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4モフモフと悪魔と朝ごはん
4- 4.モフモフと悪魔と朝ごはん
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やっちまった。
昨日のヤベーの無限ループから一転「やっちまった」がお気に入り検索トップ1から10までを埋め尽くしている。
よりによって、第七指定の禁書を棚から落として、うっかり血の付いた手で触ってしまって、うっかり悪魔を呼び出してしまったなんて、絶対誰にも言えない。
鯖フレークにオーロラソースを加えてディップにしたものを、トーストに塗って焼いたものと、白身魚のフリット、サラダ、トマト的な野菜のスープとミルク。
ジェームス達、樹精獣は雑食だが、やはり見た目が猫のようなことも関係してか、魚類が好きなようだ。ジェームス達が当番の日は、だいたい魚になる。
香ばしく焼けたトーストをサクサク齧りながら、目の前の悪魔をどうしたものか頭を悩ませる。
さっさと食べろと、ハリーに叱られ、悪魔が恐る恐るスープを口にする。
やはり、血みたいな赤いものが好きなんだろうか。
「お前、名前は?」
「我は、〇▽$%◇だ」
「え? 何て?」
「だから、〇▽$%◇だ」
うん、わからん。
「その高次元の発音を、何とか三次元に落とし込んで表現出来ないのか?」
「我は、『終わらない夜』という意味の名を持つ悪魔だ」
「そうか、いい名前だな、農作物は育たなそうだけれど、睡眠不足は解消されそうだ。ある意味、パリピな響きすらある。終わらない夜さんじゃ長いから、そうだな、ヨルと呼ぶことにするけれどいいか?」
「マスターが決めたのならそれでいい」
「マスターって・・・・・・・、俺は、ソゴゥ。ただし、このイグドラシルの中では館長と呼ぶように、他の者に示しがつかないからな。いいか、ヨル、俺はこのイグドラシルの第一司書、レベル7で館長をしている。この俺が、禁書から誤って悪魔を召喚したなど、あってはならない事なんだ。そこで、ヨル、お前は俺が魔力と引き換えに、俺自らが陣を敷いて召喚したことにする」
「契約の書を介しての召喚ではなく、召喚の儀にて呼ばれたことにするということか」
「そう、あと、ヨルは本の中に戻ったりできないのか?」
「本の中に戻る?」
「いや、なんか、用事があるときだけ本から出てくる的な便利な仕様だったりしないかなって思ったんだけど、そうじゃない?」
「契約の書により扉が再び開くのは、マスターの命が尽きた場合か、契約の書が損なわれた場合である」
「じゃあ、本当に死ぬまで主従関係か。あと、マスターじゃなくて、ソゴゥでいいって。まあ、とりあえず俺の落ち度で招いたことだしな、腹を括るか」
チビの樹精獣の口元のミルクを拭ってやりながら、もう一つの懸念事項について、良案がないか考えていた。
眩しそうに目を細め、周囲を眺めている悪魔に「俺の側にいないといけない、というわけでは」と言い掛けたところで、食い気味に「物理的に距離を置くことは出来ない」と答えてきた。
「常に魔力の供給が必要ということか?」
「そういうわけではないが、マスター」
「ソゴゥな」
「そ、ソゴゥの命を守るのが我の使命、離れていてはそれが実行できないゆえに、我はソゴゥの側を離れることは出来ない」
「うーん、まあ、悪魔を俺の目の届かないところに野放しにするわけにもいかないし、やっぱりイグドラシルに住むことになるよな。そうすると、レベル5以上の司書資格が必要だけど、悪魔に適性検査を受けさせるわけにもいかないし・・・・・・・」
「ほう、ここは世界樹の内部、ということであるか」
「本来、この区画には俺と樹精獣しか物理的に入れないはずなんだけどね、不思議なことに悪魔でレベルなしのお前が居られるのは、イグドラシルの意向かもしれない」
「我の事なら、護衛として召喚したと報告すればいい。司書護衛官としてエルフの王の許可を得ればいいであろう」
