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第一章 いつもの六人
いつもの六人
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今年も花粉症の季節がやってきた。スギだか稲だか何かは分からないが、春と夏の始まり頃にくしゃみが止まらなくなる。薬を飲めば何とも無いが、想定よりも早く花粉が到来してしまい、薬もマスクもなしで出かけてしまった。
いつもなら保健室にマスクと鼻炎薬をもらいに行くところだが、あいにく今日は日曜日。俺はテニス部の練習のために学校にきていた。つまり、保健室は空いていない。
(あいつ、今日来とるかなぁ……)
テニス部の練習が始まる前の時間を利用して、ある男のいるであろう体育館に足を運ぶ。
(よかった、おってくれた。しかもちょうど練習終わるところやん)
他の部活生に気を使いながら、二メートル近い大柄の男の下に駆け寄る。
「おーい、京! 花粉症の薬、持ってるやろ? 一つくれへん?」
「おお、桜か! 花粉症の薬ならいくらでもあるから、そこに置いてある俺のカバンから勝手に取れや。でも、市販薬じゃなくて医者からもらっとる薬やから、効き目強すぎて後々体だるなるけど、ええか?」
快く薬をくれた大柄な男の名は【天津 京】。身長一八八センチのバスケ部エース。スギ、ヒノキ、ブタクサ、ヨモギ等あらゆる花粉にアレルギーを持っているらしく、年がら年中花粉薬を服用している。たまに薬を飲み忘れた時はこいつに頼んで薬を分けてもらっている。
ちなみに、こいつが1番好きな女優は天海 〇希。養ってくれそうな、強い女性がタイプらしい。
「今日は去年よりも花粉がひどいし、市販薬じゃない方がありがたいわ。またジュースか何かおごる! サンキューな!」
「水ならい〇はす、お茶なら綾〇、炭酸系ならファ〇タで頼むわ」
自分の要求を提示しつつ、商品が売っていなかったときに困らないよう、いくつかの選択肢を与えてくれた。考えすぎだとは思うが、こういう気遣いが自然と出来ている京は男の俺でもかっこいいと感じてしまう。そんなどうでもいいことを考えながら、体育館に併設されている、ウォータークーラーで薬を飲み、体育館を後にする。
ふと時計を見てみると、部活の開始時間が迫っていた。俺は少し小走りに練習場所のテニスコートに向かう。
「おい! 桜どこ行くんだよ、今日の練習は最初にランニングだから、校門前に集合だろ」
そうやって俺を呼び止めた、この男の名は【松葉 守友】。髪を薄い茶色に染めており、少しチャラそうにも見えるが、友達思いで良いやつだ。
「あー、せやったな。焦って忘れてわ。助かったわ」
「一人でも遅刻したら連帯責任なんだから、気をつけろよな。どうせ、花粉の薬を京にでも貰いに行ってたんだろ? 早くいくぞ」
たまにこいつは読心術でも使えんのかってぐらい、鋭いところがあるから怖い、てかキモイ。まあ、俺が体育館から鼻水垂らしながら歩いてきた状況を見て、そう判断したんだろう。
ちなみにこいつが1番好きなアニメキャラはク〇ラ。車いすから自力で立ち上がるあの名シーンは今でも号泣するらしい。
俺と京が関西弁で、守友が標準語で話しているのは、守友が転校生だからではない。昔、市が行った大規模な政策、というかキャンペーンが関係している。
昔、俺たちが幼稚園生だったころ。明日から高校二年生だから、十年以上前。俺たちの住む大里市では、都市開発が活発に進んでいた。ショッピングモールや駅の開発、そして住宅の建設ラッシュ。市と企業が協力し、様々な取り組みが行われていた。
その中でも、目玉だった取り組みが『なろうよ大阪府民。移住しちゃおう、住みやすい街、大里市に。キャンペーン』だ。
名前の通り、大阪府以外の都道府県から移住を促すキャンペーンだ。大阪府以外から引っ越してきた場合は、引っ越し代・住宅購入費用を割引してもらえるだけではなく、市からの補助金も貰えた。
元々大里に住んでいる人からすれば、何のメリットもないので、「俺たちの税金を無駄遣いしやがって」とキャンペーンに反対する可能性もあった。しかし、その当時は住民も、大里市が栄えることに大喜びしていたし、『多様性』という言葉がトレンドになっていたので、大阪府以外からの移住を促すこのキャンペーンは注目され、大変評判が良かった。
