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女神と海の至宝

第四章 誰かによく似たデジャヴ ※

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ベッドの上に寝転んでしまったら、もう指一本動かせず、体は疲労でどこまでもベッドに沈み込む。屋敷に戻って、すぐさま温かなお風呂に入れられたのがトドメだったように思う。

こんなに疲れるのって騎士団に入りたての頃以来かもしれないわ

昼前から屋敷を出て、漁師の船だけでなく異国の船も停泊した港を歩き、通りの店先に並べられたモノはアルバでも見たことのない珍しいもので溢れていた。お昼は通りに面した屋台で今朝捕れたばかりの魚料理を食べ、客寄せの見世物を見て周り、最後は浜辺で貝拾いもできた。
まさに1日中遊んだと言ってもいい。

時間ももうすぐ日が沈み、晩御飯の時間になる。ギルバートも仕事を終えて執務室から出てくるだろう。けれどーー

ねむくて……むり……

襲ってくる睡魔に抗えず、深い眠りに落ちていった。

▼▼▼

戻った護衛3人、とくにボロボロのレオナルドの姿を見て、グレンは報告を受ける前から大体のことを察する。戻ってきたアイカ自身は特に後ろめたいことなどない様子で、拾ってきたのだろう貝殻が入った麻袋を手にいたく満足げだったが、出迎えたメイドたちに速攻風呂場へ連行されて行った。
初めて見るラグナの街に興奮したアイカが、警護につけた3人を無意識に撒いたのかもしれない。

しかし、朝出かける前に染め粉で黒く染めた髪が、帰って来たときは元の銀糸に戻ってしまっていたのは気になる。

「本日はラグナの街を案内し、港の方で催し物を見たり、浜辺で貝殻拾いをして楽しまれたご様子でした」
「ご苦労だった。ちなみに……その様子だとアインはやはり何かしでかしたのか……」
「しでかす、と言うのが正確なのか自分には判断できません」
「アインは何をした?いや、何を見た?ありのままに見たものを言ってくれて構わない」

グレンが促すと、3人は顔を合わせ、代表として騎士団長のレオナルドが報告するらしい。

「では自分から……桟橋の半ばから対岸でやっていた客引きの見世物を見ようとして、海の上を走ってショートカットしました。また陸の上の灯台から岸壁に咲く花が見えたと飛び降りました。もちろん怪我などはありません」
「ショートカット……」

思わず反芻した。
聞いた瞬間、グレンは頭痛がして目頭を押さえる。見世物に釣られたアイカが、一目散に海の上をショートカットしていく光景が簡単に想像できる。
職務として尋ねられた報告だけを返し、疑問を問いかけないレオナルドの分別が今ほどありがたいと思ったことはなかった。

「誰かに見られただろうな」
「全くいないとは言い切れませんが、港にいた他の者もアインと同じように見世物の歓声に気を取られている者たちがほとんどだったのと、海の上を人が走るなど普通ならありえないですし、停泊している船の陰になって目撃者は少ないでしょう。灯台から飛び降りても街の方角とは反対です」
「わかった。他に気になるのは髪につけていた染め粉が落ちてしまったようだが、あれはなぜだ?誰かに銀髪のアインを見られたりは?」
「浜辺の先にある岩場で、ほんの僅かな時間アインを見失いました。申し訳ございません。再び見つけたときには髪色は元の銀糸に戻ってしまっていましたが、辺りは人気のない岩場でした。自分も周りを念のため見回しましたが自分達以外に人はおりませんでした」
「あの髪のまま、この屋敷に戻ったのか?」
「いえ。念のためフード付きのマントを持って行ってたため、帰りはそれを被り髪は隠しました」
「ならば問題ない。今日明日はゆっくり休んでくれ。明日は街に出歩くのは控えて、室内で何かできることをアインに用意しよう」

そこで報告を全て終えた後に、控えめながらレオナルドが一歩前にでて質問の許可を訊ねてきた。

「1つだけ質問をよろしいでしょうか?」
「かまわない」
「今日、自分達が見たものは夢や幻ではなく現実で起こったことなのでしょうか?」
「……今日見たものについては、貴殿らの信念に任せる」

信じられないものを見てしまったレオナルドたちには悪いが、それを肯定してしまうわけにはいかなかった。しかし、今日一日、途中で混乱し護衛を投げ出さず、ボロボロになるまでアイカに付きっ切りで守ってくれたその忠誠には僅かばかりでも報いてやりたい。
だからグレンは少しずるい答えを返す。

「ずるい逃げ方ですまないな」
「ッー!?」

苦笑すると、何事かを察したらしいレオナルドたちは一斉に敬礼しグレンの部屋を出て行った。

とはいえ、1日だけでこれだけ振り回されるのに、さすがに2日続けてレオナルドたちにアインの警護を任せるのは酷に思える。
もっとも今日一日観光したならアイカの方も疲れて明日は動けないかもしれないけれど。


▼▼▼


ずっと眠っていた気もする。けれどほとんど寝ていない気もする。
ただ部屋の中は真っ暗で、外は完全に日が落ちて夜になってしまったらしいというのはなんとなく理解できた。

