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第11章 プロジェクト

第11話 悪魔の色んな搾取法

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 アッシュから色々と言い訳を聞いた後、念の為にダンジョンを全部見て回った。
 魔物の数以外に隠してる事は罠と宝箱も用意してた事だけだった。

 罠はそれほど凶暴なものではなく、死に至るようなものではなかった。
 落とし穴でどこか怪我をするとか、矢が飛んできて軽い毒状態か麻痺状態になる程度のものだった。
 麻痺と魔物のエンカウントがコンボで来られるとヤバイかもしれないけど、まぁ許せる範囲だと思う。

 で、誰用のダンジョンなのか聞いてみたところ、冒険者用らしい。
 まぁ、ダンジョンに用があるのは殆んどが冒険者なんだろうけど、悪魔と冒険者の結びつきが分からない。 

「で?」
「なによ」
「目的は?」
「それはー…趣味…そう、趣味よ」
「趣味ね。一応、釘を刺しておくけど、嘘だったら分かってるよね?」

 アッシュに対して特に何ができるわけでもないけど、人類に対して害悪すぎれば悪魔界に還ってもらうしかない。それぐらいの決断は俺にもできるから。

「……その…少し実益も入ってるのだけど、ほんの少しだけよ。趣味っていうのも本当の事だし!」
「ほぉ~、それは興味深いお話ですね、アッシュさん。その実益のところを詳しくお話して頂きましょうか」
「エイジ様、キャラが変わってるわよ? その…怖いんだけど」
「ほぉ~、僕が怖いですか。それは心に疚しいところがあるからでは?」
「うぐっ……」
「別に話したくなければ話さなくてもいいよ。調べるだけだから」
「……す、少しもらうだけよ」
「何を?」
「ダンジョンに入って来た人の魂を少しもらうだけよ」

 やっぱりね、そんな事だろうと思ったよ。

「どのぐらい奪う気だったの?」
「五%ぐらい。どうせ戦闘行為もするし、緊張感で精神疲労もあるから気付かれないわ。冒険者にだっていい事もあるんだから」

 う~ん、五%か。判断に迷うところだね。本来なら魂を奪うなんて許さないところなんだけど、町の住民の1%は許可してしまってるし、今さら魂を奪うのは無しだとも言い難い。
 ここに来るのは冒険者だと言うし、体力には自信がある人ばかりだろう。
 そんな人達から5%なら、とも思ってしまうな。

「冒険者にいい事って、どんないい事があるの?」
「宝箱を用意したの。中身は主に宝石関係ね。鉱石や魔石もあるから挑戦に来た冒険者にとっては実入りはいいはずよ。それに、この子達と戦って勝利すれば経験値も入るしね。あ、この子達は負けても悪魔界に戻るだけだから心配は無用よ」

 宝石や魔石ね。そんなので冒険者が来てくれるのかな?

「本当は武器や防具の良いのが出せればいいんだけど、私の下僕に得意なのがいないのよね」

 武器や防具っすか……俺、持ってるよ。少しだけど、エルダードワーフやゼパイルさんの作った武具を。
 というか、モックントンネルが開通した今なら、いくらでも都合が付けれそうなんだけど。
 そういえば、あれから誰も来ないけど、俺ってそんなに人気が無かったの? ちょっと…いや、かなりショックなんだけど。
 クラマ、マイア、ユーあたりはすぐに来ると踏んでたんだけどなぁ。悲しいなぁ。
 逆に向こうも思ってるのかも、なぜ戻って来ないのかって。でも、ドーラが来た時に『今はまだ戻れない』って伝えたんだけどな。ちゃんと伝わってるのかな?

 ま、いいや。今はこっちの三件を解決してからだな。モックンの子供達を含む町の件とこのダンジョンの件、あとはエルフの件だね。
 エルフの件は放置でいいと思うんだけど、あのキツイ大阪弁の……そうそう花子さんの事だから、このまま終わらないだろうな。同郷の転生者って言ってたしね。

「もしかして、エイジ様持ってるの?」
 長々と考え事をしてたらアッシュに質問された。話の流れから、そう取られるだろうね。

「そうだね、少しだけど持ってるかな」
「それは当然くださるわよね?」
「なんで当然なの!? まだここを認めるかどうかも決めてないんだけど!」
「いいえ、エイジ様が認めなくても人間共は喜んで来るわよ。人間ほど欲望の強い者はいないもの。そんな人間共の生存率をエイジ様の武器と防具で高めたいでしょ?」
「さっき、死ぬ事は無いって言ってたよね!?」
「こっちはそのつもりでも事故はあるもの。そんな事故でも防具が強力であれば防げるものもあるんじゃないかしら」

 それは正論だと思うけど、ここで出したらアッシュの口車に乗せられたみたいで嫌なんだけど。

「じゃあいいわ。その武器や防具を私が買い取るから。ついでに丸薬も買い取るわ」
「買うの?」
「ええ、それならいいでしょ? 町を調査させたけど宝箱に入れるにはイマイチなのよ。エイジ様の持ってるものなら並みのものって事はないでしょ? だったら私が買えばエイジ様も儲かってWinーWinよね」

 WinーWinって、確かにそうかもしれないけど、そのお金はどこで調達して……あ、岩宿ホテルか! こいつらって何気に宣伝が上手いんだよな。もう結構な盛況振りを見せてて、定期馬車まで出てるってコーポラルさんが教えてくれたよ。

「そうは言っても、そんなに数は持ってないんだよ。色んな武具を合わせてせいぜい五〇ぐらい。でも、金貨にすると白金貨十枚はするかな」

 金貨に換算すると千枚。たしか、これでも安かったと思う。

「わかったわ。じゃあ全部いただくわね」

 岩宿ホテルってそんなに儲かってんの!?

