11 / 92
戦略は、馬刺しと囲碁。
11話
しおりを挟む
初めて彼と出逢ったのは、彼の学校だった。
高校では、生徒を募集しない完全中高一貫校だという。
ものすごく広大な敷地の中に、中学校と高校がある。大学は、もうちょっと離れた場所にあるそうだ。
校門でもらった入校証を首からぶら下げて、高校の職員室を探す。
校内は学校というより、中世の城館みたいだ。
尖塔や十字架。わたしの知っている世界とはまるで切り離されたような世界。
ミッション系の学校らしく外国人の神父がときおり通り過ぎて行くのも珍しかった。
廊下のあちこちに、彫像が置かれ、巨大な宗教画が壁に飾ってある。
男子校だから、当たり前かもしれないけど女性がまったくいない。女性教諭ともすれ違うことがなかった。
もしかしたら、食堂とか保健室にはいるのかもしれないが、生徒たちが物珍しげにすれ違うのも恥ずかしい。
彼らの着ている最近では、すっかり見なくなった黒い詰襟の制服も、まるで神父の着ている僧服に見えてしまう。
私語をする学生もほとんどいないせいか、学校という雰囲気が感じられない。
どこかの魔法学校だって、もうちょっと活気があったはず……。
ここ、本当に現代の日本なの?
本気で心配になってくる。
校内では携帯電話が圏外になっているし、今どき携帯電話が繋がらない場所なんてないだろう……とか思っていたら、ここにあったよ。
螺旋階段を登りきったところで、袴姿の人にぶつかった。
見上げるほど背の高い男の人だ。学生にも見えないので、思い切って声をかけた。
「あの、すいません。職員室はどこですか」
「そこを右に曲がった突き当たりです」
初めての会話はそれだけだった。
わたしは、そのとき織部くんの低い声に聞き入り、振り向いた彼の端正な横顔に見惚れた。
すごく奇麗な人だけど、なんだかちょっと怖い。
それが第一印象。
そのときの織部くんは、道着袴だったので、てっきり剣道部の顧問の先生かと思った。(後で聞いたら弓道部だったのだが)
どうお礼を言ったのかも覚えていない。
頭を下げて逃げるようにその場を立ち去った。
教えられた職員室に行くと、会議中で立ち入り禁止になっている。
以前、お世話になった司書教諭に頼まれていた美術書を持ってきたのだ。ここまで来て、まさか会議中にあたるなんて。
会議は、どれくらいで終わるのだろう。
そもそも恩師の勤務先が男子校と知っていたら絶対に来なかった。
独特の雰囲気の中、部外者にはいたたまれない。
いったん、帰ろうかな。
高校では、生徒を募集しない完全中高一貫校だという。
ものすごく広大な敷地の中に、中学校と高校がある。大学は、もうちょっと離れた場所にあるそうだ。
校門でもらった入校証を首からぶら下げて、高校の職員室を探す。
校内は学校というより、中世の城館みたいだ。
尖塔や十字架。わたしの知っている世界とはまるで切り離されたような世界。
ミッション系の学校らしく外国人の神父がときおり通り過ぎて行くのも珍しかった。
廊下のあちこちに、彫像が置かれ、巨大な宗教画が壁に飾ってある。
男子校だから、当たり前かもしれないけど女性がまったくいない。女性教諭ともすれ違うことがなかった。
もしかしたら、食堂とか保健室にはいるのかもしれないが、生徒たちが物珍しげにすれ違うのも恥ずかしい。
彼らの着ている最近では、すっかり見なくなった黒い詰襟の制服も、まるで神父の着ている僧服に見えてしまう。
私語をする学生もほとんどいないせいか、学校という雰囲気が感じられない。
どこかの魔法学校だって、もうちょっと活気があったはず……。
ここ、本当に現代の日本なの?