何時だろう……起きなきゃ……

晩御飯もまだ食べていない。食べないにしても着がえなくては男装のシャツと上着、ズボンを着たままだ。
けれど上手く手が動かせず、そこで自分の両手が縛られていることに気づいた。

「縛られてる?どうして?」

暗闇の部屋だけれど、間違いなくここはギルバートの部屋でありベッドの上だ。なのにどうして自分は両手を胸の前で縛られているのだろう。すると、自分のすぐ上から答えが降ってきた。

「お仕置きだ。朝俺が言ったことも忘れて、このままだとアイカは明日の朝まで眠ってしまっていただろう?悪い子だ」
「ギルバート?」
「俺は今日一日、アイカを抱くことだけを考えて仕事をしていたというのに」
「ひゃっ!?」

履いていたズボンの中にするりと入ってくる手に、びくんっと体が跳ねた。ギルバートの大きな手がアイカのまろやかな臀部を円を描くように撫で揉みしだく。止めようにも手を縛られていては後ろまで手は届かず、ギルバートの反対の手が前を弛められたズボンを脱がしてしまう。
性急すぎるギルバートに

「待って!ギルバート!」
「待たない、俺は朝からずっと我慢して待ってたんだ。なのに仕事を終えて部屋に戻ればキミはベッドの上で無防備に眠って、食べてくれと言わんばかりだ」

ズボンを脱がせ投げ捨てると、次は着ているシャツのボタンを器用に外してく。両手を前で縛られているせいでボタンを外してもシャツを脱がせることは出来ないが、衿部分を肩口まで広げ、ギルバートは浮き出た鎖骨に歯を立てる。

「ずっとこの肌に触れたかった」
「ぁ、あっ!んっ、ぁ……はぁ、あ……」

閉ざした両腕の下にギルバートの手が入り込んできて、隠そうとした胸を柔やわと揉みながら口付けされる。先端の尖りも親指と人差し指で捏ねたり軽く引っ張られたりして、すぐに固くなっていく。
履いていた下着も為す術もなく奪われて、起こされた身体を背中から抱き込むようにしてギルバートの膝の上に座らされ股を開かされる。その間も首裏を舐められたり、耳たぶを甘噛みされて、中を解そうとするギルバートの指を締め付けてしまった。

「お願いっ、もっと、ぁんっ!やぁ…、ゆっく、り、んッ……」

いつもならもっとゆっくりしてくれるのにどうして?

気持ちよくさせるのではなく、はやく自分をイかせるためだけのような快楽をどうしてギルバートがするのか分からず、けれど体は与えられる快楽を従順に受け止めて絶頂が近づいてくる。
中を解していた指が抜かれて、敏感になった割れ目の花弁を、痛みに近い強さで摘まれ呆気なく果ててしまっていた。

「あああっ!」

全身にシビレに似た快楽が走り、お腹の奥が痙攣しきゅぅと締る。ギルバートに何度も抱かれた体は、簡単にその手に堕ちていく。イったばかり蜜口の中に指を入れ、指を曲げたり奥に入れたりして内肉の収縮をギルバートは愉しむ。

「ぁ……だ、だめ、待って…あ、んッ…いまイったばかりで……」
「そんなに気持ちよかったか?まだ中が痙攣している」
「やぁ、言わないで……」
「そうだな。次は俺の番だ」

ぐいと体を少し持ち上げれられ、とろけきった蜜口に後ろから固くて太いものが押し当てられる。暗闇で見えなくても、ソレが何なのかすぐにわかった。
ぐっと先端が入ってしまえば、あとは自分の体重もあって、すっかり濡れている中にギルバートの大きな起立が挿入されてしまう。

「あぁっーー!」

何度体を重ねても最初に入れるときの圧迫感は慣れることがない。内臓を押し上げられてお腹がいっぱいで息苦しいのに、イッたばかりの内壁は待ち望んだようにギルバートのモノに絡み付いて締め付けてしまう。
背後のギルバートが過ぎた締め付けに、息を詰らせたのが耳元に届き、

「そんなに欲しかったのか?こんなに締め付けて、イきそうになってしまった」
「ちが……、あっ、ぁ、だめっ……」

恥ずかしい言葉を囁かれて体に力が入ってしまい締め付けてしまったようで、中にいるギルバートのモノが下腹部の奥でぴくっぴくっと動く。下から突上げるようにして出し入れされると、溢れた愛液がくちゅぴちゃ、と卑猥な水音を立てた。

次第にギルバートの律動が激しいもとなっていくのに比例して、結ばれた腕ごと後ろからアイカを抱きしめるギルバートの力も強くなる。
股を閉じさせないように、反対の手が股を開かせ、強引に広げられた股の間をギルバートのモノが思うが侭に蹂躙していた。がくがくと身体を揺さ振られて、お腹の一番奥を繰り返し突かれて閉じられなくなった口端から飲みきれなかった唾液が伝う。

