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愛情表現は、歪んでいるもの。
25話
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「丁先」
優衣の父が握った石の数は十四。
これはニギリという行為で、どちらが黒(先番)か決定するのだ。
目上の者が白石を握り、その個数が奇数(半)か偶数(丁)かを相手が当てる。
俺は、黒石の碁笥を引き寄せた。
一礼してから碁盤に石を置いた。
優衣のいない部屋で、碁石の音だけが響く。
「こりゃいかん」
「投了ですか」
「まあ、たまには若者に花を持たせてやるか。優衣、お替わりを頼む」
父親が声をかけると、障子が開いて優衣が顔を出す。
あらかじめ用意してあったのか、新しい膳を運んでくれた。
優衣は、すぐに出て行かずに俺たちが碁笥を取り替えるのを面白そうに見ている。
俺が白石を取って置くのを見て優衣は、ぽそりと呟いた。
「……。織部くんの石になりたい、な……」
「……。…………。……」
俺は驚いて、優衣の様子を伺ったが彼女はひたすら俺の碁石を見つめている。
いや、俺の指先か。
石になりたい?
昔の映画でそんなのがあったな。
いや、あれは“わたしは貝になりたい”か。
そういえば、女というのは体の一部に……。
我ながら、バカな妄想が頭をよぎる。
無修正のポルノを見たところで、何の感慨もなかったはずだった。
むしろ、女子学生の集団を見ただけで、そのことを思い出したらゾッとしたものだ。
こいつと付き合うようになって、ようやく俺もまともな男の仲間入りをしたということか。
あるいは脳内が中学生レベルに退化しただけなのか。
いや。そんなことより、なんで石なんだ。
……俺の石?
碁石みたいに俺に摘まれたいってことか。
いつも、摘まんでるだろう。
鼻の頭とか、頬とか。
あいつの鼻も頬も、どこもかしも小さくて柔らかい。
ぷにぷにとした頬など、つきたての餅みたいだ。
だから、つい触りたくなる。
触っていて気持ちがいいし、軽くひっぱってやるとすぐ膨れるのが面白い。
見た目は、まるっきり子供みたいに小さくて華奢なのに胸は、服の上からでもはっきりと判るほど豊満だった。
そこに触れると、驚くほど敏感に反応する。
怯えきって涙目になるから、それ以上のことはできない。
だが、もっと敏感な部分もつまんでやりたい。
そのとき、彼女はどんな顔をするのだろう。
まさか、優衣はそれを望んでいる……わけがない。
バカらしい。
妄想が過ぎる。
あのオクテの優衣に、そんな発想そのものがないことぐらい判っている。
単純で純粋で、すぐにだまされる。
こんな俺の言うことをすぐ真に受けて、勝手に傷ついているバカだ。
そのつぶやきは本当に小さく、俺自身も優衣の声でなければ聞こえなかっただろう。
多分、彼女は無意識に考えていることを、口にしてしまったのか。
いや、俺の願望か?
中学生だって、こんなバカらしい妄想などしないはずだ。
慌てて碁盤の方へ集中しようとするが、今の優衣の言葉が脳内でリフレインする。
ダメだ。
集中できない。
二局目の碁は、もう終盤に入っていた。
「どうしたね。織部くん」
彼女の父が嬉しそうに言う。
形勢はもはや立て直しができないほど、不利である。
俺は、脇に置いてあった碁笥を盤の上に差し出した。
「投了かね」
「はい」
「ふむ、一勝一敗か」
優衣の父はすっかりご機嫌だ。
「織部くん、もう負けちゃったの。早かったのね」
屈託のない顔で優衣が言う。
誰のせいだと思っているんだ。
優衣の父が握った石の数は十四。
これはニギリという行為で、どちらが黒(先番)か決定するのだ。
目上の者が白石を握り、その個数が奇数(半)か偶数(丁)かを相手が当てる。
俺は、黒石の碁笥を引き寄せた。
一礼してから碁盤に石を置いた。
優衣のいない部屋で、碁石の音だけが響く。
「こりゃいかん」
「投了ですか」
「まあ、たまには若者に花を持たせてやるか。優衣、お替わりを頼む」
父親が声をかけると、障子が開いて優衣が顔を出す。
あらかじめ用意してあったのか、新しい膳を運んでくれた。
優衣は、すぐに出て行かずに俺たちが碁笥を取り替えるのを面白そうに見ている。
俺が白石を取って置くのを見て優衣は、ぽそりと呟いた。
「……。織部くんの石になりたい、な……」
「……。…………。……」
俺は驚いて、優衣の様子を伺ったが彼女はひたすら俺の碁石を見つめている。
いや、俺の指先か。
石になりたい?
昔の映画でそんなのがあったな。
いや、あれは“わたしは貝になりたい”か。
そういえば、女というのは体の一部に……。
我ながら、バカな妄想が頭をよぎる。
無修正のポルノを見たところで、何の感慨もなかったはずだった。
むしろ、女子学生の集団を見ただけで、そのことを思い出したらゾッとしたものだ。
こいつと付き合うようになって、ようやく俺もまともな男の仲間入りをしたということか。
あるいは脳内が中学生レベルに退化しただけなのか。
いや。そんなことより、なんで石なんだ。
……俺の石?
碁石みたいに俺に摘まれたいってことか。
いつも、摘まんでるだろう。
鼻の頭とか、頬とか。
あいつの鼻も頬も、どこもかしも小さくて柔らかい。
ぷにぷにとした頬など、つきたての餅みたいだ。
だから、つい触りたくなる。
触っていて気持ちがいいし、軽くひっぱってやるとすぐ膨れるのが面白い。
見た目は、まるっきり子供みたいに小さくて華奢なのに胸は、服の上からでもはっきりと判るほど豊満だった。
そこに触れると、驚くほど敏感に反応する。
怯えきって涙目になるから、それ以上のことはできない。
だが、もっと敏感な部分もつまんでやりたい。
そのとき、彼女はどんな顔をするのだろう。
まさか、優衣はそれを望んでいる……わけがない。
バカらしい。
妄想が過ぎる。
あのオクテの優衣に、そんな発想そのものがないことぐらい判っている。
単純で純粋で、すぐにだまされる。
こんな俺の言うことをすぐ真に受けて、勝手に傷ついているバカだ。
そのつぶやきは本当に小さく、俺自身も優衣の声でなければ聞こえなかっただろう。
多分、彼女は無意識に考えていることを、口にしてしまったのか。
いや、俺の願望か?
中学生だって、こんなバカらしい妄想などしないはずだ。
慌てて碁盤の方へ集中しようとするが、今の優衣の言葉が脳内でリフレインする。
ダメだ。
集中できない。
二局目の碁は、もう終盤に入っていた。
「どうしたね。織部くん」
彼女の父が嬉しそうに言う。
形勢はもはや立て直しができないほど、不利である。
俺は、脇に置いてあった碁笥を盤の上に差し出した。
「投了かね」
「はい」
「ふむ、一勝一敗か」
優衣の父はすっかりご機嫌だ。
「織部くん、もう負けちゃったの。早かったのね」
屈託のない顔で優衣が言う。
誰のせいだと思っているんだ。
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