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5原始の森と温泉宿

5-6.原始の森と温泉宿

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「皆エルフの一団のようです、目の退化した強大な土掻竜ドレイクに四五人ずつ、十騎に乗った五十人ほどの団体で、皆武装しております」とグレナダが言う。
「円盤状の金属の武器を携帯していなかった?」
「ありましたね、珍しい金属の武器が、あれは人間の作った武器でしょうか?」
「どうだろう、ただ、厄介な武器だよ。追尾機能があって、引力を操作して獲物を引き寄せて裂くようにできている。射程圏内に入らないようにするのが賢明だ」
よく考えれば、あの武器は有翼人を近付けないために作られたような武器だ。
「ところで」と、有翼人の一人が後ろの三人を見る。
「イセトゥアン様は、同行されていらっしゃらないのでしょうか?」
「ああ、イセトゥアンね、そんな人いたね、ここにはいないけれど」
脳内で、有翼人女子たちに絶大な人気を誇る兄の脹脛フクラハギにローキックを入れる。
「このウルサい鳥たちは何なのだ。道行を邪魔するのであれば燃やすか?」
「いや、どう見ても協力者だろうが。どうしたのお前? 白い翼に対抗意識があるの?」
「えっ」と女子たちがヨルを見て固まっている。凍り付いたように制止した彼女たちに、スパルナ族と悪魔は相性が悪かったのだろうかと、心配になる。
「ちょ、ヤバ」
「マジ、ヤバイ」
よくわからないが、ヤバイらしい。
グレナダが彼女たちを押しのける。
「ソゴゥ、とにかくこの先の噴煙フンエンの上がっている火山に、ソゴゥの探している集団が向かっていますよ、追うのですよね? ここからなら、飛んで行った方がいいと思うので、魔力を温存したいのでしたら、私たちが運んでいってもいいのですが、どうすしますか?」
グレナダの提案は、後ろの三人に向けられたものだった。
「我には必要ない」とヨルが黒い翼を広げる。
「ラサーヤナ族の方なのかしら?」
「いや、人に擬態した悪魔だ。あまり近づかないで、はいそこ、不用意に触らない!」
「悪魔だって、かっこいい」と女子たちは種族など気にした様子もなく、積極的にヨルの翼に触ったり、イセトゥアン派と、ヨル派で議論を繰り広げている。
「ブロン、ヴィント、二人はどうしますか? 彼女たちは俺の古い知り合いで、今回協力してくれます。彼女たちに、逃亡犯のところまで運んでもらいますか? 自力で飛行しますか?」
「自力で!」と二人が同時に応える。
「天使に運んでもらうなんて、オソれ多いです」
「いや、スパルナ族の方々であって、天使ではないから」
「女神・・・・・・・」とブロンが呟いている。
「あー、グレナダ、申し出は有難いけれど、皆こんな感じなんで、場所だけ案内してもらえるかな、何とかついて飛んでいくから」
「マスター」
「おい」
「ソ、ソゴゥは我が抱えて連れて行こうか? 有翼人より速く飛べるぞ」
「案内人を抜かしてどうすんの? 人を抱えて飛ぶときって、揚力ヨウリョクはどうなってんの? 翼やお腹の下に、体を浮かす風を作って飛んでいるんだよね、鳥って」
「我は鳥ではない」
「聞き捨てならないですね、私達有翼人より早く飛べると? ソゴゥ、私が抱えて飛んであげますよ、私の方がずっと速いですから」とグレナダさんが、腕をとって引き寄せてくる。
「いや、我の方が早いに決まっている」と反対側の腕をとってヨルが引っ張ってくる。
まさに、人間を正しい方へ導かんとする天使と、堕落ダラクソソノす悪魔の構図だが、内容はどちらが速く飛べるかだが。
「俺飛べるし、結構早いし、とりあえずあの手前の双子山の右側山頂まで、誰が一番最初に着くか競争する?」と提案してみる。
「ソゴゥに世界を教えてあげましょう!」
「マッ、ソゴゥ、翼ある者の真髄シンズイを見せてやろう」
ちょくちょく、マスターと言いそうになる締まらないヨルは置いておき、ブロンとヴィントもまた炯々ケイケイと目を光らせている。やる気だ。

二頭の馬を、二人の有翼人に任せて、エルフ勢足す悪魔と、グレナダを筆頭に有翼人の女子たちで双子山を目指すことになった。
馬を任せた二人に、飛翔の合図をお願いし、一斉にスタートする。
まあ、反則と言われようが、見える範囲なら瞬間移動ができる俺より早く辿り着く者は、同じ能力を保有する者だけなのだが。

案の定、クレームの嵐だ。
知っていました。
だが、俺は言った「誰が一番早く飛んでいけるか」ではなく「誰が一番最初に着くか」と。
ようやく追いついてきたブロンとヴィントが「流石、有翼人の方の本気の飛行は凄まじいですね」と、素直に負けを認めている。
ほぼ同時に到着したヨルとグレナダは、未だに俺に反則だとやり直しを要求してくる。
子供か。今はそれどころではない。
ここからなら、ティフォン・トーラスの一団を鳥瞰チョウカンできると思い、集まってもらったのだ。
「グレナダ、それで一団はどっちだ?」
「あのひと際高いコーナンカインズ火山の左側手前に、噴煙を上げている火山が見えますか?」
「ああ、あそこか。いるいる、間違いない」
顔に「イグドラシルを冒涜ボウトクしせし者」と印をつけた奴らを含む一団が見えた。
「彼らの目的が、ソゴゥの知らせてきた懸念の通りでしたら、このまま山頂に向かうでしょう。上空から攻撃して、壊滅させますか?」
「いや、彼らが持つ武器と有翼人とは相性が悪い。それに、上空からの攻撃を想定して耐魔法防御が厳重にされているとみるべきだ。俺ならそうする。ここは、俺たちだけで何とか・・・・・・・」
「私たちは、ソゴゥの役に立てることをずっと待っていたのです。貴方が来なければ、私たちはずっと閉じ込められたままだったのですから」
「そうです、あの時のソゴゥは、あんなに小さかったのに、誰よりも頼もしかった。あんなに小さかったのに」
「ね、めっちゃ子供だったよね、すごい小生意気だったけど、賢くて、あんな状況でパニックにもならずに、偉かったよね」
「そういうの、いいから」
耳が赤くなっているのが分かる。
彼女たちの中では、俺はまだあの小さい子供の印象のままなのだろうか、あれから二、三十センチは身長伸びたのに。

められているのか、揶揄カラカラわれているのか分からないが、ともかく戦闘にも協力してくれるというなら、できるだけ彼女たちを危険な目にあわせず、ティフォン・トーラス達を拘束する方法を考えよう。

「わかった、じゃあ、皆協力してくれ」
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