本気で心配になってくる。
校内では携帯電話が圏外になっているし、今どき携帯電話が繋がらない場所なんてないだろう……とか思っていたら、ここにあったよ。
螺旋階段を登りきったところで、袴姿の人にぶつかった。
見上げるほど背の高い男の人だ。学生にも見えないので、思い切って声をかけた。
「あの、すいません。職員室はどこですか」
「そこを右に曲がった突き当たりです」
初めての会話はそれだけだった。
わたしは、そのとき織部くんの低い声に聞き入り、振り向いた彼の端正な横顔に見惚れた。
すごく奇麗な人だけど、なんだかちょっと怖い。
それが第一印象。
そのときの織部くんは、道着袴だったので、てっきり剣道部の顧問の先生かと思った。(後で聞いたら弓道部だったのだが)
どうお礼を言ったのかも覚えていない。
頭を下げて逃げるようにその場を立ち去った。
教えられた職員室に行くと、会議中で立ち入り禁止になっている。
以前、お世話になった司書教諭に頼まれていた美術書を持ってきたのだ。ここまで来て、まさか会議中にあたるなんて。
会議は、どれくらいで終わるのだろう。
そもそも恩師の勤務先が男子校と知っていたら絶対に来なかった。
独特の雰囲気の中、部外者にはいたたまれない。
いったん、帰ろうかな。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説

溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない
若松だんご
恋愛
――俺には、将来を誓った相手がいるんです。
お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。
――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。
ほげええっ!?
ちょっ、ちょっと待ってください、課長!
あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?
課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。
――俺のところに来い。
オオカミ課長に、強引に同居させられた。
――この方が、恋人らしいだろ。
うん。そうなんだけど。そうなんですけど。
気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。
イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。
(仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???
すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。
アダルト漫画家とランジェリー娘
茜色
恋愛
21歳の音原珠里(おとはら・じゅり)は14歳年上のいとこでアダルト漫画家の音原誠也(おとはら・せいや)と二人暮らし。誠也は10年以上前、まだ子供だった珠里を引き取り養い続けてくれた「保護者」だ。
今や社会人となった珠里は、誠也への秘めた想いを胸に、いつまでこの平和な暮らしが許されるのか少し心配な日々を送っていて……。
☆全22話です。職業等の設定・描写は非常に大雑把で緩いです。ご了承くださいませ。
☆エピソードによって、ヒロイン視点とヒーロー視点が不定期に入れ替わります。
☆「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しております。
初恋は溺愛で。〈一夜だけのはずが、遊び人を卒業して平凡な私と恋をするそうです〉
濘-NEI-
恋愛
友人の授かり婚により、ルームシェアを続けられなくなった香澄は、独りぼっちの寂しさを誤魔化すように一人で食事に行った店で、イケオジと出会って甘い一夜を過ごす。
一晩限りのオトナの夜が忘れならない中、従姉妹のツテで決まった引越し先に、再会するはずもない彼が居て、奇妙な同居が始まる予感!
◆Rシーンには※印
ヒーロー視点には⭐︎印をつけておきます
◎この作品はエブリスタさん、pixivさんでも公開しています

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~
けいこ
恋愛
カフェも併設されたオシャレなパン屋で働く私は、大好きなパンに囲まれて幸せな日々を送っていた。
ただ…
トラウマを抱え、恋愛が上手く出来ない私。
誰かを好きになりたいのに傷つくのが怖いって言う恋愛こじらせ女子。
いや…もう女子と言える年齢ではない。
キラキラドキドキした恋愛はしたい…
結婚もしなきゃいけないと…思ってはいる25歳。
最近、パン屋に来てくれるようになったスーツ姿のイケメン過ぎる男性。
彼が百貨店などを幅広く経営する榊グループの社長で御曹司とわかり、店のみんなが騒ぎ出して…
そんな人が、
『「杏」のパンを、時々会社に配達してもらいたい』
だなんて、私を指名してくれて…
そして…
スーパーで買ったイチゴを落としてしまったバカな私を、必死に走って追いかけ、届けてくれた20歳の可愛い系イケメン君には、
『今度、一緒にテーマパーク行って下さい。この…メロンパンと塩パンとカフェオレのお礼したいから』
って、誘われた…
いったい私に何が起こっているの?
パン屋に出入りする同年齢の爽やかイケメン、パン屋の明るい美人店長、バイトの可愛い女の子…
たくさんの個性溢れる人々に関わる中で、私の平凡過ぎる毎日が変わっていくのがわかる。
誰かを思いっきり好きになって…
甘えてみても…いいですか?
※after story別作品で公開中(同じタイトル)
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる