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2 エルフの国と生贄の山
2- 11.エルフの国と生贄の山
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薄暗い洞窟の中、穴の中心あたりの天井付近が眩しく光った。
ソゴゥが編み出したオリジナル魔術の立体映像による、光の球だ。
皆の視線がそちらへと向く。
「何だアレは!」
敵味方の声が聞こえ、ソゴゥは視線をそこへ固定する。
まるで召喚するように、残りの子供たちをそこへ瞬間移動させる。
光りが弾け、中から現れたように、浮遊する翼を持つ者たち。
その中心にあるモノを見て、スパルナ族は歓喜に打ち震え、感嘆の声を上げ、気絶する者まて現れた。
輝く長い髪、桃色を帯びた黄金色の肌、腹をベルトのように抑える二本の腕のほかに、四本の腕はそれぞれ蓮の花、牡丹、百合、タイサンボクを持ち、四枚の赤い翼はメラメラと燃え続けている。
額に一つの縦長の目、そのほか四つの目が赤い光彩を光らせ、下半身に金の布を纏っている。そして、その中心のモノに付き従うように、赤く燃える翼を持った青い肌をもつ少女たちが取り囲む。
「おお、我らが神よ」
ひれ伏す者たち、そして啞然として立ち尽くす赤髪の男。
この瞬間に、ヨドゥバシーが特殊部隊によって奪還されていたにも拘らず、スパルナ族たちはそれどころではないと、神を崇め奉っている。
こちら側から見れば、中心のイセトゥアンを有翼人の少女が抱え、もう一人、有翼人の少女が背中側に張り付き、手を四本、翼を四枚に見えるように飛んでいるのが丸わかりなのだが、向こうからは見えないように工夫されている。
「俺、プロデュース」と、ドヤ顔で振り返るソゴゥ。
夜な夜な練習していた、立体映像やプロジェクションマッピングの要領で、このエンタメ空間を生み出している。とはいえ、楽しんでいるのはソゴゥただ一人だったが。
オスティオスもニトゥリーも、イセトゥアンとその他の有翼人が、何らかの方法で神々しく演出されていることは理解しているが、その方法の難解さと、それをやっているのがこの十歳のソゴゥだということに驚愕し、固まっていたのだ。
ソゴゥは、向こう側でスパルナ族が制圧されたのを確認し、イセトゥアンをこちらに呼び戻す。少女たちもやってきて、感謝を伝えるようにソゴゥを取り囲み、涙と鼻水で顔を汚しながらも大はしゃぎだ。
「ちびコーチ見てくれましたか!」
「よくやったなお前たち! 赤毛もよく頑張ってイセ兄を持ち上げた。上出来だ」
「グレナダです私の名前、ちびコーチの名前も教えてください」
「ソゴゥだ」と耳を真っ赤にしてソゴゥが横を向く。相変わらず、ふざけていないとまもに異性と話せないようだ。
「イセ兄よ、それどうなっとるん?」
「イセ兄は、変身出来るんだよ。別人に変身することもできるし、肌の色や、目の色を変えたり、髪の毛や爪の長さを変えられるんだ。俺は、イセ兄が別人になりすまして、女子の追跡から逃れているのを目撃して知ったんだけどね。その後、何ができるか追求しまくって、この魔法のことを吐かせた」
「魔法はともかく、クソじゃ」
「クソよ」と唾棄するように言うニトゥリーとミトゥコッシー。
「いや、まずは褒めてくれよ~」
「それで、ソゴゥ、この有翼人の少女たちは?」
「園長先生、この子たちも俺たちのように、化け物に生贄にされたんだ。お家に帰してあげて!」と急に子供らしい、ウルウルした目で訴えるソゴゥ。
兄弟達からは「わざとらしすぎない?」と言われているが、教師たちには覿面である。
教師たちはとにかく園の子供には甘い。そして自覚がないのである。
スパルナ族の大人たちは全て拘束され、特殊部隊が有翼人たちの国、ガルトマーン王国の衛兵を呼んできて引き渡した。
駆け付けた衛兵は赤い翼をもつガルーダ族だった。
化け物は一所に留まることはない。いずれ目を覚まし、早めに何処へ行ってくれることをオスティオスは願う。
スパルナ族の男が、自分の娘をあの化け物に捧げて、十年以上が経過していた。一瞬動き出した星蝉は、何故かすぐに休止状態となったという。実は自分の娘が、星蝉を中から眠らせていたのだが、そうとは知らず、カルトの様な洗脳で仲間を集め、魔力の強い子供を拐ってきては投げ入れ続けた。
それが、効果がないと見切りをつけ、もっと魔力の強い者が必要だと、十年前白羽の矢が立ったのが、この兄弟達だった。
そして十年越しの計画により、連れ去りを成功させたのだ。
星蝉の中にいた少女たちは、十年の時の経過に驚いていた。彼女たちは、投げ入れられて、せいぜい数ヶ月くらいに思っていたという。
特殊部隊五人のうち三人と、数人の教師を状況説明のために残し、オスティオスと子供たちは帰国の途に着く。
全てが終わったと安堵の帰路へつかんとする中、約一名だけが、いまだ号泣し続けている。
「恐がっだよう、マジでみんな喰われちゃったがど思っだよう、うあああん」
ソゴゥの腰に取り付いて泣き続けるヨドゥバシー。
「うぜえ、離れろ」
「だって、だって、うあああん」
「こいつ、人の服で鼻水拭いてる・・・・・・・」
オスティオスは年相応の反応を見せるヨドゥバシーに、ほっこりした気持ちになる。
ソゴゥに至っては、中に成人男性が入っているんじゃないかとさえ疑っていた。
肝が据わりすぎている。
「ヨドよ、お前が有翼人に捕まって、震えながら兄弟を心配している間、イセ兄はのう、有翼人の女子にひとり囲まれて、ハーレムをご満悦よ」
「マジで?」
「おう、マジでじゃ」
「勇者様って言われて、ご満悦だった」
「いやいやいや、ちがうって、そんなことないって」
光速で首を振るイセトゥアン。
ヨドゥバシーはイセトゥアンを冷めた目で一瞥したのち「俺、今日ソゴゥと寝る~」と甘えだした。
「ソゴゥ、マジ無敵」
「それな」
「よせよ~、もっと褒めろ、お願いします」
ふんぞり返るソゴゥを、ヒョイと持ち上げ、ペル・マムは自分の飛行竜に乗せる。
「さあ、そろそろ帰りましょう」
「母さん、じゃなかった、先生・・・・・・・」
「うふふ、皆が無事で本当に良かったわ」
一行は飛行竜に乗ってガルトマーン王国の火山群を飛び立った
ソゴゥが編み出したオリジナル魔術の立体映像による、光の球だ。
皆の視線がそちらへと向く。
「何だアレは!」
敵味方の声が聞こえ、ソゴゥは視線をそこへ固定する。
まるで召喚するように、残りの子供たちをそこへ瞬間移動させる。
光りが弾け、中から現れたように、浮遊する翼を持つ者たち。
その中心にあるモノを見て、スパルナ族は歓喜に打ち震え、感嘆の声を上げ、気絶する者まて現れた。
輝く長い髪、桃色を帯びた黄金色の肌、腹をベルトのように抑える二本の腕のほかに、四本の腕はそれぞれ蓮の花、牡丹、百合、タイサンボクを持ち、四枚の赤い翼はメラメラと燃え続けている。
額に一つの縦長の目、そのほか四つの目が赤い光彩を光らせ、下半身に金の布を纏っている。そして、その中心のモノに付き従うように、赤く燃える翼を持った青い肌をもつ少女たちが取り囲む。
「おお、我らが神よ」
ひれ伏す者たち、そして啞然として立ち尽くす赤髪の男。
この瞬間に、ヨドゥバシーが特殊部隊によって奪還されていたにも拘らず、スパルナ族たちはそれどころではないと、神を崇め奉っている。
こちら側から見れば、中心のイセトゥアンを有翼人の少女が抱え、もう一人、有翼人の少女が背中側に張り付き、手を四本、翼を四枚に見えるように飛んでいるのが丸わかりなのだが、向こうからは見えないように工夫されている。
「俺、プロデュース」と、ドヤ顔で振り返るソゴゥ。
夜な夜な練習していた、立体映像やプロジェクションマッピングの要領で、このエンタメ空間を生み出している。とはいえ、楽しんでいるのはソゴゥただ一人だったが。
オスティオスもニトゥリーも、イセトゥアンとその他の有翼人が、何らかの方法で神々しく演出されていることは理解しているが、その方法の難解さと、それをやっているのがこの十歳のソゴゥだということに驚愕し、固まっていたのだ。
