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女神と宝石
プロローグ
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高校を無事卒業し、大学に進学する入学式前に仲が良かった友達とパーティーをする約束だった。
その集合場所に急いで走って向かっていたとき、わたし(涼宮愛花)は車が走る道路を横切ろうとしていた猫を庇い、走ってきたトラックに跳ねられた。
どうして他人事かというと、トラックに跳ねられ頭を強く打ち、血を大量に流しながら横たわっている自分を、空の上に浮いて眺めているから。
助けようととした三毛猫も腕の中でピクリとも動かない。おそらく自分も猫も、もう死んでしまったのだろうと諦め心地に、短い人生を振り返る。
(案外わたしの人生もあっけなかったな。ごく普通の公立の小中高校生活。勉強はまぁまぁ、スポーツはそこそこ出来て、それなりに遊んで楽しい思い出はいっぱいある)
これから合格した大学に入って、やりたいことがたくさんあったし、ステキな彼氏だってほしかった。昔からファンタジーモノが大好きで、自分が騎士になって冒険したり、時に女神になって魔法を使うような妄想をしたり、もっとたくさんのファンタジー小説を読みたかった。
途端に幽霊なのに涙が溢れてきて、袖で拭う。
あら、貴方。死んだばかりで未練があるのね?
不意に凛としたの声がして振り返ると、そこには光を纏った女性が同じく宙に浮いて、自分に微笑んでいた。波打つ長いシルバーピンクの髪に、長い睫毛に縁取られた金色の瞳。透き通るような白い肌の神々しい美貌に思わず見惚れてしまう。
貴女は誰?天使様?死んだわたしを迎えにきてくれたの?
いいえ。わたくしは女神よ。
でも、あと少しすれば天使たちが迎えに来るでしょうね。
本物の女神様なんですか?
ええ。それより貴方、さっき心の声が聞こえたのだけれど女神になってみたかったのね。
ならちょうど良かったわ。
ちょうど良かった?
貴方は女神になりたい。そして私は女神に飽きてきて人間になりたかったところなの。
ちょうど良いから交代しましょう。
えええっ!?
交代って?
突然現れた美しい女神がいきなり何を言い出すのか混乱する私をよそに、にこにこと笑顔を湛えた女神は、自らの指にはまっていた指輪をはずし、
これを貴方にあげるわ。女神の指輪よ。女神の証みたいなものね
女神と名乗った相手は、私の左手を取って中指に外した指輪をそっとはめてしまう。
そして、戸惑っているこちらのなど全く気にすることなく、突然現れた女神様は持っていた杖を掲げて、目を開いていられないような強い光を発した。
眩しくて、でも優しい温かさに包まれた光。
そこで私の意識は一度途切れてしまった。
その集合場所に急いで走って向かっていたとき、わたし(涼宮愛花)は車が走る道路を横切ろうとしていた猫を庇い、走ってきたトラックに跳ねられた。
どうして他人事かというと、トラックに跳ねられ頭を強く打ち、血を大量に流しながら横たわっている自分を、空の上に浮いて眺めているから。
助けようととした三毛猫も腕の中でピクリとも動かない。おそらく自分も猫も、もう死んでしまったのだろうと諦め心地に、短い人生を振り返る。
(案外わたしの人生もあっけなかったな。ごく普通の公立の小中高校生活。勉強はまぁまぁ、スポーツはそこそこ出来て、それなりに遊んで楽しい思い出はいっぱいある)
これから合格した大学に入って、やりたいことがたくさんあったし、ステキな彼氏だってほしかった。昔からファンタジーモノが大好きで、自分が騎士になって冒険したり、時に女神になって魔法を使うような妄想をしたり、もっとたくさんのファンタジー小説を読みたかった。
途端に幽霊なのに涙が溢れてきて、袖で拭う。
あら、貴方。死んだばかりで未練があるのね?
不意に凛としたの声がして振り返ると、そこには光を纏った女性が同じく宙に浮いて、自分に微笑んでいた。波打つ長いシルバーピンクの髪に、長い睫毛に縁取られた金色の瞳。透き通るような白い肌の神々しい美貌に思わず見惚れてしまう。
貴女は誰?天使様?死んだわたしを迎えにきてくれたの?
いいえ。わたくしは女神よ。
でも、あと少しすれば天使たちが迎えに来るでしょうね。
本物の女神様なんですか?
ええ。それより貴方、さっき心の声が聞こえたのだけれど女神になってみたかったのね。
ならちょうど良かったわ。
ちょうど良かった?
貴方は女神になりたい。そして私は女神に飽きてきて人間になりたかったところなの。
ちょうど良いから交代しましょう。
えええっ!?
交代って?
突然現れた美しい女神がいきなり何を言い出すのか混乱する私をよそに、にこにこと笑顔を湛えた女神は、自らの指にはまっていた指輪をはずし、
これを貴方にあげるわ。女神の指輪よ。女神の証みたいなものね
女神と名乗った相手は、私の左手を取って中指に外した指輪をそっとはめてしまう。
そして、戸惑っているこちらのなど全く気にすることなく、突然現れた女神様は持っていた杖を掲げて、目を開いていられないような強い光を発した。
眩しくて、でも優しい温かさに包まれた光。
そこで私の意識は一度途切れてしまった。
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