【完結】誰にも知られては、いけない私の好きな人。

真守 輪

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コミュ障のつぶやき。

22話

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 優衣を知る以前は、それほど他人への執着を感じたことがなかった。
 子供のころのトラウマか。
 あるいは、もともと俺の性格によるものか。
 異性に限らず人間への関心は、薄いのかもしれない。
 一般的にこの年齢になると、自分でも押さえきれない性への欲望。
 不能でなければ、そんなものを持て余すことになるらしい。
 鬱々とした暗く滾るような、おぞましい感情を押さえ込むのには涙ぐましいほどの努力をしなくてはならないとも聞く。
 確かに、昔の俺にとって性欲は、罪悪感と紙一重だった。
 よく祖父が言っていた。
 すべての人間はアダムの罪を背負う。
 その原罪ゆえに、人間は生まれながらに堕落している。

 それは、聖職者でも同じことだ。
 修道院ほど戒律が厳しいわけではないが、カトリック系学校で幼稚舎のころから、家族よりも長い時間を過ごしてきた奴らは、皆がそれぞれに苦労してきている。
 学内で性犯罪へ走るやつもいた。
 男しかいない環境というのは、しみじみ不毛だ。
 そして、閉じられた社会というのは、その中で何が行われていたとしても、決して明るみにでることがない。

 幸い、俺には夢中になれるものが多かった。
 校内にある図書館は、興味を惹かれる本が山のようにあり、なりゆきで所属することになった部活は、意外にものめり込んだ。
 弓道は、団体戦もあるが、基本的に一人でするものだ。
 射るべき的は、己の中にある。
 心を落ち着かせて、的に中あてたときの達成感。
 あれは他では得られないものだ。
 その合間に定期考査があったり、ネットビジネスにまで手を出せば時間などいくらあっても足りないぐらいだ。
 眠れぬ夜に過去のトラウマを持て余すこともあったが、明けない夜などない。
 朝になれば忙しい日常が待っている。
 そのせいだろうか。
 自分だけの“恋人”が欲しいと思ったことなど、一度もなかった。
 それほどに日々は、充実して楽しかった。
 一日は短くあっという間に過ぎる。

 他人から告白されたり手紙を渡されたりしても、そもそも人間に興味が湧くこともないのだから、相手がブスだろうと美人だろうと、男でも女でも同じだった。
 恋愛という感情を否定するつもりもないが、俺には、まったく関わりのないことで、関わりたくもなかった。
 もっとも、そんなことを口にしたら数少ない友人が心配して、わざわざ無修正のポルノを持ってきたことがある。(寮内のPCには、アダルトサイトへのアクセス制限がかけられている)
 残念ながら男と女の違いなんて、たいしたものではないな……と妙な感慨が残っただけだ。

 おそらく俺には、人間同士のコミュニケーション能力が決定的に不足している。
 もはや“障害”と言ってもいいだろう。
 そもそも、世間にはコミュニケーションに問題を抱えている人間が多いわけだ。
 自分がその中のひとりだとしても、今さら、どうこうしようとは思わない。
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