは北側と西側か。レッテ山方面と王都方面だな。
 東側はエルフの森だし南側は岩宿ホテルがある方面で岩石地帯が多いから畑には向かないだろうし妥当な所だね。
 だけど広さが決まってないと手のつけようがないと思うけど。

「ふ~ん、決まってへんのか。ほならうちが決めてもええか?」
「ええ、まずは取っ掛かりという意味でも、精霊女王様が決めて頂いた方がいいかもしれませんね」

 確かに植物のスペシャリストの頂点にいる花子さんだ。任せた方がいいかもしれない。

「町の北と西やな。ほんで出来るだけ広くやね」
「はい、お願い致します」
「よっしゃ、任せとき。今晩のうちにやっとくさかい」
「今晩中にですか?」
「当たり前やないか。それぐらいの事、ちゃっちゃと済まさなテッペンなんて務まらんやろ。うちを誰やと思てんねん」

 花子さんですよね? ただの花子ってさっき言ってましたけど。実は精霊女王って言われて調子に乗っちゃった?

「この『精霊女王様』が、あんじょうやったるさかい、黙って見とき。細工は流々、仕上げは御覧ごろうじろっちゅーこっちゃ」

 んー、何言ってるか分からん。精霊女王と呼ばれたのが気に入ったのだけは分かったよ。強めに言ってたしね。
 最近は精霊女王って名乗ってないのかな? 気に入ってるんなら名乗ればいいのに。

「じゃあ、農地開拓については花子さ……」

 ギロッ!

「ゴホン、精霊女王に任せていいんだね」
「うむ、任せときなさい!」

 お~お、なりきってるよ。ノリがいいというか乗せやすいというか、こっちとしては丸投げ出来て有り難いんだけどね。

「コーポラルさん。あと何かありますか? ここで役割分担をしてた方がいいものもあると思いますよ」
「そうですね……あとはこれといってありませんね。しいて言えば街道整備でしょうか」

 街道整備か。この世界の道は舗装されてないしな。しかも途中で細くなったり藪になってたり、馬車だと結構苦労する場合もあるもんな。
 雨なんか降った日には、ぐちゃぐちゃだしわだち泥濘ぬかるみに嵌まってしまえば何時間も立ち往生したりする。
 たしかに街道整備は急務かもしれない。

「誰かできる? 花…精霊女王には向いてなさそうだから、アッシュのところで誰かいない?」
「んー、いないわね。私達は基本、移動の時は飛ぶから」
「飛ぶ?」
「わー! 飛ぶようなスピードで走るんだよね! たしかそうだったよね!」

 飛ぶなんて言うんじゃない! 悪魔ってバレるだろ!

「穴を掘ったりするのは他にもいるんだけど、道はねぇ。いないわね」

 そうか、いないのか。だったら、ここは衛星に頼もうか。

「じゃあ、街道は僕が担当します。大まかな感じでいいですよね?」
「はい、それはもう! 町と町、王都と町という感じの大きな街道でお願いします。点在する村への道は本線ができてしまえば、そこから支道を作ればいいだけですから」
「わかりました。あとは…アッシュのとこか。コーポラルさん、さっき言った砦の追い込みで魔物が沢山獲れる予定ですから、食糧問題は解決すると思いますので、ダンジョンの件で少し手を貸してもらえますか?」

 アッシュ達の作ったダンジョンなんだけど、それはもう凄い人気で、連日満員御礼なんだよ。
 宣伝はもちろん、宝箱のお宝が功を奏したみたいで、我先にと冒険者が押し寄せてくる。
 俺には関係ないと高を括っていたけど、一番人気商品が武具とあって、無関係でもいられなくなった。
 【星の家】の自宅一号に帰れば、誰かと連絡が取れるんだけど、あれから一度も帰ってないし向こうからも誰も来てない。
 向こうから来ない理由はさっき判明したんだけど、俺も意地張っちゃって、『向こうが来ないんなら俺も行かない』なんて思ってたから行ってなかったんだ。
 こんな事なら行っておけばよかったよ。

 で、武具に関しては衛星に頼んで作ってもらって小出しにしている。
 小出しにしたのがより効果的になってしまって、更に人が来るようになった。人間誰でもレアものには弱いんだね。

 しかもアッシュのダンジョンには魔物がいる。罠もある。
 魔物を倒すと経験値が上がりレベルも上がる。なぜか魔界の魔物達を倒すと、そのアップ率が非常にいいのだ。
 罠も比較的簡単なものが多く、作ってるのがザガンやダンタリアンという素人とまでは言わなくとも、セミプロ程度の罠とあって、真似しやすいものが多いのだ。
 効果的で簡単に作れる罠。それを学ぶためにも更に人が集まった。
 効率良くレベリングが出来て、罠も学べる。運が良ければお宝にありつけて、しかも死なないダンジョン。そりゃ人気も出るだろうね。若干魂を奪われてるんだけどね。
 そして、現在。収集が付かなくなってしまったのだ。

