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4モフモフと悪魔と朝ごはん

4- 6.モフモフと悪魔と朝ごはん

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「早速だが、ティフォンが向かったと思われる東のウィドラ連邦国は友好国であるため、ティフォン・トーラスの緊急手配と逮捕の協力要請が行われる手筈テハズとなっている。もし、ウィドラ連邦国内にティフォンの協力者がいたとしても、潜伏センプクし続けることは困難となるだろう。俺は、ティフォンがウィドラ連邦国に留まる可能性は低いと思う」
イセトゥアンの言葉に、ソゴゥは頷く。
「とりあえず現時点での、貴族書のありかを調べよう」
ソゴゥは白いテーブルに、ガイドを使って地図を投射した。
次にガイドの装丁ソウテイに填め込まれていたカギを抜き取ると、空中へ放り投げて手を伸ばす。
青白い光を放ったカギは、槍のように長くなってその手に握られた。
「大風の書よ」と、カギの柄を床に一度突くと、そこを中心として光が円状に広がる。
周囲の者は、気泡のようなものが肌表面をでて過ぎていった感覚を覚えた。
白いテーブルに投射した地図上に、黄金の光が明滅する箇所が、ウィドラ連邦国上に現れた。
光はウィドラ連邦国の北側、ガルトマーン王国との国境付近へ移動していた。

「微妙な位置だな」
イセトゥアンが、眉根マユネを寄せる。
「このままガルトマーン王国へ向かうつもりなんだろうか」
ヴィント・トーラスが緊張した面持ちで「それは難しいと思います」と発言する。

「ウィドラ連邦国の国家元首がナーガ族となってから、二国間の国交が完全に断絶しているため、ウィドラ連邦国からガルトマーン王国への入国に際し、渡航不可状態が続いています。それに、ガルトマーン王国とウィドラ連邦国の国境には大規模な空壁が展開され、ガルトマーン王国側では、等間隔に見張り台が設置されたと聞きます」
「ヴィントの言う通り、ティフォンが万が一何らかの方法でガルトマーン王国へ渡った際、同じルートで追いかけるのは難しいだろう。ウィドラ連邦国ルートは、刑事部か軍部に任せて、ソゴゥ達はガルトマーン王国から追跡してはどうだろうか」
イセトゥアンが提案する。
「飛行竜で公海から回り込んで、ガルトマーン王国主要港まで半日かからないでしょうが、ガルトマーン王国への入国審査に数日かかるのでは」
ブロン・サジタリアスが、投射された地図を指して言う。
「イグドラシル第一司書の来訪となれば、かえって動き難くなることが想定されます」
「それならちょっと思い付いたことがあるので、イセトゥアンの言う通り、ガルトマーン王国経由で貴族書を追うことにしようと思う。その方法について、これから軍部に確認したいことがあるので、騎士の二人にはこれから言う物を用意して、イグドラシルの司書長であるサンダーソニアを尋ねてください」
「承知致しました」
二人の騎士は余計な事は言わず、やるべき事をするために早急に席を立ち、部屋を退出する。
「イセ兄、海軍にいるミッツにこれから末弟が行くって連絡しておいて」
ソゴゥはイセトゥアンに伝言を頼んで、席を立つ。
「わかった。くれぐれも、ガルトマーン王国で暴れるなよ。あの国は国民総兵士と言ってもいい好戦的な種族だ。それに国王は、不死薬を求めて数多の神をなぎ倒して侵攻した神鳥、ガルダの子孫と言われている。王は代々『ガルダ』と名乗っていて、現王もかなり好戦的な人物らしい。くれぐれも、ガルダ王に出くわすことがないようにな」
「おい、変なフラグを立てないでくれよ」
「伝説では、神々でさえ神鳥の侵攻を武力では止めきれず、結局、不死薬を渡して友和を持って止めたとされている(諸説あり)。もし、遭遇ソウグウした際は、戦闘じゃ勝ち目がないぞ」
「だから、戦わないし、会うつもりもないから!」
部屋を出て、護衛騎士の一人と共に王宮を出るとミトゥコッシーのいるセイヴ海軍基地に向かう。

セイヴ港にほど近い位置にある軍港の基地正門に、王宮馬車で乗り付けて、外塀の門番を素通りし正面入り口に横付ける。
馬車のステップを降りたところで、首に腕が掛けられる。
ヨルが相手を攻撃する前に「兄だ」とくぐもった声を絞り出さす。
ミトゥコッシーの腕に、何度もタップするがなかなか放してくれない。
やっとのことで満足したらしい、ミトゥコッシーが「久しいのう、ソゴゥ。背え伸びたんやないか?」とイジってくる。
「現状維持だよ!」
見上げると、日焼けした顔に、サイドが刈り込まれたちょと悪そうな白銀色の短髪。
メチャクチャかっこいいと、ソゴゥは立場が無ければ同じ髪型にしたいと思った。

「ミッツ、通信部に連れて行ってくれ。ガルトマーン王国付近の海域を航行している、イグドラム船籍の船がないか知りたい」
「おう、イセ兄さんの手紙から、そういった要望が来ることが分かっていたからな、すでに手配済みよ。こっちだ」とミトゥコッシーが海軍基地を案内する。

塔のような高い建物に入り、通信部の一室に通される。
壁一面に近海から遠洋までイグドラムに政治的、気象的影響のある海域が映されていて、風向、波高、船舶を指す光などが変化している。それらは前世のような衛星からの情報ではなく、各観測地点からの報告や、定期的な音や光の反射結果、ブイの移動状況をもとに計測され、収集された情報だ。
船舶においては、定期報告による位置を反映している。
「海軍司令部広域調査班、中尉ミトゥコッシー・ノディマーだ。イグドラシル第一司書殿の要請により、ガルトマーン王国付近の海域を航行している、イグドラム船籍全てを直ちに報告せよ」

ミトゥコッシーは専門学部課程経て、その後たった三年で中尉にまで昇任していた。
入学と同時に与えられた階級がもともと高かったのもあったが、ミトゥコッシーはこの三年でイグドラム排他的経済水域及び、交易路に出没していた海賊を転職させた功績が伝説となっていた。
海賊業よりモウかると言って、拿捕ダホした海賊たちに道具や技術の提供などの支援を行い、就職先を紹介し、またイグドラムが保証人となって、壊滅的に漁業センスのない魚好きな有翼人の集う国、ガルトマーン王国に出向させて漁をさせているのだ。
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