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1 ベッドに誰かが忍び込んでいるんですけど!?
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第一王子ルイスとの婚約破棄に晴れて失敗ーーー誤解が解けてから、王妃エマの計らいでリリーはしばらく王宮に滞在することになった。
もちろんルイス付きの見習い騎士:リリー・ノヴァレスとしてではなく、侯爵令嬢リリー・イングバートンとしてだ。
王宮の召使いやメイドたちもリリーをルイスの婚約者として、丁重な対応でもてなす。
中にはリリーの顔を見て、見習い騎士をしていたリリー・ノヴァレスではないか?と勘付く者がいたが、疑問に思ってもそこは黙って口を閉ざした。
第一王子の婚約者が見習い騎士をしていたという噂を立てるなど、未来の王妃に失礼があってはならないのだから。
今回は特別に外国からの大使や重要な人物が泊まるときに使う部屋に、リリーは泊まらせてもらえることになり、カデール領に帰るまでのんびり過ごすことにした。
(はぁ~あ、せっかく婚約破棄寸前までいけたのに、結局破棄は流れちゃったわ。なんて勿体無いことをしちゃったのかしら。甘いんだから、私も)
ルイスがちゃんと王と王妃に婚約破棄を伝えられたら、婚約破棄をしない。逆に嘘などとついて婚約破棄をごまかそうとしたら、婚約破棄をする。
天の邪鬼な賭けをして、結果ルイスは正直に王と王妃に『婚約破棄』を報告してまい、結果はリリーが負けて『婚約破棄』の話は流れてしまった。
惜しいところまで行ったのに、ついルイスに情け心を出してしまった自分が恨めしい。
(でも婚約破棄が全くなしになったわけじゃないわ。単に降り出しに戻っただけよ)
夜、王宮に用意された部屋のベッドでリリーが横になって寝入っていると、リリーはふと意識が浮上してくる。
喉が乾いたわけでも、目が覚めたわけでもない。眠いのは変わらないし、瞼も重くて開けたくない。
ただ、気持ちいいのだ。
「ん…」
(なにかしら……何かふわふわしてて気持ちいい……)
脱力した身体を優しくマッサージされているかのような心地よさ。だから意識が目覚めかけようとしているのに、気持ち良くて起きれない。
この気持ち良さにずっと身を委ねていたい。
「あ……、ぁん……」
(勝手に声がでちゃうわ……)
気持ちいいことは変わりない。けれど、無意識に声が漏れてしまい、リリーはなんだろうと重い瞼を開いた。
天蓋付きのベッド内は天蓋布が全て閉ざされ真っ暗闇だ。しかし布団を被っている自分の上で、もそりと何かが動いたような気配がした。
「リリー……」
「え、あっ!誰っ!?」
暗くて見えないけれど、誰かが自分のベッドに入り込んでいる。そして自分に触れている。それを認識したとたん、リリーはそれまでの気持ちよさなど吹き飛んで、恐怖でさっと顔を青ざめた。
(誰か助けを呼ばなくちゃ!ここは王宮よ!?どうして私のベッドに狼藉者が忍び込んでいるの!?)
昼夜問わず警護しているだろう衛兵はどうしたのか。恐怖で体がガクガク震える。とにかく悲鳴を上げ逃げ出そうとしたリリーの口を大きな手のひらが覆った。
「しー、俺だよ。ルイスだ」
大声をあげられないようにリリーの口を塞いだ相手が、声を出さないようにと言ってくる。リリーが知る限り、ルイスという名前と男は一人しか知らない。そして見知った声に、それが本物だと悟る。
今、こうしてベッドの中で、リリーの上に覆いかぶさっているのは、婚約破棄しそこなったばかりの第一王子のルイスだ。
リリーが騒ごうとしたのをやめる気配を感じたのか、口を塞いでいた手をそっと離してくれる。
「ルイス!?何をしているの!?こんな時間に!」
まだリリーの心臓は驚きでばくばく鳴っている。
天蓋布が下ろされたベッドの中では、ルイスの表情はほとんど見えない。しかし、リリーの頬にそっと手を添えて撫でる仕草から、なんとなくルイスが微笑んでいる気がした。
「何って夜這いに来ただけさ」
「そう、夜這いね、夜這……ええっ!夜這い!?」
思わずリリーは聞き返してしまっていた。
(聞き間違えじゃないわよね!?第一王子のくせに夜這いに来たって言ったわよ!?)