「ええ、噂は耳に入っています。それで、何をお手伝いすればよろしいのですか?」
「入場管理や行列整理なんかですね。周辺には何も無かったですから迷惑をかけないで済むと思ってたんですけど、屋台なんかが増えて来たと思ったら、最近では簡易食堂や簡易宿屋が増えてきて、そちら側から苦情が出るようになったんです」

 あの洞窟しか無かった場所が、俄かにどころではない活気に溢れて来てるのだ。
 そろそろ集落というか、村ができるかもしれない勢いなのだ。

「では、こういうのはどうでしょう。冒険者ギルドの支部を設けるのです。入場するにも入場料を取り、店を出すにも一定の税を取るようにしましょう。そうすれば、入門や税は領の管理とし兵を置けますし、冒険者は冒険者ギルドでランク設定や適合の攻略階層を指示するでしょうし、もしお宝があれば鑑定もするでしょう。何より死なないダンジョンと噂されていますので、冒険者の新人研修には持って来いでしょうしね」

 おお! さすがコーポラルさん!
 確かに死なないダンジョンだからと言って無茶をする冒険者も多いのだ。下層の方がいいお宝があるからと言って無茶な攻略をするから余計にダンジョン内で渋滞が起こったりする。戦闘が長引くのだ。救出する手間もあるしね。
 それを冒険者ギルドが管理してくれて、入門や店を領で管理してくれるんなら最高に嬉しいな。

「そこまでしてもらってもいいんですか?」
「もちろん構いませんよ。こちらとしても実入りが大きいですからね。ただ、願えるなら、そのダンジョンまでの道も整備に含めてほしいですね、岩宿ホテルザガンにも」
「それぐらいなら構いませんよ。こちらとしては大助かりなんですから」

 さらーっと岩宿ホテルまでの道もブッ込んで来たね。家に風呂を完備したはずだけど、まだ行ってんのかな?

「岩宿ホテルへの道は、もちろんやろうと思ってましたけど、コーポラルさんはまだ行ってるんですか? 家にも風呂はあるでしょ?」
「いやぁ~、あそこの風呂は特別ですよ。次の日の爽快感が全く違います。風呂から上がって食事をして、クターっとなったら睡魔が来て、寝ると一気に深い眠りにつけるんです。そうすると朝の目覚めが最高にいいんですよ」

 一気に深い眠りって……それ魂を奪われるからだと思いますよ。朝には回復してるって言うし、それが逆に爽快感になってんのかね。
 本人が満足してるんなら黙っててやろうっと。まぁ、言えないんだけどね。

「アッシュ、こう言ってくださってるけど、それでいいか?」
「ええ、エイジ様にお願いしたかったらちょうどいいんじゃない? 私はダンジョン内だけでいいもの」

 ダンジョンの外は魂を奪う許可はしてないもんな。町でも無いし、魂を奪えない事には興味ないってか。そういうとこはブレないよな。

「うん、これでこっちとコーポラルさん側は当面行けそうだね。あとは花子さんのところだけど、お願いばかりして何もメリットが無いよね。何か希望はある?」
「そうやねぇ、精霊女王としては特にはあらしまへんのやけど、しいて言うならアレですかいな」
「アレって?」
「マイアドーランセには何やえーもん与えたそうやありまへんか。うちにも一つもらえまへんか」

 マイアに与えた? もしかして、マンドラゴラとアルラウネか? 確かにここじゃ口に出せないな。

「アレね。わかったよ、用意する。それだけでいいの?」
「それだけって…エイジはん! 今まであてが生きてきて三回しか見てまへんのやで!? それを、それだけって……ええ根性してはるわ」

 おいおい、一人称は『うち』じゃなかったのかよ。『あて』に変わってんぞ。

「エイジはんもうちに個人的な話がある言うてはったさかい、こんなもんでよろしおまっか?」
「そうだね、コーポラルさんはどう?」
「はい、もうこちらとしては十分な配慮を頂きました。むしろこちらが何もしなくてもいいのかと思ってるぐらいです」
「コーポラルさんにはダンジョン前の管理と町でも色々と助けてもらってるみたいだから、それこそ十分ですよ。アッシュはどう?」
「何も無いけど、私ってエイジ様の役に立ってる?」

 そうか、今回は自分のダンジョンばかりで俺の手伝いはしてないもんな。そういうのを気にする事もあるんだな。ちょっと可愛いとこもあるんだな。

「今のところは手伝ってもらう事は無いからね。アッシュの喚んだモックンが大活躍してるからいいんじゃない? 下僕の手柄は主人の手柄なんだろ?」
「そ、そうよ、私のお陰よね。だったら、はい」

 いつも通り手を出して丸薬をせがむアッシュ。
 やらねーよ。変に気を遣ってやるんじゃなかったよ。可愛いとちょっとでも思った俺を殴ってやりたいよ。

 アッシュのオチで解散となり、俺は花子さんと最上階へ向かうのであった。
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