このようなキャンペーンが行われたことで、今の大里市では関西弁を話す人間とそれ以外の地域の方言を使う人間が半々になっている。
最初に他の地域の方言を聞いたときは、幼いながら違和感を覚えた。しかし、今になっては何の違和感も感じずに、日々を過ごしている。
「おい! 何ぼーっとしてんだよ。本当に遅れちゃうぜ。ランニング倍の罰ゲームだけは、絶対に嫌だぞ」
「すまん! ちょっと考えごとしてたわ! 急ぐか!」
俺の遅刻のせいで他の友達に迷惑をかけるわけにはいかない。小走りではなく、本気のダッシュで校門へ向かった。
「今日はどっかの誰かがぼーっとしてるから、散々だったぜ……」
「ごめんって! 帰りのファ〇マで何でも奢るからさ」
「じゃあ、モンス〇―エナジーと肉まんな」
「へーい」
今日は結局二人とも遅刻してしまい、しこたま監督と先輩に怒られた。不幸中の幸いだったのは罰ゲームのランニングが連帯責任ではなく、俺たち二人だけだったことだ。先輩たちは今年で引退なので、無駄なことに時間を使っていられないらしい。ただし、連帯責任ではない代わりに、俺たち二人は部活が終わる時間までランニングの刑だった。ここまで疲れたのは久々だ。
「はい、モンス〇―エナジーと肉まん」
「からしは貰ってくれたか?」
「三個もあれば、十分やろ?」
「サンキュー! やっぱ肉まんはからしがないと始まらないのよ」
コンビニで買ったジュースと肉まんを頬張りながら、二人で歩きながら帰っていると、突然何かが背中にぶつかった。
「よお! 何で、男二人で笑い合いながら帰ってんねん! お前らやっぱりそういう関係か?」
「別に、友達と談笑しながら帰るのは、男子高校生のテンプレやろ」
「桜の言う通りだし、LGBTが浸透してる、今の時代に『そういう関係か?』っていう冗談は大変良くないと思うぞ」
「あっ……ホンマやな。次から気を付けるわ。すまん!」
別に俺も守友も本気で怒ったり、注意しているわけではない。ただこの女が見た目に反して素直すぎるので、ついついからかいたくなってしまうのだ。
肉まんを頬張っている俺と守友に思いっきりカバンをぶつけてきた、金髪のこの女は【川崎 忍】。見た目はただのヤンキーだが、これでも立派な女子テニス部のエースだ。
見た目だけで言えば、とても真剣に部活動を行っているようには見えないが、誰よりも努力し、素直な性格なので、学校でも友達は多い。
ちなみに1番好きなスポーツ選手は錦〇 圭選手で、彼がきっかけでテニスをやり始めたらしい。
「てか、高校生なんだからタバコ吸うなよ。部活動停止になんぞ」
「これはタバコじゃなくて、電子タバコや。ニコチンもタールも何も入ってないから、何の問題もないわ。先生も承諾済みやし」
「相変わらず真面目なんか、真面目じゃないのかよくわからんな……。てか、女子テニ休みやろ? こんなとこで何やってんねん」
「いやー、スロット帰りにお前ら見つけたから、脅かしたろ思ってな」
「川崎、日本には風営法って言う法律があって……」
「風営法ぐらい知ってるわ! ほんまもんのスロットやなくて、ラウン〇ワンのスロットや」
「四十過ぎたおっさんぐらいしか、休日にそんなとこいかんで」
いつも通りハチャメチャな行動に二人で呆れていると、川崎が突然思い出したかのように、声をあげる。
「あっ! そういえば明日から学校始まるやん! 六人のうち何人が同じクラスになるやろなー。楽しみやわ」
「いうて六クラスもあるからな、六人全員が同じクラスになることはないやろ」
「そもそも、2年生からは文系理系・選択科目でクラス分けされるからな。俺たち六人のうち文系理系半々だから、絶対に六人全員が同じクラスになることないぞ。多くても三人だな」
「なーんや、おもんな。期待して損したわ。まあ、監督が担任じゃ無かったら何でもええわ。
私は帰って筋トレしなあかんから、帰るわ。また明日なー」
「気を付けて帰れよ、一応女なんだから」
「一応な」
台風のような女を見送ると、急に周りが静かに感じ、どっと疲れが出てきた。
「あいつの相手したら、一気に疲れたな。もう家まで我慢できないし、ラーメンでも食って帰ろうぜ」
「二郎系ラーメン以外ならええで」