「おお、ダメもとで交渉してみるのもありだな。ダメだった場合は、コウモリか何かに変身して、この部屋の天井にぶら下がっていてもらうしかないな」
「我は吸血鬼ではない」
「そういえば、昨日召喚された時に纏っていた黒い炎はどうしたんだ、人間に擬態した時に消したのか?」
「あれは、おそらく世界樹に消された。もう出そうと思っても出ない」
「ああ、そうか・・・・・・・イグドラシルは火気厳禁だからな、火属性魔法は司書ですらこの中で使えないんだった。あと、言っておくが、このイグドラシルの中では司書以外魔法が使えないからな」
「承知した」
「さあ、グズグズしてないでさっさと全部食べろ、ジェームス達の作ったご飯を残すなんて許さないからな」
紅茶を飲みながら、ままごとのようにたどたどしい悪魔の食事を眺めて、ソゴゥは腹の傷や体調を確認する。
どうやら、問題なさそうだ。
ジェームス達、樹精獣がいなかったら本当にやばかったのだろう。そう考えると、ここで自分の配下となる悪魔が召喚されたのは、本当にイグドラシルの采配のように思えなくもない。
まあ、自分の過失の言い訳だが。
こいつが、使える奴ならいいのだが、俺より弱かったら話にならない。
仮にも悪魔なのだから、簡単には死なないと思うが。
小さい樹精獣のハリーとソルトとイーサンが窓辺に止まる王室のロイヤルブルーの鳥を見付けて、キチュッ、キチュッツと鳴いて知らせる。
興奮してはしゃいでいるだけにも見えるが、とても可愛い。
手を伸ばすと、そこへ王家の伝書鳥が納まり手紙へと姿を変える。
ソゴゥは手紙に目を走らせてから立ち上がると「王からの呼び出しだ、直ぐに出る」とジェームス達に伝える。
ソゴゥは返事を書いて、再び白い丸っとした鳥に変えて送り出し、昨夜も着た重要な場での着用を義務付けられた司書服に着替えると、悪魔を振り返った。
立ち上がると、擬態しているとはいえソゴゥより頭一つ大きい。黒い髪、赤い瞳、エルフが横に突き出た尖った耳なのに対し、縦に尖った耳をしている。
王の許可が下りれば、他の司書達には護衛の悪魔として紹介するつもりだから、容姿はこのままでいいだろう。
ただ、服がな・・・・・・・。
昨日のヤベーの無限ループから一転「やっちまった」がお気に入り検索トップ1から10までを埋め尽くしている。
よりによって、第七指定の禁書を棚から落として、うっかり血の付いた手で触ってしまって、うっかり悪魔を呼び出してしまったなんて、絶対誰にも言えない。
鯖フレークにオーロラソースを加えてディップにしたものを、トーストに塗って焼いたものと、白身魚のフリット、サラダ、トマト的な野菜のスープとミルク。
ジェームス達、樹精獣は雑食だが、やはり見た目が猫のようなことも関係してか、魚類が好きなようだ。ジェームス達が当番の日は、だいたい魚になる。
香ばしく焼けたトーストをサクサク齧りながら、目の前の悪魔をどうしたものか頭を悩ませる。
さっさと食べろと、ハリーに叱られ、悪魔が恐る恐るスープを口にする。
やはり、血みたいな赤いものが好きなんだろうか。
「お前、名前は?」
「我は、〇▽$%◇だ」
「え? 何て?」
「だから、〇▽$%◇だ」
うん、わからん。
「その高次元の発音を、何とか三次元に落とし込んで表現出来ないのか?」
「我は、『終わらない夜』という意味の名を持つ悪魔だ」
「そうか、いい名前だな、農作物は育たなそうだけれど、睡眠不足は解消されそうだ。ある意味、パリピな響きすらある。終わらない夜さんじゃ長いから、そうだな、ヨルと呼ぶことにするけれどいいか?」
「マスターが決めたのならそれでいい」
「マスターって・・・・・・・、俺は、ソゴゥ。ただし、このイグドラシルの中では館長と呼ぶように、他の者に示しがつかないからな。いいか、ヨル、俺はこのイグドラシルの第一司書、レベル7で館長をしている。この俺が、禁書から誤って悪魔を召喚したなど、あってはならない事なんだ。そこで、ヨル、お前は俺が魔力と引き換えに、俺自らが陣を敷いて召喚したことにする」
「契約の書を介しての召喚ではなく、召喚の儀にて呼ばれたことにするということか」