「今まで何度か人間界に来てるから貯まってた金貨があるのよ。私達悪魔って金貨なんて使わないから貯まる一方なのよね」

 確かに五千年以上生きてたら何度もこっちには喚ばれてるだろうし、金貨を持ってた時期もあったんだろうね。

「じゃあこれ、はい」
「あれ? 多くない?」
「丸薬の分も入ってるわよ」
「今までの?」
「違うわよ、新たに丸薬を買う分よ」
「ふーん……って売るわけねーだろ!」
「チッ」

 おー危ない危ない。油断も隙もねーな。話の流れで、つい丸薬を出しそうになったよ。

 最下層の三〇階層まで一通り見回って、罠も全て確認した。
 確かに死んでしまいそうな凶悪な仕掛けは無かった。あとは”ザ・ファースト”と呼ばれる魔物達だけど、強そうな奴もいるんだよな。
 でも、そういう奴は下層の方にしか置かない予定で、二〇階層を過ぎないと出会わないようにするんだとか。

 色々考えてるのは分かるんだけど、これで本当に冒険者が来てくれるのかね。

「それは大丈夫、冒険者ギルドに依頼を出すの。ここのダンジョンから宝箱の中身を取ってくるっていう依頼をね。ちょうどエイジ様から武具を売ってもらったから武器あたりを入れておこうかしらね。あとは岩宿ホテルザガンでも宣伝させる予定よ。あそこは商人が結構来てるから、その護衛で冒険者もいるのよね。あとは、岩宿ホテルを宣伝した秘策も使うから、すぐにでも人で溢れかえるはずよ」

 凄いね、宣伝は完璧じゃん。

「その秘策って?」
「ひ・み・つ」

 人差し指を俺の口に当てて、そんな事を抜かすアッシュ。
 ウザイんだけど、アッシュみたいな美人にやられると何も言えなくなってしまう。
 元からアッシュってボディタッチが多いんだよ。ノワールに二人乗りした時でも、必要以上にくっつくし。
 でも、誘ったりはして来ないんだよね。何か悪魔ルールでもあるんだろうか。

「ここで死人を出さないと約束してくれる?」
 もう武具を売ったあとだけど、最後に確認だけはしておこう。

「ええ、それがエイジ様のお望みなら。でも、怪我ぐらいは許してもらうわよ」
「まぁ、冒険者だからね。ある程度は覚悟してるだろうし怪我はいいけど、やっぱりこちらが主催でやってる所で人に死なれるのは嫌だから」
「わかったわ。死にそうになったら強制回収して入り口前に放り出すように命令しておくわ。もし治療が必要なら有料でも構わないのよね?」
「うん、まず死なないのが大前提だけど、怪我も後遺症が無いようにしてあげればいいんじゃないかな」

 相手は冒険者なんだし、あまり過保護すぎるのもね。ハイリスク・ハイリターン、冒険者の基本だもんね。

「あっ! もしかして、岩宿ホテルでも魂奪ってんじゃないよね?」
「えっ!? いえ、あの、その……」
「奪ってるのか」
「だって、温泉に浸かって回復できるんだし、ほんの少しだけよ」

 この悪魔は……どこまで魂に貪欲なんだよ。ここまで徹底されるといっそ清々しいね。

「どのぐらい?」
「寝静まってから3%。起きるまでには回復してるから人間共は満足して帰っていくわよ」

 それならいいのか? んー、ホントに判断に困る。

「わかった。それ以上は絶対にダメだよ。それと、何か問題があったら営業停止も有り得るからね」
「もちろん分かってるわ。私だってここにいたいもの」

 しかし、町の住民から1%、岩宿ホテルで3%、このダンジョンで5%か。それで、どのぐらいのアップ率になるのか全然見当が付かないけど、一年も続けば相当なものになるんじゃない?

「アッシュの計画なんだろうけど、どの程度を目指してるの?」
「私は公爵になりたいのよ。でも、まずは侯爵にならないとダメでしょ? その侯爵までもう少しなのよ。だからね、ガ・ン・ヤ・クをもらえない?」
「ダメ」

 俺は悪魔を育てるつもりはないんだよ。トレーズ様が【堕天使ルシファーの加護】なんて付けるもんだからややこしくなってるけど、本当は天使だと思ってたんだから。
 将来、人類の敵になりそうだし、ある程度の我が侭は許しても、率先して進化させようとは思ってないから。
 今のところ、クラマやマイアやユーが来てくれないから悪魔達に頼らないといけないから、ある程度はね。そんな中でもノワールだけでも来てくれたのは本当に助かってる。

「公爵か。それって何年ぐらい掛かるんだい?」
「そうね、町の方がエイジ様のお陰で人口が増えて行ってるから、そう遠くは無いと思うわよ。五年もあればなれるんじゃないかしら」

 という事は、本当に侯爵まではすぐなんだな。このまま放っておいてもいいものなんだろうか。
 心配しすぎか? 誰かが喚ばないと人間界には来れないんだし、俺が送還したら後は悪魔界で政権争いかなんかするだけだろうし、それまでは俺の補助をしてもらって、その分報酬を与えるって感じでいいんじゃない?
 それに、花子さんもいるし、いざとなったら衛星頼みで何とかなるだろ。

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 アシュタロトが『大公爵』だったり『大伯爵』だったりしていました。
 『大伯爵』に統一しましたが、まだ漏れがあるかもしれません。
 『大伯爵』でお願いします。

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