「お前、本当に二郎系ラーメン嫌いだよな」
「二郎系ラーメンってとんでもない量のラーメンに、とんでもない量の野菜乗っけっとるやん?あれ普通に食への冒涜やと思うねん。しかも、見た目のインパクトで客呼んでるくせに、若者とかがはしゃいで写真撮ったりしたら、怒る店主とかおるやん。全部の二郎系ラーメンがそうとは言わんけど、俺は嫌いやな」
「相変わらずだな。じゃあ、帰り道にある丸〇ラーメン行くか。鉄板卵チャーハン食いてぇし」
「ええな! 行こうや!」
帰り道の国道一号線には多くのラーメン屋があるので、気分に合わせてラーメン屋を選ぶことが出来る。正直、そんなことどうでもいいと感じるかもしれないが、育ち盛りの男子高校生には大変嬉しい要素だ。
「何かラーメンの話してたら我慢できんくなってきたわ! 走って行こうや!」
俺たちは部活・台風女の疲れを忘れ、ラーメン屋に走り出した。
「うわ……。めちゃくちゃ混んでるやん。これは大分待たなあかんな」
「とりあえず名前書いて待つか」
このラーメン屋は長年、一号線ラーメン屋戦争を生き抜いてきただけあって、いつも多くのお客さんが来店している。味は良いし、値段も手ごろなので、一番好きなラーメン屋といっても過言ではないが、この混雑だけは嫌いだ。
「誰か知り合いいないかなぁ。ここ基本四人席だし、席が余ってるなら入れてもらおうぜ」
「そんな都合よく、知り合いなんておるか? てか、一緒に飯食うなら、ある程度仲いいやつじゃないと、俺嫌やで」
そんなことを二人で話していると、急にケータイが鳴りだした。
『もしもし桜っち? 今、まゆゆと〇源いるでしょ? 今私も、双葉姉さんと一緒に〇源来てるんだけど、席余ってるし一緒に食べようよ!』
『おお! めちゃくちゃ腹減ってたから、助かったわ!』
『奥の座敷に座ってるからねー』
「今の電話、あおいちゃんか?」
「うん。何か本田と2人で来てて、席余ってるから、入れてくれるみたいやわ」
「おお! よかった。早くいこうぜ、奥の座敷だろ?」
今電話をかけてきたのは、川崎と同じ女子テニス部所属の【山羽 蒼】。『学校で一番変なやつは?』と聞くと十人中十二人がこいつの名前を挙げる。
ちなみに、こいつの一番好きなゲームはぷ〇ぷ〇。魔導物語からのファンで、セ〇がハード戦争に負けた時は三日三晩泣いたとか、訳の分からないことを語っていた。〇ガがハード戦争してた時、まだ生まれてないだろ。
「こっち、こっち!」
あおいっちが座敷席から、元気に手を振っている。
「本当に助かったよ。この混み具合で、蒼ちゃんがいてくれなかったら、一時間ぐらい待つとこだった」
「お礼はチョコソフトね! もちろん、双葉姉さんにも奢ってよね」
「松葉、私はストロベリーソフトね」
蒼っちの横で静かに佇んでいる、クールな女は【本田 双葉】。蒼っちに姉さん呼ばわりされているが、年上なわけではない。蒼っちがニックネームとして【姉さん】と呼んでいるだけだ。所属している部活は女子バスケ部だ。
ちなみに、最近の趣味はVtuberの生配信。色々な配信を見ているらしいが、一番の推しは、関西弁の銀髪の女子高生だと語っていた。関西弁の親近感とキレる時の爆発力が魅力らしい。
「あっ、宮は替え玉奢ってや」
「二人ともに奢らなあかんのかい」
テーブルを見る限り、ライスとラーメンを注文していたのが分かる。さらに今から、替え玉とデザートを食べるというのだから、信じられない。
「当たり前やろ? 私らがおらんかったら、ずっとご飯食べれずに、餓死しててんから」
「いや一時間で餓死はねえよ、まあいいけど。蒼ちゃんも替え玉とソフトクリームでいいか?」
「ううん。私はチョコソフトと杏仁豆腐!」
「二個もデザート食ったら、太んぞ。」
当たり前のようにデザートを二つ食べようとする蒼っちに、反射的にデリカシーのないツッコミを入れてしまった。
「いいの! 今日は、スポッチャでしっかり運動してきたから」
「もしかして、昼に川崎ちゃんも一緒だったか?」
「うん! よく分かったね。ストーキングは流石にまゆゆでも引くよ?」
何を勘違いしているか分からないが、蒼っちは俺と守友に軽蔑のまなざしを向けている。
「ちげぇよ、ここに来る著中で、川崎ちゃんと会ったんだ。ラウン〇ワンでスロットしてたって言ってたからさ」