もちろんルイス付きの見習い騎士:リリー・ノヴァレスとしてではなく、侯爵令嬢リリー・イングバートンとしてだ。
王宮の召使いやメイドたちもリリーをルイスの婚約者として、丁重な対応でもてなす。
中にはリリーの顔を見て、見習い騎士をしていたリリー・ノヴァレスではないか?と勘付く者がいたが、疑問に思ってもそこは黙って口を閉ざした。
第一王子の婚約者が見習い騎士をしていたという噂を立てるなど、未来の王妃に失礼があってはならないのだから。
今回は特別に外国からの大使や重要な人物が泊まるときに使う部屋に、リリーは泊まらせてもらえることになり、カデール領に帰るまでのんびり過ごすことにした。
(はぁ~あ、せっかく婚約破棄寸前までいけたのに、結局破棄は流れちゃったわ。なんて勿体無いことをしちゃったのかしら。甘いんだから、私も)
ルイスがちゃんと王と王妃に婚約破棄を伝えられたら、婚約破棄をしない。逆に嘘などとついて婚約破棄をごまかそうとしたら、婚約破棄をする。
天の邪鬼な賭けをして、結果ルイスは正直に王と王妃に『婚約破棄』を報告してまい、結果はリリーが負けて『婚約破棄』の話は流れてしまった。
惜しいところまで行ったのに、ついルイスに情け心を出してしまった自分が恨めしい。
(でも婚約破棄が全くなしになったわけじゃないわ。単に降り出しに戻っただけよ)
夜、王宮に用意された部屋のベッドでリリーが横になって寝入っていると、リリーはふと意識が浮上してくる。
喉が乾いたわけでも、目が覚めたわけでもない。眠いのは変わらないし、瞼も重くて開けたくない。
ただ、気持ちいいのだ。
「ん…」
(なにかしら……何かふわふわしてて気持ちいい……)
脱力した身体を優しくマッサージされているかのような心地よさ。だから意識が目覚めかけようとしているのに、気持ち良くて起きれない。
この気持ち良さにずっと身を委ねていたい。
「あ……、ぁん……」
(勝手に声がでちゃうわ……)
気持ちいいことは変わりない。けれど、無意識に声が漏れてしまい、リリーはなんだろうと重い瞼を開いた。
天蓋付きのベッド内は天蓋布が全て閉ざされ真っ暗闇だ。しかし布団を被っている自分の上で、もそりと何かが動いたような気配がした。
「リリー……」
「え、あっ!誰っ!?」
暗くて見えないけれど、誰かが自分のベッドに入り込んでいる。そして自分に触れている。それを認識したとたん、リリーはそれまでの気持ちよさなど吹き飛んで、恐怖でさっと顔を青ざめた。
(誰か助けを呼ばなくちゃ!ここは王宮よ!?どうして私のベッドに狼藉者が忍び込んでいるの!?)
昼夜問わず警護しているだろう衛兵はどうしたのか。恐怖で体がガクガク震える。とにかく悲鳴を上げ逃げ出そうとしたリリーの口を大きな手のひらが覆った。
「しー、俺だよ。ルイスだ」
大声をあげられないようにリリーの口を塞いだ相手が、声を出さないようにと言ってくる。リリーが知る限り、ルイスという名前と男は一人しか知らない。そして見知った声に、それが本物だと悟る。
今、こうしてベッドの中で、リリーの上に覆いかぶさっているのは、婚約破棄しそこなったばかりの第一王子のルイスだ。
リリーが騒ごうとしたのをやめる気配を感じたのか、口を塞いでいた手をそっと離してくれる。
「ルイス!?何をしているの!?こんな時間に!」
まだリリーの心臓は驚きでばくばく鳴っている。
天蓋布が下ろされたベッドの中では、ルイスの表情はほとんど見えない。しかし、リリーの頬にそっと手を添えて撫でる仕草から、なんとなくルイスが微笑んでいる気がした。
「何って夜這いに来ただけさ」
「そう、夜這いね、夜這……ええっ!夜這い!?」
思わずリリーは聞き返してしまっていた。
(聞き間違えじゃないわよね!?第一王子のくせに夜這いに来たって言ったわよ!?)
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