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2 エルフの国と生贄の山

2- 2.エルフの国と生贄の山

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俺が前世の記憶を思い出したのは、六歳くらいの頃、四年前だ。

エルフの子供はそのぐらいの年齢になると、今まで呼吸のように取り込んで出すだけだった魔力を、めて放つ、ということができるようになる。
この溜めて出すが、いわゆる魔法というやつで、溜め込む技量が上がると、魔法の強度が上がる仕組みだ。
溜め込んだ魔力を、任意の形で放出する。その際に形付けるのが音声や、組指、中には踊りなどもある。
一番簡単なのが、魔法用の回路が書かれた図面に、ただ魔力を流すもの。これなら、難しい呪文の詠唱や理解がなくても、紙一枚で発動させることができる。

色々な魔法図の書かれた紙が配られ、魔力をこれに流して発動させ、感覚を覚えていくという授業を始めるのが、この六歳頃だった。
最初のころは、この授業は屋外で行われ、だだっ広い草原で年の近い(俺の時は三人だった)子供をその倍の大人が囲んで、慎重シンチョウに行われた。
エルフというものは、とても合理的な考え方をするようで、無駄や無意味なことを嫌うが、労力をしまず、労働を苦にしていない種族のようだ。
とはいえ、俺はこの園の生活しか知らないから、他のエルフがどうかわかないけど。
危険を伴う子供たちの授業に、最善の警戒で大人が当たる。

オスティオス園長が、地べたに座る子供たちに魔法図の書かれた紙を配る。

「その紙を地面に置いて、両手をこう、開いてパーにして、手から、紙に魔力を放出しますよ皆さん。では、最初はビオラから」と、端の女児に声を掛ける。
「ロウソクの様な、小さな赤い炎が生まれますから、そうしたら手を放してください」と補足する。
配られた魔法図は全て、火球を生み出すものだった。
ビオラはなかなか勘がよく、直ぐに紙の上にほんわりと暖かなオレンジ色の光が集まりだして、ユラユラと炎の形をなして留まった。

すごい! 俺は、純粋にビオラとその手元の炎を見てそう思った。

その後、真ん中に座っていたローズも、同様に炎を出すことに成功し、俺の番になった。
緊張と、ワクワクで広げた手がひんやりとして、そしてしばらくすると温かくなった。
「できた!」と、興奮度合いを高まらせた瞬間、炎は勢いを増して、俺の手から腕へ、そして全身へ広がった。
大人たちのアセる声と、オスティオス園長の冷却魔法の詠唱、それが発動する前に炎は跡形もなく消え、俺当人は火傷もなく、ただ感動に小刻みに震えていた。
そして思った。
これだ! これをやりたかったんだ! と。

その雷に打たれたような衝撃に「うおぉおおおおおお!!」と叫びながら地面を転がり、草むらの石に頭をぶつけて気を失った。

後で、その場にいた女児二人に聞いたが、あんなにアワてたオスティオス園長を見たのは初めてだったと。
魔王が上空から、突然宣戦布告してきたかのような慌てようだったらしい。
それは、本当に申し訳なく思っている。
突然奇声を発して、転げまわったりしたおかげで、何か良くないものに取りかれたのではと心配されたようだ。
園長たちの心配は、あながち的外れでもない。
俺は、こちらでも再び中二病に取り憑かれてしまったのだから。

前世の記憶を取り戻した俺は、少し切なくも、大いに今生を受け入れ、夜な夜な男子棟を抜け出しては、かっこいい術の発動練習にイソしんで過ごした。

そして、そこそこの大技を習得して現在に至る。
特にお気に入りの技は、マーキングしたマトに物を当てるやつ。
最初はいているスリッパをって、ヨドゥバシーの顔面にヒットさせる遊びだった。
魔法を使って当てることはできないかと考えたのだ。
試行錯誤しているうちに、百発百中の技を編み出した。
プロセスとしては、まずは術を発動させて射出する対象物をスタンバイ状態にして、次に視界をマーキング用に切り替え、当てたい場所にマーキングを行う。
マーキングには、視線をコンマ数秒固定すればポイントに印が付き、そこ目掛けて、対象物を発射するというもの。
最初は一つの物を一か所に当てる地味な術だったが、今は、小型ナイフくらいの大きさなら、百個を同時に的に当てられるし、その距離は、視界の届く範囲。つまり、俺の目に見えているものは全て的となる。
精度もマーキングさえ正確にできていれば、対象が動いても、追尾して当たる。
ただ、威力は弱い。暴れている百頭の象に、麻酔針を飛ばして全頭を眠らせることができるレベルだ。試したことはないが・・・・・・・。
的の大きさは、ネズミくらいまでなら余裕。虫だと、カブトムシくらいの大きさがないと難しい。
やはり、大きい的の方が、マーキングがしやすい。
この世界の水準がまだよくわからないが、園の授業ではもっと地味な事しか習わないので、同年代ではかなり良いのではと思っている。
あとは瞬間移動。
これは自分の周りを魔力で覆い、次に視界をマーキング用に切り替え、行きたい場所にマーキングを行う。マーキングには、視線をコンマ数秒固定すればポイントに印が付くのは、先の魔術と同じ。
ただし、その場所に自分の体積と同様の空間があるかどうかと、その場所での数分間の生存率が計測され、90%を切ると警告が出て、80%を切るとエラーとなる。
つまり、見えているからと言って、空気のない大気圏外へ瞬間移動はできないし、煮えたぎるマグマの中もエラーとなる。

他に、中二の夢を詰め込んだ、ものすごい技を、四年の期間をかけて制作したが、これをヨドゥバシー辺りに試したりしたら、トラウマを植え付けてしまうかもしれないので自重ジチョウしている。
悪党をらしめるシチュエーションか、ホラー系のアトラクション施設でヤトってもらうしか、発揮ハッキする機会はないだろう。
後者の場合、R18となることは必須。いかがわしい意味ではなく。
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