「忍ちゃんに会ったんだ、すごい偶然だね。スポッチャ終わった後に、メダル貰えたんだけど、忍ちゃんがスロット大好きだから私と双葉姉さんのメダル全部あげたんだ! それで、一向に終わらないから、忍ちゃんとはその場で別れたってわけ」
そんなくだらないやり取りを終えて、店員さんに注文を済ませる。
ややこしいから説明しておくと、本田が呼んだ【宮】という呼び名はニックネームとかではなく、俺の苗字だ。四月生まれで【桜】という安直な名前は大変憶えやすいので、基本知り合いは【桜】という下の名前で呼んでくる。
ちなみに好きなものはお祭りだ。祖父が大の祭り好きで、小さいころからよく連れていってもらっていた。今では友達を誘って行くし、たまに一人でも行っている。大阪・京都の大きな祭りには必ず足を運んでいる。
「明日から新学期だね。クラス発表緊張するなぁ」
ラーメンとチャーハンを食べ終えて一息付いている俺と守友に、蒼っちが話しかけた。
「まあ、文系理系・選択科目で分かれるから、ある程度の予測は付くけどな」
「俺が知ってる範囲だけで言うなら、選択が完全に被ってるのは京と本田ぐらいやなぁ」
「私も宮と天津ぐらいしか、完全に被ってるやつ知らんわ」
「いいなぁ。私は完全に被ってる人いないや。理系っていうだけなら、忍ちゃんとまゆゆ同じだけど」
あおいっちが、少し悲しそうな顔をしながら、ソフトクリームと杏仁豆腐を交互に食べている。
「理系は人数少ないし、同じクラスになる可能性高いらしいよ。ちょっとだけでも期待しようぜ」
「私は六人で同じクラスになりたかったの!」
「いうても、俺ら学校ではあんま話さんやん。同じクラスなっても、何か気まずくなるだけやって、絶対」
「宮の言う通りやと思うわ。宮は私たちが違う女の子と一緒にいると、急に愛想悪くなるもんなー。天津と松葉はそんなことないのに」
「チャラ男・イケメンと比べんなや。俺は、ちょっと女の子と話すのが苦手なだけや」
CV沢〇 みゆきの様なクールな雰囲気で、的確に人の弱みを突いてくるから、本田は怖い。クール・ドS系女ってフィクションの中でしか成立しないぞ。
「まあまあ、桜と本田ちゃんはいつも通り仲良しで、結構なことだけど。周りにお客さんもいるし、もうちょいボリューム抑えような」
「宮って、川崎の次におちょぐりあいがあるからさ、ついちょっかい出してまうねんな」
「六人で居るときは忍ちゃんが人気だもんねぇ」
さっきから、あおいっちが言っている六人とは、【天津 京】、【松葉 守友】、【川崎 忍】、【本田 双葉】、【山羽 蒼】、そして俺、【宮 桜】の六人のことである。
この六人は去年の春ごろから、同じバイト先で働いている。そのバイト先は昔、旅館だった建物を利用した料亭【山風】だ。
土地開発が進む少し前は、俺たちの住む大里市にも旅行客が結構来ていたらしい。大里市は大阪府ではあるものの、すぐ横の市は京都になる。なので、京都・大阪、二つの府を旅行する客が大里市を利用していたようだ。今となっては、都市開発が進み、旅行客よりも住民の方が多くなってしまった。
そういった歴史があったことで、【山風】は旅館の機能を削り、料亭の機能だけを残していると聞いた。
「バイトじゃ、六人全員が揃うなんて、日曜日ぐらいしかないし、学校でも集まりたいんだけどなぁ、私は」
「放課後とかに飯行くときあるだろ?」
すねる蒼っちに、守友がすかさずフォローを入れる。
「放課後と学校は違うんだよ」
正直、他の友達がいる中で、こいつらと話すのは恥ずかしいからできるだけ避けたい。ラノベ系主人公にありがちな、『無駄に目立つのはだるい』というような痛い理由ではない。
ただ単純に冷やかされたりするのが恥ずかしい。無駄に話していると、付き合っているのかとからかわれるし、付き合ってないと答えても、付き合えよとまたからかわれる。特に【山風】の女子三人は学校でも目立つ部類なので尚更だ。
「そろそろ、帰ろうぜ。飯食ったら眠くなってきた」
守友が目をこすりながら、財布を取り出してお会計の準備をしている。
「そーだね、デザートも食べたし、帰ろっか」
時計を見ると結構な時間が経っていた。俺たちは、お会計を済まし店を後にする。
「また明日ね! バイビー!」
「じゃあなー」
ラーメン屋から自宅までは十分もかからない。
