婚約破棄の条件は王子付きの騎士で側から離してもらえません

ミチル

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これが王宮いじめですか!?

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「その花はどこから?」
「庭師の方からルイス様のお部屋に飾ってほしいと、庭で咲いていた花を分けてくださったのです」
「それはまた随分と沢山貰ったのだね」
「2つくらいに分けないと、花瓶ひとつでは無理でしょうね」

王宮の庭師が丹精込めて世話をして咲いた見事な花々を、リリーは嬉しそうに、けれどどこに飾ろうかと迷って大きなエメラルドの瞳が部屋をきょろきょろ見渡していた。

(花はもちろん美しいが、その花に埋もれるようにしているリリーは花よりも可愛らしい)

いつ手折ろうか迷ってしまうよ。

「待ちなさい、リリー」
「何でしょう?」
「髪に葉っぱが付いている」
「えっ!?すいません!」

座っていたソファから立ち上がり、花を落さないように気をつけながら、片手で髪を触るリリーの元へルイスは歩みよった。
そして、そっと手をリリーの頭に伸ばし、あたかも葉っぱを取ったような芝居をする。はじめからリリーの髪に葉っぱなどついていない。

「取れたよ」
「ありがとうございます……」

 恥ずかしそうに顔を赤らめて花の中に埋もれるようにリリーは顔を俯かせた。けれど自分で葉っぱを取ろうとしていたリリーの手を取った。
 どうやら先日のお茶を零してしまった手はヤケドにならず済んだようだ。
 雪のようになめらかで傷1つない白く細い指。

「ルイス様…あの…手を…はやく花を花瓶に活けないと萎れてしまいます……」

目尻を下げて困ったような顔になったリリーの手を引き寄せ、その頬に触れるくらいの口付けを落とした。

「ひゃっ!なにをされるのです!?」
「美しい花があればキスしたくなってもおかしくないだろう?」
「でも、花はこちらですわ」

 間違えてますよ?と本気で思っているらしいリリーは、抱えた花を此方に差し出してきた。リリーを花に例えたこてが伝わらなかったらしい。
 それには部屋でこの会話を聞いていたロイドも思わず吹いてしまったようで、すぐに小さく咳払いして花を飾るスペースを窓際に作り始める。
  リリーと過ごす時間はだから楽しくてたまらない。

(キミは本当に純粋で穢れなく育ったのだね)

芝居や駆け引きに長けた王都の令嬢たちとは全く違う純白の花だ。

「せっかくだから一本貰おうか」

リリーが持っている花の中から適当な大きさの花を、程よい長さで手折った。手折った花をリリーの耳と髪の間にかけてやる。真っ白な花が誇らしげにリリーの顔の隣で咲き誇る。

「これでリリーも花だ」

 すると、何かを思案したらしいリリーが、持っている花束から自らも1つ手折り、その花を背伸びしてそっと自分の耳にかけてきた。
やられるばかりではないとばかりに少し勝ち誇ったように微笑んだリリーが、

「これでルイス様も同じですわね」
「確かに。では花になった俺に、リリーからキスはくれないのか?」
「え!?それは、その……」

  そこまでは考えていなかったらしい。
わたわたと動揺して、結局反論できず「花を活けますわ!」と言ってロイドの方へ逃げられてしまった。



 今はまだ逃がしてあげるよ、リリー

でもいずれは腕の中に捕らえて逃がしてやらないよ
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