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女人禁制の部屋。
49話
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前言撤回。“ショタ”は、当てはまらない。こんな子供がいるものか。
また、おちょくられてる。手の上で転がされて遊ばれてる。
「…………また、からかってるんでしょ」
「からかっているのは、どっちだ。帰りたいのか、帰りたくないのか」
「だって、織部くんの部屋って、学校の寮……」
「何か問題あるか」
しれっと、織部くんは言う。
彼の学校が有名なのは、超進学校というだけではなく、厳格なカトリック系の学校なのだ。
校内には、裾の長い黒い僧服を着て胸に十字架を着けている修道士がいる。
以前に一度だけ、入ったことがあったが、いかにも良家の子息が通っていそうな上品な雰囲気だった。
小学校から中学。高校と大学に至るまで一貫教育を行っており、今どき珍しい全寮制だ。
年に一度の学園祭には、父兄までは入れるそうだが、宗教色が濃すぎてクリスチャン以外はほとんど踏み込めないらしい。
「大アリでしょ。どうやってわたしが、男子寮に入れるのよ」
わたしがそう言っても、いたって落ち着いた様子で、織部くんは運転している。
最近、免許をとったとは思えない。
わたしだったら、いきなり急ブレーキしたりするようなところでも、織部くんの運転はスムーズだ。
何をやらせても、そつなくこなす。こういうタイプの人間がたまにはいるらしいが、少しは恵まれない者にも分けて欲しい。
神さまは不公平だ。
「女子寮に男が入るのは、まずいだろうが、その反対は問題ない」
織部くんは、やけ断定的に言い切るので、つい、そうなのかな……と惑わされてしまう。
完全に脳内調教されている。ヤバい。しっかりしろ。
それは、あり得ない。絶対にない。
冷静になろうとする気持ちとは裏腹に、助手席から見る彼の横顔に見惚れてしまう。……バカ過ぎる。
恐慌状態のまま、わたしは早口でまくし立てた。
「いや、あるから、普通にそれもまずいから、犯罪だから、青少年健全育成保護条例違反だから、地方裁判所で有罪だから!!!」
「それは、俺のほうじゃないのか」
とんでもないことを言い出した。真顔で言うことなのか?
「……わたしが青少年を誑かしているんだわ」
「お前はバカか。あの夜に何をされたのか、忘れたのか」
またバカって言われた。だけど、すでに自覚している。
「だって、あれはわたしが“いい”って言ったからでしょ」
「それなら今度も“いい”と言え。黙っていれば判らん。学校に必要のないことを申告することはない」
「カトリック系の学校の生徒が言うことなの」
「神は寛大だ」
厳かに織部くんは答える。
いや、そうじゃないでしょ。違うでしょ。キリスト教ってもっと禁欲的な……と言いかけて、それでは自分がいかにも邪なことを考えているようで止めた。
「寮長の先生に叱られるよ」
「寮長は俺だ」
思わず彼の一言にわたしは、シートからずり落ちそうになった。
「なんで!?」
「そういう決まりだ。別におかしなことでもないだろう」
「だって、囚人に看守をさせるようなもんじゃないの」
「どういう意味だ。監獄じゃないぞ。寮内での飲酒喫煙は禁止されているが」
「いや、それ寮じゃなくても禁止だから」
「そうだったかな」
「しれっと、危ないこと言っちゃってるのよ」
「お前がくだらないことを言ってる間についたぞ」
「なんですと?」
声が裏返った。
また、おちょくられてる。手の上で転がされて遊ばれてる。
「…………また、からかってるんでしょ」
「からかっているのは、どっちだ。帰りたいのか、帰りたくないのか」
「だって、織部くんの部屋って、学校の寮……」
「何か問題あるか」
しれっと、織部くんは言う。
彼の学校が有名なのは、超進学校というだけではなく、厳格なカトリック系の学校なのだ。
校内には、裾の長い黒い僧服を着て胸に十字架を着けている修道士がいる。
以前に一度だけ、入ったことがあったが、いかにも良家の子息が通っていそうな上品な雰囲気だった。
小学校から中学。高校と大学に至るまで一貫教育を行っており、今どき珍しい全寮制だ。
年に一度の学園祭には、父兄までは入れるそうだが、宗教色が濃すぎてクリスチャン以外はほとんど踏み込めないらしい。
「大アリでしょ。どうやってわたしが、男子寮に入れるのよ」
わたしがそう言っても、いたって落ち着いた様子で、織部くんは運転している。
最近、免許をとったとは思えない。
わたしだったら、いきなり急ブレーキしたりするようなところでも、織部くんの運転はスムーズだ。
何をやらせても、そつなくこなす。こういうタイプの人間がたまにはいるらしいが、少しは恵まれない者にも分けて欲しい。
神さまは不公平だ。
「女子寮に男が入るのは、まずいだろうが、その反対は問題ない」
織部くんは、やけ断定的に言い切るので、つい、そうなのかな……と惑わされてしまう。
完全に脳内調教されている。ヤバい。しっかりしろ。
それは、あり得ない。絶対にない。
冷静になろうとする気持ちとは裏腹に、助手席から見る彼の横顔に見惚れてしまう。……バカ過ぎる。
恐慌状態のまま、わたしは早口でまくし立てた。
「いや、あるから、普通にそれもまずいから、犯罪だから、青少年健全育成保護条例違反だから、地方裁判所で有罪だから!!!」
「それは、俺のほうじゃないのか」
とんでもないことを言い出した。真顔で言うことなのか?
「……わたしが青少年を誑かしているんだわ」
「お前はバカか。あの夜に何をされたのか、忘れたのか」
またバカって言われた。だけど、すでに自覚している。
「だって、あれはわたしが“いい”って言ったからでしょ」
「それなら今度も“いい”と言え。黙っていれば判らん。学校に必要のないことを申告することはない」
「カトリック系の学校の生徒が言うことなの」
「神は寛大だ」
厳かに織部くんは答える。
いや、そうじゃないでしょ。違うでしょ。キリスト教ってもっと禁欲的な……と言いかけて、それでは自分がいかにも邪なことを考えているようで止めた。
「寮長の先生に叱られるよ」
「寮長は俺だ」
思わず彼の一言にわたしは、シートからずり落ちそうになった。
「なんで!?」
「そういう決まりだ。別におかしなことでもないだろう」
「だって、囚人に看守をさせるようなもんじゃないの」
「どういう意味だ。監獄じゃないぞ。寮内での飲酒喫煙は禁止されているが」
「いや、それ寮じゃなくても禁止だから」
「そうだったかな」
「しれっと、危ないこと言っちゃってるのよ」
「お前がくだらないことを言ってる間についたぞ」
「なんですと?」
声が裏返った。
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