ソゴゥは、向こう側でスパルナ族が制圧されたのを確認し、イセトゥアンをこちらに呼び戻す。少女たちもやってきて、感謝を伝えるようにソゴゥを取り囲み、涙と鼻水で顔を汚しながらも大はしゃぎだ。
「ちびコーチ見てくれましたか!」
「よくやったなお前たち! 赤毛もよく頑張ってイセ兄を持ち上げた。上出来だ」
「グレナダです私の名前、ちびコーチの名前も教えてください」
「ソゴゥだ」と耳を真っ赤にしてソゴゥが横を向く。相変わらず、ふざけていないとまもに異性と話せないようだ。
「イセ兄よ、それどうなっとるん?」
「イセ兄は、変身出来るんだよ。別人に変身することもできるし、肌の色や、目の色を変えたり、髪の毛や爪の長さを変えられるんだ。俺は、イセ兄が別人になりすまして、女子の追跡から逃れているのを目撃して知ったんだけどね。その後、何ができるか追求しまくって、この魔法のことを吐かせた」
「魔法はともかく、クソじゃ」
「クソよ」と唾棄するように言うニトゥリーとミトゥコッシー。
「いや、まずは褒めてくれよ~」
「それで、ソゴゥ、この有翼人の少女たちは?」
「園長先生、この子たちも俺たちのように、化け物に生贄にされたんだ。お家に帰してあげて!」と急に子供らしい、ウルウルした目で訴えるソゴゥ。
兄弟達からは「わざとらしすぎない?」と言われているが、教師たちには覿面である。
教師たちはとにかく園の子供には甘い。そして自覚がないのである。
スパルナ族の大人たちは全て拘束され、特殊部隊が有翼人たちの国、ガルトマーン王国の衛兵を呼んできて引き渡した。
駆け付けた衛兵は赤い翼をもつガルーダ族だった。
化け物は一所に留まることはない。いずれ目を覚まし、早めに何処へ行ってくれることをオスティオスは願う。
スパルナ族の男が、自分の娘をあの化け物に捧げて、十年以上が経過していた。一瞬動き出した星蝉は、何故かすぐに休止状態となったという。実は自分の娘が、星蝉を中から眠らせていたのだが、そうとは知らず、カルトの様な洗脳で仲間を集め、魔力の強い子供を拐ってきては投げ入れ続けた。
それが、効果がないと見切りをつけ、もっと魔力の強い者が必要だと、十年前白羽の矢が立ったのが、この兄弟達だった。
そして十年越しの計画により、連れ去りを成功させたのだ。
星蝉の中にいた少女たちは、十年の時の経過に驚いていた。彼女たちは、投げ入れられて、せいぜい数ヶ月くらいに思っていたという。
特殊部隊五人のうち三人と、数人の教師を状況説明のために残し、オスティオスと子供たちは帰国の途に着く。
全てが終わったと安堵の帰路へつかんとする中、約一名だけが、いまだ号泣し続けている。
「恐がっだよう、マジでみんな喰われちゃったがど思っだよう、うあああん」
ソゴゥの腰に取り付いて泣き続けるヨドゥバシー。
「うぜえ、離れろ」
「だって、だって、うあああん」
「こいつ、人の服で鼻水拭いてる・・・・・・・」
オスティオスは年相応の反応を見せるヨドゥバシーに、ほっこりした気持ちになる。
ソゴゥに至っては、中に成人男性が入っているんじゃないかとさえ疑っていた。
肝が据わりすぎている。
「ヨドよ、お前が有翼人に捕まって、震えながら兄弟を心配している間、イセ兄はのう、有翼人の女子にひとり囲まれて、ハーレムをご満悦よ」
「マジで?」
「おう、マジでじゃ」
「勇者様って言われて、ご満悦だった」
「いやいやいや、ちがうって、そんなことないって」
光速で首を振るイセトゥアン。
ヨドゥバシーはイセトゥアンを冷めた目で一瞥したのち「俺、今日ソゴゥと寝る~」と甘えだした。
「ソゴゥ、マジ無敵」
「それな」
「よせよ~、もっと褒めろ、お願いします」
ふんぞり返るソゴゥを、ヒョイと持ち上げ、ペル・マムは自分の飛行竜に乗せる。
「さあ、そろそろ帰りましょう」
「母さん、じゃなかった、先生・・・・・・・」
「うふふ、皆が無事で本当に良かったわ」
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