上 下
21 / 46
3 図書館暮し始めました

3- 7.図書館暮し始めました

しおりを挟む
「ソーちゃんから、毎週異世界転生の講義を聞いていたから、母さんこっちで生まれてすぐに記憶が戻っても、慌てなくて済んだわ。それから、十五歳でこの図書館で働くことを余儀なくされて、でもお父さんに出会わないと、またソーちゃん達に会えないじゃない? だから、お父さんが図書館に来たのを見つけたときは、嬉しくて、猛アタックよ! それで、4回も駆け落ちしては連れ戻されて・・・・・・・」
「やっぱり駆け落ちしていたんだ! そうだって思っていたよ! 俺たちに会えないのには必ず理由があるって」
「ソーちゃん!」
「父さんや、母さんが俺たち手放すなんて絶対にないって思っていたから。まあ、俺は母さんは、この国のお姫様なんじゃないかって思っていたけど」
「まあ、ソーちゃん」
「それで、俺たちと暮らせないのは、やっぱりレベル6だから?」
「そうなのよ、そういえばソーちゃんはレベルMAXなんてすごいわ!! レベル5はこの国で重要人物扱いになるけど、レベル6は世界にも影響力をもつ立場になるのよ。レベル7の場合、おいそれと外出することも出来ない超重要人物認定されるわね、国外に出る際は各国で国賓扱いになるほどの」
「そういうの、不自由だね」
「そうなよ、そして母さんが皆と一緒に暮らせなかった理由が、イグドラシルのレベルのせいなのよ。過去に三人イグドラシルのレベル6が存在していたのだけど、この三人の子供はみな拐われて、不幸な目に遭っているの。最初のレベル6も女の人で、この人は職務時間以外を市内の屋敷で旦那さんとお子さんの三人で暮らしていたのだけれど、彼女と旦那さんが職務で屋敷を離れて、シッターさんが子供の面倒を見ている間に魔族に拐われてしまったの。理由は、その子供が大陸で最も魔力が強い子供だったから。二人目の時も似たような状況で、この時は、子供は敵対していた国に連れていかれてしまって、見つけ出したときは、感情の抜け落ちた、魔力だけを魔術に供給する道具のようになってしまっていたというの。三人目は、流石に誘拐を恐れて、セキュリティの高い王宮に匿われながら育ったのだけど、王宮内部に裏切り者がいて、この子も行方不明になったままなの」
「イグドラシルは王宮並みのセキュリティだって言っていたけど、なんでイグドラシルで子供と一緒に暮らさないの?」
「イグドラシルには選ばれた者以外は、暮らすことが出来ないの。これはルールとかではなくて、レベル3以上でないと、ここで日没から二時間経過したあたりで魔力をイグドラシルに吸収されてしまうからなの」
「え、なにそれ、怖くない? 俺大丈夫?」
「ソーちゃんはむしろ、この中にいれば無限の魔力をイグドラシルから供給され続けるから、ここにいたら敵なしよ」
「狭い国の王様だね」
「そうね、私たち司書はこのイグドラシルに仕える、無敵の使用人って感じなのよ」
「それで、俺や兄さんたちが園に預けられたんだね」
「そう、父さんとオスティオスさんは親友で、そうでなくても、オスティオスさんは信用のできる人だってわかっていたから。周囲に、イグドラシルのレベル6の子供だとういうことがばれないように秘密にして、オスティオスさんにソーちゃん達を守ってもらっていたの」
「そっか」
「ソーちゃんはレベル7としてイグドラシルに選ばれて、イグドラシルで暮らすから、まずは安心だけど、お兄ちゃんたちは、自分で自分の身を守れるくらい強くなってからじゃないと、母さんの、レベル6の子供だとばれないようにしないといけないのよ」
「そうだね、魔力があっても使いこなせなかったら弱いのと一緒だからね。一緒に暮らせなかった理由も、母さんの存在を秘密にしている理由もわかった。でも、どうしても一つだけ納得できないことがあるんだけど・・・・・・・なんで、俺皆と違う髪? 耳も丸いし、ビジュアルが前世のままって・・・・・・・」
「ソーちゃん、それはね、ソーちゃんが自分でそうしたからなのよ」
「え? なんで?」
「ソーちゃんは生まれた瞬間は、母さんと同じ白銀の髪で、目が開いたときは淡いエメラルドグリーンの瞳をしていたのよ。まさにエルフ! って感じだったのに、父さんが抱っこしていたとき、階段でツマズいてソーちゃんを落っことしちゃったのよ。階段を転がりながら、ソーちゃんの魔力が建物を揺らすほどに膨らんで、階段の下まで落ちて大泣きしだしたときには、周辺地域一帯が震度3程度揺れたわ・・・・・・・そして、みるみる髪の毛が黒く、目もこげ茶になって、耳も人間の耳になっていたの」
