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プロローグ
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大好きだったお父様は最愛のお母様を病で失った時、それはそれは悲しんだ。
そしてそんなお父様は残された当時8歳だった1人娘の私(リリー・イングバートン)に婚約者を決めた。
もし自分が死んでも、溺愛する娘が生きていくのに困らないように。
お父様は国でも侯爵の爵位を持ち、大臣を務めたほどの実力者で、国王とも昔から交流があり親友と言える仲だった。
そんな嘆き悲しむお父様を見て、国王陛下は一人娘の私に婚約相手を紹介した。
クマのヌイグルミを抱え、お父様に手を引かれる私の前に現れたのは
金髪碧眼の第一王子、ルイス・ウィンチェスター
当時22歳
つまり、わたしより倍の歳の相手を婚約者と決めたわけである。
わたしが結婚できるようになる18になった頃には、相手は32歳だ。
お母様を亡くしたばかりで傷心した幼心にも思った。
いやー
いくら何でもありえないでしょ
そうして8年後。
私は16、ルイスは30歳。
見習い騎士から正式な騎士になれば婚約破棄してくれるというルイスの言葉を信じて、今日も私は見習い騎士の格好をして花咲く庭の木の陰でルイスに追い詰められている。
「あ、あのルイス様……そろそろ行かないと、ロイドがお茶を淹れて待っておりますし、…あ、ひぁん……、今日の、お菓子は……んっ……、ルイス様のお好きな、紅茶の、…ッん、クッキー……」
「あのクッキーは上品な甘さでお茶にも良く合うな。しかし、クッキーよりもリリーの方が甘くて美味しいよ」
「そんな、お戯れを…ん、……、ですので……、手を……」
木の幹を背に、両手の指と指の間にルイスの指が絡み、強弱をつけて柔々と握ったり、頬にキスを落としてきたりして囚われている。
(もう本当に行かないと、ロイドが探しに来ちゃうわ……。庭を散策しているルイス様を探してきてって頼まれたのに、私まで戻ってこないなんて……)
けれど、ルイスが離してくれる気配はない。握っていた手をやっと離してくれたと思ったら、背中に腕を回し、ぎゅっと抱きしめられてしまった。密着する身体に思わずルイスの胸に手をつきそのたくましい身体に縋ってしまう。
「る、ルイス様……指、が……」
敏感な首筋をルイスの中指が触れるか触れないかの微妙なタッチでなぞり上げ、くすぐったさとぞわぞわした何かが全身に広がっていく。
ルイスに触れられたところから生まれる気持ちよさと恥ずかしさが混ざり合った狭間で、目尻に滲む涙も落ちる限界だった。
それをルイスはうっとりとした眼差しで微笑み、私を見つめている。
(どうしてルイスはこんな意地悪をするの?私はお茶に呼びに来ただけなのに……すぐに、こうして私をからかって……)
「リリー、キミは本当に可愛いな。俺の腕の中でこんなに震えて、脅えて、でも逃げることもできない。小さな小鳥のようだ」
「お願いです……もう、お許しください……」
「そうだな。名残惜しいが、そろそろ行かないとロイドが本当に怒ってしまうか。でもその代わり、今夜は俺の部屋にくるんだ。いいね?」
言われてリリーの身体がびくっとする。
痛いことや酷いことはしないし、私を壊れ物のようにルイスは優しく扱ってくれるわ。
でも、結婚もしていないのに。
(ルイスの部屋に行ったらまた………)
きっとまたされるのだろう行為を思い出して、リリーは泣きそうになってしまった顔をルイスの胸に埋めて隠した。
そしてそんなお父様は残された当時8歳だった1人娘の私(リリー・イングバートン)に婚約者を決めた。
もし自分が死んでも、溺愛する娘が生きていくのに困らないように。
お父様は国でも侯爵の爵位を持ち、大臣を務めたほどの実力者で、国王とも昔から交流があり親友と言える仲だった。
そんな嘆き悲しむお父様を見て、国王陛下は一人娘の私に婚約相手を紹介した。
クマのヌイグルミを抱え、お父様に手を引かれる私の前に現れたのは
金髪碧眼の第一王子、ルイス・ウィンチェスター
当時22歳
つまり、わたしより倍の歳の相手を婚約者と決めたわけである。
わたしが結婚できるようになる18になった頃には、相手は32歳だ。
お母様を亡くしたばかりで傷心した幼心にも思った。
いやー
いくら何でもありえないでしょ
そうして8年後。
私は16、ルイスは30歳。
見習い騎士から正式な騎士になれば婚約破棄してくれるというルイスの言葉を信じて、今日も私は見習い騎士の格好をして花咲く庭の木の陰でルイスに追い詰められている。
「あ、あのルイス様……そろそろ行かないと、ロイドがお茶を淹れて待っておりますし、…あ、ひぁん……、今日の、お菓子は……んっ……、ルイス様のお好きな、紅茶の、…ッん、クッキー……」
「あのクッキーは上品な甘さでお茶にも良く合うな。しかし、クッキーよりもリリーの方が甘くて美味しいよ」
「そんな、お戯れを…ん、……、ですので……、手を……」
木の幹を背に、両手の指と指の間にルイスの指が絡み、強弱をつけて柔々と握ったり、頬にキスを落としてきたりして囚われている。
(もう本当に行かないと、ロイドが探しに来ちゃうわ……。庭を散策しているルイス様を探してきてって頼まれたのに、私まで戻ってこないなんて……)
けれど、ルイスが離してくれる気配はない。握っていた手をやっと離してくれたと思ったら、背中に腕を回し、ぎゅっと抱きしめられてしまった。密着する身体に思わずルイスの胸に手をつきそのたくましい身体に縋ってしまう。
「る、ルイス様……指、が……」
敏感な首筋をルイスの中指が触れるか触れないかの微妙なタッチでなぞり上げ、くすぐったさとぞわぞわした何かが全身に広がっていく。
ルイスに触れられたところから生まれる気持ちよさと恥ずかしさが混ざり合った狭間で、目尻に滲む涙も落ちる限界だった。
それをルイスはうっとりとした眼差しで微笑み、私を見つめている。
(どうしてルイスはこんな意地悪をするの?私はお茶に呼びに来ただけなのに……すぐに、こうして私をからかって……)
「リリー、キミは本当に可愛いな。俺の腕の中でこんなに震えて、脅えて、でも逃げることもできない。小さな小鳥のようだ」
「お願いです……もう、お許しください……」
「そうだな。名残惜しいが、そろそろ行かないとロイドが本当に怒ってしまうか。でもその代わり、今夜は俺の部屋にくるんだ。いいね?」
言われてリリーの身体がびくっとする。
痛いことや酷いことはしないし、私を壊れ物のようにルイスは優しく扱ってくれるわ。
でも、結婚もしていないのに。
(ルイスの部屋に行ったらまた………)
きっとまたされるのだろう行為を思い出して、リリーは泣きそうになってしまった顔をルイスの胸に埋めて隠した。
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