【完結】誰にも知られては、いけない私の好きな人。

真守 輪

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愛情表現は、歪んでいるもの。

32話

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「や、だよぉ……ふえっ……えっ……織部く……ん」
 やりすぎたな。
 あせって手を離すが、もう遅かった。
 優衣は、子供みたいに声を放って泣き出してしまう。

「ぐすっ……えっ、えぐ……ふえ」
「優衣」
 俺は、ポケットからハンカチを出すと、涙とハナミズにまみれた彼女の顔を拭いてやった。
 ここまで泣かせたのは自分の責任ではあるものの、そんな子供子供した年上の彼女も、たまらなく可愛らしい。
 最初のうちは、いやいやするように顔を隠して抵抗していたが、俺が髪を撫でたり、背中をぽんぽんと叩いてやったりすると、やがておとなしくなる。
 スカートは裾が落ちて下半身は隠れているものの、胸もとは、いい加減に直したブラウスの薄い生地を通して、固く持ち上がった乳嘴が透けて見えていた。
 いやがる優衣の手をどけさせて、もう一度、ブラウスを脱がせてから、下着をつけなおしてやる。
 どさくさにまぎれて、乳嘴を指先で弾いてやったら、優衣は猫みたいな声をあげた。

 まずい。
 からかうつもりがこれ以上やっていたら、本当にガマンできなくなりそうだ。
 あわてて、ブラウスのボタンを上から順番に留めていく。
 その間も優衣は、べそべそと泣きじゃくりながら、されるがままになっていた。
 こいつ……本当に子供だな。
 いや、いくら恋人でも路上でこんなことされたら、泣くのは当然か。
 やりたい盛りの中学生でもあるまいし、一歩間違えれば強姦罪だ。

「優衣。俺が悪かった……だから、もう泣くな」
「……泣いてなんか……ない」
 ぐすっと鼻をすすりあげて、優衣は横を向いた。
 つんとした様子がおかしかったから、俺はまた彼女の正面へ回りこんでやる。
 鼻先がぶつかりそうなほどの至近距離で、顔を合わせてやると、また、ぷいと顔を背けた。
「こら」
 俺は、優衣の顎をつまんで強引にこちらを向ける。
「謝っているんだから、いつまでもすねるな」
「すねてないってば」
 真っ赤な鼻の頭。涙ではれぼったくなった瞼。
 そんな顔をしていても、やっぱり彼女は可愛らしくて、どうしようもないほどいじらしくて、たまらない気持ちにさせられる。胸の底が焦げるようだ。

 いつもの薄化粧をほどこして、パリッと仕事をしている姿もいい。
 家族と一緒にくつろいで、油断している顔も可愛い。
 だが、いちばんいいのはこうして俺と二人っきりでいる時だ。
 泣いていても笑っていても、今の彼女のこんな表情をさせるのが自分だと思うと、それだけで嬉しい。

「もうしない。お前のいやがることは」
「え……」
 びっくりしたように優衣は、大きな眼をしばたたかせて、俺を見上げている。
 そんなに驚くことか。
 いや、これは俺が散々、苛めたせいだな。
 少し反省しながら、彼女の顎をつまんだ手を伸ばして頬に触れた。
 ぷにぷにとした柔らかい感触。
 思わず、しゃぶりつきたくなるほど可愛い。
 ……いや。これがダメなのか。

「俺は優衣が好きなんだ……だから、もう」
 言い終わる前に、突然、優衣が俺の首に抱きついてきた。
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