「ん? 俺を階段から落っことしたの? 父さん・・・・・・」
「わざとじゃないのよ、でも物凄い慌てようで、魔王が覚醒したって大騒ぎよ。母さんは浮気を疑われるんじゃないかと一瞬心配したけれど、父さんは全くその可能性を思いつかない様子だったから、安心したわ。母さんは前世の記憶があったから、前世のソーちゃんになっちゃったってわかったけど、父さんには記憶がないから、黒髪の人物との浮気を疑われるかと思ったの」
「でも、エルフってそもそも黒髪いないじゃん」
「そうなのよね、茶色ならごく稀にいるけど、何故か女性にしか現れない色だし」
「そうなの?」
「少なくとも、母さんは男のエルフの茶髪は見たことないわね。茶髪のエルフは、竜に懐かれがちな特徴があるのよ」
「あー、そういう先生いたよ、ってか、なんで転がって元に戻っちゃたんだろう?」
「ソーちゃんの魔力が大きかったことと、自分と自分以外の境を認識した瞬間、自分を前世の姿で定義してしまったんじゃないかと思うのよ」
「うん、よくわからないけど、母さんには、その時、俺の魔力が俺を変えたように見えていたんだね」
「そう、それよ」
「でも、それだったら、前世の記憶を持って生まれてきてもよさそうなものなのに、俺が、前世のこと思い出したのって、六歳くらいだったよ。石に頭ぶつけて、それで思い出した」
「それは、お父さんが、ソーちゃんを落っことした時に頭をぶつけて、そのショックで忘れちゃっていたんじゃないかしらね」
「父さん、子供も五人目で、扱いが雑になっていたのかな? 赤ちゃんを落っことすなんて大罪だからね、自分の事ながら言わせてもらうけど」
「ホントそれは、ホント申し訳ない。母さんからも謝ります。とまあ、そんな感じで、改めてソーちゃん、会えて嬉しいわ!」
「俺もだよ、司書になるなんて嫌だなって思っていたけど、母さんに会えてよかった」
「ただし、ソーちゃんが、誰にも拐われたりしないよう、母さんは明日から鬼コーチになりますよ。覚悟していてね」
「ハハ、お手柔らかにお願いします」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。 その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。 そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。 なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。 私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。 しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。 それなのに、私の扱いだけはまったく違う。 どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。 当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘
ファンタジー
※プロローグ以降の各話に題名をつけて、加筆、減筆、修正をしています。(’23.9.11) <内容紹介> ある日目覚めた「私」は、自分が乙女ゲームの意地悪で傲慢な悪役令嬢アリアナになっている事に気付いて愕然とする。 しかもアリアナは第一部のモブ系悪役令嬢!。悪役なのに魔力がゼロの最弱キャラだ。 このままではゲームの第一部で婚約者のディーンに断罪され、学園卒業後にロリコン親父と結婚させられてしまう! 「私」はロリコン回避の為にヒロインや婚約者、乙女ゲームの他の攻略対象と関わらないようにするが、なぜかうまく行かない。 しかもこの乙女ゲームは、未知の第3部まであり、先が読めない事ばかり。 意地悪で傲慢な悪役令嬢から、お人よしで要領の悪い公爵令嬢になったアリアナは、頭脳だけを武器にロリコンから逃げる為に奮闘する。 だけど、アリアナの身体の中にはゲームの知識を持つ「私」以外に本物の「アリアナ」が存在するみたい。 さらに自分と同じ世界の前世を持つ、登場人物も現れる。 しかも超がつく鈍感な「私」は周りからのラブに全く気付かない。 そして「私」とその登場人物がゲーム通りの動きをしないせいか、どんどんストーリーが変化していって・・・。 一年以上かかりましたがようやく完結しました。 また番外編を書きたいと思ってます。 カクヨムさんで加筆修正したものを、少しずつアップしています。

処理中です...