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苦手が敵にバレてしまいました
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「リリー、前から気になっていたんだけれど聞いていい?」
「なんでしょうか?」
「たまに俺から顔を思いっきりそらすよね?あれは何故?」
問われて、ぎくりと心臓が跳ねて、運んでいた手紙の束を落としてしまった。もちろん常にルイスの側で補佐をしているロイドの目は険しい。
どうしてそんなこといきなり言うのよ!?手紙を落としてしまったじゃない!もうちょっと時と場所を考えて質問しなさいよ!
上質な紙の封筒に、綺麗な字で書かれた招待状。封は開けられていないけが、どれも貴族たちが自分の主催するパーティーへ出席して欲しいという招待状だろう。
差出人を確認しするのはロイド。その中で直接ルイスが目を通したほうがいいと思われる手紙は封をあけずにそのままルイスへ。その他はロイドが封を開け中身を確認し、パーティーへの招待とその他と手紙を分別してルイスへ渡される。
毎日大量の手紙が届けられるため、ルイス1人で目を通していては丸1日かかってしまう為らしい。国に関わるようなことはルイスの父である国王や大臣を経由して話が来るので、ルイスに直接くることは個人間の私用と考えていいのだという。
「それは、その……、ルイス様の気のせいではないでしょうか?」
実はルイスの笑顔が眩し過ぎて直視できないなんて、絶対言えないわ。言ったらルイスに「なにこの頭悪い子」って呆れられちゃうもの。それに最近ルイスってば、やたらと私に近づいてくるのよね。変に意味もなく手を握ってきたり、花と間違えてキスしてきたり、私をからかって遊んでいるのかしら?
ただでさえルイスは美形中の美形なのに、それが笑顔になると光り輝くようなキラキラが攻めてきて眩しさで目が眩んでしまう。だからあんまり必要以上にこちらを見ないでほしい。
よくロイドはあのルイスの笑顔を向けられて平然としていられるものだと思う。ルイスに仕えるようになって長いというし、その年月による経験でキラキラ耐久度が鍛えられたのだろうか。不思議でならない。
「気のせいねぇ?別に俺の気のせいだというなら、それでいいんだけれど」
じっと私を見てくるルイスの眼差しは、言葉とは反対に疑いまくっている。
落としてしまった手紙を手早く拾い集めてロイドのところへ持っていく。するとその大量の手紙の中からロイドは一通の手紙を抜き取り、執務机に座り書類にペンを走らせているルイスに差し出した。手紙を受け取り差出人を見るなり、苦笑いを浮かべたルイスはどことなく嬉しそうだ。
「また懐かしい名前だな。思い出したように手紙を送ってくる。しかも此方の予定も聞かずに勝手に予定を立てる図々しさは治っていないらしい」
そしてペーパーナイフで手紙の封を切り、一枚しか入っていない手紙を読む目元は穏やかだ。
「ロイド、明後日の予定は変更だ」
「どちらかに行かれるのですか?」
「郊外で遠駆けに出る」
「かしこまりました。護衛の衛兵は騎士団長へ私の方から連絡しておきます」
「それと…」
ちらりとルイスが私を振り返った。
何かしら。あの顔は嫌な予感しかしないわ。でもこの前もお茶で失敗しちゃったし、見習いの私が何か仕事を任されたりしないわよね?
別にルイスが郊外で手紙の主と馬で駆けようといくらでも構わない。わたしは全く止めなんてしないし、ご友人と気が済むまで馬駆けを楽しめばいい。
なのにーー
「ルイス様、どうして、わざわざ此方に近づいて来られるのですの?そこで話されてもお話しは全然聞こえますのに……」
しかも、後ずさる私をどんどん壁際に追い詰めて、逃げられないように顔の横に両腕をつかれてしまった。こちらを見下ろしてくるルイスは満面の笑みで、思わずそのキラキラに目をそらしてしまう。
「リリーは馬に乗るのが得意だって手紙に書いていたよね?」
「ずっと前に、そんなことを書いたこともありましたわね……」
たしかルイスの手紙に刺繍はどうとかドレスはどうとか書かれていたから、全く関係ない馬のことについて適当に書いて送った気がする。たぶんそれで刺繍について返事をしていたら次は高価そうな刺繍糸が送られてきて、その刺繍糸で何か作って送り返さないといけなくなる未来が子供心にも想像できてしまい、そんな未来を馬で回避しようとしたのだ。
「リリーも一緒に馬駆けしよう」
「いえ、私はここに残っておりますわ。私のことはお気になさらず、せっかく久しぶりに会われるご友人の方と」
心いくまで馬に乗って楽しまれてくださいませ、と言おうとして途中で壁についていたルイスの両腕が背中に回され抱きしめられてしまった。
はわっ!?また抱きしめてきたわ!?もう十分壁に私を追い詰めているでしょう!?どうして抱きしめる必要があるのよ!?でもやっぱりルイスの腕は逞しくていい香りなのがくやしいぃ!!
