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婚約破棄してもらいに行ってきます!
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騎士見習いとして王宮仕えの準備ができるまで王都の屋敷で連絡を待つように伝え、リリーが帰った後、再びロイドを呼んでルイスは今後の予定について話した。
しかし半分以上はやる気がほとんどない事務的な命令だった。ソファの背もたれに脱力し、腕で目を覆った。
(リリーの口から婚約破棄を言われたのがこんなに堪えるなど、俺もまだまだというわけか)
記憶の中の少女は母親を失ったばかりで、不安そうな瞳で侯爵である父親の手を握っていた。夜の闇より深い黒髪に大きなエメラルドの瞳。父親と手を握る反対の手は、ヌイグルミを抱え、促されるままに小さく挨拶をする。
国王であった父から婚約についての話を聞かされたときは耳を疑ったものだ。身分や貴族の格としては問題なかったが、当時22歳だった自分より14歳も年下の、8歳の婚約者候補。
しかしーー
(一目見て俺と同じだと思った。将来が決められ、周りから言われるがままに動いて笑う、綺麗なだけの人形だ。だが、キミは俺と同じ人形ではなかった)
少し2人で話をしておいでと促され、手を引いて連れ出したのは侯爵邸の庭園だった。少女であれば花冠でも作ってやれば喜ぶかと安易に考えての選択だったが、リリーは小さな花を3つほど摘むだけでもう要らないと首を横に振った。
『お母様のお墓に供えるだけだから。お花も一生懸命生きてお花を咲かせたの。だからこれだけでいいわ』
父である国王も婚約するかどうかの最終的な判断は、一度会ってみてから自分に任せると言った。さすがに14歳差であるのは父も考慮したらしい。すでに侯爵に話をしてしまっている以上、一回くらいは会って面目を立てておく必要がある。だから形式だけでも一度会って、それで婚約の話を断ろうと考えていた。
(だがあの言葉を聞いて、俺はキミと婚約することを決めた。まだ幼かったが、リリー、キミはただ隣で微笑んでいるだけの人形じゃなかった)
「ルイス様、本当に婚約を破棄されるおつもりですか?」
「ない」
一通りの話を聞いたロイドからの問いかけに、目を覆ったまま即答した。
ずっと待っていたのに今更婚約破棄をするつもりは毛頭ない。それにリリー以外と結婚するつもりはなかった。自分の見かけと身分だけに近寄ってくる令嬢たちは、社交パーティーだけで十分だ。
「であれば、何ゆえにあのようなお戯れを?ご自身の王妃となられる方に騎士見習いをさせるなど正気の沙汰とは思えません」
「彼女が言うには、俺はリリーのことが嫌いなのだそうだ」
「どういう意味ですか?」
「これまで俺が送ってきた手紙も、贈り物も、彼女にとっては全て嫌味でしかなかったらしい。それで白々しい演技までして婚約破棄を申し出てきた」
「まさか!?あれらは全て王子が自ら街に出られてリリー様のためにと探されたものではありませんか!嫌味などと!」
珍しく声を荒げるロイドに、覆っていた手を退けて、ルイスは自らを嘲笑した。
「人の心というものは、ままならないものだ」
しかし半分以上はやる気がほとんどない事務的な命令だった。ソファの背もたれに脱力し、腕で目を覆った。
(リリーの口から婚約破棄を言われたのがこんなに堪えるなど、俺もまだまだというわけか)
記憶の中の少女は母親を失ったばかりで、不安そうな瞳で侯爵である父親の手を握っていた。夜の闇より深い黒髪に大きなエメラルドの瞳。父親と手を握る反対の手は、ヌイグルミを抱え、促されるままに小さく挨拶をする。
国王であった父から婚約についての話を聞かされたときは耳を疑ったものだ。身分や貴族の格としては問題なかったが、当時22歳だった自分より14歳も年下の、8歳の婚約者候補。
しかしーー
(一目見て俺と同じだと思った。将来が決められ、周りから言われるがままに動いて笑う、綺麗なだけの人形だ。だが、キミは俺と同じ人形ではなかった)
少し2人で話をしておいでと促され、手を引いて連れ出したのは侯爵邸の庭園だった。少女であれば花冠でも作ってやれば喜ぶかと安易に考えての選択だったが、リリーは小さな花を3つほど摘むだけでもう要らないと首を横に振った。
『お母様のお墓に供えるだけだから。お花も一生懸命生きてお花を咲かせたの。だからこれだけでいいわ』
父である国王も婚約するかどうかの最終的な判断は、一度会ってみてから自分に任せると言った。さすがに14歳差であるのは父も考慮したらしい。すでに侯爵に話をしてしまっている以上、一回くらいは会って面目を立てておく必要がある。だから形式だけでも一度会って、それで婚約の話を断ろうと考えていた。
(だがあの言葉を聞いて、俺はキミと婚約することを決めた。まだ幼かったが、リリー、キミはただ隣で微笑んでいるだけの人形じゃなかった)
「ルイス様、本当に婚約を破棄されるおつもりですか?」
「ない」
一通りの話を聞いたロイドからの問いかけに、目を覆ったまま即答した。
ずっと待っていたのに今更婚約破棄をするつもりは毛頭ない。それにリリー以外と結婚するつもりはなかった。自分の見かけと身分だけに近寄ってくる令嬢たちは、社交パーティーだけで十分だ。
「であれば、何ゆえにあのようなお戯れを?ご自身の王妃となられる方に騎士見習いをさせるなど正気の沙汰とは思えません」
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「どういう意味ですか?」
「これまで俺が送ってきた手紙も、贈り物も、彼女にとっては全て嫌味でしかなかったらしい。それで白々しい演技までして婚約破棄を申し出てきた」
「まさか!?あれらは全て王子が自ら街に出られてリリー様のためにと探されたものではありませんか!嫌味などと!」
珍しく声を荒げるロイドに、覆っていた手を退けて、ルイスは自らを嘲笑した。
「人の心というものは、ままならないものだ」
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