「へっくしょん!」
京に貰った薬の効き目が薄れてきたようだ。
(酷くならないうちに、早く帰ろ)
明日のクラス発表に不安と希望を抱きながら。早足で家に向かった。
いつもなら保健室にマスクと鼻炎薬をもらいに行くところだが、あいにく今日は日曜日。俺はテニス部の練習のために学校にきていた。つまり、保健室は空いていない。
(あいつ、今日来とるかなぁ……)
テニス部の練習が始まる前の時間を利用して、ある男のいるであろう体育館に足を運ぶ。
(よかった、おってくれた。しかもちょうど練習終わるところやん)
他の部活生に気を使いながら、二メートル近い大柄の男の下に駆け寄る。
「おーい、京! 花粉症の薬、持ってるやろ? 一つくれへん?」
「おお、桜か! 花粉症の薬ならいくらでもあるから、そこに置いてある俺のカバンから勝手に取れや。でも、市販薬じゃなくて医者からもらっとる薬やから、効き目強すぎて後々体だるなるけど、ええか?」
快く薬をくれた大柄な男の名は【天津 京】。身長一八八センチのバスケ部エース。スギ、ヒノキ、ブタクサ、ヨモギ等あらゆる花粉にアレルギーを持っているらしく、年がら年中花粉薬を服用している。たまに薬を飲み忘れた時はこいつに頼んで薬を分けてもらっている。
ちなみに、こいつが1番好きな女優は天海 〇希。養ってくれそうな、強い女性がタイプらしい。
「今日は去年よりも花粉がひどいし、市販薬じゃない方がありがたいわ。またジュースか何かおごる! サンキューな!」
「水ならい〇はす、お茶なら綾〇、炭酸系ならファ〇タで頼むわ」
自分の要求を提示しつつ、商品が売っていなかったときに困らないよう、いくつかの選択肢を与えてくれた。考えすぎだとは思うが、こういう気遣いが自然と出来ている京は男の俺でもかっこいいと感じてしまう。そんなどうでもいいことを考えながら、体育館に併設されている、ウォータークーラーで薬を飲み、体育館を後にする。
ふと時計を見てみると、部活の開始時間が迫っていた。俺は少し小走りに練習場所のテニスコートに向かう。
「おい! 桜どこ行くんだよ、今日の練習は最初にランニングだから、校門前に集合だろ」
そうやって俺を呼び止めた、この男の名は【松葉 守友】。髪を薄い茶色に染めており、少しチャラそうにも見えるが、友達思いで良いやつだ。
「あー、せやったな。焦って忘れてわ。助かったわ」
「一人でも遅刻したら連帯責任なんだから、気をつけろよな。どうせ、花粉の薬を京にでも貰いに行ってたんだろ? 早くいくぞ」
たまにこいつは読心術でも使えんのかってぐらい、鋭いところがあるから怖い、てかキモイ。まあ、俺が体育館から鼻水垂らしながら歩いてきた状況を見て、そう判断したんだろう。
ちなみにこいつが1番好きなアニメキャラはク〇ラ。車いすから自力で立ち上がるあの名シーンは今でも号泣するらしい。
俺と京が関西弁で、守友が標準語で話しているのは、守友が転校生だからではない。昔、市が行った大規模な政策、というかキャンペーンが関係している。
昔、俺たちが幼稚園生だったころ。明日から高校二年生だから、十年以上前。俺たちの住む大里市では、都市開発が活発に進んでいた。ショッピングモールや駅の開発、そして住宅の建設ラッシュ。市と企業が協力し、様々な取り組みが行われていた。
その中でも、目玉だった取り組みが『なろうよ大阪府民。移住しちゃおう、住みやすい街、大里市に。キャンペーン』だ。
名前の通り、大阪府以外の都道府県から移住を促すキャンペーンだ。大阪府以外から引っ越してきた場合は、引っ越し代・住宅購入費用を割引してもらえるだけではなく、市からの補助金も貰えた。
元々大里に住んでいる人からすれば、何のメリットもないので、「俺たちの税金を無駄遣いしやがって」とキャンペーンに反対する可能性もあった。しかし、その当時は住民も、大里市が栄えることに大喜びしていたし、『多様性』という言葉がトレンドになっていたので、大阪府以外からの移住を促すこのキャンペーンは注目され、大変評判が良かった。
このようなキャンペーンが行われたことで、今の大里市では関西弁を話す人間とそれ以外の地域の方言を使う人間が半々になっている。
最初に他の地域の方言を聞いたときは、幼いながら違和感を覚えた。しかし、今になっては何の違和感も感じずに、日々を過ごしている。
