【完結】誰にも知られては、いけない私の好きな人。

パンがなければ、お菓子を。

73話

「俺のことだけ、考えろよ」
　言われるまでもなかった。
　今のわたしには、織部くんのことしか頭になかった。他には何もない。
　片方の手が足の間を、背中を支えてくれていたもう一方の手は、前に回ってくる。
　支えがなくなって、わたしはよろめいた。
　すぐ後ろに壁があって、そこへもたれながら、織部くんの手にすべてをゆだねてしまう。
　本当は、もっと抵抗しなきゃいけないのに。
「お、りべ……くん」
　ドアの外に神父がいて、ここは学校で、それが判っているのに。
　もっともっと織部くんに触れられたい。ずっと一緒にいたい。
「そんな、顔するな。……バカ」
　ブラウスの上から胸が揉みしだかれる。
　直接、触れてもらえないことがひどくもどかしい。
　もう一度、彼の唇が近づいてくる。
　自分から唇を開くと、望んでいたよりももっと、深いくちづけを織部くんはくれた。



　ブラウスの裾がスカートのウエスト部分から、引っ張り出される。
　その中に固い大きな手が潜り込む。ひやっとした感触が鳩尾にきた。
　下から押し上げるようにふくらみを大きな手が包み込み、ブラジャーがずらされる。
　痛いほどに勃ちあがった胸の先端を冷たい指が摘まむ。
　きっとそこは、ぷっくりと色づいているに違いない。
　普段以上に敏感になったそこを引っ張るように擦られた。
「ん……んっ、あふっ……」
　声にならない喘ぎが、咽喉の奥から溢れてくる。
　彼がキスしてくれていないと、恐ろしいほどはしたない嬌声をあげていたかもしれない。
　いやらしい水音が、自分の中から響く。
　足の間のその内奥から、ぐずぐずと全身が溶けていきそう。
　外に聞こえてしまいそうで、怖い。怖いのに……。感じやすい部分を、同時に責め立てられて、眼の前で小さな火花が散る。
　唇を、胸を、足の間を。

　止まらない。
　どうしよう。
　自分の意志とは関係なく身体が、もっと欲しがっている。
　ダメだ。ダメ。ダメ。ダメ。
　もう一人の自分がそう叫んでいるのに、身体は言うことを聞かない。
　びくびくと痙攣を繰り返しながら、足の間にある織部くんの指を離すまいと呑み込んでいる。
　まるで、わたしの頭の中をすべて見通しているかのように、織部くんの指は蠢く。
　入口近くを浅く抜き差ししながら、さらなる快感のありかを押しつぶすようにぐりぐりと動かす。
「んんん……っ！！！」
　一瞬、頭の中が真っ白になったような気がした。