「そう、あと、ヨルは本の中に戻ったりできないのか?」
「本の中に戻る?」
「いや、なんか、用事があるときだけ本から出てくる的な便利な仕様だったりしないかなって思ったんだけど、そうじゃない?」
「契約の書により扉が再び開くのは、マスターの命が尽きた場合か、契約の書が損なわれた場合である」
「じゃあ、本当に死ぬまで主従関係か。あと、マスターじゃなくて、ソゴゥでいいって。まあ、とりあえず俺の落ち度で招いたことだしな、腹を括るか」
チビの樹精獣の口元のミルクを拭ってやりながら、もう一つの懸念事項について、良案がないか考えていた。
眩しそうに目を細め、周囲を眺めている悪魔に「俺の側にいないといけない、というわけでは」と言い掛けたところで、食い気味に「物理的に距離を置くことは出来ない」と答えてきた。
「常に魔力の供給が必要ということか?」
「そういうわけではないが、マスター」
「ソゴゥな」
「そ、ソゴゥの命を守るのが我の使命、離れていてはそれが実行できないゆえに、我はソゴゥの側を離れることは出来ない」
「うーん、まあ、悪魔を俺の目の届かないところに野放しにするわけにもいかないし、やっぱりイグドラシルに住むことになるよな。そうすると、レベル5以上の司書資格が必要だけど、悪魔に適性検査を受けさせるわけにもいかないし・・・・・・・」
「ほう、ここは世界樹の内部、ということであるか」
「本来、この区画には俺と樹精獣しか物理的に入れないはずなんだけどね、不思議なことに悪魔でレベルなしのお前が居られるのは、イグドラシルの意向かもしれない」
「我の事なら、護衛として召喚したと報告すればいい。司書護衛官としてエルフの王の許可を得ればいいであろう」
「おお、ダメもとで交渉してみるのもありだな。ダメだった場合は、コウモリか何かに変身して、この部屋の天井にぶら下がっていてもらうしかないな」
「我は吸血鬼ではない」
「そういえば、昨日召喚された時に纏っていた黒い炎はどうしたんだ、人間に擬態した時に消したのか?」
「あれは、おそらく世界樹に消された。もう出そうと思っても出ない」
「ああ、そうか・・・・・・・イグドラシルは火気厳禁だからな、火属性魔法は司書ですらこの中で使えないんだった。あと、言っておくが、このイグドラシルの中では司書以外魔法が使えないからな」
「承知した」
「さあ、グズグズしてないでさっさと全部食べろ、ジェームス達の作ったご飯を残すなんて許さないからな」
紅茶を飲みながら、ままごとのようにたどたどしい悪魔の食事を眺めて、ソゴゥは腹の傷や体調を確認する。
どうやら、問題なさそうだ。
ジェームス達、樹精獣がいなかったら本当にやばかったのだろう。そう考えると、ここで自分の配下となる悪魔が召喚されたのは、本当にイグドラシルの采配のように思えなくもない。
まあ、自分の過失の言い訳だが。
こいつが、使える奴ならいいのだが、俺より弱かったら話にならない。
仮にも悪魔なのだから、簡単には死なないと思うが。
小さい樹精獣のハリーとソルトとイーサンが窓辺に止まる王室のロイヤルブルーの鳥を見付けて、キチュッ、キチュッツと鳴いて知らせる。
興奮してはしゃいでいるだけにも見えるが、とても可愛い。
手を伸ばすと、そこへ王家の伝書鳥が納まり手紙へと姿を変える。
ソゴゥは手紙に目を走らせてから立ち上がると「王からの呼び出しだ、直ぐに出る」とジェームス達に伝える。
ソゴゥは返事を書いて、再び白い丸っとした鳥に変えて送り出し、昨夜も着た重要な場での着用を義務付けられた司書服に着替えると、悪魔を振り返った。
立ち上がると、擬態しているとはいえソゴゥより頭一つ大きい。黒い髪、赤い瞳、エルフが横に突き出た尖った耳なのに対し、縦に尖った耳をしている。
王の許可が下りれば、他の司書達には護衛の悪魔として紹介するつもりだから、容姿はこのままでいいだろう。
ただ、服がな・・・・・・・。
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