「おい! 何ぼーっとしてんだよ。本当に遅れちゃうぜ。ランニング倍の罰ゲームだけは、絶対に嫌だぞ」
「すまん! ちょっと考えごとしてたわ! 急ぐか!」
俺の遅刻のせいで他の友達に迷惑をかけるわけにはいかない。小走りではなく、本気のダッシュで校門へ向かった。
「今日はどっかの誰かがぼーっとしてるから、散々だったぜ……」
「ごめんって! 帰りのファ〇マで何でも奢るからさ」
「じゃあ、モンス〇―エナジーと肉まんな」
「へーい」
今日は結局二人とも遅刻してしまい、しこたま監督と先輩に怒られた。不幸中の幸いだったのは罰ゲームのランニングが連帯責任ではなく、俺たち二人だけだったことだ。先輩たちは今年で引退なので、無駄なことに時間を使っていられないらしい。ただし、連帯責任ではない代わりに、俺たち二人は部活が終わる時間までランニングの刑だった。ここまで疲れたのは久々だ。
「はい、モンス〇―エナジーと肉まん」
「からしは貰ってくれたか?」
「三個もあれば、十分やろ?」
「サンキュー! やっぱ肉まんはからしがないと始まらないのよ」
コンビニで買ったジュースと肉まんを頬張りながら、二人で歩きながら帰っていると、突然何かが背中にぶつかった。
「よお! 何で、男二人で笑い合いながら帰ってんねん! お前らやっぱりそういう関係か?」
「別に、友達と談笑しながら帰るのは、男子高校生のテンプレやろ」
「桜の言う通りだし、LGBTが浸透してる、今の時代に『そういう関係か?』っていう冗談は大変良くないと思うぞ」
「あっ……ホンマやな。次から気を付けるわ。すまん!」
別に俺も守友も本気で怒ったり、注意しているわけではない。ただこの女が見た目に反して素直すぎるので、ついついからかいたくなってしまうのだ。
肉まんを頬張っている俺と守友に思いっきりカバンをぶつけてきた、金髪のこの女は【川崎 忍】。見た目はただのヤンキーだが、これでも立派な女子テニス部のエースだ。
見た目だけで言えば、とても真剣に部活動を行っているようには見えないが、誰よりも努力し、素直な性格なので、学校でも友達は多い。
ちなみに1番好きなスポーツ選手は錦〇 圭選手で、彼がきっかけでテニスをやり始めたらしい。
「てか、高校生なんだからタバコ吸うなよ。部活動停止になんぞ」
「これはタバコじゃなくて、電子タバコや。ニコチンもタールも何も入ってないから、何の問題もないわ。先生も承諾済みやし」
「相変わらず真面目なんか、真面目じゃないのかよくわからんな……。てか、女子テニ休みやろ? こんなとこで何やってんねん」
「いやー、スロット帰りにお前ら見つけたから、脅かしたろ思ってな」
「川崎、日本には風営法って言う法律があって……」
「風営法ぐらい知ってるわ! ほんまもんのスロットやなくて、ラウン〇ワンのスロットや」
「四十過ぎたおっさんぐらいしか、休日にそんなとこいかんで」
いつも通りハチャメチャな行動に二人で呆れていると、川崎が突然思い出したかのように、声をあげる。
「あっ! そういえば明日から学校始まるやん! 六人のうち何人が同じクラスになるやろなー。楽しみやわ」
「いうて六クラスもあるからな、六人全員が同じクラスになることはないやろ」
「そもそも、2年生からは文系理系・選択科目でクラス分けされるからな。俺たち六人のうち文系理系半々だから、絶対に六人全員が同じクラスになることないぞ。多くても三人だな」
「なーんや、おもんな。期待して損したわ。まあ、監督が担任じゃ無かったら何でもええわ。
私は帰って筋トレしなあかんから、帰るわ。また明日なー」
「気を付けて帰れよ、一応女なんだから」
「一応な」
台風のような女を見送ると、急に周りが静かに感じ、どっと疲れが出てきた。
「あいつの相手したら、一気に疲れたな。もう家まで我慢できないし、ラーメンでも食って帰ろうぜ」
「二郎系ラーメン以外ならええで」
「お前、本当に二郎系ラーメン嫌いだよな」
「二郎系ラーメンってとんでもない量のラーメンに、とんでもない量の野菜乗っけっとるやん?あれ普通に食への冒涜やと思うねん。しかも、見た目のインパクトで客呼んでるくせに、若者とかがはしゃいで写真撮ったりしたら、怒る店主とかおるやん。全部の二郎系ラーメンがそうとは言わんけど、俺は嫌いやな」