自然と抱きしめられた腕の中でルイスを見上げる形になり、あと少し屈めば唇が触れてしまいそうな至近距離でルイスは微笑む。そして耳に息を吹きかけるようにして
「一緒に行くよね?」
「……是非、ご一緒させてくださいませ」
ルイスの低い美声が耳から全身へと駆け巡り、身体が震え、抵抗しようとした力が抜けてしまう。
完全に蛇に睨まれたカエル状態で断るなんてできなかった。
「なんでしょうか?」
「たまに俺から顔を思いっきりそらすよね?あれは何故?」
問われて、ぎくりと心臓が跳ねて、運んでいた手紙の束を落としてしまった。もちろん常にルイスの側で補佐をしているロイドの目は険しい。
どうしてそんなこといきなり言うのよ!?手紙を落としてしまったじゃない!もうちょっと時と場所を考えて質問しなさいよ!
上質な紙の封筒に、綺麗な字で書かれた招待状。封は開けられていないけが、どれも貴族たちが自分の主催するパーティーへ出席して欲しいという招待状だろう。
差出人を確認しするのはロイド。その中で直接ルイスが目を通したほうがいいと思われる手紙は封をあけずにそのままルイスへ。その他はロイドが封を開け中身を確認し、パーティーへの招待とその他と手紙を分別してルイスへ渡される。
毎日大量の手紙が届けられるため、ルイス1人で目を通していては丸1日かかってしまう為らしい。国に関わるようなことはルイスの父である国王や大臣を経由して話が来るので、ルイスに直接くることは個人間の私用と考えていいのだという。
「それは、その……、ルイス様の気のせいではないでしょうか?」
実はルイスの笑顔が眩し過ぎて直視できないなんて、絶対言えないわ。言ったらルイスに「なにこの頭悪い子」って呆れられちゃうもの。それに最近ルイスってば、やたらと私に近づいてくるのよね。変に意味もなく手を握ってきたり、花と間違えてキスしてきたり、私をからかって遊んでいるのかしら?
ただでさえルイスは美形中の美形なのに、それが笑顔になると光り輝くようなキラキラが攻めてきて眩しさで目が眩んでしまう。だからあんまり必要以上にこちらを見ないでほしい。
よくロイドはあのルイスの笑顔を向けられて平然としていられるものだと思う。ルイスに仕えるようになって長いというし、その年月による経験でキラキラ耐久度が鍛えられたのだろうか。不思議でならない。
「気のせいねぇ?別に俺の気のせいだというなら、それでいいんだけれど」
じっと私を見てくるルイスの眼差しは、言葉とは反対に疑いまくっている。
落としてしまった手紙を手早く拾い集めてロイドのところへ持っていく。するとその大量の手紙の中からロイドは一通の手紙を抜き取り、執務机に座り書類にペンを走らせているルイスに差し出した。手紙を受け取り差出人を見るなり、苦笑いを浮かべたルイスはどことなく嬉しそうだ。
「また懐かしい名前だな。思い出したように手紙を送ってくる。しかも此方の予定も聞かずに勝手に予定を立てる図々しさは治っていないらしい」
そしてペーパーナイフで手紙の封を切り、一枚しか入っていない手紙を読む目元は穏やかだ。
「ロイド、明後日の予定は変更だ」
「どちらかに行かれるのですか?」
「郊外で遠駆けに出る」
「かしこまりました。護衛の衛兵は騎士団長へ私の方から連絡しておきます」
「それと…」
ちらりとルイスが私を振り返った。
何かしら。あの顔は嫌な予感しかしないわ。でもこの前もお茶で失敗しちゃったし、見習いの私が何か仕事を任されたりしないわよね?
別にルイスが郊外で手紙の主と馬で駆けようといくらでも構わない。わたしは全く止めなんてしないし、ご友人と気が済むまで馬駆けを楽しめばいい。
なのにーー
「ルイス様、どうして、わざわざ此方に近づいて来られるのですの?そこで話されてもお話しは全然聞こえますのに……」
しかも、後ずさる私をどんどん壁際に追い詰めて、逃げられないように顔の横に両腕をつかれてしまった。こちらを見下ろしてくるルイスは満面の笑みで、思わずそのキラキラに目をそらしてしまう。
「リリーは馬に乗るのが得意だって手紙に書いていたよね?」
「ずっと前に、そんなことを書いたこともありましたわね……」
たしかルイスの手紙に刺繍はどうとかドレスはどうとか書かれていたから、全く関係ない馬のことについて適当に書いて送った気がする。たぶんそれで刺繍について返事をしていたら次は高価そうな刺繍糸が送られてきて、その刺繍糸で何か作って送り返さないといけなくなる未来が子供心にも想像できてしまい、そんな未来を馬で回避しようとしたのだ。
「リリーも一緒に馬駆けしよう」
「いえ、私はここに残っておりますわ。私のことはお気になさらず、せっかく久しぶりに会われるご友人の方と」
心いくまで馬に乗って楽しまれてくださいませ、と言おうとして途中で壁についていたルイスの両腕が背中に回され抱きしめられてしまった。
はわっ!?また抱きしめてきたわ!?もう十分壁に私を追い詰めているでしょう!?どうして抱きしめる必要があるのよ!?でもやっぱりルイスの腕は逞しくていい香りなのがくやしいぃ!!
自然と抱きしめられた腕の中でルイスを見上げる形になり、あと少し屈めば唇が触れてしまいそうな至近距離でルイスは微笑む。そして耳に息を吹きかけるようにして
「一緒に行くよね?」
「……是非、ご一緒させてくださいませ」
ルイスの低い美声が耳から全身へと駆け巡り、身体が震え、抵抗しようとした力が抜けてしまう。
完全に蛇に睨まれたカエル状態で断るなんてできなかった。
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