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婚約破棄してもらいに行ってきます!
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我ながら一世一代の名演技だったろう。
(さあ!婚約破棄を了承するって言うのよ!)
「リリーの気持ちはわかった」
「では!」
「キミとの婚約は白紙に戻すよう父にも話そう。ただし条件がある」
「え?条件ですか?」
ばっと俯いていた顔を歓喜で見上げれば、この部屋に来てからのルイスの冷たい眼差しも消えて、何事か思案していた。
(あら、ルイスってば考え込んでる姿もこれだけ顔がいいと様になるわね。もしも私たちの間に婚約者という関係がなくて、私もたまに王都へやって来たついでに眼福程度に遠くから眺められていたら、丁度良かったのかもしれないわ)
これだけの特上美形が憂えている光景を見られるなんて、そうそう見れる機会はない。自分が婚約破棄を迫っている状況を忘れて、ちょっぴり得した気分になる。
「キミの要望が俺と婚約破棄したいというのは分かった。では、俺の要望も聞いてくれるのがフェアじゃないだろうか」
「ルイス様のご要望ですか?」
「もし俺の要望をリリーが聞いてくれるなら婚約破棄してもいい」
「その要望というのは一体……?」
想定外の展開に、冷や汗が背中を流れる。用意周到に準備をしていただけに、想定外のことが起こってしまうとどう対処すればいいのか分からなくなってしまう。
(でも婚約破棄のための要望なら、聞かないわけにはいかないし……。何を言い出すつもりなのかしら……)
「俺の騎士になることだ。しかしまずは見習いからだな。いきなり他の騎士たちと同じように働けるようになるのは無理だろう。剣術もだがとくに礼儀作法、さっきのロイドくらいには出来るようになってもらわないと。そして晴れて見習いから正式な騎士になれたら、リリーの要望通り婚約破棄しよう」
「お、女の私がルイス様の騎士に、ですか?」
女が騎士になるなんて聞いたこともない。確かに田舎の屋敷で剣を振り回してはいたが、それらは父を尋ねてきてしばらく滞在していた古い友人が、王都で騎士たちに剣術指南をしていたということでついでに自分達にも教えてくれただけけで、言わば騎士ごっこの延長程度のものだ。
(この人、突然何を言い出すの!?女に自分の騎士になれって、第一王子だからって周りに担がれすぎて頭お花畑なんじゃないの!?)
顔がこれだけ良すぎて、周りの者たちに甘やかされ過ぎて育ったんじゃないかと疑ってしまう。第一王子付きの騎士なんて、なれるものならなりたい貴族子弟はこの王都に腐るほどいるだろう。わざわざ女を騎士にするほど人手不足ではない筈だ。
けれど、にっこり微笑んでルイスはまたあの眩しい後光を放つ。
(やめてちょうだい!そのキラキラはまぶし過ぎて私は直視できないのよ!)
「ダンスは踊れなくても、馬は駆けれるんだろう?ちょっと男装すれば女とはバレないさ」
やられた!!
まんまと自分が言った言葉の揚げ足を取られてしまった。しかも田舎娘であろうと侯爵令嬢の私に男の服装してまで騎士になれと言っているのだ。
(こんなの在りえないわ!でもどうせ私には出来っこないって分かってて、こんな嫌がらせみたいな無理難題を吹っかけているのね。だったら受けて立とうじゃないの!)
「わ、わかりましたわ。ルイス様のそのご要望お受けしますわ……、けれど私が正式な騎士になれた暁には……」
「婚約破棄を約束しよう」
頬が引き攣りながらも笑顔を造り見習い騎士になることを了承すると、またルイスのキラキラが増す。
(まっ、眩しいわ!!)
その眩しさに耐えられず、『うっ!』と、とうとう顔を背けてしまった。
(さあ!婚約破棄を了承するって言うのよ!)
「リリーの気持ちはわかった」
「では!」
「キミとの婚約は白紙に戻すよう父にも話そう。ただし条件がある」
「え?条件ですか?」
ばっと俯いていた顔を歓喜で見上げれば、この部屋に来てからのルイスの冷たい眼差しも消えて、何事か思案していた。
(あら、ルイスってば考え込んでる姿もこれだけ顔がいいと様になるわね。もしも私たちの間に婚約者という関係がなくて、私もたまに王都へやって来たついでに眼福程度に遠くから眺められていたら、丁度良かったのかもしれないわ)
これだけの特上美形が憂えている光景を見られるなんて、そうそう見れる機会はない。自分が婚約破棄を迫っている状況を忘れて、ちょっぴり得した気分になる。
「キミの要望が俺と婚約破棄したいというのは分かった。では、俺の要望も聞いてくれるのがフェアじゃないだろうか」
「ルイス様のご要望ですか?」
「もし俺の要望をリリーが聞いてくれるなら婚約破棄してもいい」
「その要望というのは一体……?」
想定外の展開に、冷や汗が背中を流れる。用意周到に準備をしていただけに、想定外のことが起こってしまうとどう対処すればいいのか分からなくなってしまう。
(でも婚約破棄のための要望なら、聞かないわけにはいかないし……。何を言い出すつもりなのかしら……)
「俺の騎士になることだ。しかしまずは見習いからだな。いきなり他の騎士たちと同じように働けるようになるのは無理だろう。剣術もだがとくに礼儀作法、さっきのロイドくらいには出来るようになってもらわないと。そして晴れて見習いから正式な騎士になれたら、リリーの要望通り婚約破棄しよう」
「お、女の私がルイス様の騎士に、ですか?」
女が騎士になるなんて聞いたこともない。確かに田舎の屋敷で剣を振り回してはいたが、それらは父を尋ねてきてしばらく滞在していた古い友人が、王都で騎士たちに剣術指南をしていたということでついでに自分達にも教えてくれただけけで、言わば騎士ごっこの延長程度のものだ。
(この人、突然何を言い出すの!?女に自分の騎士になれって、第一王子だからって周りに担がれすぎて頭お花畑なんじゃないの!?)
顔がこれだけ良すぎて、周りの者たちに甘やかされ過ぎて育ったんじゃないかと疑ってしまう。第一王子付きの騎士なんて、なれるものならなりたい貴族子弟はこの王都に腐るほどいるだろう。わざわざ女を騎士にするほど人手不足ではない筈だ。
けれど、にっこり微笑んでルイスはまたあの眩しい後光を放つ。
(やめてちょうだい!そのキラキラはまぶし過ぎて私は直視できないのよ!)
「ダンスは踊れなくても、馬は駆けれるんだろう?ちょっと男装すれば女とはバレないさ」
やられた!!
まんまと自分が言った言葉の揚げ足を取られてしまった。しかも田舎娘であろうと侯爵令嬢の私に男の服装してまで騎士になれと言っているのだ。
(こんなの在りえないわ!でもどうせ私には出来っこないって分かってて、こんな嫌がらせみたいな無理難題を吹っかけているのね。だったら受けて立とうじゃないの!)
「わ、わかりましたわ。ルイス様のそのご要望お受けしますわ……、けれど私が正式な騎士になれた暁には……」
「婚約破棄を約束しよう」
頬が引き攣りながらも笑顔を造り見習い騎士になることを了承すると、またルイスのキラキラが増す。
(まっ、眩しいわ!!)
その眩しさに耐えられず、『うっ!』と、とうとう顔を背けてしまった。
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