「相変わらずだな。じゃあ、帰り道にある丸〇ラーメン行くか。鉄板卵チャーハン食いてぇし」
「ええな! 行こうや!」
帰り道の国道一号線には多くのラーメン屋があるので、気分に合わせてラーメン屋を選ぶことが出来る。正直、そんなことどうでもいいと感じるかもしれないが、育ち盛りの男子高校生には大変嬉しい要素だ。
「何かラーメンの話してたら我慢できんくなってきたわ! 走って行こうや!」
俺たちは部活・台風女の疲れを忘れ、ラーメン屋に走り出した。
「うわ……。めちゃくちゃ混んでるやん。これは大分待たなあかんな」
「とりあえず名前書いて待つか」
このラーメン屋は長年、一号線ラーメン屋戦争を生き抜いてきただけあって、いつも多くのお客さんが来店している。味は良いし、値段も手ごろなので、一番好きなラーメン屋といっても過言ではないが、この混雑だけは嫌いだ。
「誰か知り合いいないかなぁ。ここ基本四人席だし、席が余ってるなら入れてもらおうぜ」
「そんな都合よく、知り合いなんておるか? てか、一緒に飯食うなら、ある程度仲いいやつじゃないと、俺嫌やで」
そんなことを二人で話していると、急にケータイが鳴りだした。
『もしもし桜っち? 今、まゆゆと〇源いるでしょ? 今私も、双葉姉さんと一緒に〇源来てるんだけど、席余ってるし一緒に食べようよ!』
『おお! めちゃくちゃ腹減ってたから、助かったわ!』
『奥の座敷に座ってるからねー』
「今の電話、あおいちゃんか?」
「うん。何か本田と2人で来てて、席余ってるから、入れてくれるみたいやわ」
「おお! よかった。早くいこうぜ、奥の座敷だろ?」
今電話をかけてきたのは、川崎と同じ女子テニス部所属の【山羽 蒼】。『学校で一番変なやつは?』と聞くと十人中十二人がこいつの名前を挙げる。
ちなみに、こいつの一番好きなゲームはぷ〇ぷ〇。魔導物語からのファンで、セ〇がハード戦争に負けた時は三日三晩泣いたとか、訳の分からないことを語っていた。〇ガがハード戦争してた時、まだ生まれてないだろ。
「こっち、こっち!」
あおいっちが座敷席から、元気に手を振っている。
「本当に助かったよ。この混み具合で、蒼ちゃんがいてくれなかったら、一時間ぐらい待つとこだった」
「お礼はチョコソフトね! もちろん、双葉姉さんにも奢ってよね」
「松葉、私はストロベリーソフトね」
蒼っちの横で静かに佇んでいる、クールな女は【本田 双葉】。蒼っちに姉さん呼ばわりされているが、年上なわけではない。蒼っちがニックネームとして【姉さん】と呼んでいるだけだ。所属している部活は女子バスケ部だ。
ちなみに、最近の趣味はVtuberの生配信。色々な配信を見ているらしいが、一番の推しは、関西弁の銀髪の女子高生だと語っていた。関西弁の親近感とキレる時の爆発力が魅力らしい。
「あっ、宮は替え玉奢ってや」
「二人ともに奢らなあかんのかい」
テーブルを見る限り、ライスとラーメンを注文していたのが分かる。さらに今から、替え玉とデザートを食べるというのだから、信じられない。
「当たり前やろ? 私らがおらんかったら、ずっとご飯食べれずに、餓死しててんから」
「いや一時間で餓死はねえよ、まあいいけど。蒼ちゃんも替え玉とソフトクリームでいいか?」
「ううん。私はチョコソフトと杏仁豆腐!」
「二個もデザート食ったら、太んぞ。」
当たり前のようにデザートを二つ食べようとする蒼っちに、反射的にデリカシーのないツッコミを入れてしまった。
「いいの! 今日は、スポッチャでしっかり運動してきたから」
「もしかして、昼に川崎ちゃんも一緒だったか?」
「うん! よく分かったね。ストーキングは流石にまゆゆでも引くよ?」
何を勘違いしているか分からないが、蒼っちは俺と守友に軽蔑のまなざしを向けている。
「ちげぇよ、ここに来る著中で、川崎ちゃんと会ったんだ。ラウン〇ワンでスロットしてたって言ってたからさ」
「忍ちゃんに会ったんだ、すごい偶然だね。スポッチャ終わった後に、メダル貰えたんだけど、忍ちゃんがスロット大好きだから私と双葉姉さんのメダル全部あげたんだ! それで、一向に終わらないから、忍ちゃんとはその場で別れたってわけ」
そんなくだらないやり取りを終えて、店員さんに注文を済ませる。