「あっ、あっ、あ、んっ」
「でるっ……」
「ッぁーー!」

腰を掴み固定された股の間で、ギルバートのものが絶頂に達する。大きかった起立がびくびくと痙攣し、一番奥の子宮の中に入り込んだ亀頭から吐き出される熱に、アイカも誘発されるようにして、二度目の絶頂を迎えた。
下腹部の奥深くに温かな熱が広がっていく。

痙攣が治まり、最後の一滴まで中に出し終えてからギルバートはアイカの中から出て行った。
そこで背後からでは見えなかったアイカが涙を流していることに気づき、

「アイカ?どうし」
「……やだって……やだって言ったわ……。手だって縛って、だめって、…待ってって何度も言ったのに……」
「すまないっ!」

やめてくれなかった、と涙を流す顔をアイカは縛られた手で隠す。そこに至って自分がやり過ぎたとギルバートは気づき、慌ててアイカの体を横に横たえ、手首を縛っていた布を解いた。

「やりすぎた。悪かった……。アイカを傷つける気はなかった。ほんの遊びのつもりで……」

急いで仕事を終わらせて部屋に戻れば、すやすやと規則正しい寝息を立て深い眠りに入っているアイカに小さな悪戯心が沸いて、棚のなかに入れてあったハンカチでその細い手首を縛ってしまった。いつもとは趣向を変えた遊びに最初は驚くかもしれないがきっと喜んでくれるだろうと。それがまさか泣かせてしまうとは思ってもいなかった。
縛っていた手首を、労わるように撫で、何度も額の髪を梳いて、口付けを落とし許しを乞う。

「私だってギルバートに触れたかったのに、手を縛られて全然触れられなかった……」

顔を隠していた手をゆっくり退かせば、その目尻からは涙がいく筋もの流れ落ちていて、そっと指で拭った。

「いくらでも触れてくれ。その手で俺を……もうこんなことは二度としないと誓うから……」
「絶対よ?またしたら次は許さないわ」

上目使いに、金の瞳に涙を浮かべてなんて可愛い脅しだろうか。けれど、それを言ってしまったらアイカの機嫌はもっと悪くなって、本当にしばらく許してもらえなくなる。
その代わりに

「女神に誓って」

先ほど縛っていた手を取り、その甲にギルバートは誓いのキスを落とした。



▼▼▼



朝から精力的に書類に目を通し、流れるようにサインを走らせるギルバートは明らかに上機嫌だった。
反対に、また今日も外へ観光へ行きたいと言い出したらどうしようかとグレンの気がかりだったアイカは、昨日の疲れで朝起きれなかった。朝食もギルバートの部屋に運び、さすがに昼になったら起きた方がいいだろうが、起きても午後から外に出る元気はないだろう。

そこへ外遊中のディアーノ王子へ貸し出している別邸で、世話はもちろんカーラ・トラヴィスとの取次ぎや連絡の全てを任されているアイザックが、事前連絡無しに焦った様子でギルバートの屋敷へやって来た。

「会食会談を明後日に控えて、ディアーノ王子が婚姻の打診を取り下げたいと?」

執務室で書類にサインをしながらギルバートはアイザックの用件を顔色を帰ることなく聞く。突然の王子とマリアの婚姻の打診。それをまた無かったことにしたいと、自分の国ではなく交易を行っている他国に対して一転二転と話がころころ変ることに、アイザックも動揺している様子を隠せない。

「はい。今回の打診はあくまで側近が先走ってのことだそうで王子に話は通ってなかったようです」
「ふむ。しかし王子に何も相談なしに他国の王女の婚姻打診などするものか?」
「婚姻について王子は無関係ということにして、打診を無かったことにしたい事情ができたのではないでしょうか?」

ギルバートの問いにグレンもその意図を掴みかねたように思案していた。

別に婚姻打診を無かったことにしたいのなら、此方は全く構わないのだがな。

王子の気まぐれならそれはそれで構わない。ギルバートにしてみればマリアを他国に嫁がせるという懸念が減るだけで何の問題もない。
けれど、アイザックの次の言葉に、ギルバートの様子は一変した。

「屋敷で働いている使用人が屋敷を掃除中、たまたま聞いたそうなのですが、昨日いきなりびしょ濡れで帰って来た王子が、銀髪の女神に会ったと言われたそうです。直後婚姻打診を無かったことにしたいと王子付きの側用人の者が言ってきまして」

ーバキッ

書類にサインを走らせていたギルバートのペンが無残にも真ん中から2つに折れた。
それだけでなく、先ほどまでさして機嫌が悪いというわけでもなくごく普通の様子だったギルバートが、怒りで折れたペンを握りしめ憤怒のオーラを放っている。

「ギ、ギルバート様?如何なされましたか?」
「いえ、何でもありませんよ」

何か失礼なことを自分は言ってしまったのかと焦るアイザックにグレンが何でもないと首を横に振る。
アイザックは失礼なことは何も言っていない。
むしろ非常に有益な情報をもたらしてくれた。
ギルバートにとって看過できない情報を。

「しかし」
「ただ、最近どこかで同じような話を聞いたなと思っただけです」
「同じような?」
「ええ」






びしょ濡れで銀髪の女神に会う





激しくアイカを連想させる





  デ   ジ   ャ    ヴ






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