ややこしいから説明しておくと、本田が呼んだ【宮】という呼び名はニックネームとかではなく、俺の苗字だ。四月生まれで【桜】という安直な名前は大変憶えやすいので、基本知り合いは【桜】という下の名前で呼んでくる。
ちなみに好きなものはお祭りだ。祖父が大の祭り好きで、小さいころからよく連れていってもらっていた。今では友達を誘って行くし、たまに一人でも行っている。大阪・京都の大きな祭りには必ず足を運んでいる。
「明日から新学期だね。クラス発表緊張するなぁ」
ラーメンとチャーハンを食べ終えて一息付いている俺と守友に、蒼っちが話しかけた。
「まあ、文系理系・選択科目で分かれるから、ある程度の予測は付くけどな」
「俺が知ってる範囲だけで言うなら、選択が完全に被ってるのは京と本田ぐらいやなぁ」
「私も宮と天津ぐらいしか、完全に被ってるやつ知らんわ」
「いいなぁ。私は完全に被ってる人いないや。理系っていうだけなら、忍ちゃんとまゆゆ同じだけど」
あおいっちが、少し悲しそうな顔をしながら、ソフトクリームと杏仁豆腐を交互に食べている。
「理系は人数少ないし、同じクラスになる可能性高いらしいよ。ちょっとだけでも期待しようぜ」
「私は六人で同じクラスになりたかったの!」
「いうても、俺ら学校ではあんま話さんやん。同じクラスなっても、何か気まずくなるだけやって、絶対」
「宮の言う通りやと思うわ。宮は私たちが違う女の子と一緒にいると、急に愛想悪くなるもんなー。天津と松葉はそんなことないのに」
「チャラ男・イケメンと比べんなや。俺は、ちょっと女の子と話すのが苦手なだけや」
CV沢〇 みゆきの様なクールな雰囲気で、的確に人の弱みを突いてくるから、本田は怖い。クール・ドS系女ってフィクションの中でしか成立しないぞ。
「まあまあ、桜と本田ちゃんはいつも通り仲良しで、結構なことだけど。周りにお客さんもいるし、もうちょいボリューム抑えような」
「宮って、川崎の次におちょぐりあいがあるからさ、ついちょっかい出してまうねんな」
「六人で居るときは忍ちゃんが人気だもんねぇ」
さっきから、あおいっちが言っている六人とは、【天津 京】、【松葉 守友】、【川崎 忍】、【本田 双葉】、【山羽 蒼】、そして俺、【宮 桜】の六人のことである。
この六人は去年の春ごろから、同じバイト先で働いている。そのバイト先は昔、旅館だった建物を利用した料亭【山風】だ。
土地開発が進む少し前は、俺たちの住む大里市にも旅行客が結構来ていたらしい。大里市は大阪府ではあるものの、すぐ横の市は京都になる。なので、京都・大阪、二つの府を旅行する客が大里市を利用していたようだ。今となっては、都市開発が進み、旅行客よりも住民の方が多くなってしまった。
そういった歴史があったことで、【山風】は旅館の機能を削り、料亭の機能だけを残していると聞いた。
「バイトじゃ、六人全員が揃うなんて、日曜日ぐらいしかないし、学校でも集まりたいんだけどなぁ、私は」
「放課後とかに飯行くときあるだろ?」
すねる蒼っちに、守友がすかさずフォローを入れる。
「放課後と学校は違うんだよ」
正直、他の友達がいる中で、こいつらと話すのは恥ずかしいからできるだけ避けたい。ラノベ系主人公にありがちな、『無駄に目立つのはだるい』というような痛い理由ではない。
ただ単純に冷やかされたりするのが恥ずかしい。無駄に話していると、付き合っているのかとからかわれるし、付き合ってないと答えても、付き合えよとまたからかわれる。特に【山風】の女子三人は学校でも目立つ部類なので尚更だ。
「そろそろ、帰ろうぜ。飯食ったら眠くなってきた」
守友が目をこすりながら、財布を取り出してお会計の準備をしている。
「そーだね、デザートも食べたし、帰ろっか」
時計を見ると結構な時間が経っていた。俺たちは、お会計を済まし店を後にする。
「また明日ね! バイビー!」
「じゃあなー」
ラーメン屋から自宅までは十分もかからない。
「へっくしょん!」
京に貰った薬の効き目が薄れてきたようだ。
(酷くならないうちに、早く帰ろ)
明日のクラス発表に不安と希望を抱きながら。早足で家に向かった。
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